- Amazon.co.jp ・本 (359ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150775513
作品紹介・あらすじ
夕闇のせまるオックスフォード。なかなか来ないウッドストック行きのバスにしびれを切らして、二人の娘がヒッチハイクを始めた。「明日の朝には笑い話になるわ」と言いながら。-その晩、ウッドストツクの酒場の中庭で、ヒッチハイクをした娘の一人が死体となって発見された。もう一人の娘はどこに消えたのか、なぜ乗名り出ないのか?次々と生じる謎にとりくむテレズ・バレイ警察のモース主任警部の推理が導き出した解答とは…。魅力的な謎、天才肌の探偵、論理のアクロバットが華麗な謎解きの世界を構築する、現代本格ミステリの最高傑作。
感想・レビュー・書評
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本書は、イギリスの作家、コリン・デクスターの「モース警部」シリーズの第一作。このシリーズも、私が好きなシリーズの1つだった。「モース警部」シリーズは、イギリスではTVドラマ化もされており、人気のあるキャラクターであったようだ。
筆者のコリン・デクスターは、1930年生まれ、2017年3月に86歳で亡くなられている。デビュー作である本書「ウッドストック行最終バス」は、本国では1975年に発表されているが、日本での翻訳の発行は、1988年11月であり、本国での発行から10年以上の年月を経ての翻訳となっている。
本シリーズは、本格推理小説としても高く評価されている。例えば。
■2012年の文藝春秋による、海外ミステリーオールタイムベスト100の中に、シリーズの中から「キドリントンから消えた娘」がランクインしている。
■1990年に英国推理作家協会が選出した「史上最高の推理小説100冊」の中に、シリーズから「ジェリコ街の女」がランクインしている。
■ハヤカワの海外ミステリー・ベスト100の中に、シリーズから「ウッドストック行最終バス」「キドリントンから消えた娘」がランクインしている。
モースは、ひらめき型・天才型の警部。理詰めで謎解きをするよりも、ひらめきでストーリーをつくって、そのストーリーに沿って、捜査を進めていくタイプだったと記憶している。他のシリーズにはないタイプの主人公であり、私はそこが好きだった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
モース警部第1作。
ユーモアもあり、人間関係もしっかり描かれ、よくできたミステリー。
最後は胸が痛い。
けれども、モース警部のキャラクターが私はちょっと苦手…ルイスに同情してしまう。
次作で二人とも好きになれたらいいなぁ。 -
英ミステリ作家、コリン・デクスター(1930-2017)による、モース主任警部シリーズの1作目。
モースは、「英国で最も好きな探偵」第1位に選ばれたこともあり、イギリスではシャーロック・ホームズを凌ぐ人気があるとも言われるのだそうである。
本シリーズは長編13作、短編集1冊が刊行され、モースの死によって完結している。
本編もドラマ化されているが、近年、若き日のモースを主人公としたテレビシリーズが制作され、日本でも一部が放送された(『刑事モース〜オックスフォード事件簿〜』(原題は"Endeavour"。モースのファーストネームで、原作の壮年モースはこれを明かしたがらず、ネタの1つになっていた))。原作者もコンサルタントとして制作に参加している。時代背景は異なるが、全体としてのテイストはかなり似ているようである。
さて本作。シリーズの他の作品同様、舞台はオックスフォードである。
2人の若い女性が、ウッドストック行のバスを待つ夕暮れ。なかなか来ないバスにしびれを切らした2人は、ヒッチハイクを始める。その夜、そのうちの1人が死体となって発見される。
2人を乗せた車はどこだ? そしてもう1人の娘はどこへ消えたのか?
