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Amazon.co.jp ・本 (176ページ) / ISBN・EAN: 9784151200175
感想・レビュー・書評
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アインシュタインが見たかもしれない、時間に関する夢。三十通りの異様な時間は、不安でもあり、美しくもある。一つ仕掛けがあるのだが、知らずに読んだ方が面白い。後書きは、本編の後に読むことをお勧めします。
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・30の異なった時間軸を持つ夢の話が出てくる。概念を理解するには、読み込むことが必要。
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「1905年、スイス。26歳のアインシュタインは特許庁に勤務しながら革命的な物理学理論に打ち込んでいた。それは彼の生涯でもっとも輝かしい年と言われるほど、重要な論文がつぎつぎと発表された1年だった。そして有名な特殊相対性理論の完成を目前にした若き技師は、夜ごと奇妙な夢に悩まされていた。時間がさまざまに変化した異世界の夢……現役物理学者がアインシュタインが見たかもしれない数々の夢を流麗に描く傑作。』(カバー裏表紙より)
アインシュタインが特殊相対性理論の第一論文を『物理学年報』に発表したのは1905年6月末、「運動する物体の電気力学」がそれです。その理論の二大原理は「(ガリレオの)相対性原理」と「光速度一定(不変、絶対)」であり、その帰結として従来のニュートン物理学の前提から見れば摩訶不思議な世界が導き出せることとなりました。つまり、「運動している時計が静止している時計よりもゆっくり進んだり」(Newton『2001大改訂相対性理論』)、「ある人にとって二つの出来事が同時に起こったとしても、別の人には時間がずれて起きているように見えることがある」(佐藤勝彦監修『相対性理論を楽しむ本』)ことが提起されたのです。
この本は、アインシュタインが特殊相対性理論を生み出す際に、連夜のように時間に関する夢をあのクラム通りのアパートで見たという設定で、その三十夜にわたる夢を書き綴った掌編集です。夢の世界の設定は各種多様で、「時間が始めも終わりもない円環」である世界、「時間が空間とおなじく三つの次元を持っている」世界、「原因と結果が不安定な世界」、「時の経過とともに秩序が増していく」世界・・・。そんな突飛な、それでいてセンチメンタルな、あるいはロマンチックな世界が登場します。その夢の世界をどう評価するかは読者に委ねられていますが、出来不出来の差も大きく、また違和感を感じる世界が多いように思われます。それでも、ほとんどの挿話がベルン、あるいはスイスを舞台にしており、懐かしい地名が数多く登場するのが魅力的です。ベルンやフリブールやクラム通りやシュパイヒェル通りなどという名ががこれだけ登場する翻訳小説が他にあるでしょうか。
この作品では、むしろ、アインシュタインが登場するプロローグ、インタールード、エピローグで語られるアインシュタインとその友人ベッソーの会話と、その前後に挟まれたベルンの街並みを描いたイラスト(サインはすべて"CHRIS COSTELLO"となっている)が秀逸ではないでしょうか。
作者は現役の物理学者かつ天文学者であり、現在もマサチューセッツ工科大学で教壇に立つ一方、長編小説や科学エッセイをものにしています。この作者に例えば、ベルン時代のアインシュタインを探偵役にした、ミステリ短編集などを書いてもらえれば、と思いました。 -
1905年、スイス。特殊相対性理論に関する論文を書き上げる前の5週間のあいだ、夜ごとにアインシュタインが見た奇妙な夢。地球の中心から遠ざかるほど時の進みが遅くなり、永遠の若さを求める人びとが高山の上に住む世界。全員が世界の終わる日を正確に知っているため、平等と平和が実現している世界。記憶が存在せず、人びとが自身の一代記を持ち歩いている世界。時計がたった一つしか存在しない世界。姿を変える〈時間〉を一つずつスノードームに閉じ込め、30個並べたかのような連作短篇集。
