青い眼がほしい (ハヤカワepi文庫)

制作 : Toni Morrison  大社 淑子 
  • 早川書房
3.56
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本棚登録 : 493
レビュー : 39
  • Amazon.co.jp ・本 (323ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151200069

感想・レビュー・書評

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  • 大学の授業のために読みました。
    黒人の少女が白人に憧れ、その結果黒人の少女が狂ってしまう話。
    読んでいてかなり辛い描写が多かったです。
    アメリカ中西部が舞台になっているだけあって、
    その当時のアメリカを色濃く映しているなと感じました。
    今となっては、差別はダメだという考え方が一般的で常識になっていますが、
    そうでなかった時代もある、今があるのはこういう差別を受けた方々の努力があってこそだということを理解できる作品だと思います。

    本書の一文にある、
    「白人の眼のなかに嫌悪でふちどられた空白を創りだしたもの、その原因となるものは、彼女が黒人だという事実だった。」
    なんて悲しくて、恐ろしくて、辛い事実なんだろうと、
    ただ肌の色が違うだけで存在も認められないなんて、
    と。
    この作品は、
    黒人差別をした白人を責めるようなことはかいておらず、
    ただ淡々と事実を述べる形式で進められます。
    このことがより一層、どの差別反対を表現した作品よりも心に響いた理由かなと思いました。

  • ざっくばらんに言ってしまえば、黒人についての話ということになってしまうのだけれど、やっぱり人種というもので推し量れないような物語としての器の大きさを感じる。私はこれを読んでいるとき、確かにそこにいる少女だったように思う。

  • 白人のような青い眼がほしいと日々祈る薄幸な少女ピコーラの悲劇を主軸に、ふたりの姉妹の目を通して、黒人社会における人種差別のあり方を描く小説。

    この作品を読み終え、再度冒頭の一文、「秘密にしていたけれど、1941年の秋、マリゴールドはぜんぜんさかなかった」を読むともの悲しくなる。けれども、絶望を感じさせないところが救いかな。

    メッセージ色は強く重たい話だけれど、面白い。

  • 黒人差別を描いた作品は何作か読んで来た。概ね、白人による
    黒人差別を描き、壮絶なリンチの様子や家畜以下の扱いをされ
    た時代と、公民権運動で権利を勝ち取る時代を綴った作品が
    多かった。

    本書も黒人差別を扱った作品である。しかし、これまで読んで来た
    作品と趣を異にしている。白人から差別される黒人同士であっても、
    より貧しき者、より弱い者が、同じ肌の色を持った人々から差別さ
    れるのだ。

    本書の主な語り手は黒人少女のクローディア。クローディアには理解
    出来ないことがある。みなが欲しがる「可愛い人形」は、何故青い眼を
    して、黄色の髪をしているのか。

    美の基準。それは白人社会の価値観に他ならない。クローディアは
    黒人の少女。だから、人形に自分を投影することが出来ないし、
    可愛がることも出来ない。

    しかし、クローディアの友人ピコーラは青い眼に憧れていた。「誰より
    も青い眼を下さい」とピコーラは願う。そうすれば、誰も私をないがし
    ろにしたり、苛めたりしないだろうから。

    そんなピコーラに悲劇が訪れる。実父による暴行の末、ピコーラは
    妊娠する。えぐられるように傷ついた心はますます浮遊する。

    「もし自分に白い肌やブロンドの髪の毛、誰よりも青い眼があれば、
    どんなに世界は素敵なものに変わるだろう」

    ピコーラは現実の世界の境界を踏み出し、自分は誰よりも青い眼を
    持っている世界へ行ってしまう。

    みな、貧しさの中で生きている。ピコーラだけではなく、彼女を犯した
    実父でさえも切ない過去を背負っている。

    誰もピコーラを傷つけようとして傷つけた訳ではない。知らず知らずに
    一番弱い者をどん底へ落としてしまう。

    重層化した差別の構造を、小説で描き出した作品は人の心の弱さと
    美の基準を考えさせてくれる。

    多分、多くの日本人の美の基準も欧米基準なのだろうなと思う。私
    自身もそうだから。そんな価値観を考え直す機会を本書から得た。

    ただ、久し振りの小説だったので誰が誰を語っているのかを把握する
    のに戸惑ったのと、原書の文章自体が私には合っていないかもしれ
    ないが翻訳が読み難かったのが残念だ。