モースのアクロバティックな推理が展開される。
メインストーリーの謎は謎としておもしろいのだが、読んでいて思い出すのはクロスワードパズルである。縦のカギ、横のカギが示唆する単語の謎。さまざまなヒントを元に、最終的にはすべてのピースが組み合わされる。暗号やアリバイ、状況証拠。小さな手がかりからいくつもの仮説が立てられ、取捨選択されていく。
著者はクロスワードパズルづくりの名手でもあり、その片鱗があちこちに姿を現す。博識・多読の人でもあったようで、コールリッジやダウスンの詩が散りばめられているのも味わいを増す。
全般に惜しげもなく多くの要素を詰め込み、一度ではすべてを味わいきれないほどである。再読に耐えるとする人が多いのも頷ける。
ミステリとしての味わいに加えて、オックスフォードの美しい街並み、モースの実らぬ恋、不倫や家庭の不和といった人生のままならなさもまた、本作の厚みを増している。
真犯人に至る謎解きの出来にはいささか疑問が残らないでもないが、英国パブの重厚な雰囲気を思わせる、薫り高いミステリである。 -
20世紀中ごろのイギリスのミステリー小説。
あまり時代背景を描くことには力入れておらず、最新の機器が無く、タイプライターや手紙が登場することを除けば、いつの時代でも解釈は可能。
モース警部の想像力は逞しく観察眼は鋭いが、怒鳴るし会話は成り立たないし、「勤務中だから」って部下にはアルコールを与えずにじぶんだけ飲んだり、聞き込みを理由に好きな女性のところへ行ったりと、結構自分勝手で嫌なやつ。
その上、推理は間違ってたり、偶然ヒントを手に入れたり、キャラクターとしてはなかなか興味深い人。
この人あってのミステリーと言える。
まさに、テレビドラマの主役ですね。
(「主任警部モース」「刑事モース(モースの若い時)」が、実際にシリーズ化された) -
モース主任警部シリーズ第一作。ドラマの印象が強く、ルイス警部ともいいコンビ。出会いの場面からして思わず笑ってしまうようないい味を出しています。仕事熱心なのかそうでないのか...事件そのものより、主人公の個性に惹かれて読み続けました。
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クロスワード好きらしい作者の謎解きミステリ。
バスが来ないというのでヒッチハイクをするつもりだったが、ちょうどやってきた赤い車に拾ってもらった。
だが、そのうちのひとりが殺された。
モース警部は聞き込みをして、パズルを解くように事件を構築し積み上げ組み直してみる。
何度か振り出しに戻ってやり直さなくてはならない羽目になるが。
何がどう繋がって犯罪が成立するのか悩みつつではあるが。
そんなこんなでもても面白かった。 -
びみょ。おもしろくないわけではないんだけど、翻訳がよろしくないのか、どうにも読みにくい。ところどころ「たぶんここは笑いどころなんだろうなあ」と思うような部分はあったが、つかみきれなかった。筋書きとしては、レイプされた若い女性の殺人事件をめぐって主任警部モースがいろいろ操作を続けながら真相を究明していく物語なのだが、この主任警部は終盤まであまり冴えない男で、けっこう推理を何度も外したりする。かといって、最後のなぞ解きが予想よりも鮮やかなわけでもなく、ちょっと消化不良気味。
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モース警部シリーズの第1作。
髪が薄くなっていて少し太りかけていて、酒と女性と煙草が好き。クロスワードパズルとワーグナーが好き。周囲をふりまわし、だいぶいけすかない感じだけれども、なんだかんだ愛されキャラ。イギリスではホームズと同じくらい探偵役として人気があるとのこと。
登場人物は少ないけれど、複雑にからみあっていて、それが最後にほぐれていくさまがおもしろかった。 -
あらすじは面白そうと思ったが、期待したような推理小説・警察小説ではなかった。
捜査を担当するモース警部は、部下を小馬鹿にしたり、ヒステリックに当たったりと一癖ある人物。
登場時から余裕な態度だったので、些細な手掛かりから真相を突き止める天才的な頭脳の持ち主なのかと思っていたら・・・本人がそう思っているだけの、ただの面倒くさい人だった。
それなら地道にコツコツ捜査してくれればいいものを、思いつきで行きあたりばったりに調べていくから(しかも自信満々)とにかく効率が悪い。モースの予想はことごとく外れ、そのたびに捜査が行き詰まり、読んでいてストレスが溜まった。
あとがきによるとそこが持ち味のようなので、単に私の好みと合わなかっただけだろうけど。
恋愛エピソードも邪魔でしかなかった。
最後の真相に辿り着いた思考経路を説明しているところで、Aという事実がわかったからBに疑いを持ったと言ったあと、Bを調べていたらAの事実がわかったとも言っていて、釈然としなかった。