悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

  • 早川書房
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本棚登録 : 5291
レビュー : 662
  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151200021

作品紹介・あらすじ

戦争が激しさを増し、双子の「ぼくら」は、小さな町に住むおばあちゃんのもとへ疎開した。その日から、ぼくらの過酷な日々が始まった。人間の醜さや哀しさ、世の不条理-非情な現実を目にするたびに、ぼくらはそれを克明に日記にしるす。戦争が暗い影を落とすなか、ぼくらはしたたかに生き抜いていく。人間の真実をえぐる圧倒的筆力で読書界に感動の嵐を巻き起こした、ハンガリー生まれの女性亡命作家の衝撃の処女作。

感想・レビュー・書評

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  • アゴタ・クリストフの傑作。
    『悪童日記』三部作の1巻を読了した。

    まさに傑作の名にふさわしい内容だった。

    「傑作」であるということは聞いていたのだが、実はあまり内容はよく知らなかった。

    はっきり言ってハードである。
    一言で言うならば
      ハンガリー版『R18指定・火垂るの墓』
    といえばイメージがしやすいだろか。

    時代は第二次世界大戦中から大戦後にかけて。
    場所は特定はされていないが、ハンガリーの片田舎の町が舞台である。
    そこに無理やり疎開させられた十代の男の子の双子が主人公だ。

    当時のハンガリーはナチスドイツの同盟国であったが、本書の内容を読むと同盟国というよりもほぼ属国という感じである。

    彼ら体験するのは、あまりに過酷な日常だ。
    人が簡単に死んでいく。
    生きるためは、ありとあらゆることをしなければならない汚いことでも、酷いことであってもだ。

    まさに戦争の暗部をこれでもかと見せつけられる。
    見たくないものであっても。

    最初にR18と書いたが、これこそが彼ら少年少女が実際に体験したことなのだ。
    それをよくよく理解し、この本を体験しなければならないだろう。

    多くの人に読んでもらいたい作品である。

  • 強烈な内容の小説。戦時下の属国という悲惨な状況下、双子の少年が日記を記すという構成だが、完全に主観を廃し、事実だけを淡々と書き連ねる手法が、戦争の悲惨さや残酷さ、倫理観の荒廃を際立たせ、これでもかと読者に迫ってくる。文書は平易だが、子供にはちょっと読ませられないシーンがいくつも出てくる。

    正直自分の平時の価値観をぶっ壊されたような気持ちになった。まだ完全には消化しきれていないが、早く三部作を全て読みたい。

  • 衝撃的な小説だった。
    この衝撃をどう形容したらいいのか、自分の語彙が足りない。
    感動とも違う、涙が出るとも違う、悲しいでもない。そんなんじゃ間に合わない。
    でも、この読後感は引きずりそう。

    「ぼくたち」は戦時下で本当にたくましく、賢く生きている。
    死や強奪、放火、殺人、性犯罪、爆撃、貧困など重くて暗い要素がさも普通かのように淡々と描写される。
    「ぼくたち」が感情を表現せずに記しているので余計恐ろしさを感じる。

    残酷と言うのは簡単だが、「ぼくたち」は日々を生きているだけ。
    残酷な世の中を与えた大人の方が残酷だ。

    戦時中は敵がいて、戦争が終わったら解放者という別の人たちに支配される。
    本当に恐ろしい。

    今の時代の日本に生まれて本当に良かったと思う。
    「ぼくたち」の時代と場所に生まれていたら、恐怖で生きられないかもしれない。いや、逆に死んだ目をして淡々と生きるのかもしれない。


  • 戦争は日常に非日常をもたらすもの、
    なにがモラルでインモラルなのか分からなくするもの。
    少年のまだ曇りきっていないガラスの瞳で世界を見るには、残酷すぎる時代。
    第二次世界大戦末期のハンガリー。
    貧困、迫害、性。
    双子の少年が対峙した世界は乾いた地獄。

  • 大戦下のハンガリーで、吝嗇で卑しいおばあちゃんの元に疎開した双子の男の子がたくましく生き延びてゆく。
    戦時下の極限の飢え、生死の間で独自の倫理を身に着ける。
    彼らは媚びず、屈せず、抗い、学び、タフに生きる。
    悪童なんてもんじゃない。一種の哲学のような、あらゆる意味で衝撃だった。

  • 重いテーマを重く描く、
    悲しい出来事をセンチメンタルに描く。

    そういう当たり前の描き方ではなく
    悲惨な出来事を感情の動きを廃して
    淡々と行動のみを子供の視点から
    子供が書いた日記という体裁で
    描かれている。

