- Amazon.co.jp ・本 (335ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150766047
感想・レビュー・書評
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アダム・ダルグリッシュ警視シリーズ第3作。
休暇を叔母の家ですごすために人里離れた岬を訪れたダルグリッシュ警視。ところが、両手首を切断された推理小説家の死体が発見され、否応なく事件にかかわることになる。
登場人物に恋愛小説家がいるのだが、姪との1シーンが身につまされた(88ページ)。ふたりの関係をよくしたいと思っていて、その試みがうまくいきかけた瞬間、彼女が発したひと言によって背を向けられてしまうのだ。台詞と人物の動きのみで表現された短いシーンが脳裏に焼きつく。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
スコットランドヤードの警視を、次々と異なる舞台で活躍させるとは、さすがと言うべきか。
今回は、田舎といっても海辺の文人村。
謎解きらしい謎解きもよかったし、
アクションシーンが盛り込まれているのも目新しかったし(あんまり恰好良くなかったけど)
文人村の住人、叔母さんも知的で、落ち着いていて、「大人」な人で良かった。
残念なのは、警視がプロポーズしないでうだうだしている間に、デボラがアメリカに行ってしまったことかな。 -
両手首を切断された男の死体がボートの中で見つかり、たまたま休暇を利用してその場所を訪れていたダルグリッシュが捜査に当たるというのが大筋。題名はこの両手首を切られた死体を指しており、わざわざその状態に焦点を当てているならば、作品の謎は犯人は誰かに加えて「なぜ死体は両手首を切断されたのか?」という謎が言及されるわけだが、あまりこの理由について目が開くようなロジックが展開されるのではないというのが正直なところ。
本作はこのダルグリッシュシリーズ、いやジェイムズ作品全般において、私にとって1,2を争う印象に残らない作品である(もう1つは『ある殺意』)。もう漠然とした印象しか残っていないのだが、なんだか文章が上滑りしたような感じがし、珍しくすいすい読め、さらにジェイムズ作品の中でもページ数の少ない作品であることもその原因だと云えるだろう。
あとこれは後にセイヤーズのピーター卿シリーズを読んでから気づくのだが、ジェイムズはセイヤーズをリスペクトしており、本書の題名もセイヤーズの『不自然な死』に由来して(あやかって?)いるらしい。そして最後のクライマックスシーンはセイヤーズの某傑作でのシーンをそのまま拝借したとのことで、これは云われてみて気づいたことである。
ちなみにセイヤーズの『不自然な死』は私は5ツ星の満点だが、そのオマージュのような本作の評価は上の通り。古今英国女流ミステリ作家の対決は本家が上だったといえよう(まあ、まだこの頃は駆け出しだったんだけどね)。