一九八四年(新訳版) (ハヤカワepi文庫)

  • 早川書房 (2009年7月18日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (512ページ) / ISBN・EAN: 9784151200533

作品紹介・あらすじ

今の世界や日本に不安なを感じている人へ。この本が現実になりそうです。

「事実」が政府によって覆い隠されるイマの時代。国民がそれを黙認するとどうなってしまうのか。この本を読むとわかります。

〈ビッグ・ブラザー〉率いる党が支配する全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、歴史の改竄が仕事だった。彼は、完璧な屈従を強いる体制に以前より不満を抱いていた。ある時、奔放な美女ジュリアと恋に落ちたことを契機に、彼は伝説的な裏切り者が組織したと噂される反政府地下活動に惹かれるようになるが…。二十世紀世界文学の最高傑作が新訳版で登場。

みんなの感想まとめ

全体主義的な監視社会を描いた作品は、現代の社会における不安を強く感じさせます。主人公ウィンストン・スミスの視点を通じて、思想や自由が奪われる恐怖をリアルに体験でき、読者はその世界に引き込まれます。特に...

感想・レビュー・書評

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  • 長いので何日もかかったけど、長い分だけディストピアの世界にどっぷり浸かった。

    人々はテレスクリーンと呼ばれる装置で、生活や思想を24時間監視されている。家族でさえもお互いを監視していて安らげる空間はない。
    思想までも奪われる自由のない世界に息が詰まりそうになる。
    もしこんな国に生まれたら、生まれてきた意味はあるんだろうかと考えてしまった。
    実際にこれと似たような国があると思うと、急に現実味を帯びて怖くなる。

    洗脳されていく心情の過程が詳細に描かれている。心理学が好きなので、人はどうやって洗脳されていくんだろうという事に興味があった。

    「101号室」で行われる最も怖い拷問は、肉体的なものではなく、精神的に人間の尊厳を破壊させること。
    ネタバレになるから書けないけど、この時に叫んだ主人公の言葉が衝撃的だった。
    こんな拷問を受けたら誰もが主人公のようになる。

    そして、最後の1行で本当の怖さを知った…。

    自分はこの本の世界観を非現実的なものとして楽しんだ。本を閉じればこの怖い世界を終わらせることができる。
    でもこの世界が現実である国の人達は、怖くても生涯終わらせることができない。

    『党が2+2=5と言えば、それを信じなければいけない』

    読み終わった後も、リアルでこの世界に生きている国の人達のことを考えてしまう。
    頭の中でその事がずっと気になってしまって、次の本になかなか進めない。
    ★10
    Audibleにて。

  • 読むべき小説に出会った。

    『集団浅慮/古賀史健』で、「二重思考」の概念を知り、『1984年/ジョージ・オーウェル』に興味を持ったんだけど、「二重思考」はやっぱり面白かった。

    この先の人生で、この小説は何度も私の思考に現れる気がする。

    権力と嘘は親和性が高いよね。
    権力って魅力的なんだろうな。

    プロール(労働者階級)は「平等」を求めるって、この本が出版された当時と今と何も変わらないね。

    「無知は力なり」
    「戦争は平和なり」
    「自由は隷属なり」

    最後、「ニュースピーク」は過去のものとなり、ディストピアは終わったのだろうか。
    それとも、別のディストピアが始まっているのだろうか。

    二重の結末も最高に面白かった。

    (以下、すぐにディストピアが何なのかわからなくなるのでAIに聞いた覚書。claudeより引用)

    ディストピアって何?

