ソロモンの歌 (ハヤカワepi文庫)

  • 早川書房
4.06
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (645ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151200540

感想・レビュー・書評

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  • 読み応えのある、そして奥行きの深い作品。初読なので近いうちに再読したいとおもわせる。
    単純な差別的な構図ではなく、淡々と当時の黒人が置かれた状況を述べている。主人公の祖父がどのようにして名前を決められたかが描いてあるところは、リアリティを感じる。ただ自分の理解が及ばない箇所があるのでもう一度読みたい作品。

  • 本作の持つスケールを語る言葉をまだ持たない。本作は、重力に敗北した、保険外交員のエピソードに始まる。
    それはきっと、タイトルが「ソロモンのブルース」ではなく、「ソロモンの歌」とされているところに、一つの屈折があるらしい。
    思えば本作では、パイロットが空を飛ばず、ミルクマンがミルクを飲まず、デッドという姓を持つ一族が生きている。おまけに、黒人が白人ではなく、しかも幼馴染である黒人を殺そうと追跡しようとするこ逆説、皮肉、諧謔、ユーモア。
    そんな言葉の上での対立をやすやすと突破していくのが本作の力だ。重力から自由になるために。

  • 決して読み易くはないが
    後半の怒涛のスピード感!

  • 長らく積んでいたが、モリスンを悼んで読んだ。もっと早く読めばよかった。肉体の生死とはべつの「生きること」とは何かを問うている物語のように読んだ。

    父を崇めて父親が失ったものを埋めるために必死で金やステイタスを求めるメイコン、おなじく父親からうまく離れられなかった母ルースの元に生まれたミルクマンは黒人でありながら裕福であるために属するところがあやふやな主人公だ。叔母であるパイロット、友人のギター、愛人のヘイガーなど、周囲の人たちとの関わり方、遅かりし自立の旅。成長物語という事もできるかもしれない。
    ミルクマンの青臭さや至らなさは、誰もが心の中に持っているもので、差別や社会的な不公正を扱いながらも、黒人の文学というよりは、人間の文学のように感じた。生きるために必要なのは、お金か、愛か、真の名前か。
    パイロットがとにかく魅力的で、歌うことや飛べることの意味を考えた。正解や答えはないけど、そんな曖昧さもぎゅっと塊にしたような凄み。身体感覚。
    とはいいつつ。普遍的な小説、だけども、差別や不公正のなかにある黒人にとっては、ミルクマンやパイロットの得た「飛ぶ感覚」って、もっと切実なものなのかもな、とも思う…

  • 最近読んだ「青い眼がほしい」が良かったので、同じトニモリスン著のこの本を読むのも楽しみだった。とても読み応えのある本でした。ミルクマンと呼ばれる少年が成長し、ひょんなきっかけから自分のルーツを知っていく。当時のアメリカでアフリカンアメリカンたちがどんな生活をおくっていたのかも伝わってきて、その場にいる気分になるくらいストーリーに入り込めます。
    この本オバマ前大統領が人生最高の書に挙げたそう。

  • 青い眼に続き2つ目のトニ・モリスンだけれどやっぱり難しい。情景が入りづらい。どれが黒人の歴史そのもので、どれが単なるエピソードなのかよく分からない。オバマが人生最高の書に挙げたといえど、ちょっと意味不明やった。

  • とある事情から‘ミルクマン’と呼ばれるメイコンデッドjr。
    父、母、叔母、いとこ・・・
    さまざまな人間関係のもつれをたどるべく旅に出る・・・

    ブラックアメリカン、北部と南部。さまざまな要素が絡み合う物語。
    その中でも名前は重要な要素として触れられる。
    両親から授けられた名前、白人につけられた名前、他人から呼ばれるあだ名、正式の名前ではない地名・・・
    すべてに意味があり、その意味の裏にはアイデンティティやルーツにかかわる忘れてはならないものがあるということ。

    600ページを越える大作ですが、ひとたびページを開けばブラックアメリカンの世界をめぐる素晴らしい読書体験が待っています。

    ちなみにラスト、私はギター派。
    でもたぶんパイロットも満足していたゆえにそういう運命に行きついたのだと思う。

  • ノーベル賞作家ということもあり最後まで読んだが、よくわからない本だった。20世紀前半のミシガンに住むミルクマンと呼ばれる男は、家族にも友人にも恋人にも心が通わない。ある事件がきっかけで、自分の解放を求めて家族のルーツを探ってゆく。ペンシルヴェニア州ダンベルまで旅する。祖先を知る人々に接し、祖先について話を聞く。最後に、叔母のパイロットと一緒に、祖先であるソロモンが自分で飛んでアフリカに帰っていったという伝説の飛び場に出かける。そこで結末を迎える。20世紀前半のアメリカ黒人の生き方がリアルに描かれている。黒人のルーツを知らないと本の内容を理解できない本なのかもしれない。一方、死ぬことと生きることをテーマにしているようで、普遍的な面も感じられた。本の中に解答は明示されず、各人の思いに任せられた感が強い。

  • ノーベル賞作家のトニ・モリソン女史の作品で、オバマ大統領の愛読書。さらに、小説家西加奈子さんが多大な影響を受けた作品である(帯に書かれていた)。

    黒人がまだ虐げられた存在であった頃のアメリカでの、「ミルクマン」という奇妙な(でもその渾名のルーツは、ちょっとグロテスクで、かなり切ない)ニックネームの男性が主人公。

    守銭奴の父、無力な母、奇妙な叔母、社会的に危険な友人・・・様々な登場人物が物語に彩りを添える。

    ストーリーの流れは決してスムーズではないのだが、この作家(あるいはこの作品)の持っているパワーでもってグイグイと読ませてくれる。

    登場人物の中で、ミルクマンに恋い焦がれる女性、ヘイガーの言動がとても切なくて、哀しくて、そして美しいと思った。

    この作家の他の作品、読んでみたいと思わせてくれる小説だった。

  • 飛ぶということ、そして鳥これがキーワード。多分
    ラストの解釈はどちらにしても一長一短。
    私は、パイロット派。

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著者プロフィール

1931-2019。アメリカ合衆国の作家。小説に、『青い眼がほしい』(1970)、『スーラ』(1973)、『ビラヴド』(1987)、『ジャズ』(1992)、『ホーム』(2012)など。彼女の長編小説はすべて日本語に翻訳されている。絵本に、スレイド・モリスンとの共著『子どもたちに自由を!』(1999、長田弘訳、みすず書房、2002)『どっちの勝ち?』(2007、鵜殿えりか・小泉泉訳、みすず書房、2020)、『いじわるな人たちの本』(2002)、『ピーナッツバター・ファッジ』(2009)、『小さい雲と風の女神』(2010)、『カメかウサギか』(2010)、『ほんをひらいて』(2014、さくまゆみこ訳、ほるぷ出版、2014)など。写真絵本『忘れないで――学校統合への道』(2004)はモリスンの単著。ノーベル文学賞(1993)のほかに、全米批評家協会賞、ピュリツァー賞、大統領自由勲章など数々の賞を受賞。プリンストン大学などで教鞭をとった。

「2020年 『どっちの勝ち?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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