アルジャーノンに花束を (ダニエル・キイス文庫 1)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (485ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151101014

感想・レビュー・書評

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  • 知的障害のチャーリーは最新の治療により、高度な知能を得ることができたが、そこでなにを得たのか。そしてその治療に副作用はないのか。
    古典的SFの名作だが、ジャンルの枠を超えた文学作品になっている。

  • 学生の時に読もうとしたけど冒頭のひらがな文にうんざりして途中でやめてしまった本。
    25年ほど経った今改めて読んでみました。
    これは、単に小説と言ってよいのか分からなくなるほど憤るような締め付けられるような思いで読了。

    人生において人に必要なものは一体何なのか。

    チャーリーが高すぎる知能と引き換えに得たあれほどの苦しい痛みは何だったの…と思う。
    その反面、最後にまた白痴になった彼はこの実験に心から感謝しており、そして以前よりもっとピュアな心になっていることに動揺。

    上手いレビューが書けないけれど、ストーリーを思い起こすだけで心が粟立ち涙が滲む…

    私もアルジャーノンに花束を捧げたい。

  • ただ、みんなと仲良くなりたい一心で、賢くなろうとしたチャーリー。だけど賢くなった彼が手にしたものは、周りからの妬み、嫉妬、そして孤独、、、上がり続けたエレベーターは、てっぺんまで到達すると、今度は同じスピードで降下し始める。自分の手にしたものがどんどん指の間から砂のようにこぼれ落ちるのをどうすることもできずに眺めていた彼の恐怖心は計り知れない。でも、知能が元のレベルに戻った時、彼は再び心優しいチャーリーに戻っていた。まさか、ニーマー教授のことを心配するなんて。もう、涙が止まらなかった。
    自分自身、差別したくないという思いはあるけれど、無意識のうちに、誰かを卑下し、そんな自分に気づいたときにはっとする。知識の探求は続けていきたいが、この世の全てのものに対する愛情を、持ち続けていられるように努力しよう。

  • 何年かにいっぺん読み返してみる小説がいくつかあるけれど、この小説もそのうちの一冊。
    今回のきっかけは、来月ドラマが始まるから先に読んでおこうっていうことでした。

    外国文学の翻訳小説って読みにくくて苦手意識があった私の、その意識を一気に変えてくれた小説。
    原作もだけど、これはとにかく翻訳が秀逸。
    知的障害を抱えた主人公・チャーリィが変化していく様子が、文章だけでこんな風にすばらしく表せるのか、と。
    ひらがなと漢字、そして句読点、それらの効果がこんなに発揮されている小説を私は他に知らない。

    知識を得ること、学習すること、賢くなろうとすること。そういった欲はとても大事なものだし、生きていれば切り離せないものだと思う。
    だけど賢くなったからといって幸せであるとは限らない。
    「知らないほうが幸せなこともある」とはよく言ったもので、障害を持たず暮らしていても、そんな風に感じることは多々ある。
    人間は知識の木の実をかじった瞬間目が開けてしまう。
    人の悪意や醜い部分は、知らないほうが幸せなもののひとつだ。
    “普通”というのが実はいちばん難しくて、賢さも、たとえば裕福さなんかも、それを過剰に持ってしまうと往々にして孤独になってしまう。
    それはおそらく、持ちすぎると他人に対して疑心暗鬼になってしまうせいじゃないかと思う。

    絶対的な優しさというのは、何も知らず何も疑わずに済むからこそ持てるもの。
    賢くなくても、そこで得られる幸せや温かさがあるということ。
    この小説は多くの人が読んでいるだろうし、人生のうちに一度は読んでおいたほうがいい本に挙げる人も多いと思う。

    最後の一行のためにこの小説はあると言っても過言ではない。
    チャーリィの変化とともに周りの人間が変わっていっても、アルジャーノンだけはずっと彼の友人だった。

  • 素晴らしい本だった。もっと早く読んでおけば良かったと後悔した。この作品の中には悲しくて、それでいて優しい警句が沢山含まれていた。そして短期間に猛烈な知性の盛衰を経験し、社会の様々な側面を、様々な立場から、様々な心情で眺めるチャーリーを通して、私達は普遍的な幸福と、愛と、人生について考えさせられる。
    知的障害から手術によって卓越した知能を持つようになった主人公を通して、世界を、知性を対象化する。と言う大筋は言葉にすれば単純なようにも思えるが、それをこれだけ鮮やかに、生々しく描いてしまうダニエル・キイスの腕には本当に驚かされた。

