わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)

制作 : Kazuo Ishiguro  入江 真佐子 
  • 早川書房
3.72
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本棚登録 : 1167
レビュー : 147
  • Amazon.co.jp ・本 (537ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151200342

感想・レビュー・書評

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  • 何とも言えない読後感です。
    最後に主人公が孤児になった真相が明かされるのですが、その現実(フィクションですが)が残酷…

    (2、3日、気がつくとそのことを考えていました…
    酷い話だが、こういうこともあったのかもしれない。)


    少年時代を回想する前半は、
    セピア色でノスタルジック&オリエンタル。

    イシグロ氏の本は今回が初めてですが、
    今まで何となく幻想的な作風の作家だと思ってたから、
    そっかこういう感じか、と。

    しかし大人になって探偵になった現在の、後半は、
    ヴィヴィッドな感じでした。迷彩色も入ってる(戦争の時代なので)。


    西欧人が統治していたきらびやかな租界の街と、
    市井の中国人庶民が暮らす、「押し入れほどの大きさの家」が並ぶ狭い路地裏。


    そして主人公が結構矛盾した性格だった。
    自分が思う自分と、他人が思う自分の像にギャップがある。
    思い込み?独りよがり?
    孤児として生きてきて、
    自分の世界を強固にしなければ生きていけなかったのかな、と。

    サラは他人を傷つけてきた(踏み台にしてきた)罰を上海で受けて、それでやっと幸せになれたのかな。

    大人のアキラは本当にあのアキラだったんだろうか。だとしたらこの後もずっと主人公との交流が続くといいな。

    正気を失ってしまったお母さんが哀しすぎた。
    最後のお母さんの鼻歌に涙。。。

  • 大好きなカズオ・イシグロ。
    『日の名残り』を読んで以来、夢中になり順番に読んで来ました。
    これで彼の物語で翻訳され本として出版されているものは全て読んだことになります。

    『わたちが孤児だったころ』は正直、私にとっては難解で読み終えるまでの時間が1番かかった物語でした。
    カズオ・イシグロの物語は全容がけっこう読み進めないと見えてこないという印象が強いですが、特に今回は本当に最後の最後まで良く分からず・・・
    ただその分、残り十数ページで全てが繋がりはじめた時の快感は格別でした。
    最後のページの最後の行を読み終えた瞬間、主人公が物語の中で見てきた風景や彼の子どもの頃の思い出が、まるで自分がかつて経験したかのように次々と思い出されて行くのには驚きました。
    しばらく時を置いてからもう一度読んだら、また違う受け止めかたができそうな一冊です。

  • 3冊目のカズオイシグロ。
    読了後、頭を殴られたような衝撃を受ける。
    小さい頃、失踪した両親を捜す為に探偵になったイギリス人男性が主人公の探偵小説...と思って読んでいた。
    大人になり、イギリスで探偵として成功している現在から、幸せな上海での子供時代を振り返る前半。満たされた、美しい、懐かしい少年時代。優しい両親と、アキラという日本人の男の子との大切な思い出。どこか歪んだ印象を受けるけれど、両親が失踪した事を覗けば、幸せな少年時代。そして、探偵として順調にキャリアをつみ、充実している現在。少々退屈してきた頃に、主人公は両親を捜す為に上海へと旅立つ。
    この辺りから「オヤ?」と思う。
    主人公の語る事と、実際におこっている事との違和感。ドロドロと醜い姿を現そうとする現実を、決して見る様子の無い主人公から、コミカルな印象すら受ける。
    終盤、戦場となっている貧民街に突入しても、その態度は変わらない。倒れている日本兵を、特に根拠もなく幼なじみと決めつける態度。そういえば、何十年も前に失踪した両親が、幽閉されているってどこに根拠が?両親が助け出された後の式典って一体なんなの?
    ...ちょっと気づくのが遅かったかな。このアタリから物語の中の違和感が突然形をなしてきて、ゾクゾクッ鳥肌!
    上海に両親を捜しにきてから先は、一気に読み進めてしまった。少し落ち着いたら再読したい。今度は主人公の言う事は鵜呑みにせずに...。

