利腕 (ハヤカワ・ミステリ文庫 フ 1-18 競馬シリーズ)

  • 早川書房
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感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (406ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150707187

感想・レビュー・書評

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  • 40年くらい前の作品ですよ
    すごっ

    ぜんぜん今読んでも面白いんだけど
    やっぱりノスタルジックな想いが少し乗っかっている気もします
    冷静に考えるとやっぱり今の時代には合ってないのかなと思ったりもして

    というのは、かっこいい男の基準がやっぱりちょっと違うような気がします
    石のような精神力で何ものにも屈しないヒーロー
    本編の主人公シッド・ハレーも一度は敵の脅しに屈しそうになりますが、自分の心と会話を交わすうちに精神的な復活を遂げます

    今ならきっと自分の弱さを認めつつ、ときには仲間を頼ったりもしながら強さを身に着けていくみたいなヒーロー像のほうが受け入れやすいのかなって思います

    それにしても我が本棚ながら、凄いバラエティにとんだ本棚になってきたなー

  • かつて花形騎手だったシッド。だがレースで事故にあい左手が義手になった。今は相棒のチコと競馬界まわりの探偵稼業をしている。レースに勝つこと、それが第一の目標だったシッド、家庭はその次、それがもとで妻とも離婚してしまった。冷静さと頑強さ、ちょっとフィリップ・マーロウの雰囲気がする。

    今回は、競走馬4頭の体調と成績がどうもおかしいと、かつて自分を育ててくれた調教師の妻、競馬シンジケートを持つ人物、当の競馬界の調査委員長から、調査を依頼され、おまけにかつての妻が詐欺に手を貸す羽目になってしまった、とそちらの調査も依頼される。馬の方は驚くべき事実が・・  妻の方は、だまされた男の正体を突き止める。その間、熱気球に乗るはめになったり、ドラマにしたらさぞおもしろいのでは?という場面が盛りだくさん。

    ディック・フランシス、漢字二文字の題名は前から知っていたが、「海外ミステリ・ハンドブック」で”かっこいいヒーロー”の部門であがっていたので初めて読んでみた。これは1979年発表で今から40年前の時間感覚で粛々と物語は進む。訳文がいい。競馬シリーズでは第4作目。「大穴」の続編とも言える作とあり、そちらも読んでみたい。

    ☆早川海外ミステリハンドブック2015:かっこいいヒーロー&アンチ・ヒーロー

    1979発表
    1981.1.31初版(単行本) 図書館

  • 片手の元騎手探偵シッド・ハレー。
    大規模な不正行為や巧妙な詐欺事件を調査する彼を待ち構えるは恐るべき脅迫だった。

    いや、もうラストかっこよすぎ!
    たまらん!

  • ディック・フランシスの小説にはかつては同じ主人公が出てこないことになっていたが、シッド・ハレーだけが例外だった。初期の作品『大穴』に出てきたあと、この『利腕』に登場した。
    その後、キット・フィールディング君が二作続けて登場したが、そのあと『好敵手』でシッド君が三度目の登場となり、やはりフランシス作品のなかの存在感ナンバー1の座を印象付けた。で、このあと、最愛の妻を亡くして一度は引退したフランシスが息子の応援を得て書いた『再起』も、やはり一番人気のシッド君に登場してもらったので、シッド君は都合四回出てきたことになる。


    さて、4回の登場中、もっとも好きなのがやっぱり『利腕』。
    初回に登場したとき、すでに競馬の事故で右腕を怪我していたシッドだけどそれをものとせずにかっこいいところを見せつけた。
    ところが、この作品では悪者に追い詰められて、その怪我した右腕をさらに痛めつけられてしまう。
    さしもの好漢、シッド・ハレーも、右腕を失うかもしれない恐怖には勝てず、一度は悪者に屈してしまうのだ。
    このへんの心理描写はじつに巧み。
    読んでいるこちらのハートが試されているかのようだ。

    フランシスの描く主人公はつねに冷静沈着、誇りを重んじ、それを貫く強さを持っている。
    しかし、そんな主人公の心のなかで起きている葛藤を見事に描いて、彼らの本当の姿を浮かび上がらせることに成功したのがこの作品が頭ひとつ飛びぬけているポイントだ。

    もうひとつ『度胸』という作品も同様のテーマで、「度胸とは何か?自尊心とは何か?」ということを描いている。
    それでいつもどっちがどっちだったかわかんなくなっちゃう。