  • 被差別者たちの中の差別や、目を背けたくなるようなコミュニティ内部の醜いやりとりを描きながらも、それを痛烈な言葉で告発するのではなく、「どうしてこの人はこうなってしまったのか」をきちんと描くことで物語に豊かさを持たせる事に成功している。
    とても悲劇的な話には違いないのだが。
    不思議と不快なだけでは終わらないのは、加虐者の生い立ちにまできちんと目配せを欠かさない作家の優しさ?丁寧さ?を感じるからだろうか。

    実は、職場の女の子が「あーあたしも外人に生まれたかったな、足長くて金髪で鼻高くて」って言ってたのを聞いて衝撃を受け、読み始めたこの本(笑)。
    得るものは大きかったです。

  • 他者に押し付けられた価値観や美的感覚ではなく、自分自身の美しさや価値を信じることができる社会にならないと、本書のピコーラのような悲しい若者が作り出されてしまう。日本人も、モンゴロイドの美しさよりも白人や黒人の体型や顔立ちになりたいと願う少女たちは少なくない。もっといろいろな美しさが並存して認められる社会であってほしいと思う。

  • 西加奈子がテレビで紹介していたので、図書館で借りました。
    黒人差別が横行していた頃のアメリカで、何世代にも渡って差別を受け続けてきたがゆえの、黒人自身が自己卑下に陥る、黒人同士で差別しあう内情が垣間見れます。
    その思考や貧困を背景に、家庭や社会の中で不調和が起こり、悲しみ、怒りを抱え続けてしまう。身勝手な白人によって、黒人は何世代にも渡り心をなじられ続け、その結果、黒人が抱えてしまっているであろう心の闇を、フィクションながら見事に、私達に伝えてくれる秀作です。
    そもそも黒人とか白人とかのくくりがおかしい。
    太陽が強い地域に適応しているのが黒人、太陽の日差しから肌を黒くして守る必要がない地域で反映したのが白人でしょ。太陽における、strong skin と weak skinでしょ。
    黒人白人黄色人種、同じ人間なのに、皮膚の薄皮一枚で人間を大別する呼ぶ方に、今更ながら違和感を感じます。

  • ストーリーは一直線には進まないが、それがかえって著者の伝えたいと思っていることを、読者にじんわりと浸透させることになっている。後に書かれた「著者あとがき」によると、「いまではそのやり方が気に入らない」し、「効果的でなかった」とのことなのだが・・・。
    一番印象的だったのは、ピコーラの母の物語の部分。しかしこの部分もまた、「著者あとがき」によると、「はなはだしく不満」とのこと・・・。
    その後の著作を読んでみたいと思います。

  • アメリカ、黒人、差別…

    長い歴史は差別される側を飼い慣らし、
    「なぜ差別されているのだろう?」
    その疑問を打ち消し、それを当然のように思わせる。

    外からの蔑みから身を守るため、うちにさらに差別の対象をつくり自分を優越させる。

    そういう黒人世界を、著者は文学で表現する。

    辛く苦しい物語。しかし力強い物語。

  • 白人少女への愛に憧れる、みじめな黒人少女のお話。

    圧倒的な力を持つ『美』のステレオタイプと、
    それに振り回される哀れな女たちという図式は、
    人種に対する意識にうとい日本人でも、身近に感じられる場面が多かったです。

    印象に残っているのは"春"の章。

    「春の小枝の鞭打ちは辛い、冬の革紐やヘアブラシが懐かしい」
    「だかられんぎょうを見ても歓びは湧いてこない」

    そんな『春』についての記述は今までに見たことがなくて、
    軽く絶望にも似た気持ちを感じました。

    『青い目になった』あと、
    果たしてピコーラは幸せになれたのだろうか。

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