黒い天使 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 早川書房 (2005年2月24日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (384ページ) / ISBN・EAN: 9784150706067

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

浮気をしている夫の相手が殺され、主人公は真犯人を探し始めるという緊迫したストーリーが展開されます。彼女は、夫からの電話を受け取った後、Mのイニシャルを持つ男たちに次々と連絡を取り、彼らの過去や秘密を掘...

感想・レビュー・書評

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  • どうやら浮気をしているらしい夫の相手の女の部屋に行った私。するとその女は殺されていた。その場に夫からの電話が・・ ドアにはMのイニシャルのあるマッチが・・しかし夫は容疑者として逮捕されてしまう。

    女の部屋にあった電話帳をつかみ家に戻った私はMで始まる名前の男4人に電話をかけ、真犯人を探し始める。どれも訳ありげな男だった。「黒衣の花嫁」とか「喪服のランデブー」とパターンは似ている。黒衣~ と喪服~ は復讐だが、こちらは追及。ウールリッチの作品には元気で行動力のある女性が登場する。

    はっとした言葉
    「 女はなぜ男に惹かれるのか? 男はなぜ女に惹かれるのか? 心のなかの幻影のせいだ。」

    夫はいつもわたしを「天使の顔 エンジェル・フェイス」と呼んだ。「黒衣の天使 エンジェル・イン・ブラック」は3番目に電話をした男が言った言葉。

    原題:The Black Angel
    1943発表
    2005.2.28発行 図書館

  • 泣けた。静かに泣けた。夜の切なさに包まれたかのようだ。やはりウールリッチはすごい。

    『喪服のランデヴー』に代表される連作短編集のように物語を紡ぎだすウールリッチのスタイルは健在。今回は夫の冤罪を晴らすべく浮気相手の4人の男と妻アルバータの物語として描かれる。
    1人目はミアに魂を抜かれた元夫で人生のどん底の貧民街で暮らす男の話。
    次はミアを麻薬の運び屋に使っていた違法医師の話でスリラータッチのこの話がもっともぞくぞくした。
    3人目の男は資産家の遊び人だがとても魅力的な男との話。
    そして最後の男はナイトクラブを経営する裏稼業に足を突っ込んだ男の話。

    最初の2人目まではおろおろしながらも勇気を振り絞って犯人かどうかを探る初々しさと危うさが出ていたアルバータだが、3人目からは百戦練磨の女詐欺師の如く、恋は売っても愛は売らず、冷えた頭で犯人かどうかを洞察する女性に成長しているのが面白い。そして一人称で語られるがゆえにその人と成りが実は男を狂わすほどの美貌を持っている事を徐々に悟らせる事となる。

    アルバータという主人公の魅力はこの美貌を備えているのにも関わらず、天使の如く純粋な心を捨てきれないところにある。浮気をした夫を刑務所から出すために犯罪まで犯す彼女の不器用なまでの純粋さは、夫の愛を超えた女の意地というものも感じられ、興味深い。

    特に白眉なのは3人目の男、ラッド・メイソンの章である。
    この男は心底アルバータを愛し、またアルバータも心を許した存在となる。しかし彼女は彼が犯人でない事を知ると去っていくのだ。犯人でない事を願いつつ、それが証明されると去らなければならないジレンマ。
    お互いが魂で通じ合っているのに女だけが始まった時から別れがあるのを知っているという事実は胸を苦しませる。

    しかし自分が窮地に陥ったときに助けを求めたのが彼だったことから、深く愛していた事を知る。そして衝撃の事実と結末。
    切ない。切なすぎる。

    メイソンの喪失感は特にふられた事のある者―特に男(もちろん私もそう)―なら痛切に判るだけに胸に鉛のように沈み込んでいく。

    そして今回は今まで以上に特に名文が多かったと感じた。ところどころではっとさせられた。

    そんな数ある名文の中から最も印象が残ったのはこの文章。

    「(前略)ただ上を見るだけ―」(中略)憶い出が行く場所は下ではなく、上なのだ。

    私はこの文章にこう続けたい。

    だから私は上を向く。でないと涙がこぼれてしまうのだ。

    誰もがロマンティストになる小説だと思った。本当にウールリッチは素晴らしい。

  • まるでヒチコックを見ているかのよう。プロットに弱点はいくつかあれど、そんなことはまるで気にならない「作り話」の面白さを見せてくれる。時代設定がだいぶ昔なので、現実味など感じようと思ってこの本を選んだわけでなし。少し前のミステリを久々に読んだ。とてもよかった。

  •  驚くほどおしゃれなサスペンスを読みました★
    「天使の顔」と彼女を呼んで愛した、主人公のすべてとも言える夫が、殺人容疑で連行されてしまいます。最愛の夫を取り戻すために、若き妻が悲壮感を漂わせながら、たった一人で行動を起こすのが『黒い天使』(1943)です。