  • 大穴に続きシッドハレーもの2作目。今回は失った左手に義手をつけ、探偵業も板につき順調な出だしだ。だが元妻の詐欺事件や昔の知り合いからの依頼等、複数の事件を追っているうちに、自負心を粉々にされる場面になってしまう。その時の葛藤がとてもリアルで読んでいて苦しい。結局は立ち直るわけだが、その過程に特別なきっかけがあるのでなく、苦しみもがいた末に絞り出した勇気であることに感動する。格好いいだけの主人公は嘘臭いが、作者は格好良く生きるために努力する主人公の姿をきちんと描いていて、好感が持てる。面白かった。

  • 今作の主人公は、ディック・フランシス競馬シリーズの中では珍しく2回目登場のシッド・ハレー。
    前作で生ける屍だった彼は絶望の中から自分を取り戻し、今作ではフリーの敏腕調査員となっている。とはいえ、やはり輝かしい騎手時代への未練は捨てきれないようだ。

    次々とレース生命を絶たれていく競走馬&競走馬のシンジケートに関する不正を追う中で、凶暴な悪党から壮絶な脅迫を受けるハレー。本作はそんなハレーの恐怖を軸にストーリーが展開していく。
    なぜタイトルが「利腕」なのかを理解できた時、ページを読み進める手が進まなくなるほど恐ろしかった。

    なんと、本作では不屈のヒーロー・ハレーが恐怖におののき悪党から一度は尻尾を巻いて逃亡してしまうのだ。
    屈辱、自己憐憫、罪悪感、精神的基盤の崩壊…。前作よりも深い奈落の底からいかにしてハレーが這い上がってくるのかが、本作の見どころである。
    「自分が永遠に対応できない、耐えられないこと…ようやく、鮮明、確実に理解できた…それは自己蔑視である。」
    この決意とともにハレーが完全復活する瞬間は、まさに鳥肌もの。

    他の登場人物も細やかに描写されており、陽気で頼りになる相棒チコがいい味を出しているのは勿論、これまでハレーに辛く当たってきた元妻ジェニイの知られざる本音や、ジェニイの父チャールズとの変わらない友情など実に味わい深い。

    ちなみに、結末はあのジェフリー・ディーヴァーも真っ青のどんでん返し!!
    この発想はなかった。改めてフランシスの技量に脱帽。ラスト1ページまで気を抜けず、手に汗握る素晴らしい作品であった。

  • シッド・ハレー物第2作。
    フランシスの作品は競馬シリーズといっても基本的には単発で、すべて一作ごとに完結しています。主人公の中で、3作描かれているのは彼だけ。
    それだけ登場した時の印象が強く、意志の強さや勘の良さは典型的でもあります。性格は冷静なようでも内面は激しく、孤独がちなほうで、それだけにヒーローっぽいんですね。
    元は競馬のトップ騎手で、落馬事故で手を痛め、深い心の傷を負っていました。前回の事件で精神的には立ち直ったものの、手の方はついに切断していますが、最先端の義手を試している時期ですね。
    離婚した妻との葛藤とうらはらに、義父とは離婚後も親しく、最初は娘にふさわしくない相手と全く存在価値を認めなかった義父との関係が深まっていくのも面白いところ。
    1981年、MWA最優秀長篇賞受賞作。

  • 競馬シリーズ18作目。

    「利腕」というタイトルで気が付くべきだった。
    ミステリーファンとしては。
    障害競馬の元チャンピオンにして、
    左腕が義手の探偵ハレーが戻ってきた!

    言い訳をさせてもらえば、
    この競馬シリーズで今まで主人公が同じ作品は皆無だったので、
    全く予想していなかった。

    前作「大穴」の最後では、
    探偵社を買い取る話になっていたはずだったが、
    社長が急死、甥がしゃしゃり出てきて一探偵に戻っていた。

    元妻に知らない間に詐欺の片棒を担がせた男を探し、
    本命馬が大きなレースで惨敗し、しかも調子を悪くする原因を調査し、
    ジョッキィ・クラブの保安部次長を調べ、
    と大忙し。

    元妻の言動に傷つけられたり、
    利腕を奪われる恐怖に打ちのめされるハレーは
    かなり痛ましい。

    馬を調子を悪くする原因が、
    豚の病気のワクチンを作るのに馬を利用していた際に
    突然変異で発生した菌で、
    不活性化したものが研究所だけに存在したという設定は面白かった。

    それと、
    手掛かりを求めて気球の船長に会いに行ったはずが、
    追われて気球に乗り込みレースに参加してしまうところも面白かった。

  • サスペンスあり冒険ありのエンタメ性十分な作品だが、翻訳に難あり。残念。楽しめなかった。

  • まさかのシイド・ハレー続編!「大穴」から読まないとダメ!

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