    「ディストピア」は、理想郷(ユートピア)の反対の概念で、抑圧的で望ましくない社会や世界を描いた言葉です。

    特徴:
    • 全体主義的な支配や監視社会
    • 個人の自由や権利が厳しく制限される
    • 表面上は秩序だっているが、実は恐怖や統制で成り立っている
    • 格差、環境破壊、テクノロジーの暴走などが背景にあることも多い

    代表的な作品:
    • ジョージ・オーウェル『1984年』(監視社会・思想統制)
    • オルダス・ハクスリー『すばらしい新世界』(快楽と管理による支配)
    • レイ・ブラッドベリ『華氏451度』(思想統制と焚書)

    現実社会への警鐘や批判として書かれることが多く、SFやフィクションのジャンルとしてもよく使われます。

  • 世紀末文学の白眉、「1984」を読んだ。
    ウィンストンという真理省党員の目を通しての、ビックブラザーに支配されるオセアニアの姿を描く。
    解説ピンチョンいわく、元トロツキスト、バーナムがとく日本のイースタシア、ロシアのユーラシア、そして英米連合のオセアニアが舞台。ビックブラザーと抵抗勢力のゴールドスタインはスターリンとトロツキーを思い出されると。時代背景でいけば、当時はそんな対比が考えられたのも頷けるが、現代では中国の体制が近いように感じる。しかし、さらに直近で思い当たるのが、SNS。姿が見えないビックブラザーは巨大SNSを自分の意のままに動かす人物にあたり、人の記憶を塗り替えでしまうのは、まさにこの本が言う二重思考にあたるのでは?
    ただ、付録にある「ニュースピークの諸原理」が、過去形で表されているのが、1984年より更にさきの未来はまともになっているのではという、救いが見えた。

  • いつかは読みたいと思っていて未読だったSF作品を読みました。
    噂どおりのハードな作品で、闇の塊のような小説でした。
    驚いたのは発表されたのが1949年と解説にありました。40年代にこのような作品が書かれていたとは!
    ビッグ・ブラザーが支配する近未来。
    子供が、街中でおこなわれている「公開処刑」を見に行きたいと駄々をこねる、恐ろしい世界。
    危険な思想の持ち主だとわかれば世界から消されてしまいます。
    この世界の思想や理念が説明される中盤は難しくて完全には理解できませんでしたが、恐ろしく管理されている世界というのはわかりました。

    近年のエンタメ界に与えた影響力はもの凄かったんでしょうね。

  • じゃあ
    「手ぇ洗ったの!?」
    「なんでここに置くの!?」
    「テーブル拭いたの!?」
    「部屋の温度が上がってる何故エアコンの温度を下げない?」
    「なんでそこで本を読むの!?」
    「その本、古本じゃないでしょうね!?」
    「部屋の温度下げ過ぎじゃないの?」
    「図書館の本は汚いから家では読まないで!」
    「それは家用のブックカバー?洗濯したやつ?」
    「なんでそんなとこに居るの!?」

    など、家でゴロゴロしてるだけで
    「宇宙船を管理するAI」なのか
    「私を監視するビッグブラザー」なのか
    妻から監視され、注意され続ける生活
    (上記の様なAIなら「警告メッセージ」
    いや…AIじゃないか
    AIなら自動で部屋の温度調節するか…)に
    慣れ始めている俺と

    何が違うと言うのか…
    俺は…(オレハ…オレハ…)

  • 本書はディストピア小説の古典的傑作として名高く、いま巷に出回っているディストピア小説の基礎を作った様な小説だ。ジョージ・オーウェルのもう一冊の傑作『動物農場』と同じように、本書も人々が全体主義社会に飲み込まれる様子が描かれる。
    『動物農場』が、俯瞰的に全体主義社会が成立していく様子を描いているとすれば、本書は一個人の視点を通じて、全体主義社会で暮らす人々の生活をミクロ的に見た小説である。

    本書は『動物農場』よりも、かなり難解で深く、そして救いが無い…。
    ここまで小説を読んでいて不快になったのは久しぶりだが、絶対に目をそらしてはいけないテーマだ。間違いなく全人類が一度は読むべき本のなかの1冊である。

