一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

制作 : 高橋和久 
  • 早川書房
4.09
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レビュー : 747
  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151200533

感想・レビュー・書評

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  • ウインストン・スミスの住む世界はビッグ・ブラザーが全国民を監視・検閲する全体主義の社会。彼の仕事は真理省記録局で歴史の改竄。スローガンは「戦争は平和なり、自由は隷従なり、無知は力なり」。もう何年も戦争を続けている。日記を書くことは死刑か25年以上の強制労働収容所送りの刑。党は2足す2は5であると発表する。隷従とは2足す2は5と言うこと(自由とは2足す2が4であると言えること)。

  • すべてを包括しようとする権力に対抗する書だと思った。それと同時に、絶望の書でもある。そこでは否定すら包摂される。
    相反するものが同じく存在するならば、たしかに人間はそれだけで宙に浮くことができるだろう。しかしそこには上も下もない。過去も未来もない。踏みつけにできる顔があり、それを踏む足があるだけの世界。

    踏みつけにされるかされないか、なぜその2つしか選択肢がないのか? そこに疑問を抱いた時、私たちは考えなければならない。そして、まさに今はその時なのではないかと思う。

    圧倒的なリアリティに、読んでいて、なんとおっかない本だと震えあがった。
    やはり恐ろしいのは、私がそれを「知っていながら」なお「知らない」でいることができる、という事実。この本で言うところの<二重思考>である。
    自分がどれだけ身をもってそれが痛いか、つらいか、悲しいかを知っていたとしても、それが自分の身に降りかかろうとするならば「代わりに自分でない誰かにやってくれ」と言えてしまうのは、もちろん恐ろしい。しかしそれ以上に、そう言ってしまった途端にそれを自身から切り離して無にできてしまうことの方が、もっと怖いと思った。「私には関係ない」というのは魔法の言葉だ。

    管理社会を描いたディストピア小説として有名な本書だが、私はむしろ、人間の根源的な心理を夢見るような明晰さ(!)で描いているところに衝撃を受けた。
    間違っていてもそれを心の底から肯定する。人はそれができてしまう。そうすることでしか正気を保てないならば、私たちは誰かの顔を踏んでいると思って、すでに誰かに踏みつけにされているのだろう。

  • 1949年出版のSFの古典的名作。題名の『1984年』もいまや四半世紀以上前だが、刊行当時の共産主義に対する脅威が伺える。旧ソ連よりも、奇しくも本作品と同年に誕生した旧東ドイツの監視社会に近い。そうした政治的背景はいま読むと捉えにくいが全体に不気味さが漂う。

    内容は本編を読んでいただくとして、本書は三部構成になっており、色でたとえるなら第一部がモノクロ、第二部がカラー、第三部が三原色である。中盤まで退屈に感じたが、読み終わると非常に緻密に計算された作品であることがわかる。「ビッグ・ブラザー」というシンボル、二重思考やニュースピークといった練られた設定が作品感を織り成す。

    スティーブ・ジョブズがMackintoshのCMにこの『1984年』をモチーフにしたCMを作ったことは有名だが、人間がもたらす「ディストピア」を描いたエポックメイキング的な傑作といえよう。

  • 分割統治された全体主義国家において徹底的な管理監視下におかれながら、主人公が政府への反抗を図り、という話。
    1948年に執筆完了されたSF小説だが、未だ示唆に富んでいる。思考を監視される恐怖と共に、私が正気でいられるのは何も考えていないからかもしれない、という気にさせられた。最も重要なのは体験を通して自分と対話することではないだろうか。何を喜びとして何を大切にしたいのか、自分の原点を定めること。そして情報化社会と呼ばれる今こそ情報の真偽を確かめること、発信者の意図を読み取り多角的に考える必要があると改めて感じた。(追記)世の中は昔も今も、事実のような嘘で溢れている。

  • 希望の書。
    この物語は夢の痕跡を追うことで、主人公の子ども時代の記憶を回収する旅である。いかに権力が思考まで司るとも、夢は唐突で脈絡なく生起し続け、いかに矛盾しようと罰せられない。酷薄で寄る辺ない権力の現実に妨害されながら、読者は古い夢の続きを覗きに行き続ける。ジグソーパズルのピースを拾い、埋め合わせながら完成させていくように。
    その果てに辿り着いた母の記憶は拍子抜けする程他愛ない。そればかりかそれは二重思考によって瞬く間に掻き消される。しかしそれが何だというのだろう?そこは夢の巡礼者が行き着いた涯て。希望の在処を指し示す本書の価値を一文たりとも減じるものではないのである。

  • かなり昔の小説なのに、全然昔っぽさを感じない。
    今の日本を含めた世の中に重なるところを、往々にして感じてしまった。
    小説を通じて、自由に感じ、考えることができることがいかに「人間らしい」ことであるかについて気づかされた。
    そして、今当たり前のように享受している「自由」について意識的に「認識」をした。
    最後のウィルソンとジュリアの会話は、人間の本質を表している気がして、読みながら苦しい気持ちになった。
    これからも、何度か読み返したい名作。

  •  この小説が書かれたのは第二次世界大戦が終わって間もない一九四九年、その当時の人たちにとってこの作品は近未来小説だったといえます。

     今となっては一九八四年は過去ですが、いまだにこの小説で書かれている通りの体制を維持している国が地球上にあって、小説と同じことが繰り返されているのは残念です。

     同じ作者による「動物農場」がどちらかといえば寓話的で皮肉はたっぷりだけど深刻さは薄らいでいるのに比べ、この小説は生身の人間が巻き込まれていく姿が描かれていて、より切実です(動物農場の独裁者「ナポレオン」は豚であるという点で北の国の偉い人がモデルみたいで、ちょっとユーモラスですらあります。あるいは「北の彼」は「ナポレオン」を見習って太っているのか?)

     あまりにもリアリティがあって、読んだあと暗澹とした気持ちになります。透徹した目で支配する側とされる側や人間社会の本質を見極めて書いているからでしょう。

  • 人によって好み出やすいかもしれない小説。
    端的に言って、社会主義を皮肉った小説という感じ。
    正直初めはあまり話に馴染めなかった。たぶん不慣れな用語(ニュースピーク)とか、ストーリー展開があまりなかったからかと…
    後半になって、ジュリアとの展開が進行し、さらにオブライエンも関わり出して面白くなった。
    けど結局最後ウィンストンが社会主義に負けてるのが残念だったのが個人的な感想。

  • バックパックのときは必ず持っていく小説。

    狂った世界観が最高にいい

  • 安倍総理は二重思考だと思うな。

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著者プロフィール

1903-50 インド・ベンガル生まれ。インド高等文官である父は、アヘンの栽培と販売に従事していた。1歳のときにイギリスに帰国。18歳で今度はビルマに渡る。37年、スペイン内戦に義勇兵として参加。その体験を基に『カタロニア讃歌』を記す。45年『動物農場』を発表。その後、全体主義的ディストピアの世界を描いた『1984年』の執筆に取り掛かる。50年、ロンドンにて死去。

「2018年 『アニマル・ファーム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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