どちらでもいい (ハヤカワepi文庫)

  • 早川書房
3.26
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本棚登録 : 390
感想 : 45
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  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151200496

感想・レビュー・書評

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  • アゴタ・クリストフの小説は、「悪童日記」三部作だけだと、何故か思い込んでいたので、本書を見つけた時は嬉しかった。
    三部作と異なり、本書は短編集。「悪童日記」が書かれたのが1986年。この短編集の発行は2005年なのであるが、本書に収められているのは、1970年代から1990年代前半頃までの、クリストフのノートや書き付けの中に埋もれていた習作のたぐいを編集者が発掘し、一冊にまとめたものであるらしい。
    従って、短編集を貫くテーマなどもなく、また、作品の出来栄えも、率直に言えば今一つ。私も、これが、アゴタ・クリストフの書いたものでなければ、読み通す気は起きなかっただろう。

  • 三部作の余韻に浸りながら読み進めました。短編集であるこの本を通して読んでみると作者は「生と死」を区別して考えていない、という印象を受けました。彼女は生きている人も死んでいる人も同じ世界にいるものと考えているのだと思います。作品の中では特に両者の「魂」のようなものが故郷(愛するもののところ)に留っているもしくは囚われているという描写が多かったように思います。

    それとやっぱり一番に感じたことは本の中に漂う「暗さ」です。作者の心に闇を投げかけた彼女自身の悲痛な歴史を僅かながら感じられた気がします。闇とかちゅうにでしたね。

    この本を書くのはすごく苦しかっただろうな。同情します。別にして欲しくないか。

  • 数ページで終わるショートショートから短編などの掌編。最後の話は『 悪童日記』のベース?雛形のような作品で一番よかった。

  • アゴタ・クリストフって確か移民なんだったっけ。フランス語が母語ではないからか、文章が長ったらしくなくテンポが良い。訳文も短い文章で構成されていて、読み易いのだが、今作は回想・幻想?・独白などの体を取ったものが多く少ない語数ではなかなか読み取れない部分も多いのだなと感じた。

    『ホームディナー』『製品の売れ行き』が好きだった。愚かな男が分かりやすく表現されている。『私の父』は哀しいな。彼女の生い立ちが関係しているのだろうか。淡々とした文章の上に常に死や絶望、悲しみが漂っている。『悪道日記』の続きも読みたい。

  • 悪童日記へのつながりを思わせる短編が収録されている、ということで手に取った本書。
    彼女の本を初めて読んだけど、どのお話も申し訳ないほど終始なにを言っているのやら……だった。
    訳書だからかもしれないけれど、文章も堅く読みづらい。

  • “この世の何処にも、父がわたしと手をつないで散歩をした場所はありません。”(p.163)

    “他にすることがあるとき、人は怒ってなどいられない。”(p.167)

  • 悪童日記がずっと積読のまま放置されており、でもやっぱり読む気がしないので、こっちを先によみました。
    短編どころか掌編だったり散文詩だったりでバリエーションはあれど読み応えはない。おとなしく悪童日記を読みます。

  • 文章の感じは作者の雰囲気を出しているけど、これを読んで悪童日記を読まないのは避けたい所。いろんな長さの作品がある。それぞれの印象があるけどやはり長編の方がいい気がする。

  • 25篇の短篇集。似たような話、夢か現か解らない話、様々な短篇が入ってました。

  • ★3.5
    全26篇が収録された短篇集。短いものは僅か2ページのショートショートだけれど、孤独と喪失が支配する独特の世界観は全てに健在。そして、「悪童日記」3部作へと繋がる片鱗が、あちらこちらに見え隠れする。中でも、単行本未収録の「マティアス、きみは何処にいるのか?」は、その名前を聞いただけで感慨深い気持ちになる。現実感たっぷりの「ホームディナー」と「製品の売れ行き」、最後の一文が心に迫る「わたしの父」も印象的。それにしても、訳者がアゴタ・クリストフの言葉を“モノクローム”と表現するのがとてもよく分かる。

