悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

制作 : Agota Kristof  堀 茂樹 
  • 早川書房
4.12
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本棚登録 : 4337
レビュー : 594
  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151200021

作品紹介・あらすじ

戦争が激しさを増し、双子の「ぼくら」は、小さな町に住むおばあちゃんのもとへ疎開した。その日から、ぼくらの過酷な日々が始まった。人間の醜さや哀しさ、世の不条理-非情な現実を目にするたびに、ぼくらはそれを克明に日記にしるす。戦争が暗い影を落とすなか、ぼくらはしたたかに生き抜いていく。人間の真実をえぐる圧倒的筆力で読書界に感動の嵐を巻き起こした、ハンガリー生まれの女性亡命作家の衝撃の処女作。

感想・レビュー・書評

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  • 強烈な内容の小説。戦時下の属国という悲惨な状況下、双子の少年が日記を記すという構成だが、完全に主観を廃し、事実だけを淡々と書き連ねる手法が、戦争の悲惨さや残酷さ、倫理観の荒廃を際立たせ、これでもかと読者に迫ってくる。文書は平易だが、子供にはちょっと読ませられないシーンがいくつも出てくる。

    正直自分の平時の価値観をぶっ壊されたような気持ちになった。まだ完全には消化しきれていないが、早く三部作を全て読みたい。

  • 重いテーマを重く描く、
    悲しい出来事をセンチメンタルに描く。

    そういう当たり前の描き方ではなく
    悲惨な出来事を感情の動きを廃して
    淡々と行動のみを子供の視点から
    子供が書いた日記という体裁で
    描かれている。

    一つ一つの出来事は相当に衝撃的で
    悲惨な出来事なのに、
    ある種サラッと行動のみが書かれていて
    受け止め方に困る。

  • 面白い。文学というとお堅いイメージがあるけれど、これは全く違います。

    戦時下の人間たちを、双子の目線で描いた作品で、暴力、性行為、罵詈雑言、盗みに詐欺にと酷いことがたくさん起こるのに、暗さや冷たさを不思議と感じない。
    起こることの過激さに肩をすくめる思いがするのに、双子の冷徹さや、双子に関わる人々の滑稽さや人間臭さに引き込まれる。
    「人間臭さ」というといい面がたくさんあるような言い方だけど、そうではなく、暴力やら欲望やらに物凄く正直っていうこと。
    双子の祖母はその最もたる人物で、欲の塊だし、双子をないがしろにするし、さらに夫殺しの疑いまでかけられているしで、ろくでもないにもほどがある。
    それなのに憎めない。
    最期あたりで双子と悪知恵を働かせる場面はお見事。
    戦時下だからこその人間のしたたかさとたくましさを感じられる。
    だからこそ、悲壮感もなく読めるのか。
    戦時下だから仕方がないかもしれないけれど、「いいひと」がいない。
    双子たちはそれを容認していて、まったく関心がないのかな?なんて思いながら読んでいると、裏切られました。
    感情をなるだけ省く文体と、滑稽さやユーモアのセンスのおかげで何度でも読みたくなる小説です。

    2~3ページの短い話が次々と語られるけれど、内容は超過激。
    すごい内容を何でもないように平然と綴り続ける双子の精神にもおどろかされる。
    双子たちのやることが予想できないこともあって、先に先にとどんどん読んでしまった。
    子供の残虐性と純粋性を兼ね備えたキャラクターで、やはりこの小説の一番の魅力はこの双子でしょうか。
    子供だからこそ、危うい状況になるとハラハラするけれど、この双子の場合は、描かれている目の前の相手に何をするつもりかというハラハラ感もありました。
    感情が省かれた文体なので、何を考えているかさっぱりわからない。
    途中双子の行動に「なぜ?」と思ったときは、他の登場人物のセリフだったり、双子の行動の中に、その感情を読み取るヒントが描かれています。

    「ぼくら」でくくられた彼らだからこそ、ラストの展開は衝撃的。
    「え、ここで終わるの?」とびっくりでした。
    この小説を調べていたときに「ぜったい三部作すべてを読むべし」という文を見かけたけれど、あんなところで終わっては続きを読まざるを得ない。

  • 目についたから軽い気持ちで読んでみたら割と衝撃を受ける小説。何の前知識も無く、「にんじん」みたいな小説かな?と思っていたら……。

    ずるくて、冷酷、残忍、時に温かで愚かしい人々を徹底した客観性をもって記述する。主人公の双子である「ぼくら」の心理は何も書かれない。だから読者である私は、誰かの心をなぞらずに、登場人物たちと直接対面することになる。おばあちゃんも女中も兎っ子も強烈な存在感だ。

    それと書かれていなくても、善悪も好悪も愛憎も入り混じってそこに在る。高潔な悪が在り、俗悪な愛が在る。私は彼らをどのようにも言い切る事はできない。彼らはみなただ彼らの生を生きているのだな、と思う。

