ジェリコ街の女 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 早川書房 (1993年3月18日発売)
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本 ・本 (352ページ) / ISBN・EAN: 9784150775551

感想・レビュー・書評

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  • こちらのモース警部シリーズは、
    私の大好きなホームズ先生やコロンボ警部などのシリーズのような、
    素晴らしいトリックに感心したり、
    その完璧と思われるトリックを見破る手腕を楽しむものではなく、

    まず、モース警部の抜群の「想像力」
    (赤毛のアン的、と大森望さんが書いていた)に、
    部下のルイスをはじめ、皆して
    振り回されることを面白がる、と言う作品だ、
    と頭をきりかえて読めるようになった、
    そしてその魅力がどんどんわかってきたので、
    今回、存分に楽しめましたぞ。

    また、この作品は今まで読んだものとくらべて、
    明るい雰囲気で、それもあって面白かったな。

    知的でエレガントで几帳面なモース警部、
    だが、美女とそれにまつわるエトセトラには弱い。

    モース警部はあるパーティで知性的でセクシーな女性と出会う。
    再会を約束した二人、その後別の用事にかこつけ、
    思い切ってその女性を訪ねるが…

    今回は、最初、自分の担当では無い事件に
    首を突っ込むという展開。

    おかげでいつもの部下、ルイス巡査部長は蚊帳の外でふてくされていたけれど、
    ちゃんと、大丈夫、
    「ルイスの人生の高原に突然、秋の日差ざしがいっぱいにふりそそいだ」ものね。

    モース警部も、同僚が先に出世すると上司に言われ、
    解せない気持ちも少々抱えたけれど、あることを約束され、
    ご機嫌になるところがよかった。

    モース警部のある推理では、ルイスも私も口ぽかーんで
    吃驚したけれど…

    モース警部の趣味の一つはクロスワードパズルだけど、
    日本のクロスワードパズルとは格調がどうやら違うみたいだね。
    雑誌の後ろについていて暇つぶし…と言うものではなく、
    非常に知性を要求されるレベルのものが一般的なのかしらん?

  • モース主任警部第五弾。

    パーティで偶然会った若い女性に家に招かれ、
    半年後にふらりと訪れたモース警部。
    もちろんロマンス的な展開にはならず、
    鍵が開いていた部屋の1階には誰もいなかった。
    だが、その夜に女性が首つり死体で発見される。
    女性の部屋を訪れたのを隣の男に目撃されていたモース警部は…。

    といっても今風に、警部が犯人だと疑われたり、
    内部監査をうけたり、警部を陥れる陰謀だったりはしない。
    いつも通り推理が迷走して、
    女性の自殺の理由は自分の息子の子供を妊娠してしまったからだ、
    とルース刑事に主張していた。

    身代わりのトリックは前回も見たような気がするが、
    今回のトリックは見事だった。
    それと、重要な証拠の指紋が、実はモース警部のものだったということも。

    今回はモース警部が女性の家を訪れたのが遅すぎたというほろ苦い最後だったが、
    前作の最後で、モース警部が家を訪れた女性とはどうなったのか?

  • イギリスの作家コリン・デクスターの長篇ミステリ作品『ジェリコ街の女(原題:The Dead of Jericho)』を読みました。
    『ニコラス・クインの静かな世界』に続き、コリン・デクスターの作品です。

    -----story-------------
    モース警部がジェリコ街に住む女アンに出会ったのは、あるパーティの席上だった。
    すっかり意気投合した二人は再会を約すが、数ヶ月後、彼女は自宅で首吊り自殺を遂げた。
    はたして本当に自殺なのか? モースにはどうしても納得がいかなかった。
    やがてアンの家の近所で殺人事件が起こるにおよび、モースの頭脳はめまぐるしく動き始めた。
    前作に続き英国推理作家協会賞シルヴァー・ダガー賞を連続受賞した傑作本格ミステリ
    (解説:モース警部はいかにしてセクシーとなりしか 大津波悦子)
    -----------------------

    1981年(昭和56年)に発表されたモース主任警部シリーズの第5作目の作品です……モース主任警部シリーズを読むのは本作品で7作品目ですね。

    モース主任警部がジェリコ地区に住む女アン・スコットと出会ったのは、あるパーティの席上だった……うす茶色の大きな目、微笑みをたたえた唇、知的な受け答えがモースの心を捉えた、、、

    2人は意気投合し、アンは自宅で個人教授をやっている現在までの身の上話を語った……だが、無常にも事件発生を報じる電話が2人を引き裂いた。

    再会を約してパーティーを抜けたモースには、ふたたび相まみえるときのアンが、冷たい死体となっていることなど思いやるすべもなかった……6ヶ月後、別の用事にかこつけて、モースは思い切ってアンの家を訪ねた、、、

    しかし、いくら呼んでも応答はなかった……その夜、ジェリコ地区に急行するサイレンの音に胸騒ぎを覚えたモースはアンの家に駆け付けた。

    癒えにはすでに市警本部の刑事たちが溢れていた……本部にかかった匿名の電話の話どおり、2階の部屋でアンが首を吊って死んでいるのが発見されたのだ! 状況は明らかに自殺だった、、、

    だが、モースは納得できなかった……本当に自殺なのか? もしそうだとしたら、アンをそこまで追い詰めたものは何かなのか? やがて、アンの家の向かいの家で殺人が起こるにおよんで、モースの疑惑はいよいよ深まっていく。

    一貫して謎解きの醍醐味を追及する気鋭の最新作…… 『死者たちの礼拝』に続いて英国推理作家協会賞受賞!