  • 2016.03.14
    アゴタ・クリストフ『どちらでもよい』読了。『昨日』と並行読みして混同したけど、クリストフ色いっぱいの短篇の数々。どの作品も根底にあるのは作者の人生かと。作風が唯一異なる(と私は感じた)『我が家』という作品が心に沁みた。これがご本人の本心だと良いけど。

  • 計26の短編集。どれも虚無感に覆われている印象を受けた。生きながらも死んでいるかのような「ある労働者の死」、無気力な「私は思う」に共感した。著者の書いた本なら何でも読みたい人向き。

  • 2015/09/21
    アゴタ・クリストフの短編集。悪童日記ほどのインパクトはないが、空気感はそのままである。

  • 短編集というよりはショート・ショート、或は習作集といってよいかもしれない。しかし、習作には習作の味がある。ああ、これがあの作品の原型かあ、などなど。それでも、本作品集にはひとつの貫かれたテーマ性を感じる。それは、「絶望」だろう。特に、私は思う、という作品は秀逸。

  • 嘘を付くことが弱い事だと思わない。本当の弱さとは嘘を付いている事を認めないこと、嘘を付いていると気が付かない事を指すのだから。短編集というより喪失と悲哀のショートショートの様な本作は、タイトルが示している通り時に投げやりな感はあるものの、それが彼女の人生にこびりついた絶望と後悔に一層凄みを与えているのだ。そう、皮肉な笑いは虚無をやり過ごしてくれるが、それはただ先送りしているだけに過ぎなかったのだと気が付いた瞬間の、真っ逆さまに落ちていくあの感覚。商品として体裁を整えられる以前の、剥き出しの虚無の断片集。

  • 有名な悪童日記三部作以前の短編集でサクッと読了。このころからすでに乾いたような文体で、内容もかなり暗い。後の作品のモチーフらしき話もちらほら。著者のファンでなければ、あえて読まなくてもいいかもしれない。

  • 幻想的だったり風刺的だったりする話ばかりの掌篇集。
    全体的に物悲しい雰囲気が漂ってる。
    なんだか秋の夕暮れに誰もいない路地で落ち葉が風に舞ってるような…そんな切なさ。

    いくつかの話には『悪童日記』三部作に出てきたのと似ている文章やモチーフが見うけられます。
    『マティアス、きみは何処にいるのか?』は三部作の前の話とか、続編とかなのかなと思っていたらそうではなくて、『悪童日記』のモチーフがあるという感じなんですね。
    これをもっと練っていったら『悪童日記』になりそう…という感じ。

    やはり作者の本は好きだけど、『悪童日記』のインパクトが凄かったのであれ以上には思えない。

  • 殺風景をずっと眺めていたい人にオススメです。

  • シュールな短編集。好きだ。

  • 本当に、どちらでもいいの?

    小説と言うよりかは散文詩のような、リズムを持つ小話集だった。
    思い返してみるとおそらく『悪童日誌』シリーズもこれと同じようなリズムとフランクさが読みやすさの秘訣だったのだろうと思う。



    全体的にもの悲しさがあふれる物語ばかりだった。
    これは作者の出自などの背景が関わるのかと、変な勘ぐりをしてみたり。
    今更この作品群を読んで、アゴタ・クリストフって現代作家なのだなと実感した。
    抽象画を小説にしたような物語だ。でもやはり女性らしさってほのかにでも感じるものだな。
    個人的には『運河』がお気に入り。色彩のコントラストと抽象的な描写がとてもよい。

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著者プロフィール

1935年オーストリアとの国境に近い、ハンガリーの村に生まれる。1956年ハンガリー動乱の折、乳飲み子を抱いて夫と共に祖国を脱出、難民としてスイスに亡命する。スイスのヌーシャテル州(フランス語圏)に定住し、時計工場で働きながらフランス語を習得する。みずから持ち込んだ原稿がパリの大手出版社スイユで歓迎され、1986年『悪童日記』でデビュー。意外性のある独創的な傑作だと一躍脚光を浴び、40以上の言語に訳されて世界的大ベストセラーとなった。つづく『ふたりの証拠』『第三の嘘』で三部作を完結させる。作品は他に『昨日』、戯曲集『怪物』『伝染病』『どちらでもいい』など。2011年没。

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