遠い山なみの光 (ハヤカワepi文庫)

制作 : Kazuo Ishiguro  小野寺 健 
  • 早川書房
3.49
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本棚登録 : 1227
レビュー : 157
  • Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151200106

感想・レビュー・書評

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  • 一息で読み切ってしまった。ああ、こういう会話あるなあというリアル。相手の言葉を受け止めたり、状況に対する相手の受け止め方を誰も慮ったりしない。登場人物はみな、自分の採用する考え方ばかり––それも自ら考えとって選んだのではないような––展開する。特に顕著なのが悦子と緒方さん、そして佐知子だろう。息子世代と対比したときの緒方さんの凝り固まった考え方、万里子の気持ちを、それぞれの仕方で受け止め損ねいつもピントのずれたやりとりをしている悦子と佐知子。「あるある」という以上に、読んでいていたたまれない気持ちになる。
    しかし、当時の悦子と、ニキと話しながら過去を振り返る内省的な悦子はぜんぜん違う。娘の結婚について話すときなどは確かに変わらない面もあるように思うが、ニキとの会話はもう少し噛み合っている。当時の悦子が見せた無神経さは、自責や後悔によって、いくらか意地悪に痛切に振り返られたために浮かび上がったものなのだろう。

    悦子自身の状況は明確には描かれない。悦子と景子の来た道は、佐知子と万里子の描写を通じて暗示されるだけである。もしくは、夫や義父との日常からの脱出として、間接的に描かれるだけである。しかし、そうした間接的な表現によって何がテーマとなっているかはどんな読者にも伝わるだろう。
    全体として噛み合わない会話と薄暗いトーンに貫かれながら、地を描くことによって図を描くことに成功している秀作。また事実関係を確認しながら、会話を丁寧に追いながら、読み返したい。英語だとニュアンスがどのようになっているのかも気になる。

  • 戦後の長崎が舞台。会話中心の展開は、小津映画の情景ようでした。主人公の悦子と佐知子のやりとりは、読んでいてもどかしい。しかし、これには作者の巧みな仕掛けがあったことに気がついた。

  • この脚本でホラーを撮ったら面白いかもしれない。

  • 登場人物が淡々と過去を振り返るのが著者の作風だけど、デビューからそれは一貫してるんだな。悦子の過去の語られていない部分が怖そうで、知りたいような知りたくないような。

  • 所々感じられる不気味さに魅力を感じた。
    もう一度読み直さなければいけない。

  • 言わずと知れたノーベル文学賞作家。
    原爆から復興途中の長崎と時を隔てた英国を舞台に話が進む。
    敗戦を経てゼロから再生が進む中で逆境から立ち直ろうとする女性の強かさ、ハングリー精神が印象的。
    6歳で日本を離れた著者だが、作品の中には実際に彼が住んでいた長崎の街並みの描写がところどころ出てくるのが美しい。

  • カズオ・イシグロ作品は4作目。長崎に行くからと図書館で予約しましたが、届いたのは行った後。まあ、西坂とか稲佐とかの具体的にイメージできたので、行った後でよかったかな。
    舞台は戦後直後の長崎と時代が下ったロンドン。他の作品同様といまと過去を行ったり来たりしてどんどん話を進めるカズオ・イシグロのスタイル。
    最後の解説にもあるけれど、翻訳ものとは感じさせない、日本語の文体。もちろん舞台が日本ということもあるけれど、ある意味、訳者の作品っていう気もする。

  • 読み助2018年6月1日(金)を参照のこと。http://yomisuke.tea-nifty.com/yomisuke/2018/06/61-7491.html

  • カズオ・イシグロによる超傑作です。
    個人的には「日の名残り」の次に思い入れのある作品です。
    舞台は第二次世界大戦直後の港町の九州・長崎。主人公は若夫婦の悦子。誰もが苦汁を味わった時代において、登場人物同士の会話が見事に噛み合わない。果たして、現実はその通りだと思います。
    見返りを求めない、自分の考えを話したいだけの主張、自慢したいだけの会話が続きます。
    身に覚えがある人はともかく、作者の感性と構築に驚くと共に、原作は英文ですが日本語訳が素晴らしい一冊です。

  • 村上春樹も苦手な僕にはノーベル文学賞系は向いてないこと再確認。

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著者プロフィール

カズオ・イシグロ
1954年11月8日、長崎県長崎市生まれ。5歳のときに父の仕事の関係で日本を離れて帰化、現在は日系イギリス人としてロンドンに住む(日本語は聴き取ることはある程度可能だが、ほとんど話すことができない)。
ケント大学卒業後、イースト・アングリア大学大学院創作学科に進学。批評家・作家のマルカム・ブラッドリの指導を受ける。
1982年のデビュー作『遠い山なみの光』で王立文学協会賞を、1986年『浮世の画家』でウィットブレッド賞、1989年『日の名残り』でブッカー賞を受賞し、これが代表作に挙げられる。映画化もされたもう一つの代表作、2005年『わたしを離さないで』は、Time誌において文学史上のオールタイムベスト100に選ばれ、日本では「キノベス!」1位を受賞。2015年発行の『忘れられた巨人』が最新作。
2017年、ノーベル文学賞を受賞。受賞理由は、「偉大な感情の力をもつ諸小説作において、世界と繋がっているわたしたちの感覚が幻想的なものでしかないという、その奥底を明らかにした」。

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