女には向かない職業 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150766016

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった!22歳のコーデリアは共同経営者バーニーの自殺により一人で探偵業を続ける。最初の依頼は息子の自死理由の調査。生い立ちやお洒落好きなどコーデリアが魅力的。バーニーのセリフを回想しながらの捜査や最後の反転が上手い。

  • 私立探偵事務所の共同経営者が自殺してしまい(この自殺は事件性はないもの)、22歳の女主人公コーデリアが1人で初めての依頼を受ける話。
    イギリスを舞台とする話の、食事や服飾の描写を読むのが楽しかった。(個人の感想です)
    事件の解決自体は、急にコーデリアがデキる奴になった感がありましたが、初仕事にしては上出来なんでしょうね。あとがきにコーデリア再登場のゴシックミステリが紹介されていたから、そこで彼女の成長を確認したいです。

  • 読書の日々で、合間に海外ミステリーをはさみたいなって時期があり、今回はこの本をチョイスした。
    地味ーーーに話が続いていくけど、読むのが止まらない。

  • たぶん「強い女の子」には二種類ある。ひとつめは男の子たちの世界に突撃して行って「彼らと同じやり方」で成功を収められる女の子。もうひとつは、女の子として、「女の子のやり方」で戦っていける女の子。(決して女性性を武器にするっていう意味ではないよ)
    後者に好感を持てたのははじめてでした。
    ストーリーもものすごく噛み応えがあるのですが、なにより主人公であるコーデリアが素敵。彼女の精神性や強さや矜持が、とにかく眩しくてかっこいい。かといって決して完璧ではないのですが、それでも十分、いや、そういう部分すらも憧れるに足る女の子です。

    ただ、だからこそ終盤のダルグリッシュとのシーンでの彼女の言動は、個人的には解説にあったような女性性ではなくて、22歳という幼さの発露であったと思いたい、ような。

    それにしてもタイトルが完璧すぎて……完全にキラーラインです。

  • 物語の始まりに、共同経営者が自ら命を絶ったことを発見する主人公。
    なんという辛い幕開けなのよ、もう・・・といきなり重たい気持ちで、どんよりと読み始めたこの作品。
    最初は、なんか抑揚がなくてわからんなあ、と思いながら読んでいましたが、いつしか、主人公のコーデリアがとても好きになってしまっていた。孤独に奮闘するこの人のことを応援したくなる気持ちで、どんどんページをめくっていきました。

    それにしても、コーデリア・グレイだなんて、名前がいい!
    反則、反則~!
    わたしもこんな名前になってみたい・・・

    コーデリアの探偵としての独り立ちは、そんな形で突然やってきたのですが、パートナーの死の悲しみにひたっている暇もなく、あぶなっかしいけど毅然として仕事に立ち向かう姿は痛々しくて、そう、全編を通じて心が痛みながら、この作品を読み終えたのでした。

    捜査(探偵だから調査なのかな)の中で出会う人たちの、なんとも人間くさいところもいい。全員何かを隠していそうで、あやしいけど、かといって完全なワルにもなりきれそうにない人たち・・・
    コーデリアのひたむきさに心が引き寄せられ、コーデリアをみんな好きになっていくところがおかしかったな。
    本当は話さないで鍵をかけておくつもりでいたのに、ちょっとづつ、協力をしてくれるようになるあたりが、仕事に追われ、感情もあらわにできないコーデリアのかわりに、なんだか報われた気持ちになっていきました。

    はからずも単独での仕事を引き受けることになり、行き詰まったり、不安に思う事があっても、もはや相談できる上司もない中で、孤独に仕事に立ち向かっていくことは大変なことだと思うのです。自分だっらそんなことできるか?と。だけど、これまで仕事の中で教えられるともなく伝えられていた上司のポリシーを支えに、正しいことに向かって進んでいくコーデリアはとても可憐で爽快、あっぱれだったな。
    コーデリアのような「女」には、向かない職業じゃないと思ったよ!

