わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫 イ 1-6)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (450ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151200519

作品紹介・あらすじ

優秀な介護人キャシー・Hは「提供者」と呼ばれる人々の世話をしている。生まれ育った施設ヘールシャムの親友トミーやルースも提供者だった。キャシーは施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に力を入れた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちのぎこちない態度…。彼女の回想はヘールシャムの残酷な真実を明かしていく-全読書人の魂を揺さぶる、ブッカー賞作家の新たなる代表作。

感想・レビュー・書評

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  • 長い間積読していた本です。やっと読めました。

    この作品は、感想を書けばネタバレ必至になりそうな話ですが、イシグロ氏本人が「ネタバラシOK」帯に何の話か書いてもOK。と言っているらしいので、ネタバレで書きます。

    主人公は31歳の介護人のキャシー。
    ヘーシャルという寄宿学校で育った子どもたちの話です。
    キャシーもそこで育ちました。

    子どもたちは、大きくなっても自分たちは憧れの職業には就けないことを知らされます。
    子どもたちには誰にも親(ポシブル)はいません。
    そして教室では性と「提供」ということをないまぜにして先生たちから教わります。
    大きくなっても赤ちゃんが産めない体であり「特別な生徒なので体を健康に保ち将来の提供に備えること」。

    そして、宿舎内の子ども同士の人間関係が時として非常にリアルに語られます。
    キャシーの一番仲良しなのはルースとトミーで二人はカップルです。

    そしてキャシーは初めにルースの介護人になり、ルースは提供の使命を終えます。次にキャシーはトミーの介護人になり、トミーと付き合います。
    トミーもまた三回目の提供を終えています。

    キャシーとトミーはヘーシャムを辞めたエミリ先生と再会します。そこでヘーシャムの真相が明かされます。



    以下完全ネタバレです。お気をつけください。



    もう一人ヘーシャムを辞めたルーシー先生はヘーシャムを辞めさせられていました。
    ルーシー先生の意見が問題になっていたのです。
    「生徒たちの意識をもっと高めるべきだ。何が待ち受けているか。自分が何者か。何のための存在かちゃんと教えた方がいい。物事をできるだけ完全な形で教えるべきだ。それをしないのは生徒たちをだますことに他ならない」

    トミーも四回目の提供を終えて使命を終えるのですが、その前にキャシーにルーシー先生の意見が正しいと言っていたのがこの作品のテーマでしょうか。

    この作品は臓器提供をする試験管ベビーたちの物語です。

  • 主人公キャシーが生まれ育った施設や親友トミーとルースとの思い出を静かに語る様に引き込まれ一気に読んだ。施設の秘密が明かされた後の激情や友の死までもが淡々と描かれる中、時間を巡る考察など印象的な言葉がいくつも出てきて忘れ難い話となった。

  • めちゃくちゃいい本でした❕
    著者の作品は、めちゃくちゃ計算された構成で、話がどんどん展開され、グイグイ引き込まれます。

    タイトルの「私を離さないで」は、作品中の歌の歌詞に出てくる言葉ですが、この言葉がタイトルになっているのは、深いです。
    なんとも言えない読後感になります。。。

    著者の新作「クララとお日さま」も読んでみたくなりました。
    ぜひぜひ、読んでみてください



  • 「日の名残り」がとても気に入ったため
    こちらも読んでみることに

    当時映画の予告編を見て、行こうか迷っていたため気になっていたのだ
    だがこちらの映画化は2010年今から10年前!
    それでも忘れられず印象に残っていたのである(この頃、イシグロカズオ氏を知らなかったため、本と映画は結びついておらず…)
    それもあり、なんとなく内容は把握していたのだが…
    自分の甘っちょろい想像以上の内容であった


    現在から過去の出来事をゆっくりと紐解いて展開する
    (遡ること10歳くらいから、現在30代の主人公へ…)
    10代前半の彼らはヘールシャムの施設で保護官の元暮らしている
    キラキラ眩しくうるさいほどの無邪気な子供時代
    一見普通の子供達なのだが、少しずつ影と違和感が見え隠れし、次々の疑問が湧く
    何故か堂々と聞くことができない暗黙のなにか…
    何故、私達は絵や詩など展示館向けの作品を製作させられるのか?
    外の世界と自分たちはなにが違うのか?
    子供じみたいくつかの描写と対照的な謎めいたいくつかの暗い影(見事に引き込まれる)