    この作品を通して様々な事を考えさせられる。人間の哀れな尊大さ。滑稽さ。親子の愛のあり方。障碍者に関する問題。特に、知的障碍者に関する問題と、おそらく今後はアルツハイマーを通して我々の多くが直面する人間性の問題...
    しかし最大のテーマは、知性と愛についての話であったと思う。
    ぼくの教養はぼくと、愛する人達-ぼくの両親ーとの間に楔を打ち込む。
    とはダニエル・キイス本人の言葉であるが、そのことについて本当に生々しく描き出していた。知性とは何なのか。時として知性は愛を排斥する。それはどういうことなのか。チャーリー・ゴードンの数奇な運命を通して、その難題を叩きつけられる。
    チャーリーは知性の増減に伴い、様々な立場を行ったり来たりすることになる。それで読者は、常にこちら側にも、あちら側にも、そちら側にも属させられる。するとどこかで、必ず『自分』を対象化して見る機会を与えられる。読者は誰もが、自分がチャーリーであり、ジョウであり、ニーマーであり、バートであり、アリスであり、フェイであり、ローザであり、ノーマであることを発見する。そして立ち止まって考えさせられる。いかに生きるべきなのか。
    この本は、弱い者には勇気を、強い者には優しさを与えるような本だと思った。最後にウォレンへ行く決心をしたチャーリーの切実な言葉は強烈だった。様々な事を経験し、沢山の苦悩を抱え、しなくても良い苦労をして、最終的にまた難儀な存在へと叩き落されてしまったはずなのに、そして前よりも尚悪い運命に囚われたはずなのに、彼の言葉のなんと温かいことか。
    我々は誰もがチャーリーであると同時に、誰もがチャーリーであろうとしなければならない。

    一人でも多くの人間に読んで欲しい作品。

  • 利口になることを心から望み、脳に手術をすることでそれを手に入れた主人公の苦悩を描く名作。
    急激な変化を受け入れることができなかったり、自分の考えに凝り固まっていたり、相互に依存しあったり、弱い者をけなすことで優越感を感じたり、純粋な愛など人間について非常に的確に表現されています。

  • 今から50年も昔に書かれたものとは思えない。
    著者の先見性には驚きを隠せません。
    著者自身「どうして書けたかわからない」とおっしゃっていたようですが。この作品の意義は、はかり知れないと思う。

    内容の詳細はあえて書きませんが。
    精神遅滞の少年が手術によって知能を高くしてもらい、天才に変貌する。しかし超知能を手に入れた青年の愛と憎しみ、喜びと孤独が、人間の心の真実を描き出しています。

    私は特別な号泣はしなかった。ただ、混乱して複雑な気持ちになった。これは読んだ人にしか味わえない心の震えだと感じた。
    最初は読み難いが、辛抱強く最後まで読んで欲しい。

    私的な学びとして、「知能」という数値で見えるものの扱いには十分に気をつけないといけないと改めて思った。

    幼少期の体験、本作品では特に母親との関係の根深さについて、印象深い。…私は考えてしまった。作品内容とは全く関係ないのだけれど。
    この本を読んで、脳裏をよぎったことは、

    ”被虐待児”の深刻さ。

    チャーリー' ゴードンと窓から見ているチャーリー。
    解離している1人の人間、チャーリー。

    きっと、被虐待児に解離性障害や境界性パーソナリティ障害が多くなってしまうのは、そういうことかも。
    精神遅滞でなくても、知能を高くする手術を受けなくても、SF小説の中でなくとも、”現実”に生じているということ。

    だからそのような意味でも著者の先見性に敬意と尊敬を払わずにはいられない。

    人間の実存、しあわせとは何か。
    研究とはなにか。
    本当に多くの課題が詰まった1冊。
    大切な人に捧げたい1冊。

  • みんなを笑顔にしたい一心で受けた手術により天才に変貌していくが、喜びも束の間、知識を得る代償として愛情を求める心を失っていってしまう。

    そんなことなら、劣るところはありながらも愛されていた以前のチャーリィのほうが良かったのではないか。急速な変化に心が追いつかず、苛立ちが募り悩む毎日。もがき苦しみながらも光明を見出そうとする。

    そんなチャーリィの日々を見せられることでひたすら胸が締め付けられました。

    そしてラスト。感情ぐちゃぐちゃです。結末が辛すぎて、涙が止まりませんでした。

    古典SFは正直合わない作品が多くて避けがちでしたが、本作は文句なしの名作です。

    SF好きの方もそうでない方も、必読の一冊だと思いますので、未読の方は機会があればぜひ読んでいただきたいですね。

  • 主人公は知能を与えられる事によって知識を習得できる喜びを得る一方で、それまで見えなかった過去や真実が見え、人間の醜い部分までもがわかるようになり結果苦しむこととなる。
    以前の自分が人として扱われていなかった事や、感情の発達がIQの上昇に追いつかず苦しむ姿は胸が痛くなる。更に失う恐怖を味わう過程は恐ろしい。認知症と診断されたらこのような心情となるのではと勝手に想像するが、おそらくこちらの方が心身に現れる症状は壮絶だろう。そんな中で障害センターの先生であるアリスの存在や向かいの住人フェイとの出会い、妹との再会は救い。
    最後に心理学部長への赦しととれる言葉や、アルジャーノンにお花を備えてやってくださいと伝える言葉は、全てを超えてある意味純粋な元の姿に戻った事を思わせ、なんとも言えない感情がこみ上げ、目頭が熱くなった。
    一人の人間の人生が科学に翻弄され、科学の進歩であるはずが人間の奢りとなってしまうリスクについて考えさせられる。
    人間にとって何が幸せなのかについて読みながら終始思わざるを得ない、心に刺さる作品だと思った。

  • こんな技術が可能になる日がいつかは来そうだなと思いながら読んだ。
    踏み込んではいけない領域なのか、人間の進化として受けとめるのか。。。生きているうちに見届けたい。

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