夜想曲集: 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語 (ハヤカワepi文庫)

制作 : Kazuo Ishiguro  土屋 政雄 
  • 早川書房
3.64
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本棚登録 : 1263
レビュー : 151
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151200632

感想・レビュー・書評

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  • カズオ・イシグロの短編集。音楽、夕暮れ、男と女。間違いなく傑作。

  • 音楽が出てくる小説が好きなので友人が貸してくれたが…なかなか手こずってしまった。外国の方の話はもともと苦手なのもあるけど…文章はそんなに難しくないし登場人物も少ない。なのに、息苦しい感じがして、読み進むのに時間がかかり、頭に入ってこなかった。残念ー。
    他の本もこんな感じかな?長編にチャレンジしてみたい。

  • 老歌手
    この短いテキストでこれほどに芳醇なストーリーが編めるのかと驚きます。まあ、この老歌手に共感できるようになってこそはじめて、一端の大人、なのかもしれません。

    降っても晴れても
    この作家の作品をそれほどたくさん読んだことがあるわけではありませんが、こういうコメディタッチもありなんですね。小説というよりもドラマ脚本という感じがしますが、それでもどこかに詩的な雰囲気が漂っていて入り込めました。

    モールバンヒルズ
    人間というのはなかなかまっすぐに伸びていくことはできないものですね。節を作りながらそのたびに少しずつ曲がっていくので、それがその人のその人らしさを形づくっていくんですね。

    夜想曲
    ひょんなことから顔の整形手術を受けることになった男のコミカルなショートストーリーです。現状と未来との間にプライドがとぐろを巻いていて、あるセレブリティがそれを解きほぐすために突然目の前に現れる。シンプルな筋なのに、読み手側で色々な解釈ができるエンディングです。

    チェリスト
    他の作品とは少し違った趣があります。ある意味では、最も他の長編小説に近いものがあるような気もしました。コメディタッチは鳴りを潜め、どこか深刻な苦しさが表れているような気がしました。

  • 副題「音楽と夕暮れをめぐる五つの物語」
    を描いた短編集。

    物語によってしんみりしたりクスッとできたり
    なかなか面白かったです。「降っても晴れても」の
    主人公の友人たちのなかなか下衆さに呆れたり
    「夜想曲」のホテル探検はいい歳した大人でも
    ハラハラドキドキしてしまいました。

    なんとなく50~60歳になったときに
    また読みたい。

  • カズオイシグロの5つの短編集である。
    5つの作品とも音楽が通低音で流れている。ベネチアを舞台にした作品から始まる。

    昔は大物歌手だった老歌手が離婚する前に切ない気持ちをゴンドラから、運河沿いの部屋で待つ妻へ向かって歌う場面がロマンチックであり、ゴンドラに乗って揺られたことを思い出しながら読むと、本当にそんなことがありそうな気がしてくる。

    その他の作品もありえないと思われる設定でも、音楽や楽器に乗せて人のエゴや欲望の顛末を鮮やかに描いている。
    大人の夜想曲を聞いて読んでみよう。

    図書館スタッフ(東生駒):ミラベル・ジャム

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    帝塚山大学図書館OPAC
    http://lib.tezukayama-u.ac.jp/mylimedio/search/search.do?target=local&mode=comp&category-book=1&category-mgz=1&materialid=1400007860

  • うまいな、といった感じの短編集。ササッと読めてしまった。

    「老歌手」
    「まるで国語のテストの問題文みたいだ」という謎の感想がアタマをよぎった。なぜだ?
    オチはなんだか取って付けたみたいだが、実は後のほうの短編への伏線になっている。

    「降っても晴れても」
    まるでコメディ映画。テンポが良いね。

    「モールバンヒルズ」
    イシグロみたいな一人称の手法を指して「信用できない語り手」と呼ぶとどこかで読んだ。この短編集ではその手法が前面に出るではないが、やはり語り手が、ひねくれた自意識やコンプレックスを抱えていて素直には語っていない気がする。この短編ではクラウト夫妻も素直でない。

    「夜想曲」
    これもコメディ映画風。老歌手では脇に近かったリンディが前面に。

    「チェリスト」
    この短編は珍しく語り手が素直で存在感が薄い。その代わりか女がミステリアス。

  • イシグロは語り手の人称を意識しながら巧みに
    遠くへ連れ出す誘拐犯である。

    この短編集でもその読者攫いの技量はいかんなく発揮され、
    今回は遠くではないかもしれないが、
    壁ひとつ向向こう側の、見えずに漏れ聞こえていた物語へと誘われる。

