ユダの山羊 (ハヤカワ・ミステリ文庫 110-4 スペンサー・シリーズ)
- 早川書房 (1987年9月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150756543
感想・レビュー・書評
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スペンサーシリーズ5作目はなんとスペンサーとホークのヨーロッパ冒険旅。こんな話があった事も忘れていた。お金のある昭和のテレビシリーズには、よく必然性があまり感じられない旅物があったのを思い出す。「スコッチ・イン・沖縄」的なやつだ。同じ発想なのかはわからないが、前作から登場したホークがスペンサーに協力し、スペンサーの事件を手伝うのだからスペンサーのやり方に反対しながら従う、というシリーズ前半のお約束的なパターンのスタートでもある。いつの頃からか、とにかくホークが出てこないと面白くない、と思えるようなキャラクターにもうこの時からなっていたのだとわかる。
女性キャラクターの描き方も初期のスペンサーシリーズ、当時のパーカーらしさがうかがえる。これから女性という存在にまつわる葛藤の日々が始まっていくのだが。
#スペンサーシリーズ全部読む -
再読(ブクログには初登録)
1970年代の作品、そらもう古典やわ。
色々今の価値観で読むと、あわないところもあるのだが、とりあえずスペンサーとホークの外国旅行篇。最後にキングギドラ級の大怪物との大迫力格闘シーンあり。お色気シーンもまぁまぁあり。
ってことで、安定のカッチョよい、スペンサー&ホークでした。 -
スペンサーが本棚にいたので読んでみた。調べてみたら1978年刊行の5作目だった。
ストーリーは単純で分かりやすいが、なんと言っても会話の応酬が気が効いているうえに、今回も相棒のホークが参戦する。
この頑固で、出来る黒人はこのシリーズのハードボイルド部分の必須アイテムで頼りになる。しばらく読んでいて見つからないと頁をめくってみたくなる。
スペンサーは相変わらず
一一一 インド人の女が(…)私には目もくれなかった。この頃、女がますます私に関心を抱かなくなったのに、気がついた。女性の好みが、二枚目タイプから離れつつあるのかもしれない。一一一
と本気か冗談かぬけぬけと思っている。しかしフェミニストだ、憎めない。
老富豪からの依頼が来る。イギリスで家族と食事中に、テロリストが投げた爆弾で下半身が動かなくなり、娘と妻は即死だった。そのテロリスト9人を探し出して欲しいと依頼される。調べつくして似顔絵もある。殺しても生かしていても報酬は一人2500ドル。いい話だ。
そこでイギリスに飛び、広告でおびき寄せ3人は射殺。リーダーが2人を殺し、女を残して逃げた。その女を囮にして、ホークと尾行を始め。本拠地のあるコペンハーゲンで2人を、リーダーを追ってアムステルダムからオリンピック開催中のモントリオールに異動する。
因みにモントリオールオリンピックは1976年の夏、その後この作品が書かれたのか。すでに40年前になる。
そして観客席や、通路を駆け巡って、ついにリーダーと対面。ホークと2人で格闘の上、おとりにされた女がライフルで撃った。
富豪というのはいい、経費におまけつきでポケットからぽんぽん封筒が出てくる。鶴の一声でオリンピック全日入場券が届く。満員の飛行機の搭乗券もファーストクラスで手配してくれる。
スペンサーとホークは命がけの分、経費はふんだんにある。
ホークは一件落着後、一日150ドルの契約分しかどう勧めても受け取らない。これが彼のポリシーで解決後はさっさと別れれていく。ただ囮で同行したリーダーの女に好かれて腕にぶら下げているが気にしていない。
ホークは 彼女を刑務所か病院に入れるべきだと思っているが、スペンサーは言う「彼女は<ユダの山羊>だったが、俺の<ユダの山羊>だった。それを、屠所へ送る気にはなれない、彼女は、お前さんと暮らせるかも知れんな」
何処までもスペンサーはスペンサーなのだ。
「きみたちは、立派な男だ。いかなる場合でもわしの助力が必要な時は、必ず力になる」と老人は行った。
こういうことも書ける人なのだな、パーカーは。
なんとも言えず愉快な話だった。でもこれはどう見ても男性読者向きに書かれたに違いない。
恋人のスーザンといい、囮の女性がスタイル抜群で美しいところといい。 -
大富豪にテロリストへの復讐を依頼されるスペンサー。ホークとの大活躍にシビれました。
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面白い
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村上春樹がパーカーのファンだというのも頷ける。どちらも格好つけたスタイルのみで、中身は空っぽだからだ。
家族をテロリストに皆殺しにされて私立探偵を雇う怪しい大富豪という発端からして噴飯物だが、その後の展開はまさに唖然である。ビールと美食、ジョギングの間に人狩りをする能天気な探偵スペンサーは、これまた無能揃いの自称テロリストグループを観光の合間に殺しまくり、その罪を自戒することなく母国に置いてきた恋人を思いすすり泣く。素性の知れない外国人の探偵が国内で人を殺しまくっているというのに、英国の警察は感謝しつつ平然と見逃すという、あり得ない茶番ぶり。アフリカを共産主義者や黒人から救いだす? 今は亡きパーカーよ、もっとましな設定はなかったのか?
スペンサーの相棒らしい人物はステレオタイプで気の利いたセリフもなし。登場人物全てが、スペンサーの虚像を肥大化させるための単なる道具に過ぎない。なんともお粗末な内容なのに、この作品を絶賛する読者諸氏の感想に恐れ入るしかない。
小説ならば最低限のリアリティは必須であろうが、パーカーは鬱陶しい男の誇りにこだわるばかりに一切の真実味を排除する。
その結果、見事な馬鹿小説が完成した。
当然ハードボイルドではないし、活劇も中途半端。ホテルでテロリストを待ち伏せするスペンサーの滑稽さは、パロディとしても笑えない。
しかし、こんな似非ヒーロー小説の何が楽しいのだろう。私には苦痛な読書時間が終わった解放感しか味わえなかったが。スタイルだけでは良質の小説は仕上がらないという恰好の見本だ。 -
相棒ホーク登場。
途中、スペンサーの観光案内みたいになっちゃうけど、会話の小気味良さ、読後の爽快感はやっぱりたまらない。 -
主人公の生き方に共感!
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スペンサーシリーズ。モントリオールオリンピックっていつだったかなあ?と思いながら読みました。1976年かあ。そりゃあ記憶にないはずだ。
40年近く前の話なのにそれほど古臭い感じがしないのはなぜだろう。所詮、外国の物語と思っているからなのか?それとも最新鋭の技術ではなく人間に話しの的が当たっているからなのか。
私も大富豪の家族が狙われたんだからそちらの方面だろうと思ったら全然違う方向に話が流れて行きびっくり。それにしても警察は形無しだなあ…と思ったり。相変わらずホークの活躍はかっこいいです。