- Amazon.co.jp ・本 (380ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150773076
感想・レビュー・書評
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10代に読んだ時はぶっちゃけ「チャンドラーよりテンポいいタフガイ&不二子ちゃん小説」みたいなアホな感想しかなかったが改めて30年ぶりくらい読み終えて戦慄が走る。一晩で読めたこれが1930年の小説か!あれか。現代から「ハードボイルド」て典型から事後的に眺めていたから「型」鑑賞的になる。ハメットが発明してチャンドラーがスタイルを固めたあのアメリカンウェイオブ軽妙会話翻訳調の「ハードボイルド」の「様式美」になんか目眩しされていたかな。これ大きく言えば20年代ロストジェネレーションが抱えた第一次大戦後の 「問題」のパルプフィクション側の回答であり回答の仕方=器の発明である。しかしサム・スペードの非情さを比較して例えば日露戦後の『大菩薩峠』机龍之助のべったりとした仏教的ニヒリズムと違うのなんでだろう。僕の好きな久生十蘭にも似た酷薄さ突き放しはあるが、北米のtoughてものの概念に中にある種のsatireが含まれる感があり生に執着しつつ(十蘭は基本「死んでもいい」)ちょっと狂ってる。ハードボイルドがその後ダンディズムに陥落しなければよかった。たがらあとがきにもあったが、戦後初期に紹介された際の「行動派探偵小説」の呼び名の方が改めて相応しいような気がす。行動は身体張る暴力だけでなく言動も含む。ハッタリやカマかけかましながら嘘ば嘘のままネゴシエートで真実に到達し、解決するが解決はなんかパズル解きのアクメはなく、巻き込まれてただ離脱する日常復帰の徒労感。これって第一次大戦従軍帰還兵の心理に相当マッチしたんではないか。しかしそして今ググっびっくりした訳者小鷹信光『行動派探偵小説史(1961年)』が全文webで公開されてますよ!
https://www.kodakanobumitsu.com/2-初舞台-マンハント/1-行動派探偵小説史/1-1922-1932-悪徳の世界との対決/詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
むむ、面白い!チャンドラーより好み。
今更ながらハードボイルドにはまるかも。
依頼人、同僚とも信用できないことを織り込み済みで行動していく探偵スペード。
強いメンタリティーは、最近悲鳴を上げ愚痴をこぼすサラリーマンに落ちぶれている自分にとっては目指すべき姿のようにも思える。筋の通し方は女性に対してもある意味平等。う~ん、プロフェッショナル。 -
あらゆる探偵小説の教科書、すばらしい!!!
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津村の読み直し世界文学の1冊。ハードボイルド小説である。探偵の下で、どんどん死人が出てくる。最後は依頼者も逮捕される。本物の鷹の行方は分からないということで、次作も読者には期待させる筋書きになっている。警察、検察の話も出てきているので具体的な小説として読者は読めるのであろう。アメリカの探偵小説である。
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私立探偵サム・スペードが主人公のハードボイルド作品。オショーネシーという女からの依頼で、スペードのパートナーであるアーチャーがサーズビーという男を尾行することになったが、アーチャーは殺される。しかも尾行対象のサーズビーも殺される。事件の中心にあるのは、「マルタの鷹」と呼ばれる鳥像。これを巡って命を張った駆け引きがなされる。
スペードが女に流されていながらも、自分と私立探偵の矜持を貫く。その姿と行動(最後の方だが)が気持ちいい。ハードボイルドの古典であるので、ストレートに格好良さが描かれる。訳文も読みやすく、スペードの行動とともに頭に物語が再生される。面白かった。