    音楽と夕暮れの物語、と記されたサブタイトルは
    余韻について考えさせる。
    鳴り響いた反響は楽曲が終わった後も別の揺れを揺らしている。
    呼び起こされた拍手たちと輝く星空のきらめきは
    別の大きな輝きの終わりによってもたらされている。

    それぞれの人生の余韻であるように見える5つの物語ではある。
    しかし、夜もただの1日だ。
    生きる人にとって物語の前も後もない。

    シンプルにセンチメンタルな匂いであっても
    どれもポジティブな愛を感じる。気持ちのいい読後感である。



    >>
    結局、ぼくはまた同じ間違いをしたわけだ。ヘンドリックスへのなり方が足りない。
    ぼくは四つん這いになり、雑誌に向かって頭を下げると、そのページに歯を食い込ませてみた。ちょっと香水のような香りもあり、不快な味ではなかった。(p.109)
    <<

    「降っても晴れても」から。友人の家で留守を任されている時に部屋を汚してしまったのを犬のせいにしようとする主人公が割と真面目にまぬけで笑いそうになるが、必死すぎて笑うのも悪いような気分になる。


    >>
    リンディの体が、前のように音楽に合わせて揺れはじめた。だが、今度はバースを過ぎても止まらなかった。むしろ、音楽が進めば進むほど、われを忘れて溶け込んでいき、両腕までが架空のパートナーに向かって差し伸べられた。終わるとプレーヤのスイッチを切ったまま部屋の端に立ち、おれに背中を向けてじっと動かなかった。ずいぶん長くそのままだったように思う。ようやく振り向いて、ソファーに戻ってきた。(p.220)
    <<

    「夜想曲」から。これもユーモラスなシーンが多いが、
    このリンディの姿は全体を通して見えるイシグロが描こうとした姿ではないかと思う。

  • 2011-2-6

  • 音楽と色々な人生の黄昏時が淡く書かれてる。説明とか不粋な事は一切しない。イシグロブシ痺れるぜ。

  • 副題のとおり、音楽と夕暮れがモチーフとなる5つの短編集。ぼく、として語られる主人公は音楽家だったり、音楽好きだったり。そして主人公に関係するカップルが登場するがどれも関係が危うくなっている。話の進行には音楽が介在し、物語は進む。5つの短編それぞれが一つの曲が流れるように、一つの曲を聴き終わるように、そんな読後感だ。

    「老歌手」はベネチアでバンドを掛け持ちするギター弾きが、ある老歌手が妻のためにホテルの窓下の水路で歌う伴奏をする。なぜそういうシチュエーションが起きたのかがミソ。

    「降っても晴れても」は、雲行きが怪しくなった、ロンドンに住む大学時代のクラスメイト夫婦の家に訪問した47歳の主人公の話。その妻と主人公とは音楽の好みで共通点があったが・・・

    「モールバンヒルズ」は、ひと夏、姉夫婦の営むイギリスのモールバンヒルのカフェで働くギターで身を立てようとする若い男性が、客として訪れた音楽家夫婦に自分の作った曲を聴いてもらうと・・。

    「夜想曲」。これはなにかとんでもなく突飛な設定。売れないサックス吹きが、「整形をしたら売れるんじゃない?」というマネージャーの言に従い手術をしたが、その術後の部屋の隣に有名な女性スターがいて・・

    「チェリスト」。これもなんとも不思議な話。イタリアのアドリア海に面した町で、若いチェリストがやってきて町のバンドに在籍するが、天才チェリストと名乗る女性と出会い、自身の演奏を指導してもらうが、女性は決して自分では演奏して見せない。実は・・

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著者プロフィール

カズオ・イシグロ
1954年11月8日、長崎県長崎市生まれ。5歳のときに父の仕事の関係で日本を離れて帰化、現在は日系イギリス人としてロンドンに住む(日本語は聴き取ることはある程度可能だが、ほとんど話すことができない)。
ケント大学卒業後、イースト・アングリア大学大学院創作学科に進学。批評家・作家のマルカム・ブラッドリの指導を受ける。
1982年のデビュー作『遠い山なみの光』で王立文学協会賞を、1986年『浮世の画家』でウィットブレッド賞、1989年『日の名残り』でブッカー賞を受賞し、これが代表作に挙げられる。映画化もされたもう一つの代表作、2005年『わたしを離さないで』は、Time誌において文学史上のオールタイムベスト100に選ばれ、日本では「キノベス!」1位を受賞。2015年発行の『忘れられた巨人』が最新作。
2017年、ノーベル文学賞を受賞。受賞理由は、「偉大な感情の力をもつ諸小説作において、世界と繋がっているわたしたちの感覚が幻想的なものでしかないという、その奥底を明らかにした」。

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