- Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151101014
感想・レビュー・書評
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とても素敵な小説でしたが、エンターテイメント的な面白さとは違う枠にある小説だと思います。正直非常に読みにくいので万人にオススメするのは難しい気がしますが、それでも人を選んでオススメしたい、そんな風に思いました。
この本は最初から最後まで主人公チャーリイ・ゴードンが書いた記録を読むような形式で進行していきます。
はじめは知的障害があり文章を書くのすらままならない時期の記録、その次はとある手術後に周囲を圧倒する天才となった時期の記録、最後は手術の効果を失い再度知的障害と似た水準までIQが下がった時期の記録、となっており、1人の同じ人間が書いたとは到底思えない記録たちを読むこととなります。それぞれの時期の間もグラデーションで読むことができ、これを文章だけで表現できていることに少し恐怖すら感じました。
読み終わるとなんだか悲しい虚しい気持ちを覚えつつも、どこかこの終わり方で良かったとも思う、不思議な気持ちになります。
そして何より1番の驚きはこの本が翻訳本であることです。あとがきを読むとその背景が少し見えますが、並大抵のパワーではこの日本語版はできないのではないかなと思います。
日本語で読めていることに感謝です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
初めて読んだのは中学生の頃だったと思う。久しぶりに再読。改めて胸に訴えられる。
精神遅滞の32歳青年チャーリイ・ゴードンが、脳手術を受け、急速に天才へと変貌するお話。
難解な迷路を楽々クリアする天才ねずみアルジャーノンは彼に施されたのと同じ手術を受けており、彼の今後を予期させる運命共同体だ。
チャーリイはその障害ゆえにそれまで無能と罵られ、理不尽な扱いを受けてきた。それでも他人を疑うことを知らず、彼を嘲笑う同僚たちさえも憎まない無垢で優しいチャーリイ。
施術前60台だった彼のIQは180を超え、数十カ国語を操る天才となるのだが…
頭が良くなるにつれ、怒りや疑うことを知るチャーリイ。雲の上の存在のように感じていた教授たちですら、もう彼に敵わない。チャーリイは次第に寛容さを失い、尊大になっていく…
チャーリイの障害を受け止められず激しく拒絶する母親ローズや、障害を持つ兄を嫌う妹ノーマ。彼を嘲笑うパン屋のギンピイやジョウ・カープ。論文で名を上げることに躍起になるニーマー教授。
彼らの言動には堪え難いものがあるが、私の中にも彼らと同じ部分がないとは言えない。古典的フェニルケトン尿症という病気が実在することも初めて知った。
知能が高い人には憧れるが、IQが高い=素晴らしい人間という訳ではない。自分よりIQが低い人を見下し、人間として見ないニーマー教授が、天才になったチャーリイに屈辱を感じるシーン。天才になったのに幸せになれないチャーリイとアルジャーノン。
丈夫な身体と優しい心があればいいなんて綺麗事だと思う。高い身体能力、見た目の美しさ、頭の良さ、才能。上を見ればきりがない。でも、そんなものがなくたって人間は人間だし、その全てを手にしても他者を思いやれないのならきっと愛されはしない。
読み終えて改めてタイトルの美しさに気づく。 -
15年前に購入しましたが、読む気にならず放置してました。
読みました。
名作すぎました。
the小説でした。-
2024/08/25
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2024/08/25
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子供の頃から知っていた本ですが、読み進める勇気がなく、40歳にして遂に読了。
最初から最後まで、ずっと胸を締め付けられるような感覚で、しかし一気に読み進められました。
感想は…どうも言い表せないこの感情はなんなのでしょうか。
最後は気づかない内に涙が流れていました。 -
悲しみを希望で割ったカクテルのような小説。
なんて残酷な!