    彼らは成長し、施設を出て、保護官のいないコテージで共同生活を共にする
    満ち潮のようにゆっくり迫る不穏な予感
    だが少しずつしか明かされないため、主人公たちと同じように読み手側も同じ気持ちにさせられる
    (この共感効果もなかなかである)
    自分に似た「ポシブル」の存在って?
    女性の主人公がアダルト雑誌ばかり見るのはなぜ?何を探しているのか?
    真実が揺らめきとともにわかりかけてくる頃、目を背けた方が楽しく生きられる!
    そんな確信があるからこそ、知りたいのに口にできないいくつかのことが徐々にわかってくるのだ
    その瞬間にもっと強く逃げずに向かい合っていたら…
    そんなことの繰り返しだ
    なぜなら、心のどこかでこの先を感じていたから
    それは提供者のことだけじゃなく、彼らの心もだ
    このちょっとした繊細なズレや綻びが積もっていき、悲しみに移行してしまう
    誰にもどうすることのできない悲しい残酷な運命を背負った彼ら
    それを各々が徐々に知り、受け入れ始める
    そう彼らはあらゆる出来事を受け入れるしかないのだ!彼らの方法で
    裏切りに近い友情でさえ受け入れ、友情を育んでいく
    激しく心が揺さぶられる内容でさえ、川のせせらぎのようだ
    じわじわ締め付けられる悲しみで表現され、信じがたい酷いことさえ、いつも静かで美しい世界なのだ
    覚悟をしていた悲しみがじわりと広がる
    彼らと同じように受け入れたのだ…

    イシグロ氏の本を読むといつもイギリスの田舎の湖畔の風景に自分が染められ、暑くも寒くもなく、かんかん照りでも雨でもなく、そよそよたまに風が吹く
    悲しみ溢れる作品のはずなのだが、穏やかで落ち着く世界観がとても居心地が良い
    読ませ方の構成や、読者の心を掴み続ける展開はさすがである
    だが決して行き過ぎたテクニカルでイヤミな感じが全くなく上品なのだ
    同じ内容の作品がイシグロ氏以外であったら、恐らく受け付けない内容だろうなぁ…
    (失礼ながらもう少し陳腐な作品か、こてこてのテクニックとお涙頂戴系の苦手なタイプになりそうである)
    しかし恐ろしいが、こんな時代がくるのかもしれない
    そういった意味でも問題提起があり、考えさせられる内容であった




    • トミーさん
      レビューを
      ありがとうございます。この作品「カズオイシグロ」頓挫してますので
      また挑戦したいです。「読みたくなりました」
      レビューを
      ありがとうございます。この作品「カズオイシグロ」頓挫してますので
      また挑戦したいです。「読みたくなりました」
      2020/07/01
    • ハイジさん
      トミーさん
      コメントありがとうございます!
      ぜひぜひ最後まで読んでくださいませ。
      後半から展開にスピード感出ますので読み切れると思いますよ♪...
      トミーさん
      コメントありがとうございます!
      ぜひぜひ最後まで読んでくださいませ。
      後半から展開にスピード感出ますので読み切れると思いますよ♪
      レビュー楽しみにしていますね!
      2020/07/01
  • 遅まきながらノーベル文学賞受賞おめでとうございます!
    日本人3人目ということで、これまで読む機会がありませんでしたが、カズオ・イシグロの本を読む良い機会になりました!

    独特の世界観の下、物語の詳細な背景や理由はついぞ明らかにされないものの、現実には哀しく辛いテーマであり社会的にも重たいテーマであるにもかかわらず、終始一貫した作者の温かい眼差しのおかげで、何とも言えない深い余韻のうちに物語を読み終えることができました。

    主人公で語り部であるキャシーが介護人をしながら回想する「寄宿学校」ヘールシャムでの思い出は、時系列にではなく、縦横無尽に時間を往来します。しかし、それによって物語の筋は大きく崩れるわけではなく、むしろ読者であるわれわれの物語への深度が強まるのは、作者の卓越した文章力のためであるでしょう。
    当初は普通に幼少年期の思い出を辿っているのかと思いきや、合い間合い間に次第に登場する違和感のある単語たち。
    日常の物語に紛れその違和感を何となくスルーしてはみるものの、用法が明らかにおかしい言葉が増すにつれて、だんだんと尋常ならざる世界が見えてきます。
    普通でない世界で展開される主人公を取り巻く学校生活の描写は、それなりに面白く、ぐいぐいと引き込まれていきます。
    そんな中、主人公のキャシーと友人のルース、そしてみんなからバカにされながらも感性が豊かな男の子トミーの三者の関係が提示され、物語の輪郭が徐々に見えてきます。
    最初から全てを説明せず、ゆっくりと浸み込ませるように輪郭を明らかにしていく手法はさすがに上手いと思いました。