    1950年代に起こった核戦争後の世界を舞台とした「1984年」。世界は南北アメリカ、旧イギリスを中心とした国『オセアニア』、イギリス以外の旧ヨーロッパが統合された『ユーラシア』、そして旧日本、旧中国が中心となった『イースタシア』の3つの超大国に支配され、その3国は常に三つ巴で戦争を繰り返している。
    作品の舞台となる『オセアニア』のロンドンでは『ビッグ・ブラザー』と呼ばれる指導者により、市民はあらゆる生活に統制が加えられ『思考警察』と呼ばれる警察に反体制的な市民が摘発されている状況だ。
    市民は常に『テレスクリーン』と呼ばれるテレビとインターネットを合体させたような機器により監視され、町なかでは盗聴マイクによって行動が当局によって把握されている。

    ロンドンに住む39歳の主人公ウィンストン・スミスは、当局の命令により歴史記録の改ざん作業を仕事として行っていたが、記録が絶えず改竄されるため、真実の歴史を確かめるすべは無い。
    ウィンストンは『ビッグ・ブラザー』の支配する国家に疑問を抱いていたが、そこへ体制に従順なふりをしながらウィンストンと同じく反体制的な考えを持つ若き女性ジュリアに出会い、恋に落ちた二人は当局の監視をかいくぐりながら逢瀬を重ねる。しかし、彼らの行動は『思考警察』の知るところとなり、二人は逮捕され、想像を絶する過酷な尋問を受けることとなるのだった…。

    まず、この本を読んでいて、この小説が本当に1949年に書かれたのか?というのが最初に浮かんだ疑問だ。それほどこの本が描く未来は、現在の世界のありようを精確に描写している。
    本書は全体主義の恐怖を描いているが、オーウェルが想像した市民を監視する体制作りが非常にリアル。
    『テレスクリーン』は今で言えばまさに「監視カメラ」であり「スマートフォン」だ。『テレスクリーン』と「盗聴マイク」により、市民の頭の中の考え方を含め、市民の全ての行動が当局の監視下にある。

    当局は、市民を統制するため『歴史』を改ざんしていく。『オセアニア』の歴史は、常時当局の都合の良いように改ざんされている。例えば、指導者的な幹部が裏切り行為を行った場合、その当人が逮捕されるには当然のこと、過去の名簿やリスト、歴史上関わった事項からも全てその名前が削除される。
    つまり、最初から存在しなかったこととなるのだ。
    市民は自分の記憶と違っていることでも、それを確かめる方法がない。もし、自分でメモをとって、それを隠し持っていれば反逆者として逮捕されるし、そもそも、紙とペンが簡単に手に入らない。

    次は『子供の教育』だ。子供は物心がつくと、すぐに『学校』に入れられ、徹底的に体制的教育を受ける。自分の親が反体制的な思想を持っていると判断すれば、嬉々として親を当局に密告し、その子供は『英雄』として表彰されるのだ。

    そして最後は『拷問』だ。この本を読んで、どんな屈強な人間でもこのような拷問に耐えられる人間はいないだろうとあらためて思った。
    苦痛と恐怖を繰り返し与え、相手の肉体と精神を壊していく。これが何日も、何週間も、何か月も絶え間なく繰り返されれば、人間は信じている事実や愛する者のことなど簡単に忘れ、裏切ることができる。そこには友情も、親子の情も、恋愛感情も、愛すらも何の意味も持たない。
    誰もが「何でもする!何でもするから!もう止めてくれ!もう殺してくれ!」と恥も外聞もなく、地べたに這いつくばって、泣き叫ぶことになる。

    人間は弱い。
    弱いからこそ、絶対にやってはいけないことがある。

    ナチスのホロコースト、スターリン政権下での大粛正、カンボジア・ポルポト政権下での大虐殺など、数を上げればきりが無いが、人類は数多くの過ちを犯してきた。いずれの虐殺も支配体制が被支配体制の人間を虫けらのように殺している。
    この『1984年』には『大虐殺に至るであろうという世界』の成立過程が詳細に描かれる。この本どおりのことをやれば、誰でもこのディストピア社会で描かれる支配体制側の人間になれるかもしれない。

