- Amazon.co.jp ・本 (450ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151200519
感想・レビュー・書評
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ノーベル賞を受賞し、有名になってからしたり顔で読み出す自分はミーハー野郎であると自覚はしているのですが、想像以上に感動してしまい、強く心を動かされてしまいました…広島旅行中にもかかわらず、何も頭に入ってこないレベルにです。笑
ご存知の通り本作は、将来的に臓器を提供することを目的に生まれ育てられた若きクローン達を巡る物語。内容からしてSFのジャンルに含まれることが多いけど、SF的な要素は割と少なくて、行き過ぎた科学に対する批判とか、生命の尊厳といった道徳的な問題にまで言及することは特にないんですね。
これはNHKの文学白熱教室でカズオイシグロ氏が語っていた、「描きたいテーマがあり、それを表現するために舞台を選んでいるのであって、舞台設定そのものは特に重要ではない」という内容をよく表しているなと思いました。(実際、カズオイシグロ氏は、日本を描いた初期作品では日本という特殊性ばかりが注目されるのを嫌がり、初期作品のテーマはそのままに舞台を英国に移した「日の名残り」を完成させ、自分が描いているテーマは普遍的であることの証明に成功した…とのこと)
話を戻すと、本作ではSFチックな前提を敷いているものの、そこに焦点はあてられていない。そうではなくて、その前提があることで「命に限りがある若者たち」を生み出すことが出来ていて、その群像劇が儚さや別れの悲しさをうまく描いているのかなと思いました。
実は同じ様な感動を覚えた作品として、「レナードの朝」という映画がありまして。この映画は実話をベースにしているのですが、「眠り病」という不治の病により長年植物状態にあった患者たちが、ある医者の努力により一時的に目覚めるものの、最後はまた元に戻ってしまうという物語です(「アルジャーノンに花束を」に結構近いですね)。この映画も別れの悲しさを描いているのですが、悲しい話のはずなのに不思議な温かさがある、というところが本作とよく似ている点でしょうか。
本作では「記憶」という側面がフォーカスされていて、カバー表紙にも描かれているカセットテープがその象徴となっているように思います。どれだけ悲しい別れがあっても、記憶があれば前を向いていける。本作には、悲しいだけではなく、そういう優しさがあるからこそ、こんなにも自分の心を動かしたのかなと思っています。素晴らしい作品でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
なにも知らずに読んだので驚いた。
読んだ後も色々考えさせられる本。 -
めっちゃ良かった。深い...。
介護人を11年勤めているというキャシー・H。彼女の思い出の中に繰り返し出てくるトミーとルース、そしてヘールシャムという場所...どうやら彼女達は施設で育ったらしい。第1部では彼女達の子供時代のことが綴られる。その施設では創造性を育てているのか子供達が作った絵などの作品がマダムと呼ばれる人に選ばれ引き取られていく。特殊な施設であることはすぐにわかるのだけど、ベールに包まれている。
わずかな手がかり、示唆はあるもののこのお話は一体どこに着地しようとしているのかな?とテーマも見えない中で進んでいく。それが子供時代特有の視点、感性、淡い自我とうまくかけ合わさって良い曖昧さを醸し出している。全然意味がわからなくてもこの辺りの繊細な描写だけでも堪能できる。
第2部以降、キャシー達の成長に伴い少しずつ、少しずつ話の輪郭が見えてくるのだけど簡単にはオープンにさせない、入念に計算されたものを感じる。キャシーはだんだんと真相に近づいていくのだがテーマが初めて分かった時は「そこか!」と思わず言いたくなった。自分が今までに当たり前に享受してたところにズバッと切り込まれたので盲点を突かれたような感じがした。木を隠すなら森、的な。
そういう構成も面白いし、他にもキャシー、トミー、ルースの三人組の人間関係の細やかな描写もめちゃいい。仲良しは仲良しなんだけどいつも不安定に揺れ動くそれぞれの心を見事に描いている。
ドンッ!と衝撃を与えるような感動ではなく、心の奥の奥、すごく遠いところに呼びかけるようなじわっとした感動、セピア色の感動とでも言えばいいのかな...そのような感動を味わえた。何度でも再読したくなるような作品でした。-
あるちゃんさん。こんにちは。
いつも、いいね!ありがとうございます。
あるちゃんさんも、この作品読まれていたのですね。
私も、夕べ...あるちゃんさん。こんにちは。
いつも、いいね!ありがとうございます。
あるちゃんさんも、この作品読まれていたのですね。
私も、夕べ読了しました。
レビューはネタバレで書いたのですが、あるちゃんさんはネタバレすることなくこれだけ、真相にせまった豊かな文章が書けて凄いなと思いました。あるちゃんさんは「忘れられた巨人」も読まれているのですね!
私は未読で、他にもイシグロ作品、積読がまだあるので、これから楽しみに読んでいこうと思っています。
これからもよろしくお願いいたします。2022/02/13 -
まことさん
コメントありがとうございました。僕カズオ・イシグロはクララとお日さまからスタートしてるのでつい最近です。すっかりハマってしまい...まことさん
コメントありがとうございました。僕カズオ・イシグロはクララとお日さまからスタートしてるのでつい最近です。すっかりハマってしまい次も、次もという感じに読み進めております。まことさんも読まれたのですね!
そんな風に言っていただけるなんて光栄です。この感動をどう文章にしようか?と思うといつも上手く言葉にできないです…その都度改めて文章を生業にしている方への尊敬が募ります。2022/02/13 -
文章途中で投稿してしまいました…。
忘れられた巨人も良かったですね!
はい、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。文章途中で投稿してしまいました…。
忘れられた巨人も良かったですね!
はい、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。2022/02/13
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ビジネス書が頭で読むものなら、この本は心で読むものだと思う。ドラマチックな展開が続くのではなく、淡々と進みながらも時折衝撃的な事実がさりげなく混ぜられている。まるで小説内の先生たちのマインドコントロールと同じ手法で。読者はいくつの事実に気付けるか。登場人物の外的特徴は最小限に抑えられ、読み手の好きなように想像させつつ、物語は緻密に練られ種明かしのタイミングまで計算ずくという不思議で面白い一冊。
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思っていた感じとはかなり違ったが、
人間の身勝手さ、恐ろしか、悲しい。