    想像もしていなかったラスト。次の「ふたりの証拠」が読みたい。

  • 一気に読みたい本。
    誰か映画化しないかと思う。

    って奈良さんと同じ感想になってしまったよ。。。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「誰か映画化しないかと思う」
      故国のハンガリーで映画化されるらしい。誰が監督をするのか興味深いところです。
      因みに「昨日」はイタリア人監督シ...
      「誰か映画化しないかと思う」
      故国のハンガリーで映画化されるらしい。誰が監督をするのか興味深いところです。
      因みに「昨日」はイタリア人監督シルヴィオ・ソルディーニによって映画化され、日本では2003年イタリア映画祭で初上映されています(タイトルは「風の痛み」)。
      2012/05/29
  • 友だちに借りて読んだ。買おうかな、続編も読みたい。
    めちゃくちゃおもしろかった。
    戦争という非日常のなかで、異常と正常がわからなくなる。2人なりの倫理は一貫している。

  • 衝撃の書。フランス語で書かれた文学群を読んで来なかった自分を反省します。しかし、YAに分類されてましたが、よいのでしょうか?それも恐るべし。
    たまたまチャイナ・ミエヴィル「オクトーバー 物語ロシア革命」と続けて読んだのですが、あの革命からつながるヨーロッパの歴史なのだなぁ、とその重さにも震えました。

  • 双子の日記には淡々と事実だけが綴られる。その中には深い悲しみや絶望が含まれている。
    戦争の中、悪童たちは盗みや殺人、あらゆる非道を行う。しかし彼らは、自分たちの真実に基づいて行動しているだけのように見える。

    戦争が終わる前、学校で離れ離れになるだけで失神するほどその距離に耐えられなかった双子は、戦争が終わった後、1人が国境を越えて離れ離れに生きるという選択をする。なぜそんなことをしたのかわからないが、それは2人がつよい決意のもと、生きる上で必要な選択をおこなったのだろう。

  • オススメされて読んだ本なのだけど、
    オススメして貰ったことを感謝したい一冊。

    解説を読むと原題を直訳すると
    “大きなノートブック”になるらしいから、
    「悪童日記」という邦題は非常に秀逸かと。
    確かに“悪童”であるかもしれない。
    しかしそれはこの時代の中で、
    生きるための、生き残るための術であり、
    そうかといって真に悪なのではなく、
    彼らだけのルール・主義・信念があり、
    それは読んでいる間に痛快にすらなってくる。
    “悪童”とは反語でしかないわけで、
    むしろ“恐るべき子供たち”ということか。

    もしも兎っ子がレイプされた上で殺されたとしたら、
    2人は一体どういう行動をとったのだろうか?
    そんなことを考えてしまった。

    文体も非常に面白い。
    主人公は2人のはずなのに文体は一人称っぽくて、
    思うことも感じることも一心同体の2人というのを
    その部分でも表していたのかも。
    だからこそ、ラストシーンは衝撃で、
    続篇が気になって仕方ない。
    近日中に読まなければ。

  • 映画化で注目されているので、数年ぶりに再読。

    初めて読んだ時の衝撃は、再読しても変わらず。
    感情という感情全てを削ぎ落した文体から、
    行き場のない怒りと悲しみが滲み出ているようだ。

    数年前はただただこの内容に圧倒されて貪るように読んだけれど、
    今回は註釈もじっくり読みながら、この世界に浸る。

    第二次世界大戦中、ハンガリーを舞台にした物語。
    あくまでも淡々と綴られていく双子の日記。
    痛みに耐えるためにお互い傷つけ合い、
    言葉の暴力に耐えるために言葉でも傷つけ合う。
    飢えに耐えるために断食をし、
    学校へ通わなくとも独学で勉強をする。

    双子の感情は一切描写されていない。
    読後に何とも言いようのない乾いた痛みだけが残る。
    本当に恐ろしい小説だ…

    それでも、これからもきっと双子に会いにこの本を開く気がします。

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著者プロフィール

1935年オーストリアとの国境に近い、ハンガリーの村に生まれる。1956年ハンガリー動乱の折、乳飲み子を抱いて夫と共に祖国を脱出、難民としてスイスに亡命する。スイスのヌーシャテル州(フランス語圏)に定住し、時計工場で働きながらフランス語を習得する。みずから持ち込んだ原稿がパリの大手出版社スイユで歓迎され、1986年『悪童日記』でデビュー。意外性のある独創的な傑作だと一躍脚光を浴び、40以上の言語に訳されて世界的大ベストセラーとなった。つづく『ふたりの証拠』『第三の嘘』で三部作を完結させる。作品は他に『昨日』、戯曲集『怪物』『伝染病』『どちらでもいい』など。2011年没。

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