解説でも言われている通り真っ先にカルヴィーノの「見えない都市」を連想する。著名人が見たかもしれない架空の夢という設定はタブッキの「夢の中の夢」と共通している。
上記のようにイタリア人作家の作品を思い出させる作風だったため、著者がアメリカ人だったのは少し驚きのような納得のような。夢の世界はアインシュタインが当時住んでいたスイスの古都ベルンに設定されており、古い石畳の街並みが夜毎に変わる時間の概念にぐにゃりと歪んでいく。そういうものが書けるのはヨーロッパの外の人だからかもしれない。
不思議なことに、カルヴィーノ作品のような哲学味は本書からあまり感じられない。時間の作用に影響されるものとして恋愛が何度も例に挙がるせいだろうか。恋人たちはオルゴール人形のように夢の中に繰り返し登場するけれど、現実の描写である「インタールード」では史実に基づくアインシュタインとベッソーの友情が描かれる。変化する恋愛感情と不変の友情?だとしたら古典的すぎるけれど。 -
時間があれば
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相対性理論に基づいて、日常生活で起こりうる時間と未来・現在・過去との関係性を物語風にしている。何をどう理解すれば良いのか、わからなかった。
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ー例え昨日の自分が金持ちであろうと貧乏であろうと、教育があろうと無知であろうと、高慢であろうと謙虚であろうと、恋をしていようと孤独であろうと、
それは髪をなぶるそよ風ほどにも重要ではない。
彼らは過去を振り捨てた。
こうした人たちはあなたの目をまっすぐに見つめ、あなたの手をしっかりと握る。こうした人たちは青春のようなしなやかな足取りで歩く -
宇宙だ。宇宙の本を読んでいる時のようなムズムズする感じがした。とても不気味な感覚を持つさまざまな時間概念の世界なのだが、サラっと表現されているので、割と創造しやすい。
そして、己の思考は改めて固定観念の塊なのだなと再認識できた。物理・量子力学の常識はは時間を捨てて考える。アインシュタインは捨て置かざるを得ない、最大の謎である時間に向き合った人なのであろう。が故に、この本のような不思議な時間概念を考えたのだろうと感じることができた。著者の創造力には感銘を受ける。
あとがきに書いてあったように他にどんな時間概念があるかなと、自分でも考えてみたが、貧相な思考能力に気づけたことが唯一の成果か。。。 -
現役物理学者の書いた、相対性理論をまとめてた頃のアインシュタインの思考を推測した本
時間・空間についての印象ベースの考察が興味深い -
想像力を刺激される.
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科学読本のガイドではよく候補に上がる一冊なので読んでみたが、あまり自分にはピンとこなかった。アインシュタインが見たかもしれない夢を想像して書いたとのことなのだが、このフワフワしたフィクションは残念ながら肌にあわなかった。
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アインシュタインが見たかもしれない夢というテーマの不思議な時間軸の寓話たち。
意外と目からうろこ的な発想はなかった。
相対性理論的な思考が身についているということなのか?ふむ。 -
四谷
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アインシュタインの見たかもしれないいくつもの夢で、ふわふわ浮かんでみる。
夢は真綿のように、しっかりと、幻想的に、現実とリンクする。 -
アインシュタインが見たかもしれない時間に関する夢をショート・ショートの形式で30篇つづっている。30種類ものさまざまな時間が存在する世界が次から次へと出てくる様は、ほかでは味わえない感覚。まさに時間のフルコースという感じで、アイデアの宝庫である。難解でもなく、どこかユーモラスで楽しめる作品。
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(2006.02.05読了)(2006.01.13購入)