     彼への愛を精神の拠りどころとする主人公の健気さと、こぼれんばかりに甘美な文体とが、渾然一体✧となって放つ魅力☆
     そして作者はコーネル・ウールリッチ、ニューヨークの風俗を巧みに物語に織りこむ作家です。
     映画館、バー、ナイトクラブ……。この著者の作品では馴染みのしゃれた舞台装置ですが、若くして家庭に入ったアルバータは、N.Y.の裏の顔に免疫がないのです。そういった純な女性が、大都会の夜を手探りで進んでいく。無力(途中まではそう見える)な女性が、愛だけを支えに闇へ飛びこみ、ひらひらと飛ぶ蝶のような姿は何とも危なっかしく、目を離せない探索が続きます★

     しかし驚いたのは、危険は彼女に手をさしのべた男にこそ迫ること。
     彼女の顔に天使のイメージを見出すのは、夫だけではなかったのです……! アルバータこそ、彼女を愛した男に破滅をもたらす天然の悪女、「黒い天使」だったらしい★ 天然ほど質が悪いのです。
     その自覚もなく動き回った結果として、彼女は彼女自身の愛をも壊してしまいます。
     拠りどころとしていたものは、戻ってくる頃には壊れ物になっていた。壊したのはアルバータ自身だったのでしょうか?
     彼を抱きしめる。彼女が望んでいた結末。けれども、それは壊れたものをかき集めて元通りに見せるための、悲しい抱擁になってしまう……★

     この小説って、本当にどうかしています。純粋すぎるがゆえに、どこか狂ってるのです。だから始末に負えないのです。長年文庫化を待って正直待ちくたびれましたが、この愛のねじれ具合を見届け、ひしひしと感じました。待った甲斐がありました……!

  • 「幻の女」のコーネル・ウールリッチです。
    この著者、女嫌いだったはず…でも、かわいいキャラのヒロインに好感持てました。
    Mの頭文字を持つ男性に次々挑んで行く~
    かなり古い内容なのに、「幻の女」同様読みにくくは無かったでした。
    読み終えて初めて気が付いたけれど、なんて素敵な表紙!
    (カバー付きのままのお借りしました)
    本屋さんで見つけたらジャケ買いのレベルですね。

  • ウールリッチだからね。好きに決まってる。

  • 愛人殺しで有罪となった夫の無実を晴らそうと若妻は

    偶然見つけた手掛かりをもとにイニシャルMの真犯人を

    探し出そうと一人探偵行に身を投じる。



    「幻の女」(W・アイリッシュ名義)は

    あまりに有名なオールタイムベスト級の作品で傑作だった。

    「暁の死線」はサスペンスフルで徹夜で読んだ。

    短編もいくつか読んでいるはず。

    けれどおおまかな粗筋しか憶えておらず、ミステリーなのに

    事件がどう解決したのか綺麗さっぱり記憶から消えている。

    心に鮮明に焼き付いて残っているのは作品のムードや文章、印象的な場面だ。

    「黒衣の花嫁」「喪服のランデヴー」等有名どころの作品は

    所有しているのにもったいなくてなかなか読みだせない。

    おれにとってウールリッチそんな作家だ。



    「黒い天使」はミステリーとして「幻の女」や「暁の死線」と

    比べても(うろ覚えだけどさ)ランクが落ちる作品のように思う。

    お話がイージーだし解決の仕方もちょっとした捻り、

    程度のものであまり大したことはない。

    この作品の場合事件の真相よりミステリアスなのは

    宝石のように美しい文章で綴られる裏社会や都会の夜、

    そして本人も気付かぬうちに平凡な若妻アルバーターが

    美しくしたたかな「天使」に変貌していくところだ。

    不安と窮地に立たされた彼女自身の視線から語られた本文は

    次第にエロチシズムすら感じさせる。



    アルバーターは夫を救おうとするけなげな妻でもあるのだが

    容疑者たちにとっては企みをもって近づく「悪女」でもある。

    含みのあるラストシーンにしてもウールリッチという人は

    心に女性不信を抱いていたんじゃあなかろうか?

    生涯、独身で孤独な死を遂げた経歴を知ると、なおさらそんな気がしてくる。



    しばらく経てばこの後読むであろう多くの物語に埋もれて、

    「黒い天使」の推理ドラマの部分は忘れてしまうだろう。

    それでも締めつけられるような響きで「オールウェイズ」が

    流れる哀切な場面などは決して忘れない。

    小説を読んでいて久々に音楽が聞こえた瞬間だった。

    「オールウェイズ」という曲を聞いたことがないにも関わらずに。

  • ウールリッチ作品(ウィリアム・アイリッシュ名義含む)の中で、一番好きかも!!『幻の女』もいいですが・・・
    ひとつひとつのエピソードが、短編色を帯びていて、おもしろかったです。




    !!注!!以下ネタバレ

    最後はショッキングでした。
    ラッドとのやりとりがすごく好きだったので・・・

  • 自分の中ではファッションフォトというか、フレグランスの広告をイメージさせる表紙です。
    男性の髪の長さが微妙だし、今のモデルの基準よりは太めなのもちょっと前世紀なのかもしれないですけど。

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