    だからこそ我々は『究極の反面教師』としてこの本を読み、自分たちの世界の行く末を真剣に考えなくてはならないのだ。
    そういった意味において本書が「全人類必読の書」であることは間違いない。

  • 1984年、読み終わりました!やっとなんとか、読み終わりました、と言ったところです。時間がかかりました。この本を1日や2日で読み終える方、心から尊敬します。話しの内容としては、評判通り素晴らしいものだと思います。原作は75年前?とかそれくらい以前にも関わらずこの内容を書けている点が高い評価を受けている要因の一つですね。まさにディストピアの脅威が伝わる作品であり、今現在これに近しい状況にある国はあるわけで、日本も例外的ではなく、技術やITの進化とともに民衆が気付かない中、国や政治が足を踏み入れてしまう、もしくは既に足を踏み入れている領域があるやかもしれません。どういった主義を唱えて実行する国であっても階級的なものは必ず存続するわけで、民主主義でも当然例外的ではないわけです。現在の日本から見れば、本作のディストピア像は極端ではありますが、そういう考え方や世界が単純なSF世界の物語という事で終わらせてはいけないというメッセージであると感じました。恐ろしやーです。
    ただいずれにしても本作、あくまで私個人の印象としてですが、大変読みづらかったです。唐突に出てくる言葉や、あまり日常的ではない日本語(単語)、文章の作り方など。。。私が普段読みやすい本を敢えて選んで読んでるのかもというのと、翻訳作品を普段あまり読まないので慣れていないせいなのかもしれませんが、、、もう少し読みやすい翻訳に出来ないものですかね。という点で⭐︎3つ止まりとしました。

  • 全463ページとそこまで長くもないのだが、内容が濃くて読むのに結構時間がかかってしまった。
    動物農場もそうだが、舞台設定が相変わらず凄い。

    そこら中に設置されたテレスクリーンを通して四六時中、ビッグ・ブラザーの目に監視される束縛社会。2+2は5である、白は黒である、と、何事も疑わずに信じるべしという“二重思考“は幼少期から訓練される。自分の部屋でさえ監視の目であるテレスクリーンがあり、たまたま存在した死角の壁の凹で、禁止されている今を残す行為である日記を書くウィンストン。
    過去は常に改竄され、ウィンストンが働く真理省では戦争相手が変わると過去の戦争相手に関わる記事を、人が1人蒸発するとその人物が初めからいなかったかのように抹消するなど、一掃修正に追われる。
    そして、ジュリアとの密会がバレて捕まるウィンストンは愛情省で拷問され、再教育を施される。

    ゴールドスタインの文書は“戦争は平和なり“とは〜という説明タイムなのだが、そうゆう考え方もあるなと面白いものもあれば、これまで読んでいれば分かっているであろうことも改めて長文でかかれているので少し退屈だった。

    もし自分がウィンストンだったらとっくに蒸発してそうだが、おそらく自分は全人口の85%を占める下層労働者・プロールだろうし、そうゆう意味では現実でも識字率は高くともある意味プロールに違いなく、それがまた皮肉であるのが良い。

    終盤、101号室行き、どうか殺してくれと乞う髑髏顔の男の登場からの、拷問尋問、洗脳、なかなかしんどい。ウィンストンの知人が捕まっているのは笑ったが、そりゃそうだ、捕まらない方がよほど難しい。

    思考警察に連行され蒸発、
    真理省(報道、娯楽、教育及び芸術)
    平和省(戦争を管掌)
    愛情省(法と秩序の維持)
    潤沢省(経済問題)
    二分間憎悪(性欲などの代わりの発散方法)
    犯罪中止(懐疑的または反抗的態度を誘発する恐れがある場合、事前に静めるための、自己防衛的愚鈍p324)
    などのオリジナル用語や世界観が面白い。

    戦争は平和である(WAR IS PEACE)
    自由は屈従である(FREEDOM IS SLAVERY)
    無知は力である(IGNORANCE IS STRENGTH)