  • 上海の租界に暮らしていたクリストファー・バンクス
    10歳で両親が相次いで謎の失踪

    ロンドンで大人になった主人公が探偵として名をなし
    ついに両親疾走の謎を解くために中国へと向かう

    やがて明かされる残酷な真実

    淡々とした文章で読むのがつらい。
    探偵ってこんなに権力あるの?という疑問や
    主人公の突っ走りすぎる性格にイライラしたり。

    シーーンとした読後感

  • 第一大戦後から第二次大戦後までの時代を描く。
    主人公は私立探偵で、彼の回想によって物語が綴られる。

  • 翻訳物は苦手ながらノーベル賞を受賞されたカズオ・イシグロ氏の著作ということで一冊くらいは読まなくてはと購入。
    ロンドンの名探偵の設定からなかなか馴染めず読了まで時間がかかってしまった。
    後半からは物語として面白くなってきたが、探偵である必然性が感じられなかった。
    原文で読めれば深い部分まで共感できたのかもしれないが和訳がすとんと理解しにくかった。
    前半の霧に包まれたような不可解な点が後半で解決に向かうのだが「母を訪ねて三千里」の戦中版のような気がした。

  • 不思議な感じの小説である。主人公と周りの世界とのズレを匂わせながら展開していき、上海での両親探索にて主人公は異世界に入り込む感じになる。でも何事もなかったように終わる小説。

    前に読んだ「日の名残り」も、同じく一人称独白振り返り式だったが、そちらは主人公のズレがエンディングで明らかになるのとは本書は一味違う。

  • 子供時代を過ごした故郷の記憶。長い間故郷から離れて過ごしていると、それらの記憶が自分の基礎を形作っているのだと実感する。故郷の風景、感触、におい、手触りがふとしたきっかけで潜在記憶から立ち上ってくる。今の生活が苦しかったり不本意だったりすればするほど記憶は美化されていく。子供時代へのノスタルジーを心の拠り所にするために。
    記憶の中の美しい故郷を失いたくなければ、今現在の「現実の」故郷は見ない方がいい。破綻や失望が待っているだけだ。
    というお話だったんだろうか?と、読了して数ヶ月経ち、そう思えてきた。主人公の故郷は、第二次大戦前の上海の租界地という特殊な場所だ。どうしようもないほど世俗的で、世間の問題から目をそらしている人たちのすみか。ここを「故郷」と呼ぶような人はいるわけがないだろう、と思えるのだが、主人公にとっては紛れもない唯一の「故郷」なのだ。子供時代の瑞々しい描写と、主人公が長じて上海に戻ってからの荒唐無稽なストーリー展開の対比は、「記憶の中の故郷はそっとしておけ」というメッセージだったのだと勝手に解釈している。

  • このように思っていた、でも実はそうじゃなかった。著者のいくつかの作品に通底する真実の残酷さ、人間の曖昧さがこの作品にも表れている。優雅な上海租界の少年時代と対照的な30年代の日中戦争の悲惨。こんな時代にあって主人公が奮闘する目的や生きる意味の重さが、ラストの山場、幼馴染のアキラとの再会シーンに凝縮されているように思えた。最後にはやはり涙が滲んできた。

  • 子供時代を上海で過ごしたイギリス人のクリストファーは10歳のころ突然両親が失踪する。その後イギリスで不自由なく過ごし、探偵となり両親の謎の失踪の理由を突き止め両親を探し出そうと奔走する。失踪当時は中国にアヘンが入り国民がそれに犯されていたころで、父は別の理由でいなくなり、母はアヘンに対する活動からある中国人に拉致されるがそれと引き換えに息子が何不自由なく暮らせるだけの資金提供をしてもらう。母として気がかりは息子のことだけだった。母はひどい仕打ちを受け晩年は正気を失うがそれでも息子のことだけは気にかけていた。クリストファーはある施設にいる母を探し出すが、そこでの暮らしに満足している様子の彼女をそのままそこに残すことを決める。母の我が子への愛とはここまで深いものだと私自身納得できる。

著者プロフィール

カズオ・イシグロ
1954年11月8日、長崎県長崎市生まれ。5歳のときに父の仕事の関係で日本を離れて帰化、現在は日系イギリス人としてロンドンに住む(日本語は聴き取ることはある程度可能だが、ほとんど話すことができない)。
ケント大学卒業後、イースト・アングリア大学大学院創作学科に進学。批評家・作家のマルカム・ブラッドリの指導を受ける。
1982年のデビュー作『遠い山なみの光』で王立文学協会賞を、1986年『浮世の画家』でウィットブレッド賞、1989年『日の名残り』でブッカー賞を受賞し、これが代表作に挙げられる。映画化もされたもう一つの代表作、2005年『わたしを離さないで』は、Time誌において文学史上のオールタイムベスト100に選ばれ、日本では「キノベス!」1位を受賞。2015年発行の『忘れられた巨人』が最新作。
2017年、ノーベル文学賞を受賞。受賞理由は、「偉大な感情の力をもつ諸小説作において、世界と繋がっているわたしたちの感覚が幻想的なものでしかないという、その奥底を明らかにした」。

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