侍女の物語 (ハヤカワepi文庫 ア 1-1)

  • 早川書房
3.97
  • (122)
  • (159)
  • (83)
  • (15)
  • (7)
本棚登録 : 2467
感想 : 190
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (573ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151200113

作品紹介・あらすじ

2019年最年長のブッカー賞受賞者。

侍女のオブフレッドは、司令官の子供を産むために支給された道具にすぎなかった。彼女は監視と処刑の恐怖に怯えながらも、禁じられた読み書きや化粧など、女性らしい習慣を捨てきれない。反体制派や再会した親友の存在に勇気づけられ、かつて生き別れた娘に会うため順従を装いながら恋人とともに逃亡の機会をうかがうが…男性優位の近未来社会で虐げられ生と自由を求めてもがく女性を描いた、カナダ総督文学賞受賞作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 参加している読書会 課題図書
    とても有名な作品なのに何も知らずに読み始め
    ギョッギョとなる
    デストピア 
    ありえないと思いつつ、そこここに現実味を帯びさせている著者のすごさ
    なるほど!とは思いつつ、気分が悪くなり何度も中断する

    宗教勢力に牛耳られ、女性は名前もなくし、財産もない。
    着るものも定められ、視野も狭められる。
    そして子供を産むことだけを要求される。
    情景、心理描写が巧みで惹きつけられてしまう。嫌なんだけど

    ラスト!
    希望を見つけてもいいのだろうか。

    ≪ 絶望の 中から強く 望むもの ≫

  • 大分前に新聞の書評などで、同じ著者の「誓願」がかなり話題となっていたが、「侍女の物語」の続編だということで、こちらを先に読まないと!と早速図書館に予約したのだが、我が自治体は370万人の人口に対して2冊しかこの本の蔵書がなく…ほぼ一年近く待ったのではないだろうか(だったら買えよ!…いやいや、待つのも一つの楽しみなので…)。

    待ちに待った本は1990年出版の新潮社の単行本(ブクログには載ってない)で、紙のフチも茶に変色、文字は小さく2段組。
    気をつけて捲らないと、ピリッと破けそうなほど年季が入っていた。
    そんな本を前にちょっと読む気が失せかけたのだが、読み始めると、あっという間に物語に絡め取られる。
    カナダで出版されたのは、確か1985年。
    あとがきでは、ジョージ・オーウェルの「1984」に並ぶ作品と書かれている(「1984」をまだ読んでいないのだが、ディストピア小説なのだろう)。

    40年近く前の作品とは思えない。
    舞台はカルト教団のようなキリスト教のある宗派による独裁政権下のアメリカ。
    この混乱と粛正、狂気は今世に溢れるニュースの断片にも似て、背筋がスーッと寒くなる。

    最後の締め方もまた、面白いのだが、主人公の「オブフレッド」…フレッド氏の侍女(公的妾といえる)という意味で、本名は名乗れない…は一体どうなったのだろうか。
    彼女の物語の続きではないかもしれないが、「誓願」も早速予約してみよう(こちらは、かなり蔵書数があるようだし…)。

    追記、グラフィック版も出て話題になっているが、こちらも我が自治体の蔵書は2冊。
    早速予約したが、予約数45。順当に行っても一年近く待つな〜(買えよ!)
    2021.11.24

  • キリスト教原理主義者によって、何もかもに奪われた女性たち。
    侍女と呼ばれるエリート男性の子供を産むための存在である彼女たち。
    その一人が書いた手記という形をとった本書。
    凄まじい作品を2冊続けて読んでしまいましたね。

    家畜のように扱われる女性たちの姿に、現在の世界情勢が重なる。
    男性でも、女性でもなく、人として尊厳を持って生きていく事はこんなにも難しい。
    国家資源として扱われる女性は人の価値がないのか? わからない。

    続編である誓願を早めに読みたいと思っている。

  • 2023.1.2 Eテレ「100分deフェミニズム」で取り上げられていた。「侍女の物語」は映画公開時、音楽を坂本龍一が担当したというので題名は知っていたが、内容は知らなかった。今回番組で見てとてもおもしろそう、と思い読んでみた。

    「侍女」の住むギレアデ国は、生殖がコントロールされている国で「侍女」は「司令官」の子供を産むために選別された身分の女で、”足がついている子宮”だ、と主人公の侍女はいう。