    その後、輪郭が明らかになった後も以前として引っかかるもどかしさを抱えながら、舞台はコテージに移り、そしてさらにノーフォークへ。
    主人公のキャシーとトミーが連れだって、『私を離さないで』の曲を見つけ出す場面などは、映画のワンシーンのようでとても楽しかったです。ヘールシャム時代、まだ幼かったキャシーが『私を離さないで』の曲とともに踊っていたシーンも印象的でした。
    舞台がコテージに移ってからは、ルースとトミーのカップルと主人公のキャシーの関わり方、これに先輩カップルが加わって関係が一層絡まっていきますが、セックスの話が増えだして、これは終盤に向けての「生」への前振りかなとも思ったのですが、これには見事に作者に裏をかかれてしまいました。

    コテージを後にしたキャシーが介護人になってしばらくしてからのルースやトミーとの再会は、むしろ辛さが先に立ちますが、相変わらず柔らかい視点での描写が程良いオブラートになっていて、彼女らの最後の勝負に向けての勢いも増していくので、物語への興味が失われることはありません。
    しかし、最後に明らかになったことは、結局、エミリー先生とマダムがしてきたことは、例えていうと、養殖の高級魚にキャビアとかトリュフを与えて世話をしているようなもの?あるいは豚や牛や鶏にフォアグラを与えて世話しているようなもの?さらにはそのアヒルを広い庭の中で自由で快適に暮らさせているようなもの?とも思え、まさに放逐されたルーシー先生が読者の葛藤を代弁していたんですね。
    改善を努力してきたというエミリー先生とマダムって・・・。何とも言えない感覚になりました。
    そしてここに至り最後は「運命」に諾々と従うキャシーとトミーの2人。
    諦観とやるせなさと大切な「時間」とお互いを思いやる気持ちが複雑に入り混じり、深い余韻のままに物語が終わります。

    この作品では絵とかカセットテープとかの小道具から、「寄宿学校」やコテージ、船などといった大物まで、印象的な造形物が巧みにシーンの中に「柔らかさ」として使われていて、さらに生徒同士、先生や仲間との会話に繊細さと迫真さがこめられながらも全体として抑制が効いていて、物語の構成上の「優しさ」が滲み出ていた作品でした。
    インパクトとしては半減したかもしれませんが、心に刻み込まれた分、事あるごとに印象として再現してくるのかもしれません。

    さあ、果たして日本人4人目は・・・?

  • 核心に触れそうで、触れない。
    最初の方は、なかなか物語の真意が掴めず、ただ
    ページを捲るだけしかできなかったが、クライマックスになるにつれ、ある人物が出てきてからより重厚な映画を観ている感覚になりました。
    ヘールシャムがつくられた意味は、そこで行われていた、展示会に選ばれる作品たちにどういった
    思いがあったのか、私には少し難しい印象がありました。特に物語の倫理観ですね。この倫理観を
    嫌う人もいるだろうし、文学にはこういった世界観もいいだろうと思う人も、賛否両論あると思います。臓器を提供するために造られたクローン人間という、残酷な運命を待つ人たちの物語です。

  • 「自分は なぜ生まれてきたのか」
    「どうして生きているのか」
    「誰のために生きているのか」
    登場人物は、これらの問いに否応なしに巻き込まれていく…

    テレビドラマ化(2016年)されたことがきっかけで読んだのだが、読めて良かった。
    個人的には、音楽室のシーンが好き。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      workmaさん
      AI通して描く人間愛…カズオ・イシグロ、世界最速インタビュー(前編) : 読売新聞(2021/03/03)
      https...
      workmaさん
      AI通して描く人間愛…カズオ・イシグロ、世界最速インタビュー(前編) : 読売新聞(2021/03/03)
      https://www.yomiuri.co.jp/culture/20210226-OYT8T50051/

      此処に「『わたしを離さないで』は、(人間たちのために生きる)「提供者」を描くことで、より人間をうまく描けるのではないかと思いましたが、」とあるのですが、猫は最初、あるかも知れない未来を想像してゾっとし、読み返してからは人は人によって生かされているのだから感謝しなきゃ。
      更に、、、と色々思いが交錯する作品です。。。
      2023/12/27
    • workmaさん
      猫丸さんからのコメントを読んで、
      印象深いシーン以外は忘れてる部分もあるので…(^^)(ほとんどか?)
      昨日からもう一度読み直してます。