  • まず一言、怖かった。
    とてもとても怖かったです。こんな世界になってしまうのかと、錯覚してしまう程内容の濃い作品でした。小説の限界を超えた、作品で、カテゴライズできないと私は感じました。ジョージ・オーウェル自身の経験したことから描き出した本作は、著者の晩年の作品となっています。彼のイデオロギーがふんだんに膨れています。全体主義、社会主義などあまり馴染みのない言葉が乱立していて、正直この作品は、理解するというよりは、感じてどう思ったか。
    自分のイデオロギーを、どう開花させるのかだと思うのです。とても難しいです。この作品を感じるにには、もっと著者のことを知るべきだし、他の作品も読むべきだと思いました。

  • ボディブローのように効いてくる読後感。歴とした小説。
    1949年刊行された全体主義的近未来を描いたディストピア小説。
    ビッグブラザー率いる一党政府による行動監視・言語統制・歴史改竄等あらゆる人民統制が丁重に描かれる。中盤に書かれる「寡頭制集産主義の理論と実践」のテキストは小説というより思想哲学のようだ。クライマックスは、国家への背信を企てた主人公が肉体的精神的拷問により、二重思考を受け入れて国家に組み込まれていくさまだ。
    とは言っても、一読では、読み切れていない。ちょっと寝かせて再読です。

    何故、1984年なのか?幾つか説はある様ですが、執筆終了が1948年で下二桁逆にした説に一票。
    今、読んでも、100年後でも近未来小説たる名作。

    • ますく555さん
      主人公の叩き潰され方がほんとうに容赦ないし、一縷の希望すら見当たらないしで、読んでて辛かったの覚えています笑 書く側も胃が痛くなってそうです...
      主人公の叩き潰され方がほんとうに容赦ないし、一縷の希望すら見当たらないしで、読んでて辛かったの覚えています笑 書く側も胃が痛くなってそうですけども。
      2023/05/02
    • おびのりさん
      こんばんは。私は、小説の中で、言葉が削られていく過程がすごく怖いなと思いました。
      村上春樹氏が、この作品を意識して1Q84を書いたと聞いて、...
      こんばんは。私は、小説の中で、言葉が削られていく過程がすごく怖いなと思いました。
      村上春樹氏が、この作品を意識して1Q84を書いたと聞いて、両方読みましたが、さっぱり意識したところは、わかりませんでした。( ; ; )
      2023/05/03
  •  「一九八四+四〇 ウイグル潜行」を読んだのちに、改めてオーウェル「一九八四年」を読む。最初にトランプ大統領が就任した2017年以来だけど、これまで何度か読んでいる。しかし、細部はすっかり忘れていました。
     覚えているのは、「ビッグ・ブラザー」「テレスクリーン」「ニュースピーク」「二重思考」、そして「戦争は平和なり」「自由は隷従なり」「無知は力なり」。

     共産主義や全体主義を批判したディストピア小説として知られるけど、いまだに読み継がれるのは、もっと普遍的に権力そのものの本質をついているからでしょう。「権力は手段ではない、目的なのだ。・・・・迫害の目的は迫害、拷問の目的は拷問、権力の目的は権力。それ以外に何がある」「ナチス・ドイツとロシア共産党は方法論の上ではわれわれに極めて近かったが、自分たちの動機を認めるだけの勇気をついに持ち得なかった」

     プーチンやネタニヤフ、そしてトランプ、その他たくさんの指導者がついにその動機を認めてしまったかのように振る舞っています。

     本書に書かれた当時としての未来を、現代の世界の一部についてはすでに凌駕してしまっているかもしれません。克服ではなく、凌駕です。

     「1984年」は「2025年」かもしれないし、「2030年」かもしれません。この本を読んで、覚悟しましょう。
     

  • ジョージ・オーウェルの代表作のひとつにして、世界的に有名な小説。
    1949年発表。
    日本では村上春樹『1Q84』のオマージュ元としても知られる。

    舞台は1984年のロンドン。イングランドはアメリカ、オーストラリア、アフリカ南部から成る超大国「オセアニア」に併合されている。
    オセアニアは、同じく超大国のユーラシア、イースタシアと戦争状態にあり、ビッグ・ブラザーが率いる「党」が絶対的な権力を握る。