    そして司令官の妻たちは老齢で自身では子は産めないのだった。さらに驚愕的な場面、”生殖”のための”儀式”には、妻の上に「侍女」が寝そべり、そこで「司令官」が生殖行為をするのだ。あくまでも妻の子、というわけなのだ。番組では漫画と朗読で示された。その漫画の顔が感情の無い顔でその世界の驚愕さがよく表れていた。本を読むと、さらにその場面では司令官の家の女中や運転手なども周りに待機しているのだ。・・うーん、マリー・アントアネットが出産する時は宮中でベッドの周りに貴族が集まったというが、生殖時はどうだったのか・・ 大奥では襖の外におつきの女中が侍っていたか・・

    しかし、ちょっと似たような話を思い出した。弁護士の渥美雅子さんの著書を読んだ時、名家で子供がなかなか生まれないと、村から女性に来てもらい敷地に住まわせ、旦那はその敷地に通い、後継ぎを産ませた、というのだ。そして子供は正妻が後継ぎとして育てる。まあ江戸時代のお殿様もそうではある。が、渥美さんの著書は明治から昭和かの話。

    アトウッドはギレアデ国を描き、女性と出産、極端に統制された国家、というのを痛烈に批判している。ギレアデ国はアメリカの東海岸にあるようで、ほんの少し前までは”普通”の生活があり、クーデターらしきものが起こり統制社会になった。「司令官」「妻」、「侍女」(司令官の子を産むための女性)、「小母」(侍女の集合所で侍女の世話をする)、「便利妻」(より貧しい者の妻で子作りと家事をする)「天使」(前線にいる兵士)、「保護者」 「女中」(司令官の家にいる家事をする女性)、「不完全女性」(ギレアデ国の規範に逸脱した女性らしい)は「コロニー」で暮らす。 「出産車」に近隣住民も乗って、出産所に行き出産する。女性の置かれた状況を見ると、アフガニスタンの現在、タリバンの社会ってこれに近いのじゃないか、なんてふと思った。現在もある、っていうことだし、一歩まちがえばギレアデ国は出現する。

    本では最後の最後に、落ちの無い?落ちがついている。この世界は果たしてバラ色なのか? そうは見えない。



    2023.1.2 100分deフェミニズム
    https://www.nhk.or.jp/meicho/famousbook/2023special/

    1985発表 (映画化1990)

    2001.10.31発行(早川epi文庫、でも借りた本はブクログの表紙とは違った) 図書館 
    (単行本は1990早川書房) 

  • ある権力を維持するには、立場の弱い者から順番に「閉じ込めて、監視し、統制」していくのが常道だ。

    弱い立場にさせられるのが女性の女性性、幼年男女、人種差別される男女、職業の貴賎、等々。その女性がターゲットになったデストピアの世界を描いたのが、この小説の主題。

    読んでいて、むかむか吐き気が止まらなかった。
    これは未来の世界ではないからと気が付く、今まさに現実だからだ。
    フェミニスト的な立場としてだけではなく。

    そして、唯々諾々としている自分がいるからだ。

    書かれたのが1985年、今2023年。

  • 先にグラフィックノベル版を読んで良かった。多分読まなくても世界観には入り込めたけど、服装とか出産の状況がより頭の中でリアルになったから。だいぶ変わった服だし。
    でもきっと、グラフィックノベルの方が内容がまとめられていてその分細かな描写が省かれているのではないかと、小説版も読んでみた。
    より細かく、侍女の視点から状況を掴み取ることが出来たし、グラフィックノベル版も原作の世界観を壊していなかったので、グラフィックノベル版→原作の順で読むのが良いかもしれない。


    リディア小母の言葉がひどく印象に残った。
    「自由には二種類あるのです、したいことをする自由と、されたくないことをされない自由です。無秩序の時代にあったのは、したいことをする自由でした。今、あなた方にあるのはされたくないことをされない自由なのです。それを過小評価してはいけませんよ。」

    うーん、でもギレアデの世界は男性、それも高い地位にいる老人男性が優位な社会だからなあ。

    ただ本書の主人公であるオブフレッドはそんな高い地位にいる老人男性の事もしっかりと見ている。
    「それにしても、あんなふうに男らしく振舞うのは生き地獄にちがいない。
    すごく気分がいいにちがいない。
    生き地獄にちがいない。
    すごく静かにちがいない。」

    前の二つは分かる。けど、最後のすごく静かというのはどういうことか考えて少しだけ分かるような?

