メグレ罠を張る (ハヤカワ・ミステリ文庫 16-1)

  • 早川書房
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本棚登録 : 41
レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150709518

感想・レビュー・書評

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  • パリの決まった地区で5人の女が殺されている。
    メグレは、精神科医との会話から犯人を罠にかけることにした。
    まずはまるで容疑者を捕まえたかのように見せかけ犯人を刺激する。
    さらに女性警官たちを囮として歩かせる。
    犯人がそんな女性警官の一人を遅い、彼女は犯人のボタンを毟り取った。
    高級なボタンと生地のために持ち主はすぐに割れた。
    建築室内装飾家のマルセル・モンサン。
    マルセルを自宅で質問したメグレは彼こそ犯人だと確信し、そのままパリ警視庁に同行させる。
    メグレとその部下たちはマルセルの周辺を調べ、マルセルを巡り、彼の母と妻との闘いがあることを探る。
    マルセルは、自分が結婚したときに母から逃れられたと思ったのか?だが別の女、妻が自分を所有することに変わっただけだと気がついたのか?その女への憎しみが、不特定多数への殺人となったのか?

    事件は終わったも同然だった。あとはメグレの手を離れて判事のものになるだろう。
    だがメグレははまだ物足りなかった。<まぜメグレが満ち足りた気持ちにならないかということは、それはまた別の話だった。職掌からいえば、彼はなすべきことは全部やっていた。ただ彼はまだ理解できていなかったのだ。”気持ちのぶつかり合い”といったものがまだ生まれていなかったのだ。彼はただの一瞬も、自分と装飾家の間に人間的なつながりと言ったものを強く感じる機会を持っていなかったのである。P184>

    しかしマルセルが勾留されている時に、新たな殺人が起きる。
    マルセルは連続殺人犯ではなかったのか、それともおそらく精神鑑定で死刑は免れるであろう彼をさらに無罪にするために誰かが自分の首をかけたのだろうか。メグレは失策を犯したのか、一人の娘が死んでしまった。

    メグレはマルセルと、彼の母と妻とを呼び自白を導くための尋問を行う…。

    ===

    映画を先に見ました。
    ジャン・ギャバン主演
    https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/B000BKJLMW#comment
    ローアン・アトキンソン主演
    https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/B0748P5VVC#comment

    メグレもの、というかジョルジュ・シムノンものにおいても珍しく遣り手女性が出たり、ちょっと活躍したりしています。
    シムノンは、母親とうまくいっていなかったり、「1万人の女性と寝た」と言っていたり、そもそもこの時代は人種や性別の各種があるためか、「白人・男性・キリスト教」以外の人物はあまり割の良い役割にはなりません。
    そんな中でこの「罠を張る」では、油断のならない女性記者や、ジュードー技で犯人を防いだ女性警官が出てきています。…もっとも女性警官は私事と仕事を道立にしたり、女性記者も具体的な活躍がなかったりはしていて、やはりシムノンでの女性の活躍は難しいのかな。

    さて、ここの話でもメグレの「運命の修理人」たるものが書かれます。
    メグレは医者と会った時に「あなたは医者を目指したことがあるのでは?」と聞かれることが多いとして、警官と医者とは
    <人間というものに興味を寄せ、その苦悩やその挫折に考察を払うそのやり方はほとんど同じと言ってよかった。P37>
    としています。

    そしてメグレ夫人との触れ合いも書かれています。
    <彼女は、メグレがこっそり、まるで腕白小僧の頃のように夢中でやっていることを見て見ぬふりをした。降雨がいかにも爽やかに、いかにもおいしそうな風情だったので、彼は時折下を突き出してはそれを数滴受け止めていたのである。そしてその駅は事実素晴らしい味がした。P57>
    <メグレ夫人は何も質問を仕掛けなかった。彼女は、何故か夫が遠くから帰ってきた人のような気がしていた。この人は日常の生活のなかに戻りたがっているのだ。人々と押し合いへし合いすることでこの人は自分を安心させたがっているのだ。彼女は漠然とそう感じていた。P225>

    女性が活躍したり(シムノン作品の中では)、失策というような殺人が起きてしまったりと、他のメグレシリーズとはまたちょっと違うような印象深い一作でした。

  • 読書日:2017年7月10日-7月12日.
    Original title:Maigret tend un piège.
    Author:Georges Simenon.

    Paris内で起きた連続殺人事件。
    既に五人の犠牲者が出ており、事件解決に向けて
    警視庁にも裁判所にも秘匿にし、部下数名を伴い
    心理戦で罠を張るMaigret警視。
    心身共に参っていても決して疲れたと言わずに
    逮捕に向かって行く姿勢に惹かれました。

    犯人を捕まえても即逮捕ではなく諭す事が
    彼の性格なのでしょうか…。
    意外な人物が犯人で心底驚きましたが…。

  •  犯人の仕掛けたトリックを見破るとか、論理的に犯人を割り出すとか、そういうミステリの方向とは全く別の作品である。

     5人の女性が無差別に殺害される通り魔的事件である。全く手がかりのない状況で、メグレは犯人の心理についてある仮説を立て、それに基づいてパリ全体を巻き込んだ罠を仕掛け、それが功を奏して物証をつかみ容疑者を挙げるまでが前半。なかなかサスペンスがあり警察小説として魅力がある。まあ、でも「いかにも」って警察小説に比べれば、ややムードに流されているような雰囲気はある。

     容疑者を犯人として確定するまでの話が後半。こちらの方が読みでがあった。メグレが、容疑者やそれを取り巻く女性達の中に、心理的に入り込んでいくことによって、まさに彼が犯人であることの確証を取ろうとするのだ。結果的に、人間心理についての深みある読み物になっている。ある程度「異常心理」よりなのかもしれないけれど、昨今の「異常」さに比べれば、至極まっとうなコンプレックスや自意識の話であり、読んでいて説得力があった。

     名探偵というよりも、心理学を担当する臨床医師のような印象があるメグレである。全編を通じて飲み続けるビールがとてもおいしそうで、確かにミステリ史上に残る名探偵の一人であると思う。

    2009/11/3

  • 昔はメグレ警部ってそれなりにはやってたんだけど,最近全くきかないですね。
    昭和60年9月30日5刷

  • 帯有りません。若干のスレと少しヨゴレはありますがほぼ普通です。中身は少しヤケはありますが比較的きれいです。

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著者プロフィール

"ジョルジュ・シムノン
1903-1989
ベルギー、リエージュ生まれ。
中等学校を中退後、職を転々とした末、
〈リエージュ新聞〉の記者となる。
1919年に処女作“Au Pont des Arches”を発表。
パリへ移住後、幾つものペンネームを使い分けながら、
大衆雑誌に数多くの小説を執筆。
「怪盗レトン」(31)に始まるメグレ警視シリーズは
絶大な人気を誇り、長編だけでも70作以上書かれている。
66年にはアメリカ探偵作家クラブの
巨匠賞を受賞。

「2018年 『十三の謎と十三人の被告』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ジョルジュ・シムノンの作品

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