でもね、チャーリイ。良い友達をたくさん作るんだろう。また前を向いて歩いて行くんだろう。
これ以上、言葉では言い表すことができないよ。これは。
「アルジャーノンに花束を」
そんな名前のカクテルを飲んだ気がした。
少しの間、私は酔っていた気がする。
以下、ネタバレ有り。(備忘録)
チャーリイの経過報告を通じて物語を読んでゆく。
知的障がい者であるチャーリイは、とある実験における手術によって、急速に知能を得ることになった。彼は自分の進化に気づき、喜びの中に、これまで自分が置かれていた世界の暗さを見た。もう誰も彼を笑わない。高度な知能によって人が一生涯掛けて得る知識を超えるものをも手にしていた。それと同じくして周囲がチャーリイを恐れた。誰もがチャーリイを天才だと認めた。同時に実験材料のように見られていると感じた。沢山の思惑があったに違いない。
実験には欠陥があった。科学は何を得たか。チャーリイは何を残したか。急速に後退を始める彼の知能に彼は狼狽し、神に祈った。
読了。 -
自分自身を見失いそうになった時に読みたい作品。
ずっと利口になりたかったチャーリー・ゴードンが手術でその夢を叶えることが出来る。
でも、それによって周りの人がいかに無知であるかを知り、自分が周りからどのように見られていたかを知ってしまう。
彼は利口になることで知らぬまま生きていた方がきっと幸せであったであろう事を知ってしまいだんだんと変わっていく...
最後の経過報告は本当に辛くなった。
彼がどんどん変わっていく様が文字から感じ取れたし、作品全体としてもひらがなから感じが増え、言葉はしだいに難しくなりと文章から彼の変化を感じ取れる作品であったと思う。
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チャーリーの孤独、それは宇宙空間から地球を眺めるときに味わうようなものかもしれない。そう、宇宙空間に漂うなんてことは、だれも経験したことがない。チャーリーがひとりぼっちだということは、だれにも理解されないんだ。
幼児の知能しかないチャーリーが、実験的手術で急激に高知能を得てから、急降下するように元に戻る様子、その絶望、恐怖、自暴自棄。その描写は凄まじく痛々しいほど伝わってくる。自分を捨てた母に会いにいくところは、もうこれ以上ないくらい切なかった。チャーリーが、自分の頭を良くしたいと人一倍願ったのは、母に愛されたいという願いからだったのだろう。チャーリーが求めていたのは知能ではなく、愛とか人間としての尊厳とか、そんなシンプルなものだったのに。
脳と心は、メビウスの輪のようにねじれてつながる宇宙空間みたいで、
いかなる人間もコントロールできずそこに漂うしかないのだなぁ。
日々大切に生きよう。
私もアルジャーノンを忘れないようにしよう。
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幼子ほどの知能しかない32才のチャーリイ。手術を経てチャーリイのIQは急激に上昇するが、同時に周りの反応も大きな変化を見せ、辛い現実が視界に入ってくる。チャーリイ自身が日々の出来事をつづる“経過報告書”でストーリーは進行する。
最後の一行がこの本で伝えたかった全て、の意図が最後まで読んで分かり、納得した。
虚栄や嘘で塗り固めず、素直に物事を捉え、純粋な心を持つことが人間の豊かさであること。IQの高さと人間性の豊かさ、IQの高さと幸福度の高さは全く別の次元であるということ。
そしてどうしても翻訳者に触れたい。
高まるIQに比例してその言語力も上がり、経過報告書はみるみるレベルの高いものへとなっていく。その変化の過程を見事に表現した翻訳者・小尾芙佐さんには頭が下がるばかり。チャーリイの知能レベルを文章で表したこの作品を日本語で表現することは、相当骨が折れる作業だったろうと思う。翻訳小説は普段は苦手ですが、苦労なくその世界に没頭できたのは翻訳者の手腕に助けられた部分も大きい。
幸か不幸かを他人の尺度で測っていないか。自分の現状を素直に受け入れて、特に幸せな部分に満足して日々に向かっていこうと思えた。
切なさは残るけれど、大切なことに気付かせてくれる作品。 -
32歳の知的障害者チャーリーが最先端の治療を受けて天才になっていく話。
以前のチャーリーは記憶力が悪く、文章を書くことも苦手であったが、治療後数週間で様々な学問や言語などを瞬時に理解できる知能を持つようになる。
しかし急速な知能の上昇がチャーリーの精神面に影響を与えてしまい、彼は人を疑い批判するようになってしまう。
・チャーリーはどうすれば救われるのか
・知的障害者にとっての幸福とは何か
・知的障害者はどのようにして支えていけば良いか
・知的障害者を支える人達の心情
これらのことについて考えさせられた。