      ...
      猫丸さんからのコメントを読んで、
      印象深いシーン以外は忘れてる部分もあるので…(^^)(ほとんどか?)
      昨日からもう一度読み直してます。

       読み直して思ったのは、まず、導入キャシーが一人称で語り始めるところから…文章がほんとうに美しいんですよね…!情景も浮かび、読者は物語の世界の中へするりと入ってしまう…。文章が上手な作家さんの特徴ですね。
       もっと読みたいのですが、今寝台列車に乗って旅行中のため、電車酔いしないように、ゆるゆると読み進めていきます。

      2023/12/28
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      workmaさん
      良い旅を!
      workmaさん
      良い旅を!
      2023/12/28
  • 『日の名残り』が素晴らしかったため、同著者の有名な作品である『わたしを離さないで』を読むことを決意。
    長らく積読していたが、休日を使ってじっくりとカズオ・イシグロの描く緻密な世界を堪能することができた。

    ”提供者”や”介護人”、”施設”といった何かを暗示するかのようなキーワードが飛び交い、読者は主人公であるキャシーの回想を追っていくことでその哀しい真実に触れることになる。
    土屋政雄氏の名訳も相まって、爽やかな情景のなかに徐々におぞましい社会の構図が浮き彫りになっていく展開は、残酷だがそれゆえに儚さと美しさを感じることができた。
    どんでん返しや安直なハッピーエンドは望むべからず。だからこそどうしようもなく切なく、心にずしりと残る名作だった。

  • カズオ・イシグロ氏の著書を読んだのは4冊目。
    1番読みやすかったです。初めてカズオ・イシグロ氏の小説を読まれる方にオススメしたい本です。

    小説の序盤は「介護人」「提供者」「保護官」「へーシャム」が何を意味するのか謎でしたが、読み進めていくうちに解き明かされていき、カズオ・イシグロ氏の世界観に浸れました。

    ネタバレを避けるため詳しくは書きませんが、
    「スッキリ爽快、明るい系」とは程遠い小説です(←良い意味です)。

  • ノーベル文学賞作家。
    ということで、美しいが難解で読みづらい文章と格闘するのだろうなと覚悟して本を開いたが、完全に予想外。
    最初から最後まで、主人公の一人語りで話が進みます。
    スラスラ読めます。
     
    臓器移植のためだけに作り出された子供たちの話。
    不思議でした。
    まるでごく普通のどこにでもありそうな寄宿学校の話にしか思えないのです。
    子供たちは未来を悲観したり、憤ったりしません。
    運命を呪いません。
    逃亡を企てたり、反抗しようともしません。
    でも、普通の子供とおなじように豊かな感情を、人間性を持っています。
    そのことに多くのページが割かれています。
    将来、臓器提供をさせられて、殺されることも理解しているのに、だれもそのことを口にしません。
    従順です。
    教育のたまものでしょうか。
    なぜ逃げないのか。
    逃げようと思えば可能な大人になり、一人で車を運転できるようになっても逃げません。
    でも、やはり嫌なのです。
    提供までの期間の延長を模索するぐらいですから、臓器を提供して死ぬのはやはり嫌なのでしょう。
    でも、なにも際立った行動は起こしません。
    唯々諾々と子供たちは数度の提供を行って、死んでいきます。
    「使命を終えた」という認識で。
     
    作品にアクションはありません。
    二転三転はなく、どんでん返しもありません。
    ハッピーエンドは望むべくもありません。
    淡々とした悲しみだけがあります。

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著者プロフィール

カズオ・イシグロ
1954年11月8日、長崎県長崎市生まれ。5歳のときに父の仕事の関係で日本を離れて帰化、現在は日系イギリス人としてロンドンに住む(日本語は聴き取ることはある程度可能だが、ほとんど話すことができない)。
ケント大学卒業後、イースト・アングリア大学大学院創作学科に進学。批評家・作家のマルカム・ブラッドリの指導を受ける。
1982年のデビュー作『遠い山なみの光』で王立文学協会賞を、1986年『浮世の画家』でウィットブレッド賞、1989年『日の名残り』でブッカー賞を受賞し、これが代表作に挙げられる。映画化もされたもう一つの代表作、2005年『わたしを離さないで』は、Time誌において文学史上のオールタイムベスト100に選ばれ、日本では「キノベス!」1位を受賞。2015年発行の『忘れられた巨人』が最新作。
2017年、ノーベル文学賞を受賞。受賞理由は、「偉大な感情の力をもつ諸小説作において、世界と繋がっているわたしたちの感覚が幻想的なものでしかないという、その奥底を明らかにした」。

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