第三の嘘 (ハヤカワepi文庫)

制作 : 堀 茂樹 
  • 早川書房
3.78
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本棚登録 : 1872
レビュー : 235
  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151200168

感想・レビュー・書評

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  • 「悪童日記」から始まる三部作の最終章。評価が分かれる作品だと思うが、自分は一作目のインパクトが余りにすごくて、残念ながら二作目、三作目では最初の衝撃を超える事が出来なかった。この本は第二次世界大戦をドイツや旧ソ連の支配下で過ごした人々の悲哀と諦めと無力感を描いた作品として広く欧州諸国で受け入れられているのだろう。ただ、少なくとも「悪童日記」は是非一読をお勧めしたい。

  • 『悪童日記』『ふたりの証拠』に続く第3巻・完結編。続編ですがどれも独立した作品のようにも見えます。

    2作目『ふたりの証拠』で積り積もった謎は一旦横に置かれ、冒頭から彼らは50代半ばへと年を重ねています。1作目『悪童日記』であんなにも分かち合い共鳴し合っていたように見えた2人は時代と年月に揉まれ関係性に大きな変化が生じます。
    時代という大きな波に翻弄されることで心の大切な部分を押し殺しながら生きなければならない状況。母国ハンガリーから致し方なく亡命せざるを得なかった著者の半生とどことなく重なり、心が締め付けられるようです。
    相手を想うからこそ嘘が重なり、リュカもクラウスも心に反して「拒絶」し合います。

    3作を通して全く異なる文体や様相を見せる小説は初体験だったように思います。読者もどこまでこの作品の、彼らの“嘘”に巻き込まれているかあやふやに。
    真実は個々人の胸に秘めたまま――そんな無常さを感じるラストでした。

    クラウスは言う。
    「いや、嘘が書いてあるんです」
    「嘘?」
    「そうです。作り話です。事実ではないけれど、事実で有り得るような話です」(130p)

  • 真実は前2作よりもひどかった。何しろ双子の辛い境遇の根源が戦争ではなく両親のせいだということが判明するからだ。「嘘」の意味は、
    第一の嘘→悪童日記の内容
    第二の嘘→ふたりの証拠のリュカの書いた日記
    第三の嘘→クラウスがリュカに語った自分の身の上
    …ということでいいのか。
    誰も彼もが嘘つきばかり。嘘をつかないとやっていけない時代だったのかな。

  • お願いなので悪童日記を読もうと思ってる人はこの「第三の嘘」まで買っておくべきだし、「ふたりの証拠」以降を並べていない書店は本当になにも分かってない。

  • 題名通り。そもそも「物語」で、語る人を信じ切る、というのが、実はなかなか危ないことなのかもしれないなあと思わせた作品です。

    これまで読んできた小説でも異質な作品。
    どれもが「嘘」と思えば、読んでいることそのものがばかばかしく思えても仕方がないのに、なぜかひかれて読み続けてしまう。物語を続ければ続けるほど、過去の作品の存在が揺らぎ、奥行きを増していくという構成はお見事。
    語られることそのものは奇抜でもなんでもなく、戦争という時代背景や、児童虐待、障がい者を扱ったほかの作品と同じくまっとうな人間の苦悩や悲しみを淡々と描写しています。ですが、その体験を語る人がどのように語るのか、という点がこれまで読んできた作品にはないものでした。

    三作目では、二作目で同一人物ではないか?という終着点を引き継ぎ、「クラウス」が自分の過去を語り始めるのですが、「悪童日記」や「ふたりの証拠」が別の視点で語られます。このままリュカとクラウスは一人の人物の空想だったのだろうか?と思わせての第二部です。

    自分自身が見ている世界、語る過去が「真実」といえる証拠はどこにあるのだろうか?
    この本を読んでいて思ったのは、過去は過ぎ去って取り戻せないものだということではなく、人の記憶の中でどのようにも変化しうるということでした。
    また、語る言葉によっても、その在り方は変わってしまう。

    とても面白い作品だった。こんな作品を他にも読みたいものだけれど、おそらく唯一無二の作品なので、また折を見て読み返して新しい発見をしたいものです。

  • 一体何だったんだこの三部作は…
    今まで私は何を読んでいたんだ…というのが正直な感想。

    一応、今までの話の種明かし的なことと、この物語の全体の構造のことは話されていたけど、それすら本当のことかどうか怪しい(確かめる術なんてあるわけないけれど…)

