- Amazon.co.jp ・本 (407ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150705541
感想・レビュー・書評
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最初の一文で心を掴まれ、ぐいぐい読み進めてしまった。最後のセリフの軽やかさも、the海外ミステリって感じで好き。
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ミステリにはあまり興味がなかったし、海外小説も殆ど読まないけど、ちくまの「絶望図書館」にアイリッシュの短編「瞳の奥の殺人」が編まれていて、別の作品も読んでみたくなり購入。ストーリーはもちろん、詩的で幻想的な文章は描写が的確でまるで映画を観ているかのよう。見事にハマりました。
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この展開はまったく予想できなかった!
まさにどんでん返しの本書は、1942年に出版されたウイリアム・アイリッシュの名作ミステリー「幻の女」です。
あらすじは簡単。無実の罪を着せられ、死刑執行の迫る男。その罪を晴らすべく男の友人は、彼のアリバイを唯一証明する”幻の女”を探してニューヨークを駆け巡る!果たして”幻の女”は見つかるのか!?
テンポのいい展開で読ませる読ませる。そのためか、ちょっと「ん?」と疑問に思ったところも気にせず読み進めていましたが、まさかあんな展開が待ち受けているとは…最初は意味がわからず前後を二、三度読み直しました笑
そして、あらためて読み返してみると、巧妙に仕組まれた構成になっていて感心するばかり。こりゃあ古典的名作と評されるのも理解できます。
ところで、そもそも犯行当日から僅か150日で死刑が執行されるのか?という重箱の隅をほじくるような疑問が読み始めた時から抱いていました。執筆当時と時代は違えど、現在では刑の確定までに膨大な時間を要するし、はたまた死刑執行となると相当程度の期間がかかるという印象。
ということで興味本位でかるーく調べてみました。参考になったのは電気椅子による死刑執行の写真で有名なルース・スナイダー事件。こちらは1927年3月に犯行に及び、死刑執行は1928年1月。150日ほど短期間ではありませんが、まあ程度としては似たようなもの。昔はそんな短期間で処刑されていたのかとちょっと勉強になりました。 -
いっしょだったというのに。
行ったはずの先々で誰しもが「いなかった、見ていない」と証言する、謎の女性。
死刑執行日までのカウンダウン。
見つからぬ手がかり。
尾行、心理作戦、次の死。
サスペンス感もあって楽しめた。
キャロルが健気。
私の中では、古いレンガビルが建ち並ぶ、霧のロンドンのような空気感で展開(本当はアメリカ)
読み落としたかなという点もあり、ネタはわかってもなお、もう一度読んでみたい。 -
事件発生の死刑執行まで150日前から91日前、
と急に跳び、さらに21日前へと期限が迫る中、
誰がどうやってひっくり返すのか、
まさか「どんでん返し」とは無実の罪で
死刑が執行されることなのか、と読み進める。
掴みかけた手がかりが、消えていく中で
明らかに第三者の意思、意図が見えてくるが
さて、それは誰か。。。。
そうやって楽しんでみると、幻の女の正体が
分かってしまえば、ちょっと拍子抜け。
でも、そうでもなければ幻であり続けるのが困難なので
後から思い返せば、よく考えられているのかな。
最後に、バージェスさん。プロなんだから、
よくよく考えてみるとじゃなく最初から頑張りなさいよ。 -
死刑宣告を受けた男を救うことができるはずの「幻の女」を探す物語。さすがミステリーの古典中の古典と呼ばれ、かの江戸川乱歩が絶賛したと言われる作品です。読書中、読書後の満足感が非常に高い。時々癖があるものの、全体的に読みやすい文章です。新訳のおかげもあるでしょうか。死刑執行が迫る緊迫感と物語の運び方が上手くて、あっという間に読んでしまいました。
読後あらためて表紙を見るとなんかいいですね。
評価が★4なのは単純に好みの問題です。 -
妻殺しの嫌疑を掛けられた男。
無実を証明するためには、
ある晩6時間だけ共に過ごした女を
証人として見つけ出すしかない。
だが彼らと接触した人々は皆、
その晩男は一人きりだった証言する。
男の無実を証明するため、
彼を信じる者達が幻の女を探し回る。
ストーリーはよく知られている。
幻の女は本当に実在するのか、
実在するなら、何故人々は
「見ていない」と証言するのか。
妻を殺した真犯人は一体誰で、
目的は何だったのか。
謎だらけ。
新訳だけあって読み易い。
ハードボイルド調の洒落た文章が
物語の雰囲気を高めていてた。
死刑の期日が刻一刻と迫って来る中、
光明が見えた途端に消えてゆく歯痒さに
無実の罪を着せられた男と同じ
焦燥を感じ、頁を捲る手が止まらない。
そして待ち受けていた、驚愕の真実。
エグいくらいに面白かった… -
前々から(それもかなり前から)気になっていながら未読だったこちらを読みました。
珍しく1日で一気に。
それだけの名作です。
さすが古今東西のミステリー・オールタイムベストのような企画があると必ず上位にランクインしている作品だけありました。
