静寂の叫び 下 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 早川書房 (2000年2月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (416ページ) / ISBN・EAN: 9784150795566

感想・レビュー・書評

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  • 読書備忘録590号(上下巻)。
    ★★★★★。
    作者が、リンカーン・ライムシリーズの第一巻「ボーン・コレクター」を世にリリースする前に出版した最高傑作です。
    物語の始まり方が既に神の領域。
    とある日の朝。何の変哲もない聾学校のスクールバス。道で交通事故の場面に遭遇する。けが人を助けるために止まる・・・。
    同じ朝、アーサー・ポターは亡くなった妻との結婚記念日で墓地を訪れていた。尾行者がいることに気づく。だめだ。今日は邪魔しないでくれ。今日は特別な日なんだ・・・。映画の一場面のような想像を掻き立てる描写。
    そして、FBI危機管理チームの犯人交渉担当のスペシャリストのアーサーは尾行者に拉致られ(笑)、交通事故を起こした凶悪脱獄犯が聾学校の生徒8人と先生2人を人質に立て籠もった古い廃屋の食肉加工場の現場に召喚される。
    人質の命は二の次。最優先させることは犯人の無力化。その為に、犯人に同調し信頼関係を築き、徐々に犯人を追い込み事件解決に導く手法。アメリカです!
    事件が起きたカンザス州の州警察と州知事は、自分たちの庭で起きた事件をFBIが仕切ることが面白くない。事件を解決してワシントンへの足掛かりにしたい知事や、過去の失態を名誉挽回したい州警察警部の思惑。
    そして、人質の中にいる若き教育実習生メラニー。遠いガラス越しに視線が交錯したアーサーとメラニーは見えない絆で結ばれる。
    人質は無事解放されるのか?犯人立て籠もりの真の目的は?要求は?
    わずか1日の時間の中で行わる濃厚な駆け引きに引きずり込まれます。
    そしてディーヴァーお約束のどんでん返し!
    サイコーでした。しかも想像を超えたエンディング。
    加えて、聾者に対する描写がすごい。先天性の聾者と後天的な聾者の違い。
    お勧めです。
    ひとつ残念なのは、扉絵は上下巻を左から並べるとタイトルと絵がひとつになる。だけど、本棚は読んだ順番から右から左なので逆になる。残念。

    • ほくほくあーちゃんさん
      14巻( ゚ロ゚)!!
      はぁー!!満足度ハンパないですね!!
      でも、読んでみるぞー!!
      14巻( ゚ロ゚)!!
      はぁー!!満足度ハンパないですね!!
      でも、読んでみるぞー!!
      2021/06/19
    • shintak5555さん
      ボーン・コレクター読んでみて、作風が合わなければサヨナラされたら良いですもんね。笑
      気が楽です!
      ボーン・コレクター読んでみて、作風が合わなければサヨナラされたら良いですもんね。笑
      気が楽です!
      2021/06/19
    • ほくほくあーちゃんさん
      ボーン・コレクター読んだことないので、まずはそれから読んでみます!!
      うわぁー、楽しみが増えましたー!!
      ありがとうございます(*´艸`*)
      ボーン・コレクター読んだことないので、まずはそれから読んでみます!!
      うわぁー、楽しみが増えましたー!!
      ありがとうございます(*´艸`*)
      2021/06/19
  • このミス海外編1998年5位。ジェフリー・ディーヴァーの初期作品。日本ではこの作品で注目を浴びたのち2年後のボーン・コレクターで大ブレイクしたようです。
    本書は人質をとった立てこもり事件が題材。立てこもり現場での犯人と人質との対峙、交渉人と犯人との間の頭脳戦。息苦しいほどの緊迫感をともなって徐々に進んでいく。警察内部の確執やそれに紛れた意外な真相。さまざまな意外性がおり込まれたストーリ―展開。恋ごころ、共感、高揚、失望、様々な心理状態が緻密に表現されて感情移入してします。そしてどたんばでのあっと驚く展開。下巻の後半からは一気読み必至。本当に久しぶりに小説から離れられなくなりました。傑作です。ただ、ちょっと長すぎて前半はなかなか進まなかったのと、リアリティありすぎて読む進めるのがちょっと苦しかった面もありました。あと、メアリーの無双っぷりのそれはないやろ感でちょっとOUTを思い出した。