    冒頭からパーティで美女アンと出会い惹かれていくモース……その後、アンが自殺し、アンの自殺のことが頭から離れないモースは、同僚のベル主任警部が事件担当にも関わらず、違法に合鍵を入手して現場に侵入する等、事件に首を突っ込んでいく、、、

    そうこうするうちに現場の向かい側の邸で独り暮らしの男性ジョージ・ジャクスンが殺害される事件が発生……モースはアンの自殺を契機とした事件の捜査に巻き込まれていく という展開。

    アンが自殺した動機や背景、ジャクスンが殺害された際のアリバイ崩しが中心……モースの推理から、大胆で意外性のある仮説が飛び出して真相は二転三転、、、

    それでも、真相を究明するため、ルイス主任警部の力も借りながら、一歩ずつ真実に近づいて行こうとする相変わらずの展開が愉しめました……他の作品も読んでみたいのですが、なかなか古書店で見つからないんですよねー これで書棚の在庫は読了! 粘り強く出会いを待つしかないですね。

  • oxford bookworms libraryで読んだ。警部の人柄が気に入った。

  • 自信満々に誤った推理を展開する、尊大だがどこか憎めないモース主任警部と、お人好しで翻弄されてばかりな反面、モースの推理をたったひとことで崩してしまう意外な鋭さももつルイス部長刑事。そんなふたりの凸凹コンビぶりが相変らず楽しいシリーズ第5作(前回読んだ『ウッドストック行き最終バス』が第1作とのこと)。

    イギリスの郊外が舞台だけに登場人物も限られ事件の内容も地味とはいえ、そういうことだったのか!!と唸らせる仕掛けはなかなか。

    作者も訳者も『ウッドストック行き〜』と同じなのに、文章のリズムが異なり読みやすかった反面、モースのとぼけた笑いが薄まっていたのはすこし残念。ルイス部長刑事の登場も後半からでやきもきさせられた。

    それにしても、このシリーズに登場する中年男性はなぜこうも揃いに揃ってモテるのか……。

  • 紳士の国、イギリスのお話だというのに、毎回、モース警部は素敵な面を見せつけてくださいます。
    ジェリコ街のアンという女性の話。

    モース警部の推理爆弾、今回も炸裂!

  • 十年ぶりに書庫から顔を出したコリン・ デクスターの「モース警部シリーズ」十数冊。その中から忘れている話を読み始めました。

    いまではオックスフォードまでグーグルのストリートビューであっという間に飛んでいけますが、当時はイギリスの地図を指で追いながら小さなジェリコ街を探していました。隔世の感があります。

    「あたしの住所はおわかりでしょう?」彼女はささやいた。

    彼はうなずいた。「しかし、お名前を知りません」

    「アンよ。アン・スコット」

    彼は微笑みをうかべた、ほとんど幸福そうな笑顔だった。

    「あなたのお名前は?」

    「モースです」警官は言った。(大庭忠男訳)

    翻訳がとてもいい名訳です。

    モース警部シリーズのなかでも1,2をあらそう傑作です。本作でミステリー界の最高勲章シルヴァー・ダガー賞を受賞しています。シルヴァー・ダガー賞2回、ゴールド・ダガー賞は「オックスフォード運河殺人事件」で受賞していますがイギリス人でなければ分かりにくい作品です。

    背後にギリシャ悲劇ソフォクレスの「オイディプス王」が隠れていたり、ラストのどんでん返しで読者にも全てが明瞭になるというミステリーの王道です。

  •  モースの捜査法は、とるに足らない事実から、妄想ともいうべき推理をして、それに沿って捜査を始めると、間違いだったことがわかる、ということを繰り返し、最後に想像できない正解にたどり着くというもの。その妄想推理のことを、僕なんかは「なんて無駄なことをしているのだろう」と思っちゃうんだけど、そうなったらこのシリーズをおもしろがることができないんでしょうね。本作品も同じでした。それでも前作は愉しめたような気がするのですが、本作品は☆☆☆★というところ。

  • 推理小説読みたいなぁ、と思って森博嗣さんのお勧めの中から選びました。主人公の刑事さんが普通に女好きというのが新鮮です。イギリスのギャグはやはりたまにおもろい。

  • あるパーティの席で、モース主任警部はアン・スコットという好みの女性に出会い気投合。しかし、再び出会ったとき、彼女は冷たい死体となっていた。状況は明らかに自殺だが、彼には納得できなかった。
    しかも困ったことに、管轄違いで捜査権は彼には無い。うっかりすると犯人に間違われかねない状況の中、ひそかに事件の周辺を調べる彼の目前で新たな殺人が・・・
    モースというのは、気まぐれで女好きで独身のちょっと変わり者だが有能な警部。ここまでは英国のミステリにはよくある警官像だが、ちょっと違うのは彼が、彼が結構インテリだって事でしょうか。
    モースの好きな音楽はワーグナー、趣味はハイレベルなクロスワードパズル、この作品でもオックスフォード読書協会の常連だったりします。捜査の天才といわれるほどの彼が、今回は時には同僚に追われたりしながら、真実にとたどり着く、そのさまが面白い。
    一方で、事件に関与するのと交換に、同僚のベルが警視に出世するのを、指をくわえて見ざるを得なくなって。デスクワークや付き合いの下手な自分には出世はむかないことは判りながら、それでもうら寂しいモースが結構可愛いですね。
    1980年代ころ、英国本格ものの主流だっただけの事はある重厚さ。読んで損は無い作品だと思います。

    以下、ちょっとネタばれですので、未読の方は読まないでください・・・・謎解きは・・・とり○○○○ものがたり。ある意味、イージーな手だけど、行き着くまでのやり取りの面白さで、それなりの厚みはある・・・・

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