アイシュタインの特殊相対性理論が発表されたのが、1905年、アインシュタイン26歳の時だった。それから100年が過ぎた。最近アインシュタインや相対性理論についての本が出ているということなので、少しはやりに乗ってみよう。
本文が150頁ほどなのですぐ読めるかなと思って読みました。日記風に書いてあるので、どんどん読めるのですが、一体何が書いてあるのかよくわからない状態が続きました。日本語がわかると言うのと書いてあることがわかると言うのが一致しません。
アインシュタンが出てくるのは、「インタールード」と題されている3箇所に友人のベッソーとでてくるのですが、相対性理論の内容が話されるわけではありません。
アインシュタインが相対性理論を生み出すに当っての苦悩や工夫が書かれているわけでもありません。解説を読んで、日記風の部分は、時間についてのいろんな様相を記述したものであることがわかった。
「時間が循環したり、静止したり、逆流したり、しゃっくりしたり、目に見える次元になったり・・・と、考えうる限りの奇妙な様相を見せる。」(157頁)
相対理論によると、光速で飛ぶ乗り物に乗っている人は、年をとらないとか、何処までも見通しがきくとすれば自分の頭が見えるとか、言われますが。そんな話が書いてあるわけではありません。
●円環(9頁)
仮に時間が始めも終わりもない円環であるとしてみよう。その場合、世界はその歴史を正確に、かつ無限に繰り返していくだろう。大多数の人は、自分が同じ一生を繰り返していることに気が付かない。
●機械時間と肉体時間(22頁)
この世界には、二種類の時間がある。機械時間と肉体時間だ。第一の時間は、休みなく左右に揺れる巨大な鉄の振り子のように、厳格で金属的である。第二の時間は、湾内を泳ぐ青い魚のように、くねくね身をよじる。第一の時間は融通がきかず、あらかじめ決定されている。第二の時間は、成り行き任せで進んでいく。
●高地ほど時間がゆっくりになる(26頁)
過去のある時代に、科学者たちは、時間の流れが地球の中心から遠く隔たるほど遅くなることを発見した。この現象が一般に知られると、早速一部の人々が、若さを保ちたい一心で山の上に引っ越した。(架空の話です。)
●不安定な時間(34頁)
原因と結果が不安定な世界を想像してみよう。時には原因が結果より先になることもあり、時には結果が原因より先になることもある。
●秩序へ向かう(59頁)
この世界では、時の経過とともに秩序が増していく。秩序が自然の法則であり、普遍の傾向であり、宇宙の方向である。もし時が矢であるならば、その矢は秩序を目指して飛んでいる。未来は様式であり、組織であり、統一であり、強化である。過去は無作為性であり、混乱であり、崩壊であり、分散である。(現実の世界では、逆です。)
●静止した時間(62頁)
ここは時間が静止する場所である。雨滴は宙に浮かんで動かない。時計の振り子は往復運動の途中で止まったまま。犬たちは声のないうなりに鼻面を上げたまま。
●気まぐれな時間(75頁)
これは計画変更の世界、突然機会に恵まれる世界、意外な幻が訪れる世界である。この世界では時間が一様に流れず、気まぐれに流れるので、その結果、人々は時たま自分の未来の幻をちらと眺めることができるのだ。
この本は、「訳者あとがき」と「解説」を先に読んでから本文を読んだほうがいい本です。
どんな時間がいいか考えるには、いい本と思います。
(「BOOK」データベースより)amazon
1905年、スイス。26歳のアインシュタインは特許庁に勤務しながら革命的な物理学理論に打ち込んでいた。それは彼の生涯でもっとも輝かしい年と言われるほど、重要な論文がつぎつぎと発表された1年だった。そして有名な特殊相対性理論の完成を目前にした若き技師は、夜ごと奇妙な夢に悩まされていた。時間がさまざまに変化した異世界の夢…現役物理学者がアインシュタインが見たかもしれない数々の夢を流麗に描く傑作。 -
六月九日《永久な時間》もいいし、最後の六月二十八日《ナイチンゲールの時間》とか圧巻。
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幻想的に夢の世界が描かれています
寝る前に読むといい夢見れそうな気がします
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