ウィンター・ビート (ハヤカワ・ミステリ文庫)))

  • 早川書房
3.98
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本棚登録 : 153
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (682ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150753726

作品紹介・あらすじ

従妹のペトラが働くナイトクラブは、前衛的なボディ・ペインティングのショーで人気の店だった。だが、店を訪れたわたしはそこに危険な空気を嗅ぎつける。不安は的中。常連客の女性が店の裏で射殺され、容疑者として帰還兵の若者が逮捕されたのだ。息子の無実を信じる父親の依頼で調査に乗り出すわたしは、知らないうちに底知れぬ闇に立ち向かうことに…巨大な敵を前にしても、V・I・ウォーショースキーは挫けない。

感想・レビュー・書評

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  • あらゆる事件にカラダを張ってきたヴィクが、今回もまたカラダを張る・・・文字通りに。かつてキャサリン・ターナー主演で映画化されたこともある本シリーズだけれど、いま、ハリウッドにヴィクを演じられる同年代の女優がはたしているんだろうか・・・そりゃまあSFXとかCGとかがあるにしても・・・

    ジャンルで云えばミステリに括られるんだろうけど、本シリーズが一貫して訴えつづけているのは、アメリカの悩み。今回はイラク戦争の後遺症や同性愛あるいは偏見。悩みは深いけど、だからこそ希望を捨ててしまってはいけないというのが、ヴィクの、というかパレツキーの根っこにあるんだとおもう。沈黙の時代だからこそ、語るのをやめてはいけない、ということなのかなと。

    ヴィクのようにはなれないけれど、彼女に励まされた無数の読者たちが、世界のあっちこっちに散らばっていて、その何十分の一かでも勇気と希望を失わないことが、沈黙の時代の“言葉”になりうるのではという気がしておりますです。


    余談:パレツキーが久々に来日したのはちょうど、去年の今頃でしたよね。つまり恒例の年間最繁忙期と重なって駆けつけることができませんでした。今年もヘロヘロ期間中に新刊を読んだわけで、いつもシンドイときにヴィクを読んでいるような。
    シリーズはつづくようで慶賀に堪えないのですが、シンドイのがつづくのはかなわんなぁ・・・毎年、昨年の課題はクリアするのですが、年々要求も高まってるので、さてどうしたものかというきょうこの頃です。苦笑。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「その何十分の一かでも勇気と希望を失わない」
      新版の「サマータイム・ブルース」が出てから読んで無い。。。bolachaさんのレビュー読んで急...
      「その何十分の一かでも勇気と希望を失わない」
      新版の「サマータイム・ブルース」が出てから読んで無い。。。bolachaさんのレビュー読んで急に読みたくなってきました。。。
      2012/07/19
  • 今回、まさにカラダを張るヴィク。いつも泥まみれになってるけど、美女の設定なんだろうな。表紙は今回がいちばん好き。タフな感じがする。心の中に自分のヴィクがいるから、顔はあんまり描かないでほしいのです。

  • 探偵ウォーショースキーの15作目。

    今までヴィクが、
    運河に飛び込んだり、
    ガントレーンから飛び降りたり、
    火炎びんを投げつけられたりと、
    様々危険な目に遭い、また危険に飛び込んでいくのにつきあってきたが、
    事件解決のために、ボディ・ペンティングしているとはいえ、
    裸体を人前にさらすとは思っていなかった。
    五十歳を目前に恐るべしヴィク。

    前作で父親の犯罪を知ることになり、
    家に戻りたくない若い従妹、ペトラに相変わらず振り回されながら、
    彼女が勤めるクラブでの殺人事件に巻き込まれる。
    帰還兵の殺人容疑を晴らそうとしている過程で、
    軍事産業の闇をあばくことになるのは、いつものお約束。

    長年の上顧客のダロウが、
    昔飼っていた犬、自分が蹴飛ばされた時に相手に嚙みついた闘志満々の犬に、
    ヴィクをなぞらえた場面が良かった。

  • 今回は、命の危機は前作、前前作程ではありませんが、謎が謎呼ぶ展開になっています。イラクからの帰還兵、民間軍事会社が出てくるのは時代ですね。

    ところで、最近、ボビー・マロリーが出てこない気がするんですが?って言うか、ちょっと前に定年を思わせる描写が有ったんですが、まだ定年ではない?ちょっと気になります。それに合わせ、シカゴ警察との仲も、微妙になってしまってますね。

    その変わりと言ってはなんですが、ペトラがここ二作品続けて出ています。ころころと態度を変えるところ辺りは、日本で言うと“ゆとり”の雰囲気を感じさせますが、アメリカでそう言う概念有るんですかね?