  • me too運動と相俟って新たにドラマ化され、
    再度脚光を浴びたと思しい、
    1985年発表(原著)の、
    当時から見た近未来ディストピアSF長編小説。

    性の乱れや人口減を憂えたキリスト教原理主義勢力が
    アメリカ大統領を暗殺し、政権を掌握、
    女性の仕事と財産を奪い(銀行預金は父または夫の名義に変更)、
    出産可能な女性を教育施設に送って「侍女」に仕立て上げ、
    権力者の家に住まわせて、その子供を産むように仕向ける。
    「侍女」は書物を読むことも書きものも禁じられ、
    情報は遮断されている。

    物語の語り手は、夫とも幼い娘とも引き離され、
    本来の名前を奪われて「フレッドに仕える女」の意味で
    「オブフレッド(of Fred)」と呼ばれている。
    彼女は生き延びるため、
    従順な「侍女」を装って自らを環境に順応させようとするが、
    夜、一人きりになると夫や娘や母や友人に想いを馳せ、
    かつての生活を回想する。

    この、読んでいて気分が悪くなるような小説が
    現代において再評価されることの意味を考えたい。
    執筆当時に著者が憂慮した事態は過去の問題ではなく、
    これから先の世界にぽっかり口を開けて
    待ち構えているかもしれない。
    だが、「生む機械」だとか「生産性」があるだのないだの、
    政治家などに言われる筋合いはないのだ。

    一連の事件をわかりやすく整理した最終章
    「歴史的背景に関する注釈」が、
    あまりにクールでショッキング(笑)。
    現在の我々の営みも、未来人に回顧されれば、
    ちっぽけで他愛ない話として片付けられるのだろうか……
    と考えると、二重に怖くなる作品である。

  • キリスト教原理主義者たちのクーデターによりアメリカから独立した小国、ギレアデ共和国。低下し続ける出生率を憂う支配層は、女性たちから自由を剥奪し出産を管理する社会システムをつくりだす。33歳のオブフレッドは、支配階級の老夫婦の元に代理母として派遣された〈侍女〉。ほんの数年前まで夫と娘と暮らし、自分の仕事と財産をもっていたが、ギレアデ建国と共に家族と引き離され、指導員の〈小母〉たちが侍女を教育する施設へ送られて、今は老いた〈司令官〉の子を産むためだけに生かされている。人間性を失うまいとするがゆえに周囲の人びとを憎みきれないオブフレッドの人生はどこへ連れていかれてしまうのか。現代とのリンクが多すぎて、読むのが恐ろしくなるディストピアSF。


    読み終わってまず悔し涙がでた。そんな小説は初めてだった。オブフレッドの時代から150年以上経過した未来で、彼女の物語を史料として眺める男性学者のホモソーシャルな女性蔑視ジョークに、ケイト・ザンブレノ『ヒロインズ』で知ったモダニストの妻たちとその作品の扱いを思いださずにはいられなかった。この講演録をもって『侍女の物語』を終わらせたことに、アトウッドが抱いている男性社会に対する憎しみの深さがうかがえる。
    講演内で司令官の正体がほのめかされ、彼が侍女システムの創設者らしいとわかるところは、グロテスクを通り越して暗い笑いを生む。自分でつくりだした偽りの秩序を自ら破り、恩を売って侍女から〈本物の愛〉を搾取しようとするクソジジイ。彼の行動を少しでも好意的に受け取ろうとしてしまうオブフレッドの努力が泣けてくる。自分が本当にモノ同然と思われているなんて、誰でも信じたくないものだ。
    読み進めるのが苦しくなるようなディストピアを描いた本書だが、暗黒で美しいイメージの宝庫でもある。侍女たちが着用を義務づけられる真紅のワンピースと、〈翼〉と呼ばれる帽子。ヴィクトリアン様式の司令官の家。その居間でおこなわれる家族の儀式。女性たちから文字を奪うため、売り物の絵だけが描かれた商店の看板。マニ車のような祈りの簡易化装置〈魂の巻物〉。頭に袋をかぶせられ鉤に吊り下げられた罪人たち。文章だけを追うぶんにはうっとりすると言ってもいい、産業革命以前に退行したかのような世界観に、唐突にカメラを下げた日本人観光客やテレビなどが出現し、ああこれは今と地続きの未来の話なのだと思いだす。
    前半はオブフレッドの目を通して少しずつ明らかになる最悪になってしまった世界の姿に惹き込まれていくが、後半はオブフレッドの閉じた人間関係をめぐるスリラーになっていく。周囲の思惑に翻弄されるオブフレッドにほんの束の間、人間らしさを思いださせてくれるのが〈小母〉の施設で同室だったモイラとの再会だ。
    ギレアデ社会に反抗し続けるモイラはオブフレッドにとって(読者にとっても)理想的な存在である。状況に流されるままのオブフレッドより主人公らしいと言ってもいい。〈小母〉たちから逃げおおせたモイラをオブフレッドは英雄視し、自分を鼓舞するポジティブなイメージとして思い出を反芻していた。しかし思わぬ場所での再会に、モイラなりの弱さ、彼女にも逃げ切れない現実があることを知り、そのことがオブフレッドの心を壊してしまったのではないか。その後、オブフレッドはニックとのセックスに溺れ、わかりやすくメロドラマ的な状況に陥ってしまう。
    娼館に囚われた同性愛者のモイラや、フェミニズム活動家で〈コロニー〉に連行され放射性物質の除去作業をさせられている母親と比べて、無抵抗なオブフレッドを弱いと切り捨ててはいけない。同じ状況になれば、ほとんどの人はオブフレッドと同じ生き方を選ばざるを得ないだろう。それは彼女の弱さではなく、支配者たちの卑劣さゆえなのだということを忘れてはいけない。本書はフェミニズム小説だが、同時にシスターフッドの難しさを描いてもいる。権力に脅され、誰もが密告者たりえる社会での連帯は困難であり、それこそが権力の望むことなのだ。
    読後に悔し涙が流れるほどリアルな肌感覚を描くとともに、ゴシック小説を思わせる陰惨な美意識にも貫かれた悪魔的な傑作。