    「党」は、党員をテレスクリーンによって常時監視し、家族を引き離し、あらゆる手段をもって思考を把握し、少しでも反抗意志を持つ人間を容赦なく粛正する。

    主人公のウィンストン・スミスは、「真理省」の下級官吏として、過去を改竄する業務に従事する。

    ウィンストンは、以前から「党」に不信感を持っており、過去が改竄されていることに気付いていた。
    しかし、行動・思考が1日24時間監視される中においては、それを隠して生きるしかなかった。

    ある日、ウィンストンは同じく下級官吏の若い女性ジュリアと出会う。やがて二人は恋に落ち、秘密の逢瀬を重ねるようになる。
    しかし、男女の性愛すらタブーとされる世界において、それは破滅の道だった。

    さらに、ウィンストンは「党」体制の転覆を目指して活動する「ブラザー同盟」と接触し、反抗の意志を更に強くしていくが、、、

    上記があらすじ。

    名作と語り繋がれるだけのことはあり、非常に濃厚な小説だった。
    世界には、まだこんな素晴らしい作品があったのかと感動すら覚える。


    作者のジョージ・オーウェルは、1903年に英領インドのベンガル地方(現バングラデシュ)生まれ。
    名門イートン校で教育を受けた後、植民地警察としてビルマに赴任したが、帝国主義に幻滅し1927年に辞職。最底辺生活を体験するためパリやロンドンで放浪し、その後、作家に転身した。

    彼の思想を体現するように、本作では全体主義国家への批判が終始描かれる。

    独裁的寡頭政体が社会のすべてを握り、国民を監視し、恒常的戦争状態を創り出し、科学と技術の進歩を止め、貧困と不衛生に喘ぐ社会。まさにディストピアだ。

    オーウェルは、この描写を通じて、いかに全体主義が悲劇をもたらすかを伝えようとする。
    その狙い通り、小説でありながら、後世の政治学・監視社会論に多大な影響を与えている。

    作中に登場し、「ブラザー同盟」が発行する「the book」は、人類史における階級闘争と過去の寡頭政体(ナチスドイツやスターリン体制など)を踏まえた上で、「党」を分析しており、示唆に満ちている。

    「われわれはただ権力のみに関心がある。富や贅沢や長寿などは歯牙にも掛けない。われわれが過去のすべての寡頭政体と異なるのは、自分たちの行っていることに自覚的だという点だ。」といった具合に、政治、支配、自由、平等、思考、そして戦争を分析し、現状を描く。

    このように、社会学的に興味深いだけではなく、エンタメとしての完成度も高い。

    マッキンダー的世界観が現実となった社会が簡潔に描写され、抑鬱とそこからの解放、急落と絶望が読み応えのあるストーリーになっている。

    拷問のシーンは凄惨だが、心理描写が上手いので、ある種の必然性を感じるようになっている。

    また、主要キャラクターの設定も良い。

    主人公のウィンストンは、平凡な人間だ。
    飛び抜けて頭が良いわけでもなければ、体力があるわけでもない。意志の強さ、行動力も人並みだ。
    そんな彼が、「党」への少しの反抗心によって悲惨な運命を辿ることになる。

    この彼の凡庸さが普遍性、転じてこの世界の救いの無さを表現しているように感じた。

    もう一人の主人公であるジュリアの方が、ウィンストンよりも頭が良くて、立ち回りが上手く、行動力も胆力もある。

    しかし、彼女の「反抗」とは、自由奔放に生きることであり、それ以上でも以下でもない。体制を転覆させることなど夢にも考えないし、興味もない。

    この女性特有のリアリズムというか、愚鈍さを上手く表現していると、個人的に感じた。

    長くなったが、この小説がこれからも時代を超えて読み継がれる名著であることは疑いようがない。
    一読の価値はある。

  • もはや何が本当か全くわからなくなりますなぁ。

    世界がより良くなるように祈るばかりであります。

  • 著者のもう一つの代表作「動物農場」を読み終えて約2ヶ月半。

    読みたかった本書を手にしてみました。

    なかなか読み応えがあり、結果的にほぼ土日の休日を使うハメになりました。

    3部+附録からなる本作ですが、正直第1部を読んでいた時は何度も読むのを止めようかと思いました。

    まるで中国や北朝鮮のような監視社会に言論統制、隣人や知人の告発...