    私自身、結局リュカとクラウスって何者だったの⁈と問い詰めてみたいと思うほど作品に登場する架空の人物達にだいぶのめり込んでいる気がする。もしかすると、どこかの時代にこの二人は本当に存在していて、その時代を生きていたのではないか…という錯覚に陥るほどの存在感とリアリティ。

    フィクションということを忘れてしまうほどついついのめり込んでしまうのも、作者の幼少期の体験や記憶が強く作品に反映されていたからだろうか……。

    ラストはゾッとするような後味を残していて少し寂しい雰囲気。
    もう一度読み返したらまた違う感想が書けそうな気もする。

  • いやあの……前巻までのアレは一体…………

    これはこれでものすごく悲しく、悲しいんだけど、なんというか『悪童日記』を読んだときの胸の高鳴りに対して、(そりゃこんなクールなのはフィクションだよ)と思った自分を後悔するというか…その通り過ぎて…。
    ただ三部作読んで後悔するかというとそれはない。
    リュカとクラウスが私は好きだ。

  • 「悪童日記」にはじまる連作の最後である「第三の嘘」を読み終わる。

    一体この作品の中の何が真実で、何が嘘だったのか。
    長い作品を通して、真実はひとつもなかったようにも感じられる。
    双子が存在していたことさえ疑わしい。

    描かれているひとのうち、自分の人生を振り返って、ああ、幸せな人生だったと思えるひとはいたのだろうか。
    誰もが自分の人生を、自分のために自分の思うようには生きられなかった。
    そんなこと当たり前だと言われるかもしれないが、それを受け入れて生きていくことと受け入れられずに流されてしまうこととは大きな違いがある。

    連作であって時間はきちんと流れているのに、時系列では描かれていない。
    日記として幼少期を描いた「悪童日記」、リュカ側から描かれた「ふたりの証拠」、クラウス側から描かれた「第三の嘘」、とこう書くとスッキリしている感じがするが、本作はこんな簡単な話ではなかった。
    同じ話が、関わるひとの立場が異なって全く違って見えるという話でもない。
    どこまでが本当なのか、確かなものが掴めない。

    でも、とても魅力のある作品であることは間違いない。
    とても長い作品であるのに、読みやすい。
    読みやすい作品であるのに、読み進めることが辛い。
    辛い作品であるのに、先が気になってしまう。
    不思議な思いに捉われる作品だった。

    きっと読者は何度も読み返すに違いない。
    勿論、わたしもそのひとりだ。

  • 三部を通して、結局、この物語には真実は何もないのかもしれない。ただ、幼児期に受けた喪失感は後年まで残り続けるし、お金や人並みの生活水準が幸福感に与える影響は大きいんじゃないかと思う。何をきっかけに狂うか、何をきっかけに立ち直るかはそれぞれだと思うけど、この物語においては、立ち直った側が酷く醜くみえる。

  • ーこの小説であらいざらい述べようとしたのは、別離――祖国との、母語との、自らの子供時代との別離――の痛みです。私はハンガリーに帰省することがありますが、自分に親しいそうした過去のなごりはいっさい見出すことができません。自分の場所はどこにもないという気が、つくづくします。ー<訳者あとがきより引用>

    一作目の『悪童日記』からの謎や違和感が、決して綺麗にまとまるわけでも、納得できるよう明らかになるわけでもなかった。それが筆者や双子の痛みは薄れはしても消えることはないのだということを、より強く感じさせて胸が締め付けられる思いだった。

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著者プロフィール

1935年オーストリアとの国境に近い、ハンガリーの村に生まれる。1956年ハンガリー動乱の折、乳飲み子を抱いて夫と共に祖国を脱出、難民としてスイスに亡命する。スイスのヌーシャテル州(フランス語圏)に定住し、時計工場で働きながらフランス語を習得する。みずから持ち込んだ原稿がパリの大手出版社スイユで歓迎され、1986年『悪童日記』でデビュー。意外性のある独創的な傑作だと一躍脚光を浴び、40以上の言語に訳されて世界的大ベストセラーとなった。つづく『ふたりの証拠』『第三の嘘』で三部作を完結させる。作品は他に『昨日』、戯曲集『怪物』『伝染病』『どちらでもいい』など。2011年没。

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