ビリー・ミリガンと23の棺 上 (ダニエル・キイス文庫 6)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151101069

感想・レビュー・書評

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  • 裁判の後、マスコミの扇動と政治的な利用のため、「地獄」と言われるライマ病院に送られた後のビリー・ミリガンの戦いの記録。

    そこにいる精神病患者達のおとなしさとは対照的に、医師とスタッフの悪魔的な所業の数々に戦慄する。ビリーはダニエル・キイスに本を出版させる予定だったので、スタッフ達は犯罪行為が暴露されるのを恐れて、薬と電気ショックで口封じしようとする。

    幼い頃の継父による虐待と同様、地獄を生き抜くために、再び「教師」は人格を分裂させ、各人の特技を使った連携で事態を乗り越えようとする。環境に対応するために、人間はここまで出来るのかと前作以上に驚愕させられた。

    ビリーの場合、24人各人の能力は、統合された1人の能力を上回るということも興味深い。ライマの中で「教師」はあえて、反抗能力がなくなったと油断させるために「マーク」を使い、計画に「アーサー」、相手を操るのに「アレン」、危険な状況で「レイゲン」と、各専門家に委ねて、自分は意識の奥から見守ることにした。

    最終的にビリーは社会への信頼を失って自殺を決意するところまで追い込まれるのだが、極限まで死に近づいた時、全ての人格が死を迎えて意図せずビリーを一人の人間に統合することになった。これがきっかけで、ビリーの反撃はまた始まり遂に自由を勝ち取るまでになる。映画のようなエピソードの数々に目を奪われるが、死が唯一の自由と確信するまでに至ったビリーの境遇にはやはり同情させられた。

  • 「24 人のビリー・ミリガン」の続編。州立ライマ精神障害犯罪者病院への移送されたビリーが、過酷な場所でどのように生き抜いてきたかの記録。人格達がわりかし互いに協力的になってきているので、多重人格者としての苦しみよりも、ろくな治療も受けられない病院でどう切り抜けてきたかが主題となっている。薬漬けでゾンビのようにされ、介護人に殴られることが日常となっている患者達。ビリーと人格達の戦いが始まる。

  • 24人のビリー・ミリガンの続編。人格が一つに統合されていく過程を描いたもの。実話なので読んでいて苦しいですね。

  • 737円購入2011-06-28

  • 24人のビリー・ミリガンの続編。これも含めて、一連のビリーの物語です。
    ダニエル・キイスの文章も素晴らしいのだと思いますが、訳もすごく情緒があって素敵な作品だなぁと思います。

    最後、ビリーの出す答えがすべての価値を示していると感じました。

  • 24人のビリーミリガンを読んて、興味が出てしまった。

    本当に辛い人生を送った人なんだろう。

    でも、近くにいたら、私は彼を恐れないでいれるだろうか。。

  • 「24人のビリー・ミリガン」の続編。
    前作で中途半端にしか書かれていなかったことが、しっかり書かれているが、精神病院の話が中心で、前作より重たい感じになっています。

  • あらすじ:「24人のビリーミリガン」の続編。(参考記事:本レビュー:24人のビリー・ミリガン )

    多重人格障害(今は解離性同一性障害 という)のビリーは、連続レイプ事件で逮捕されるが、精神病のために責任能力なしという判決によって無罪となり、精神病院に入る。しかし、政治家やマスコミ、一般市民の圧力により、最重警備施設のライマ精神犯罪病院に入れられる。そこで受けたのは治療ではなく、虐待であり、またもや人格が分裂する。ライマに送られてから、自由の身になるまでの物語。

    やっぱり、ビリーは天才。

    ビリーは、数々の虐待も乗り越え、施設の中でビジネスまで始めてしまう。そして、他の患者を扇動し、暴動を起こす。他の施設に送られてから、医師達の意見が合わず、薬物療法を続けてもらえないことに恐怖を感じたビリーは施設を逃亡。またつかまって、今度はハンガーストライキ。ハンガーストライキの末コンピュータを手に入れ、施設のコンピュータをハッキング・・・。

    周りはすっごい迷惑だと思うけど、どこにいても新しい可能性を見出すところは本当にすごいと思う。わたしにかけている能力やわ。芸術やコンピュータの才能があるだけじゃなく、人を動かす力もあるし、総合的に判断する力も持っている。もし、違う環境で育っていたら、ベンジャミン・フランクリン (電気の発見だけではなく、政治・外交・事業でも大きな成功を収めた人)みたいになってたかも?それとも、この障害があるがゆえにこの才能が生まれたのかな?

    しかし、この才能があるのに、やはり他の人格になったときはすべてをぶちこわすようなことをしてしまう。どうして他の人格は自己の不利益になるようなことをするのか、やはり多重人格って不思議な病だ。しかし、脳陵を切断した人の中には、「他人の手」症候群 と言われる症状が現れる人があるという。右手が自分の意思とは無関係に動くというものだ。右手が自分を絞め殺そうとした事例さえあるらしい。だから、私達が自分だと感じているものは、実際にはビリーと同じくたくさんの人格の共同体なのかもしれない。それぞれが同じ目的のために働いているありの巣と同じだと思うとちょっと気持ちわるいな。

    ☆が前作より1つ減ったのは、今回の作品は、作者がかなりビリーサイドに偏った書き方をしていると感じたから。長い間一緒に仕事をしたために、ビリーに対する思い入れが大きくなったのだろう。でも、ビリーに関わるそれぞれの人の立場に立つと、悪のように描かれている人たちもそれぞれ意見があって、彼らの目では正義のために行動していたのではないかと思える。実際、統合されたビリーがどれほど良い人間だとしても、分裂したビリーが何をするかわからず、しかも、いつビリーが分裂するかわからないとしたら、やはり、近辺をうろつかれるのは不安を感じるだろう。

    この手の本はとても面白いし、様々な想像をかきたててくれる。ただし、自分の精神状態が安定しているときでないと、若干引きずられて欝になるので、注意が必要な気がする。

  • 連続レイプ犯として起訴されたビリー・ミリガンは1978年、精神異常と判定され無罪となった。しかしその後、彼が送られたオハイオ州立ライマ病院は、体罰に電気ショック療法を用い、薬物で患者を廃人にする恐るべき場所だった。外部との手紙のやりとりも禁じられ、命を脅かされつつビリーはいかに生き延びたか…『24人のビリー・ミリガン』では書けなかった、精神病棟内でのビリーの孤独な闘いを明らかにする驚異の続篇(amazonより抜粋)

  • 虐待から生まれた別人格。
    その人格にもそれぞれの人生があって・・・
    なんか複雑だけど、とっても読み応えのある一冊。

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