    ところが第2部に入り、主人公のウィンストンとジュリアの恋バナが描かれた辺りからは一気に引き込まれていきました(引き込まれてからでも残ページは長いんですが)。

    そしてクライマックスである第3部、永遠と続くような拷問の中で、ウィンストンはジュリアを裏切り、その裏でジュリアもウィンストンを裏切ってしまう。

    本作の本筋はそんな恋バナではありません。

    あくまでもディストピア(暗黒世界)を描いた20世紀最高と言われる一冊です。

    人の「思考」って恐ろしい。


    説明
    内容紹介
    2021年共通テストでも出題! 30万部突破の新訳版

    “ビッグ・ブラザー"率いる党が支配する全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、歴史の改竄が仕事だった。彼は、完璧な屈従を強いる体制に以前より不満を抱いていた。ある時、奔放な美女ジュリアと恋に落ちたことを契機に、彼は伝説的な裏切り者が組織したと噂される反政府地下活動に惹かれるようになるが…。二十世紀世界文学の最高傑作が新訳版で登場。解説/トマス・ピンチョン。

    内容(「BOOK」データベースより)
    “ビッグ・ブラザー”率いる党が支配する全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、歴史の改竄が仕事だった。彼は、完璧な屈従を強いる体制に以前より不満を抱いていた。ある時、奔放な美女ジュリアと恋に落ちたことを契機に、彼は伝説的な裏切り者が組織したと噂される反政府地下活動に惹かれるようになるが…。二十世紀世界文学の最高傑作が新訳版で登場。
    著者について
    1903年、英国領インド・ベンガル地方に生まれる。文学のみならず、二十世紀の思想、政治に多大なる影響を与えた小説家。名門パブリック・スクールであるイートン校で学び、その後、数年間ビルマの警察に勤務。やがて職を辞し帰国すると、数年間の放浪を経て、作家となった。主な著作に長篇小説『動物農場』やスペイン内戦に参加した体験を綴ったルポルタージュ『カタロニア讃歌』などがある。 1950年没。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    オーウェル,ジョージ
    1903年、英国領インドのベンガルに生まれる。文学のみならず、二十世紀の思想、政治に多大なる影響を与えた小説家。名門パブリック・スクールであるイートン校で学び、その後、数年間ビルマの警察に勤務。やがて職を辞し帰国すると、数年間の放浪を経て、作家となった。主な著作に長篇小説『動物農場』などがある。1950年没

    高橋/和久
    東京大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • 気まぐれにディストピア月間なのだが、2冊目。誰もが知るディストピア小説の金字塔。
    世の中にはディストピア的設定は山ほどある。ただ、多くは肉体的、物質的な制限を加えられたディストピアが設定として与えられる。
    物質的な欠乏について、それを文章として表現するのは(恐れ多い言い方にはなるが)比較的楽である。

    この小説が素晴らしいのは、認識的、哲学的、デカルト的なディストピアを余すところなく記述している点に尽きる。
    物質的な貧困よりも、精神的、知的な貧困がどれくらい怖ろしいことであるかを我々に知らしめる。

    そして各所で語られており、私が今更言うことでもないのだが、この思想的ディストピアが本作品が世に出てから1世紀近く経った後にまさに現実になろうとしている先見性に、かの作者の頭の良さを感じざるを得ない。すごい。本当にすごい。