  • 非常に面白かった。J・ディーヴァーの初期の作品で、1996年に出版された作品だが今読んでも全く時代の古さを感じないおもしろさ。緊迫した会話と心理描写がとにかくいい。どんでん返しについてはある程度は予想できた。登場人物一覧リストに記載の人物は全て作品に登場すると考えると確かに納得いくオチだ。作家の魅力と作風が非常に現れている今作、意外性もあるどんでん返し、とにかく面白かった。ディーヴァの特徴が詰まった作品だ。

  • 20年以上も前の作品ですが、今読んでも違和感ありません。

    まだまだ有名になる前の作品ですが、この頃から既に、どんでん返しが仕込まれていたんですね。いやぁ、「解決」シーンの時点で、めっちゃページが余っていたので、おかしいとは思ったんですよね。

  • ディーヴァーの名を知らしめた出世作で、大胆且つ緻密な構成と簡潔且つ流れるような語り口が見事に結実した傑作である。冒頭から結末まで、常に読み手の予想を超える展開で、ページを捲る手を止めさせない。
    本作は、聾学校の生徒と教師を人質に取り廃棄された食肉加工場に立てこもった脱獄犯3人と、FBI/警察合同の対策チームによる一触即発の攻防を描き、登場人物一人一人の息遣いまで感じさせる濃密な世界を創り出している。二重三重に仕掛けを施し、単調な犯罪小説に終わらない趣向も凝らしてエンターテインメント性を重視。加えて全編シリアスなムードに徹し緊張感が途切れることがない。

    狡猾で残虐な犯罪者と、冷徹で経験豊かなネゴシエイターとの心理戦が最大の読みどころとなるが、特に主人公格のFBI交渉人ポターの造形が深く、一人でも多くの人質解放を為すために過酷な決断を迫られる男の苦悩を余すところなく活写している。限られた時間と凄まじい重圧の中で繰り広げられる駆け引きは、攻勢/防御の合間に持久戦を挟みつつ、柔な楽観を瞬時に打ち砕く劇的なプロセスを経て、限界まで加速していく。
    人質を障害を持つ子どもと女性に限定した設定には、ディーヴァーの〝悪魔的〟な着想/算段が読み取れる。つまり、寸断される意思疎通や暴力への微弱なる対抗手段など、須く残酷な情況へと陥らざるを得ず、活路を開く起死回生策が如何に困難極まりないかを、よりクローズアップできるからだ。

    臨場感溢れるリアルタイムでの追体験と、前へ前へと煽られていく疾走感は、読み手に対して少なからずのストレスさえ強いるだろう。
    持論だが、サスペンスの極意とは、謎をはらんだ危機的情況へと一気に追い立てる序盤、更に追い詰められて精神的緊張/迷走へと向かう中盤、ようやくの転回/逆転を経て窮地を脱し最終的な開放或いは破滅へと至る終盤のカタルシス、以上の三段階にある。当然、小説家の筆致如何で出来不出来は決まるのだが、本作に於けるディーヴァーの冴え渡る技巧は、サスペンス/スリラーの手本とも成り得るものであり、「交渉人」を主題とした数多い作品の中でも白眉の出来である。

  • 『ボーン・コレクター』に始まるリンカーン・ライム・シリーズと、最新作の『スリーピング・ドール』を読み、ディーヴァーは今一番のお気に入り作家となった。
    そこで、過去の作品も読みたくなり手に取った本書。

    期待を裏切らない、第一級のサスペンス小説だった。
    もちろん、どんでん返しも待っている。ただし、最近のディーヴァー作品ほどしつこくは繰り返さない。今のディーヴァーだったら、もう2、3回ひっくり返すのではないかと思うくらいのところで抑えられている。そういう点からみると、この作品は彼のプロトタイプ、あるいは習作のようにも感じられる。とは言っても、その面白さはすでに一線級であったことは間違いない。

