わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)

制作 : Kazuo Ishiguro  入江 真佐子 
  • 早川書房
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本棚登録 : 1167
レビュー : 147
  • Amazon.co.jp ・本 (537ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151200342

感想・レビュー・書評

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  • 良質のミステリー、いや推理小説?と思いつつ読み進めている。久しぶりに小説を読む楽しみというか読書の幸せを味わった作品。主人公が終盤、「過去」の答えを追い求めて戦場をさまようさまはおどろおどろしく恐ろしい。戦場で再開した幼なじみが「冷静に考えなければだめだ」という忠告も、恋人との新しい出発にも背をむけてしまうのは絶望的でありつつ美しくもある。

  • 「私を離さないで」よりも好き。
    イギリス人でありながら、上海の租界で幼少時代を過ごした主人公。両親を失ってからは、イギリスの叔母のもとへ引き取られる。最初は「上海のこそが自分の故郷だ」と思っていた彼も、だんだんとイギリスが自分の家だと感じるようになってくる(イギリスに「帰る」という表現を使うようになる)。
    上海は止まることなく変わり続ける。故郷の面影はどんどん消えてゆく。上海で彼が昔住んでいた邸宅も、他人の所有物となり何度も改築されている。第二次世界大戦後には「租界」というものすらなくなってしまう。彼自身の名前も変わる。加えて彼の今の地位は、実は母の犠牲の上に成立したものだった。探偵なんて何の役に立つ?そんな夢物語がここまで続いたことが奇跡だ……謎を解き明かされたとき、彼は人生を全否定され、アイデンティティを揺るがす。

    私はイシグロ作品を今までに「日の名残り」「私を離さないで」の二作読んでいるが、これらに比べてこの小説は一層「信用できない語り手」色が強いように感じた。明らかに無茶な主人公の行動を追いながら、本当に彼はそう思って動いているのか?それは真実なのか?と、何度も不審に思わされた。
    特にショックを受けたのは、アキラと再会したと思っていたが今となってはそれも本当だったのかよくわからない、と主人公が発言した場面。このあたりでは、読者もかなり多くの不完全燃焼や不安要素を抱えながら読み進めていることだと思う。それをさらに混沌とした非現実へ陥れるような主人公の発言には、胸がつまるような心地にさせられた。
    良い意味で、もやもや感が残留するような読後感だった。

    アヘン貿易や第二次世界大戦前の上海のようすが多く描かれているので、背景知識をもっとつけてから再読したい。

  • 自分が日常を生きているこのなんでもない瞬間にも、
    世界のどこかでいろんな人にいろんなことが起きていて、
    どこかで、重なったときに、
    そのときどうしてたとか、実はこんなだったとか。
    それは当たり前のことなんだけど、
    こんなに不思議なこともないなって思った。

    あんまり関係ないことだけど、この本は面白かったです。
    やっぱりこのひとは好きだ。

  • テーマがよくわからない。
    幼いころに孤児となった主人公の生涯かけてのカタルシスを追う物語か。

    エピソードを積み重ねていく形で物語は進行していく。ひとつひとつが何かの伏線となっているわけではなく、ぶつぶつと途切れる感じのエピソードなのだがなぜか引き込まれる。

    終始どこか不安定な雰囲気は漂っているのだが、上海に入ってから、特に両親の幽閉場所のヒントを握ってからの展開がなんだか夢でも見ているかのような非現実感。あのあたりは混乱し、あんまり好きでなかった。

    受け止めるのが難しいと感じた物語。

  • 本の最初の3/4くらいは
    いくつかとても心に響くシーンや
    セリフがあったものの、
    けっこう退屈だな~と思いながら
    読んでいたけど
    残りの1/4が、とても素晴らしかった。
    特にお母さんとの最後のシーンが感動した。

    ただ、カズオ・イシグロの作品は
    どれも奥が深くて、この作品にしても
    本人のインタビューやさまざまな書評を読むと
    私が読み切れていない部分も多々あって
    その辺を考えて読んだら
    もっと評価は高くなるのかも。。。

  • 「今日はどうだった?」と聞かれなかった子どもたちの話。

  • 誰もが抱えるような幼少期の思い出が、後半悪夢のごとき世界に接続される。
    わたしたちはずっと孤児のままだ。

  • んー、ないものを探し続ける。失ったものを追いかけ続ける、もうそこにはないと分かっているのに。

  • 探偵小説として読むと「えっ?」って感じだと思う。ちょっとミステリー仕立てだけど、ミステリーを期待して読んでも肩透かしを食らうかも。

    カズオ・イシグロって色々書くんだなぁ。まだ3作目だけど、どれもジャンル分けできないとこが好き。

    ただ、、バンクスはどーなんだ!あんな興奮しやすくて、名探偵になれるとは思えない(笑)
    久しぶりに主人公にいらーっとしちゃった。子ども時代のクリストファーは優しいし思慮深いところもあって、可愛い少年なんだけどなぁ。

  • 父に薦められて初めてカズオイシグロ氏の本を読みました。今まで日の名残とか映画化された小説を映画で観たことはありましたが本として読んだのは初めてです。

    描写がとても丁寧で人物の口調もよく言えば奥ゆかしく、回りくどいな、と。時代背景を考えるとそうだったんだろうか、と思います。回想として語られる昔の記憶の描写。そのシーンを切り取る手腕はすごいな、と思いました。

    ただ読み終わってものすごくへこみました。哀しい話だと思います。結局主人公も、ヒロインもアキラも両親もそして叔父さんも。すべてこの世の不条理と戦い、自分の正当性を確固として信じていたのにも関わらずある意味敗北せざるおえない状況に追い込まれてしまう。最後の叔父さんの語りで自分は敗北感に打ちのめされました。哀しい。
    ただ登場する女性はもれなく自己をしっかりと持ち、愚痴や自己憐憫、そして置かれた状況を卑下することなく前向きに生き抜こうとする強さがあり救われました。(ただそういわれてみるとお母さんもジェニファーもサラもパートナーと上手くいかなかったですね…)

    次は私を離さないでを読もうと思ってます。

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著者プロフィール

カズオ・イシグロ
1954年11月8日、長崎県長崎市生まれ。5歳のときに父の仕事の関係で日本を離れて帰化、現在は日系イギリス人としてロンドンに住む(日本語は聴き取ることはある程度可能だが、ほとんど話すことができない)。
ケント大学卒業後、イースト・アングリア大学大学院創作学科に進学。批評家・作家のマルカム・ブラッドリの指導を受ける。
1982年のデビュー作『遠い山なみの光』で王立文学協会賞を、1986年『浮世の画家』でウィットブレッド賞、1989年『日の名残り』でブッカー賞を受賞し、これが代表作に挙げられる。映画化もされたもう一つの代表作、2005年『わたしを離さないで』は、Time誌において文学史上のオールタイムベスト100に選ばれ、日本では「キノベス!」1位を受賞。2015年発行の『忘れられた巨人』が最新作。
2017年、ノーベル文学賞を受賞。受賞理由は、「偉大な感情の力をもつ諸小説作において、世界と繋がっているわたしたちの感覚が幻想的なものでしかないという、その奥底を明らかにした」。

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