    思考および思想は自由である。ゆえに、この作品を読んだ人がどのように解釈しようがそれも自由である。
    ただ、その自由はまさに貴重なものであり、私は是非皆にこの作品を読み、自由に思考を巡らせて欲しいと思う。
    それこそがこの自殺的予言を回避する唯一の方法なのだと、改めて感じる。
    自分の頭で考えること。

  • 大分面白かったが、あいも変わらず難しかった。
    日本の作品もそうだが、この時代の作品はある種哲学書のような重みを持って物語となっている。

    時代が違い社会、環境、価値観が多分に違う中で政治的な社会に対するシニカルな要素が加わってくるので最早世界史専攻をしてないと十全に楽しみ尽くせないのでは、、とさえこの時期の海外の作品は思えてしまう。とりあえず日本も明治らへんのは文学専攻であったがとっつき難くあまり好きではない。

    勉強しないとなぁ、、、

  • 為政者によって図られていく思考の貧弱化という世界観がなかなか恐怖ポイント…

    人は結局見たいものしか見ない、見えないという話も日常でも実感できるし、ポピュリズムに関する不安は国内外問わず民主主義の論点だと思うし。

  • 寡頭政治を行うにあたり重要な要素などなるほどな~と勉強になった。でも個人的に一番熱かった場面は抑圧されていたり制限された環境下での恋愛って盛り上がるんだろうな!ってことでした。監視下を逃れるように慎重に接触し、行動し、あれこれ思索に耽るというのは生を実感しそうです。あとはウィンストンが感じたプロールへの尊敬の念。最後あのような形で終わるのは残念だったけどプロールの存在が希望となったのは良かったと思う。
    悲しい結末を迎えたあとの付録では、ニュースピークは結局なくなりオールドスピークが使われるようになったってことは<ビッグブラザー>はなくなったのかなと希望を持ったり。
    とにかく民主主義の限界が来ていると叫ばれている昨今、解説の最後に書いてあるとおり子どもの笑顔を裏切らないためにやらなくてはならないことは何でもやるのだ。というのは私達が持つべき前提なのだとも思う。

  • ジョージ・オーウェル『一九八四年[新訳版]』 絶望が誘う「二重思考」の社会|好書好日
    https://book.asahi.com/article/11583479

    【書評】ジョージ・オーウェル:一九八四年 新訳版/堀和世 書評&エッセイ おれ、今日は(も!)長いよ【ブックレビューサイト・ブックジャパン】
    http://bookjapan.jp/search/review/series_oni/090820/review2.html

    一九八四年(新訳版) | 種類,ハヤカワepi文庫 | ハヤカワ・オンライン
    https://www.hayakawa-online.co.jp/smartphone/detail.html?id=000000009459

  • ◯間違いのない名作。海外文学でよく感じる、表現のクドさというか濃厚さがあり、読みにくい部分があるが、それを抜きにしても面白い。構成も簡潔で分かりやすい。
    ◯一読しての感想では、当時の共産主義に対する痛烈な風刺として書かれたのではないかと考えてしまう。
    ◯しかし、二重思考という発想、視点によって、あらゆる統治機構が陥る権力志向への批判であると気がつく。資本主義でも共産主義でも、どれも行き過ぎると同じ世界を現出するであろう。権力者自体への批判の書であると感じる。
    ◯付録が何を意味しているのか、初読では言語による人間の思考を支配することで、世界そのものを支配する、言葉で生きている小説家の発想が見られて面白い、と思っていたが、それ以上に、舞台装置としての付録であったことに解説で気がつかされる。最後まで読んで、思想的にも小説としてもとてもお面白かった。

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著者プロフィール

1903-50 インド・ベンガル生まれ。インド高等文官である父は、アヘンの栽培と販売に従事していた。1歳のときにイギリスに帰国。18歳で今度はビルマに渡る。37年、スペイン内戦に義勇兵として参加。その体験を基に『カタロニア讃歌』を記す。45年『動物農場』を発表。その後、全体主義的ディストピアの世界を描いた『1984年』の執筆に取り掛かる。50年、ロンドンにて死去。

「2018年 『アニマル・ファーム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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