    ストーリーはこうだ。
    聾学校の生徒と教員を乗せたスクールバスが、カンザス州を走行中に3人の脱獄囚に乗っ取られた。彼らは食肉加工場に、生徒たちを監禁してたてこもる。FBI危機管理チームのネゴシエーター・ポターによる脱獄犯ハンディとの息詰まる人質解放交渉。手に汗握る展開。
    本書を読んで、映画の「交渉人」を思い出した。サミュエル・L.ジャクソンとケビン・スペーシーが出演した作品だ。交渉の際にみせる人間心理にとても興味をひかれた。本書もその映画に勝るとも劣らずの出来。登場人物たちの心理描写が秀逸だった。注目したいところだ。
    なかでも、「ストックホルム症候群」は興味深かった。長期にわたる監禁状態の中で,人質が警察に対する恐怖と敵意、犯人に対する好意的感情を抱く矛盾現象だ。たとえ、大量殺人を犯し、そのうえ自分たちを監禁し危害を加えかねない凶悪犯であっても、人質は親近感を抱くことがあるそうだ。
    本書は、犯人が嫌悪感を抱く最悪の人間だったので現象の定義とは異なる展開。本書の場合は、FBI交渉人が犯人に親しみを感じてしまったり、人質のひとりがFBI交渉人を尊敬する歴史上の人物に重ね合わせたりする。このあたりの心理描写が見事で、実に繊細に語られているところが堪えられない面白さだった。小説世界にトランスしている読者は、倫理観も超越していることが多くはないだろうか。緻密な犯行計画を着々と進行させている犯人に対し、完全犯罪を成し遂げてほしい気持ちが心の片隅に芽生えたりすることがないだろうか。どんな極悪人であっても、うまく逃げてくれと願ったりすることはないだろうか。犯人が強敵であってこそ面白くなるのだから、そう思うことがあってもおかしくない。でも、それとは違うところで犯人を応援してしまうこともある。読者の感情をそんな風に捉えられたなら、作家にとって思う壺。
    読者を小説世界に監禁し、ストックホルム症候群に導く。そんなことができる作家が最高の作家だと思う。ジェフリー・ディーヴァーは間違いなくそんな作家のひとりである。

  • お話は、刑務所から脱獄した3人組が聾学校のスクールバスをジャックして、教師と子供を人質とし廃墟となっている食肉加工場に立てこもります。

    その場に緊急招集されたのFBI危機管理チームのアーサー・ポター。
    このオッサンが中年太りで格好良くないし、アクションも苦手と言うキャラ。
    ですが人質解放交渉は凄腕。

    しかし、犯人側も一筋縄ではいかないつわもの。

    危機管理チームには各分野のプロフェッショナルが集まり、犯人とのギリギリの交渉を続ける。

    人質となった聾学校の教師メラニーも初めは恐れおののくだけであったが、やがて・・・・

    朝8時半に始まり翌日の午前3時までの20時間弱のスピーディーな展開。
    その中で色んな人々が色々な思いで行動する。その行動が裏目に出たり・・・
    ここでもマスコミは最低の人種として描かれている。(アメリカの小説や映画ではこういう扱いが多いな)
    ストーリー終盤の大どんでん返しは読めてしまったし、エンディングはあまり好きではないが、小説としては面白いと思う。

    人質解放の交渉で主人公が
    人質を無事に解放するのが最終目的ではなく、生死を問わず犯人を確保する事が第一。
    そのためには多少の犠牲(人質の死)は容認しなくてはならない。
    犠牲を最小限にするために一人でも多くの人質を解放させる交渉を行う。
    と言う意味の発言をする。

    もちろん事件解決のために犠牲を厭わないと言う意味ではなく
    凶悪な犯人を野に放つとその後もっと被害の大きな犯罪を起こす可能性が高いから、との事。

    う~ん、本当の現場はそうなんだろな・・・

  • メラニーの家族とかポターの対応と愛情とか違和感がある部分が多く(なんで写真で見ただけのメラニーをそんなに気にかけるのか、親との確執はなんだったのか、もう1人の教師の無気力さが話に全く絡んでこない)、全てが明かされるどんでん返し!とまではいかず物足りない感じはあったけど、すっきりした終わり方でした。結末を楽しみにというよりは、人間味あるポターの交渉と人質の緊迫感のやりとりを読むという感じ。

  • 面白かった。そんなこと あるか?と思うことも含めて。

  • ジェフリー・ディーヴァーが「化けた」と評される作品
    この後「ボーンコレクター」に続いていくのですが、こちら脱走犯と交渉人の「籠城戦」がメイン
    最後の最後まで読ませるいつものツイスト
    脇役の大活躍とか、悪役の異様さがあり
    面白かった。