  • 図書館には1990年版のがあり そちらを読みましたが
    二段編成の書籍だったし 最初は 主人公の時間が 前後したりして 読みきれないかと思いましたが 途中から どうなちゃうのだろうかと 引き込まれていきました。

    近未来というのでしょうか?
    普通の暮らしをしていた主人公なのに
    クーデターで 政権が変わったアメリカ。
    脱出を試みたが 捕まり 
    娘と夫と離れ離れになってしまった。

    過去の思い出と現在が交差して 書かれているので
    ちょっと頭を使いながら読みました。

    赤い服を着なくてはならない 主人公の立場は 子供を産む 侍女。
    そして 司令官(種)と その妻。
    妻は もう産めない身体だから 出産可能な 侍女を持つ。

    新しい政権は 少子化対策として
    偉い人(司令官とか) とかの 子供を増やすべく 
    妾とかではなく 妻公認の 子宮=侍女を それぞれ持つ。

    そして 必死になって 性行為をするけど
    司令官はもうお年。
    だけど 子供を産ませたい妻。
    召使の男性と 性行為をして 産ませようとする。

    主人公は 心が壊れそうになるけど
    生き別れた 娘に会いたい一心で 生きている。

    ラストは ハッピーエンドか バッドエンドか わからないまま
    終わってしまった。

    なんか 女性を産む機械のような扱いをする
    この物語の 未来は 今の 日本のように 思えてしまいましたね。

    この本を調べたら 映画?ドラマ化されていたようですね。
    映像で見た方がわかりやすいけど 怖いですね~~~

  • これは素晴らしい。重厚な読後感。すでに評される通り『1984年』を彷彿とさせるディストピア小説の金字塔。本物の絶望を味わいたければこの物語を読むべきだ。

    キリスト教原理主義者によるクーデターから生まれた独裁神政国家ギリアド(ギレアデ)の物語を、荒唐無稽なフィクションと笑い飛ばせないのがこの世界の悲しさ。まさについ最近、アフガニスタンで似たようなことが現実に起こったばかりだ。
    これ以上新たなギリアドが生まれないことを祈ることしかできない。
    唯一の救いは、ギリアドが200年と保たず滅びていることだ。後の歴史学者に発見された手記として『侍女の物語』はメタ的にその社会背景が説明されている。その時代の世界はこのギリアドよりもマシなものだと思いたい。

    英語読めるから、原書で読んでみたい。次の『誓願』も。
    Huluのドラマも観なきゃな。

全190件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

マーガレット・アトウッド(Margaret Atwood):1939年カナダ生まれ、トロント大学卒業。66年にデビュー作『サークル・ゲーム』(詩集)でカナダ総督文学賞受賞ののち、69年に『食べられる女』(小説)を発表。87年に『侍女の物語』でアーサー・C・クラーク賞及び再度カナダ総督文学賞、96年に『またの名をグレイス』でギラー賞、2000年に『昏き目の暗殺者』でブッカー賞及びハメット賞、19年に『誓願』で再度ブッカー賞を受賞。ほか著作・受賞歴多数。

「2022年 『青ひげの卵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

マーガレット・アトウッドの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×