  • ヴィクは女性探偵の活躍する4Fミステリ、つまり書き手も読み手も、翻訳者も女性で、主人公は女性という作品の中でも、長く人気を誇る主人公です。おそらく今になっては、男性のファンもたくさんいることでしょう。

    このお話では、イラク戦争で心に傷を受けた帰還兵の青年と民間企業を通じてイラクに行き、そこで戦闘に巻き込まれて亡くなったとされている女性の家族に降りかかった相次ぐ不幸の謎に、ヴィクが挑みます。物語としてきちんと収まるところへ収まる、見事な構成ですが、これは、原作者である、サラ・パレツキーさんの、作品を通じたイラク戦争と、戦争後のアメリカに対する批判が込められていると感じました。

    声高な書き方はされていないのですが、侵攻したアメリカ人の人たちも、イラクの人たちにも双方に深い傷を残すことであって、未だに苦しんでいる人がいることを、自然に描いています。

    ヴィクは、まだまだ生き生きしていて、魅力的です。若い男性にほのかに片想いされたり、恋人とも温かな心が通い合っていてとても素敵です。前の巻から登場したいとこのペトラは、レギュラーになったみたいですね。ミスタ・コントレーラスも健在ですし。今回、イラクに派兵された青年の友人二人がヴィクを助けるのですが、彼らの態度がすごく爽やかでいい感じ。

    次回作が早く読みたい、今作はとても面白かったです。テンポがよくて、最初に読んだ「バーニング・シーズン」の頃にも負けていません。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「男性のファンもたくさんいることでしょう」
      はい!
      「サマータイム・ブルース」の改訳が出てから読んでいないので、暫くお休み中になりますが、、...
      「男性のファンもたくさんいることでしょう」
      はい!
      「サマータイム・ブルース」の改訳が出てから読んでいないので、暫くお休み中になりますが、、、エッセイ「沈黙の時代に書くということ」を読んだらコンスタントに読もうかと思っている(実は、読書再開したいシリーズが他にもあって困っている)
      2013/01/31
    • 瑠璃花@紫苑さん
      nyancomaru様 
      コメントをありがとうございました!嬉しいです。
      是非読書再開なさってくださいませ。読後の感想も拝見できればと思い...
      nyancomaru様 
      コメントをありがとうございました!嬉しいです。
      是非読書再開なさってくださいませ。読後の感想も拝見できればと思います。男性のファンの方は、ヴィクのどんなところに惹かれるのでしょう。知りたいです!
      2013/01/31
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「どんなところに惹かれるのでしょう」
      ズバリ一本気なところです。コレだ!と思えば、とことん喰らいつくところですね。
      そして友人達との遣り取り...
      「どんなところに惹かれるのでしょう」
      ズバリ一本気なところです。コレだ!と思えば、とことん喰らいつくところですね。
      そして友人達との遣り取りも微笑ましく、ちゃんとロティ・ハーシェルとも喧嘩するし、心配をして呉れるコントレーラスにも嫌味を言う。そんなところが身近に感じるからかなぁ~(チョッと超人過ぎる部分もありますが)
      2013/01/31
  • 本作は飽くまでもフィクションで探偵小説だが…何か昨今の“イラク”を巡って在った、或いは在る様々な“問題”を指摘する作品ともなっている感で、少し考えさせられた…

    事件の謎が明かされる最終盤の演出!!これがなかなかに好い!!やや厚めの文庫本だが、終盤まで一気に進んでしまう…

  • 最近はクラシックミステリーばかり読んでいるので、何か現代ものをと思って昔から好きな VI。現代ものといっても、VI シリーズ第一作の「サマータイムブルース」が1982年(邦訳は 1985年)なので、もう 40年前か……。日本では 3F (著者、主人公、翻訳者がいずれも女性)とも称されて一世を風靡したサラ・パレツキーも今やすっかり重鎮で、御年76になるのだとか。しかし、70を超えても年1冊弱のペースで書き続け、昨年 22冊目となる "Over Board" を上梓している。

    ストリップまがいの現代アート、イラク派兵と軍事産業、LGBT など、いかにも現代的なテーマを織り込みつつ、依頼人のために文字通り一肌脱ぐ VI の格好良さは健在。

  • やっと読み終えた。何ヶ月もかかってしまった。

  • 従妹のペトラが働くナイトクラブは、前衛的なボディ・ペインティングのショーで人気の店だった。だが、店を訪れたわたしはそこに危険な空気を嗅ぎつける。不安は的中。常連客の女性が店の裏で射殺され、容疑者として帰還兵の若者が逮捕されたのだ。息子の無実を信じる父親の依頼で調査に乗り出すわたしは、知らないうちに底知れぬ闇に立ち向かうことに…巨大な敵を前にしても、V・I・ウォーショースキーは挫けない。
      
    V・Iシリーズ第14弾、700ページ近い大作なので若干尻込みしていましたが、読み始めたらあっという間でした。最近は従妹のぺトラに振り回されて事件に巻き込まれることが多くなったヴィク、50歳を前にいろいろ考えるところもあるようですが、初登場時(32歳)よりもさらにパワーアップしているんじゃないかと思える奮闘ぶりです。次作以降もさらなる活躍が期待できる・・・ということで次はいよいよ邦訳最新作「ナイト・ストーム」に追いつきます。でもまたまた700ページ・・・。

  • 久々のヴィクのストーリー。相変わらずのタフさ強さと図々しさを見せてて安心感がある。若い従妹に「ヴィクのようにはなりたくない」って言われて傷ついても、今さら生き方変えられないよね。このまま突っ走って欲しい。

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