  • 最後、凶暴にっていう心理がいまいちだが、及第点ではあるか。

  • 本作の後顕著になるディーヴァ―節の原型が見られます。
    それにしても立てこもり犯との交渉のサスペンスには圧倒されます。
    主人公を補助する脇役たちがいい味を出すのもその後のディーヴァ―の特徴。

    上巻で疑問に思った事柄を最後にぴたっと押さえたのには感心しました。

  • 怖かったぁ~
    犯人とネゴシエーターの間の言葉だけでの対峙ってこちらからはかなり怖いですね。
    あのハンディがすごく怖かったですね。
    頭はいいけど、性格怖い。

    交渉のやり方の大変さ、なるほどなるほど、凄いなぁと思いながら読み進みました。



    あの年長で健常者の教員より、小さい聾学校の生徒たちの方がどれだけしっかりしていたか。
    ハラハラしましたけど。

    犯人たちが投降してきてやれやれ・・( ゜_ノ゜)...ン?
    まだ残りページかなりあるし、やけにあっさりだなと思ったら、やっぱりやられましたね。
    全く想定外でした。

    メラニーの勇敢だけど、危なっかしい行動、なによりラスト悲しかったのは、バッドの死でした。
    「あの・・すみません。ぼく、撃たれました」
    あぁ!!
    もっと早く気づいていればあんな結果にならずにすんだのに・・

    今までと違う緊張感と恐怖に満ち溢れた作品でした。

  • さすがディーヴァー!本編がクライマックスに近づいたと思いきや、まだページがかなりある…得意のどんでん返しが、待ってましたと言わんばかりに伏線を拾う。ヒロインのメラニーと、敵役のハンディが最高のキャラクター。

  • 交渉人の話です。
    やっぱ、すごいわ、この人。

    *あらすじ*
    聾学校の生徒と教員を乗せたスクールバスが、3人の脱獄囚に乗っ取られた。
    彼らは、放置されたままの食肉加工場に生徒たちを監禁してたてこもる。
    FBI危機管理チームの人質解放交渉担当者ポターは、
    万全の体制をしいて交渉にあたるが…。
    ******

    綿密な下調べがされているのがよーくわかります。
    そして、最後に来るジェットコースター的な感覚がたまりません。
    ドキドキしたい方はぜひ!

  • 満足

  • 上から、一気読み。
    リンカーンシリーズ以降しか知らなかったけれど、ディーバのミステリーはどうしてもこんなに読者を驚かしてくれるのでしょうか。

  • 〈下巻〉に入り物語はますます加速。ジャーナリストの暴走あり、州警察の独断ありと手に汗握る展開の連続で読者を飽きさせない。
    やや強引さが目立ち、予想もついたものの、終盤のドンデン返しもさすがの巧みさ。この手法が後のリンカーン・ライム・シリーズに見られるような過剰なまでのツイストっぷりに繋がるのかと思うと感慨深い。

  • ジェフリー・ディーバーの出世作・・・らしいです。『ボーン・コレクター』などの一連のヒット作前の作品。

    最初手に取ったときは、そんな予備知識はなく、正直それほど気乗りせずに読み始めましたが、あっという間に引き込まれていきました。

    人質事件の交渉に関する詳細な描写もさることながら、人質と公証人、人質と犯人の間に生まれる人間関係も面白かったです。

    そして、ディーバーらしい、どんでんがえしに次ぐどんでんがえしのスリリングな展開! 下巻は特に息もつかず読み通し、終わった後は呆然・・・でした。

    個人的には、ある女性登場人物の事件を通しての変貌が興味深かったです。

  • 上巻に記載

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著者プロフィール

1950年、シカゴ生まれ。ミズーリ大学でジャーナリズムを専攻。雑誌記者、弁護士を経て40歳でフルタイムの小説家となる。科学捜査の天才リンカーン・ライムのシリーズ(『ボーン・コレクター』他)や“人間嘘発見器”キャサリン・ダンスのシリーズ(『スリーピング・ドール』他)は全世界でベストセラーになっている。ノンシリーズ長編小説、短編小説など人気作品も多数刊行
『ブラック・スクリーム 下 文春文庫』より

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