1942年刊。すでに「古典」の部類と思いますが、色褪せませんね。大いに楽しませてもらいました。 -
夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった。
最初の一行に、衝撃を受けました。 カッコイイ。
というか、「あ、これって決まり文句?名文句?としてどこかで聞いたことがある…これが出処だったのか!」と思いました。
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1942年、アメリカ小説。
いわゆる「海外ミステリーの古典」です。
レイモンド・チャンドラーさんが「大いなる眠り」を出したのが1939だそうなので。文体としてはチャンドラーなどの影響下、というか同世代と考えていいのでしょうか。
一人称ではなくて三人称なんですけれど、乾いて洒落て気の利いた文体で世界観に持っていってくれています。
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ウィリアム・アイリッシュさんの作。
ぢぁあこの人はアイルランド人なのかというとよく知らないのですが、アイリッシュはペンネームで。コーネル・ウールリッチという本名でも色々書いている人だそうです。
「黒衣の花嫁」も書いてはる、ということを初めて知りました。トリュフォーさんの監督した映画の原作ですね。
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ずっと昔。多分30年くらい前から本屋さんで背表紙は見ていた本。
今回、なんとなく、とうとう読んでみました。
40年代、ニューヨーク。夜。
若い男が、バーで初対面の女性に声をかける。
女は奇抜な帽子が目立つ、妙齢のたたずまい。
二人は名乗ることもなく、食事をして軽演劇を楽しんで、名乗ることもなく別れる。。。
若い男は、若い妻と大喧嘩して飛び出してきた勤め人だった。
妻との中は冷えて、今は別に恋人がいる。
すべて正直に話したが、妻は意地悪く離婚に応じてくれないのだ。
憂鬱な気分で帰宅した男だったが、待っていたのは。 自分のネクタイで絞め殺された妻の遺体と、彼を犯人と信じて疑わない警察だった…。
逮捕された男は、
「奇抜な帽子の女、あの女が僕のアリバイを証明してくれる」。
だが、その女は幻のように消えてしまった。
その女と彼を見たはずの店員たちも、「そんな女は知らない」と口を揃える。
死刑が確定した男。
絶望に陥る彼を、友人と、恋人、ふたりが励ます。
「死刑執行のその日まで、絶対に、幻の女を探し出してみせる」
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なかなか、面白かったです。
ミステリーっていうのは。
(何だか偉そうで恐縮なんですが) だいたいが、謎がありまして。そうぢゃないとちょっと盛り上がらない。
で、その謎は最後には解けることになるんですけど。
謎の解け具合とか、真相のトリックとか、そういうことのリアリティだとか信憑性とか説得性とかっていうのは、実はまあ、それほど重要ではないと思うんです。
(だからと言って、「宇宙人でした」「超能力者でした」みたいなことでも、それはそれでちょっとまあ、どうなんだろう、とは思いますが。でも持って行き方が面白ければ、ありですね)
大事なのは、そのミステリアスな、謎めいた感じの、ちょっと不安でふわふわして、足元がしっかりしていない、サスペンスな味わいっていうか。
前半から中盤にかけて、その謎や問題で、どういう世界観を見せてくれるのかなあ?
みたいなことが、キモなのではないでしょうか。
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という訳で。
「幻の女」も、最終盤、謎解きに関して言うと、「ああ、なるほどね」と思いつつ、「それぁちょっとひどいなあ」なんてニヤッとしちゃったりもするんです。
でも、中盤過ぎまで、終盤までの、なんというか。都市の闇、夜な味わい。ダーク。犯罪。わくわくする欲望と、ゾクゾクする恐怖。そして飽きさせない展開。
そんなところで、十分に楽しませてもらいました。
そして、原文がそうなんでしょうが、文章素敵ですねえ。
やっぱり、それも冒頭が、ノック・アウトでした。
ネットで見たら昭和の英文翻訳家の人が「どれだけの人が衝撃を受けただろう」とおっしゃってるそうです。
歌謡曲の「恋人よ我に帰れ」に似たような一文があるそうで、そこから着想した一文だそうですけど。
僕も、何も知らずに読み始め、冒頭、「おおおおお」と、目を丸くしました(笑)
名文、っていうのは、力がありますね。意味を超えて。いや、名文そのものに表現としての意味が、あるんですね。
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以下、ネタバレ備忘録
●苦労して何人かの証言者が見つかる。「何者かに脅されて、あの女を見なかったと警察に言え、と言われました」
●だがその証言者たちは、次々と殺されてしまう。
●実は、奔走していた友人が、犯人だった。主人公の妻と、不倫関係。痴情もつれて、殺し。証人も自分で見つけては殺していた。
●最後、警察と恋人が、真相を見抜いて逮捕。めでたし。
●奇抜な帽子の女は、なんと精神病院の入院患者でした…。