    一つ一つの出来事は相当に衝撃的で
    悲惨な出来事なのに、
    ある種サラッと行動のみが書かれていて
    受け止め方に困る。

  • 面白い。文学というとお堅いイメージがあるけれど、これは全く違います。

    戦時下の人間たちを、双子の目線で描いた作品で、暴力、性行為、罵詈雑言、盗みに詐欺にと酷いことがたくさん起こるのに、暗さや冷たさを不思議と感じない。
    起こることの過激さに肩をすくめる思いがするのに、双子の冷徹さや、双子に関わる人々の滑稽さや人間臭さに引き込まれる。
    「人間臭さ」というといい面がたくさんあるような言い方だけど、そうではなく、暴力やら欲望やらに物凄く正直っていうこと。
    双子の祖母はその最もたる人物で、欲の塊だし、双子をないがしろにするし、さらに夫殺しの疑いまでかけられているしで、ろくでもないにもほどがある。
    それなのに憎めない。
    最期あたりで双子と悪知恵を働かせる場面はお見事。
    戦時下だからこその人間のしたたかさとたくましさを感じられる。
    だからこそ、悲壮感もなく読めるのか。
    戦時下だから仕方がないかもしれないけれど、「いいひと」がいない。
    双子たちはそれを容認していて、まったく関心がないのかな?なんて思いながら読んでいると、裏切られました。
    感情をなるだけ省く文体と、滑稽さやユーモアのセンスのおかげで何度でも読みたくなる小説です。

    2~3ページの短い話が次々と語られるけれど、内容は超過激。
    すごい内容を何でもないように平然と綴り続ける双子の精神にもおどろかされる。
    双子たちのやることが予想できないこともあって、先に先にとどんどん読んでしまった。
    子供の残虐性と純粋性を兼ね備えたキャラクターで、やはりこの小説の一番の魅力はこの双子でしょうか。
    子供だからこそ、危うい状況になるとハラハラするけれど、この双子の場合は、描かれている目の前の相手に何をするつもりかというハラハラ感もありました。
    感情が省かれた文体なので、何を考えているかさっぱりわからない。
    途中双子の行動に「なぜ?」と思ったときは、他の登場人物のセリフだったり、双子の行動の中に、その感情を読み取るヒントが描かれています。

    「ぼくら」でくくられた彼らだからこそ、ラストの展開は衝撃的。
    「え、ここで終わるの?」とびっくりでした。
    この小説を調べていたときに「ぜったい三部作すべてを読むべし」という文を見かけたけれど、あんなところで終わっては続きを読まざるを得ない。

  • 19かそこらの時に三部作一気読みして、二週間引きずった忘れられない一冊。
    秋の自律神経ぐちゃぐちゃ期になぜか無性に読みたくなって何回か読み返してるんだけど、その度にうまく言い表せなくてもどかしい。
    今回は「双子、純粋だよな」と思った。
    回りの不条理に対する反応が澄みすぎていて、常識だとか倫理とかで濁らない。それ故の残酷さというか怪物感があるというか。生肉みたいな文体もすごい。何よりも素材(感情)に近くて、だからこそ生々しいって感じ。
    このまま一生定期的に読み返す本なんだろうな。

  • 悪童、と皮肉じみたタイトルにしているが、この子供たちはただ物事の本質をつかんでいて、学ぶサイクルを繰り返しているだけだ。

    たしかに行為だけを取ると、一般的に悪とされてしまう。
    感情的や常識を排除して、やりたいこと、やるべき事を成すためのレールを自分たちで敷いて、そこをまっすぐ歩いている。

    とても強靭な精神の持ち主で、それと同じくらい感情豊かであるだろう。

  • いつのものだったか忘れたが、雑誌のクロワッサンで紹介されていて、気になっていた本。
    満を持して読んだ。


    1つ1つタイトルが付いていて、正に日記の様な形式を取っていて、文体も読みやすいのだが…なかなかにアンモラルで衝撃的だった。
    まず、人がボンボン死ぬ。何なら主人公たちも殺す。
    そして、ものを分捕ったり等々…
    本当に、悪童って感じ。とても良いタイトル。


    生きるために仕方のないことではあるかも知れないが、これを残酷だと思ってしまうのは、私が本の中でしか戦争を知らない呑気な現代人だからなのだろうか。

    残酷だとか人がいっぱい死ぬとか書いておいてアレだが、とても面白く読めた。
    これは繰り返し読みたい1冊である。

    ラストが非常に衝撃的で、気になる終わり方。

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著者プロフィール

1935年オーストリアとの国境に近い、ハンガリーの村に生まれる。1956年ハンガリー動乱の折、乳飲み子を抱いて夫と共に祖国を脱出、難民としてスイスに亡命する。スイスのヌーシャテル州(フランス語圏)に定住し、時計工場で働きながらフランス語を習得する。みずから持ち込んだ原稿がパリの大手出版社スイユで歓迎され、1986年『悪童日記』でデビュー。意外性のある独創的な傑作だと一躍脚光を浴び、40以上の言語に訳されて世界的大ベストセラーとなった。つづく『ふたりの証拠』『第三の嘘』で三部作を完結させる。作品は他に『昨日』、戯曲集『怪物』『伝染病』『どちらでもいい』など。2011年没。

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