- Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151200458
作品紹介・あらすじ
コネティカットの農家に長男として生まれたアダム・トラスク。暴力を嫌い、つねに平穏を求める従順な青年に育ったが、厳格な父サイラスの愛を渇望する腹違いの弟チャールズに虐げられ、辛い日々を送っていた。サイラスは息子の弱さと兄弟の不仲を案じ、アダムにインディアン討伐の騎兵隊に参加するよう命令するが…。アメリカ文学を代表する文豪が渾身の筆で描き上げた、父と子の物語の新訳版。
感想・レビュー・書評
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もうかなり前ですが、図書館で借りて読みました(全4巻)
映画はそんなに面白いとは思わなかったけど
文章で読むと深かったし、印象的なシーンもありました。
赦しとは何か?考えさせられた作品。 -
なぜ 今まで読まなかった
名作には名作の理由がある
文章の随所に人間の本質への深い理解が -
やっぱりスタンベックは面白かった。でも怒りの葡萄の方が好きかな。
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愛や善を信じられないキャシーの残忍さは暗い話好きな自分でも底冷えする怖さがある。長い時間軸で流れていく話ではあるのだが、高い表現力と切り取った人生観の深さで味のある作品になっていて、飽きずに読める。相当面白い。買うか悩む。
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奇数章ではトラスク家、偶数章ではハミルトン家について語られ、中盤でエイムズ家が登場する。
序盤のゆったりとした自然描写からは想像できないほど、辺りに危険な香りを漂わせ、充満させる人物が現れる。
ハミルトン家の異分子アダムと、エイムズ家の異分子キャシーだ。
アダムとキャシーの章が交わった時、互いに互いを警戒しつつ、試そうとする。
人間の肉体は脆い。なぜなら、老衰するから。痛めつけられれば動けなくなるから。たった一文で、作者の手によって殺されるから。
だが、冷酷な精神を持つ者の心の奥底は計り知れない。相手より優位に立つためなら欺瞞も厭わない。その精神力は何行も何頁も綴られる。
「肉体の脆さ」と「冷酷な精神」は激しく対比される。
自分に優位になるように相手の心を操り、相手を籠絡するのは、アダムとキャシーの果たしてどちらだろうか?
絶対に次の巻が読みたくなる終わり方だった。
p27
ヒステリーを鎮め、おびえた子供を落ち着かせる腕前で、サミュエルの右に出るものはなかった。きっと言葉の柔らかさと、心の優しさのせいだったろう。外見に清潔感があったように、ものの考え方にも清潔感があった。サミュエルとしゃべり、その話を聞くために鍛冶場に来る男たちは、その場だけのことながら、日頃の悪態を控えた。べつに注意されたのではない。悪態はこの場にそぐわないと、自然に感じさせる雰囲気があった。
p31
自分を信じ、自分という個人を尊んだから-価値ある道徳的存在となりうる一つの人格だと信じて疑わなかったから-自分の勇気と尊厳を神に与え、あらためて神からもらい直すことができたのだと思う。いまの世から無謀な企てが消え失せたのは、たぶん、人がもう自分を信じなくなったからだ。自分への信頼がなくなれば、あとには何も残らない。誰が強い信念の人を見つけ、その信念が誤りかどうかには目をつぶって、その人の上着の裾にしがみつくしかない。
p120
時間の経過というものは、実に奇妙で、矛盾に満ちている。無味乾燥な時間や、何事もなく過ぎていく時間は、無限の長さにも感じられるはずだと思う。絶対にそうであるはずなのに、実際は違う。のんべんだらりと過ごした時間ほど、振り返ってみると短い。興味の川を下り、悲しみの岩に傷つき、歓喜のクレパスを飛び越えていた時間こそ、記憶の中では長い。考えてみれば当然のことかもしれない。時間の中の出来事は、記憶を支える柱だ。事もなく過ぎた時間にはその柱がなく、記憶のカーテンを吊るせない。無から無までの時間は、やはり無になる。
p155
もし大好きであってみろ、もう疑心暗鬼だ。昔のおまえがそうだった。愛情ってのは、きっと人を疑り深くするんだろう。女が好きになると、目が見えなくなるっていう。相手の気持ちがわからなくて、自分に自信がなくなって、何も見えなくなる。
p164
人間は、さまざまな欲望や衝動を隠し持っている。一皮むけば、感情の地雷、我欲の列島、劣情の沼が露出する。ほとんどの人はそれを隠していて、自分一人のときだけこっそり抑制を緩める。 -
インディアン掃討が続いている時代に生まれたアダムと、その母親違いの弟チャールズの二人を主軸に進む物語。
謹厳な父親が、実は詐欺的手法で国の主要人物にまで上っているのを知っているアダムは愛されつつも、距離を置いていた。
一方チャールズは、愛されたいが故に父を慕うが、彼の性情の底にある暴虐性を見抜いていた親からは認めらず、その嫉妬からアダムを殺害寸前にまで痛めつける。
軍に入ったアダムは十年をそこで過ごし、チャールズに恐れを抱かなくなっていた。
また時を同じくして、悪徳の粋のような女性が生まれ、育ち、アダムと結ばれる一方で、著者スタインベックの祖先が荒地を開拓していく様子も描かれるが、こちらとアダムたちの話がどう繋がるか、あるいは繋がらないのか、まだ先が見えず。
長い長い、そして興味深い人物紹介で第一巻は終わる。よく見る題名の本だったので、いつか読んでみたいと思いつつ、難しいのでは?と避けていた。けれど、とても読みやすく、面白い。
引き続き二巻へ。 -
最終巻に記載。