わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫 イ 1-3)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (537ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151200342

感想・レビュー・書評

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  • わたしたちは時代の孤児なのです。上海租界の退廃した雰囲気が感じられて堪らないです。

  • 探偵が主人公だけど、事件の内容はわからないところがカズオ・イシグロの作品だと思う、なんとゆーかすごく風呂敷は広いんだけど書きたいことはある人物の心の動きなんだよなーと思う。

  • 読後は痺れてしばらく放心してしまった。抑制がきいた、正直な独白形式はこれまで通りだが、少年時代の親友アキラとの再会シーンだけは別格。イシグロの新たな面を見たようだ。また、孤児をめぐる人物の再帰構造も魅力を増している。自分と人の人生の幸不幸を安易に結論づけて語るまい、と思った。

  • 久々に重厚な小説を読んだ。今まで何冊かカズオ・イシグロの本は読んできたけれども、一番長いし、一番重量感もある。この人の本はそれぞれの長編が全く違う輝きを放っているのが魅力だけれど、本作も今までの本とは全く違った位置にいるもので、驚かされた。底知れない幅の広さだなあと。冒険の色が強く、次に何が起こるのか分からない。この人の本は今まではゆっくりと時がながれてその世界を堪能したい本ばかりだったけれど、この本はもう、次から次へとページをめくらなければならない、焦燥感を感じるものだった。早く続きが読みたいというわくわく感と、どこから湧き上がってくるのか分からない恐怖感。翻訳の関係もあるのかもしれないけれど、ふわふわとして実体の定まらない恐怖感みたいなものがあった。特に主人公について、どういう人間か大方掴めたと思った瞬間に崩され、ついていけなくなる感じ。これは翻訳の関係なのか、カズオ・イシグロが作り出した狂気の沙汰なのか、見極められない、と思いながら読んでいた。
    この本では、孤児というのが一大テーマで、それは実際に現実的な意味での孤児というだけではなく、もっと精神的な、人間の心のなかにおいて、孤児という存在は作られてしまっていく。その人間の心の悲しさを一番的確に表したのが孤児という言葉で、心に残る大きな重石のような、そんな本だと思った。もう一度読めばもっと深いレベルで色々なことが見えてくる、見えてきやすい本。もう一度読みます。

  • 探偵が主人公の冒険譚のため、前半は一見カズオイシグロっぽくないエンターテイメント性がある。だが、物語が少年時代の回想に映ると、いつものカズオイシグロ。

    とはいえ物語は、主人公の探偵が、少年時代に失踪した両親を探す話。心情を端正に描くより、スピーディに物語は展開する。ハードボイルドな調査シーンは一切なく、腕利きの探偵のはずがむしろ凡人に感じてしまうくらい。

    最後に明かされる真実に、心が打ちのめされる。それでもかすかにロマンと希望は残る。

  • 主人公の日本人の友達の行方がきになる。

  • 世界から一歩引いたような語り口は「わたしを離さないで」と同じでした。
    もう悪夢のような内容で、個人的にはそういうのが好きなのですが、バンクスが情緒不安定過ぎて読み手として心の置き場に困ります。

    あと、重要なところをあえて書かない手法なんでしょうが、私はそこをもうネッチネチほじくったものが好きなので、ちょっと物足りない。サドや大江健三郎みたいに執拗にほじくって欲しい。

    12.03.09

  • 上海の租界で育った名探偵クリストファー・バンクス。孤児であった彼は、大人になり、両親を探しに再び戦禍の上海に赴くが…〉

    カズオイシグロ。

    正直今回のは(カズオイシグロにしては)あんまりでした。不確かな語り手の記憶の手法はいつも通りでしたが、あまりに名探偵であるクリストファーが迷探偵な気がして…

    でもラスト50ページは凄まじい。真実とは時に残酷なことを見せつけられた。

    たぶんこの本から、「取り返しのつかない過去への後悔と正当化」から「どうすることもできない真実の受容」へとテーマがシフトした気がする。

  • なんか読みにくいんだよな、カズオイシグロさんの本は…

  • 「わたしを離さないで」が面白かったのでこちらも読んでみた。
    が、後半の戦闘シーンにいまいち入り込めず、なんだか非現実的だなあ、という印象で終わってしまった。
    長い年月を凝縮した物語の構成自体は良かったのだけれど。

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著者プロフィール

カズオ・イシグロ
1954年11月8日、長崎県長崎市生まれ。5歳のときに父の仕事の関係で日本を離れて帰化、現在は日系イギリス人としてロンドンに住む(日本語は聴き取ることはある程度可能だが、ほとんど話すことができない)。
ケント大学卒業後、イースト・アングリア大学大学院創作学科に進学。批評家・作家のマルカム・ブラッドリの指導を受ける。
1982年のデビュー作『遠い山なみの光』で王立文学協会賞を、1986年『浮世の画家』でウィットブレッド賞、1989年『日の名残り』でブッカー賞を受賞し、これが代表作に挙げられる。映画化もされたもう一つの代表作、2005年『わたしを離さないで』は、Time誌において文学史上のオールタイムベスト100に選ばれ、日本では「キノベス!」1位を受賞。2015年発行の『忘れられた巨人』が最新作。
2017年、ノーベル文学賞を受賞。受賞理由は、「偉大な感情の力をもつ諸小説作において、世界と繋がっているわたしたちの感覚が幻想的なものでしかないという、その奥底を明らかにした」。

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