    そういえば、以前、上司が、”「紳士であれ」ということはきみにはできないだろう?”と言っていたのがとても印象的で、そういうの、コーデリアもきっとくやしかったんだろうな~。
    でも、こじか色のスカートとグリーンの半袖スエーターを仕事着に選んでトランクに詰めるなんて、そんなおしゃれ、まさに紳士にはできないでしょう。おっちゃんには向かない女性探偵という職業(←当たり前だ)、ミニクーパーで疾走する彼女の活躍を、もっとシリーズものでたくさん読みたかった気もしますが、そこはかなわないからいいのだ、というような気もします。
    (あと一作あるので、つぎのお楽しみに。)

    読み終わって一息ついて考えてみると、これは探偵ものというより人間ドラマだったのだわ!と納得しました。探偵も警察も被害者も容疑者も証言者も、みなひとくせあって正直で、事情のあるなかで生きていて、味のある人達ばかり。そこがこの物語の魅力でした。

    こじか色のスカートとグリーンのスエーターのコーディネート。しっかり真似させていただきます。

  • 題名からしてずるい。「女には向かない職業」はなにを想起させるだろう。二項対立で考えるなら、少なくともP.D.ジェイムズには「女に向く職業」が思い浮かぶということだ。ビジネスパートナーの突発的な死によって、コーデリア・グレイは22才の若さで私立探偵として自立を決意する。その直後、名士の息子が自殺した理由を調査するよう依頼される。コーデリアは地べたを這うように調査を進めるのだが、その様子を「可憐」と口走らせることがP.D.ジェイムズの狙いだろう。「こういう女の子が好きなんでしょ?」とほくそ笑むのが透けて見える。青春小説でもある。コーデリアは特殊な青年期を過ごす設定になっている。父親はヒッピーのごとき詩人であり、愛情をかけて育てられていない。放浪生活を強いられたり、修道院生活を送らされたり、よくある友情を経験できていない。多感だが「浮いてる」彼女が、調査対象の息子が通う大学の友人たちと、舟遊びしたりパーティーするときに洩らす自己言及が、だいたいみんなが持つであろう孤独感と共鳴して印象的だ。トリッキーではないが、ミステリーのプロットとしても秀逸。コーデリアと境遇が似てるウィノナ・ライダーが若いときに演じてほしかった。名著です。

  • いわゆる「本格」で「古典」で難しいんだろうと思い込んで読んでいなかったんだけど、読んでみたらば、すごくおもしろくてびっくり。べつに難しくないし、ちっとも古めかしくない! 慣れないながらもあちこち聞き込みに行ったり調べたり、あげくに死にそうな目にあったりっていう、ヴィクやキンジーといった現代の女性探偵のまさに原型!って感じ。主人公の生い立ちや心理描写も細かくて、同じ主人公の「皮膚の下の頭蓋骨」も読みたいと思った。

  • 読んでいて状況を把握しやすく、変に奇をてらった点もない。にも関わらず、事件に対して皮肉の効いた解決の仕方をしてしまうところが面白い。

    主人公のひたむきさもとても好感触。主人公は師匠であり相棒でもある探偵が自殺し、回りから「女には向かない職業だね」と言われながら意地でも探偵を続けようと奔走する。二作しか出ていないのが勿体ない。

  • 意外におもしろかったです。ハードボイルドではないと思ったのに、結構コーデリアは探偵に向いています。彼女の出てくる「皮膚の下の頭蓋骨」はもちろん、アダム・ダルグリッシュ警視ものも読みたくなりました。

  • 主人公は師を亡くしたばかりの若き探偵コーデリア・グレイ。推理小説ではあるが文学作品としても味わい深かった。師であるバーニイの名誉を守るため、ひたむきに調査を進めるコーデリアの姿が胸を打つ。強い師弟愛を感じる物語。

    作者は捜査の過程を丁寧に綴る。ひとつひとつの情景に愛を込めて。なぜならこの捜査はコーデリアにとって師への弔いであり、彼の名誉を守る行為でもあるからだ。淡く愁傷を帯び、エンタメ性も備えた上品な作品です。

    ちなみに本作の主人公、コーデリア・グレイは『名探偵コナン』灰原哀の名前の由来になっています。

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