夜想曲集: 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語 (ハヤカワepi文庫)

制作 : Kazuo Ishiguro  土屋 政雄 
  • 早川書房
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本棚登録 : 1273
レビュー : 152
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151200632

感想・レビュー・書評

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  • 夕暮は光と闇の変わり目、明と暗の入り混じった時間と空間。
    音楽と夕暮・・・男と女、夫婦、才能、過去と現在
    別れの予感・決意、栄光と衰退、希望と現実

    音楽をバックに
    「降っても晴れても」「夜想曲」は語り手自らが夕暮にあり
    「老歌手」「チェリスト」は語り手の目を通して
    「モールバンヒルズ」は語り手自らと語り手の目を通して
    夕暮の世界が描かれている。

    静かな味わい

  • 音楽と夕暮れ...五楽章からなるイシグロ初の短編集。著者の作品では、今年『わたしを離さないで』を読了。あの重厚さからこのコメディータッチな作品集へのギャップはあまりに大きい。
    レコードをかければ聴こえてくる。未完成なサックスの響き、犬の匂いと不十分な牙の痕、飛び立てない七面鳥は床に落下する。何度も聴こえてくるシュールな笑いが最上の音の美。ねぇ、こんな夜にはカクテルグラスにチェスがお似合いね。そして今夜だけは、今だけは、2人酔いしれくるくると踊りましょう。例え後に破滅的な雑音が鳴り響くとしても。

  • カズオ・イシグロによる音楽にまつわる5つの短編。
    「老歌手」往年の名歌手とその妻に出会った、若きギタリストの不思議な交流。
    「降っても晴れても」学生時代の音楽愛好仲間と結婚した親友に再会し、うまくいかない夫婦関係とうまくいかない主人公の人生を嘆くような、コメディ
    「モールバンヒルズ」イギリスの田舎町でくすぶるギタリストと、彼が手伝う料理屋を訪れた正反対の性格を持つ音楽家夫婦の物語
    「夜想曲」タイトルの割りにすごいポップ。ひょんなことからスターと同じ病院に泊まり、一夜の冒険をすることになったサックス奏者の嘆きべくポップな物語
    「チェリスト」プロの道を歩き出した若きチェリストと、彼に指導を行うようになったアメリカ人女性の、不思議な師弟関係を描いた物語

    舞台はイタリアだったりアメリカだったりイギリスだったり。出てくる音楽家たちの楽器もギター、サックス、チェロなど。立場も成功者から夢見る若者、愛好者など様々。

    音楽って美術同様に成功する人が極端に少ないからか、なにかどの話も切ない。わずかなポップさに救われるんだけど、それもいつか終わる。音楽を聞いているみたいな読書でした。

  • 愛の夕暮れは、音楽のように響く。

    副題「音楽と夕暮れをめぐる五つの物語」とあるが、確かに、なんとなく、夕暮れの物語である。全体に漂うのは、寂しさ。どの短編にも愛の危機にある人々が出てくる。何か哀しみの予感がする。人生は甘いものばかりで出来ていない。カズオ・イシグロを読むと、いつもそう思う。

  • カズオイシグロの5つの短編集である。
    5つの作品とも音楽が通低音で流れている。ベネチアを舞台にした作品から始まる。

    昔は大物歌手だった老歌手が離婚する前に切ない気持ちをゴンドラから、運河沿いの部屋で待つ妻へ向かって歌う場面がロマンチックであり、ゴンドラに乗って揺られたことを思い出しながら読むと、本当にそんなことがありそうな気がしてくる。

    その他の作品もありえないと思われる設定でも、音楽や楽器に乗せて人のエゴや欲望の顛末を鮮やかに描いている。
    大人の夜想曲を聞いて読んでみよう。

    図書館スタッフ(東生駒):ミラベル・ジャム

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    帝塚山大学図書館OPAC
    http://lib.tezukayama-u.ac.jp/mylimedio/search/search.do?target=local&mode=comp&category-book=1&category-mgz=1&materialid=1400007860

  • 副題のとおり、音楽と夕暮れがモチーフとなる5つの短編集。ぼく、として語られる主人公は音楽家だったり、音楽好きだったり。そして主人公に関係するカップルが登場するがどれも関係が危うくなっている。話の進行には音楽が介在し、物語は進む。5つの短編それぞれが一つの曲が流れるように、一つの曲を聴き終わるように、そんな読後感だ。

    「老歌手」はベネチアでバンドを掛け持ちするギター弾きが、ある老歌手が妻のためにホテルの窓下の水路で歌う伴奏をする。なぜそういうシチュエーションが起きたのかがミソ。

    「降っても晴れても」は、雲行きが怪しくなった、ロンドンに住む大学時代のクラスメイト夫婦の家に訪問した47歳の主人公の話。その妻と主人公とは音楽の好みで共通点があったが・・・

    「モールバンヒルズ」は、ひと夏、姉夫婦の営むイギリスのモールバンヒルのカフェで働くギターで身を立てようとする若い男性が、客として訪れた音楽家夫婦に自分の作った曲を聴いてもらうと・・。

    「夜想曲」。これはなにかとんでもなく突飛な設定。売れないサックス吹きが、「整形をしたら売れるんじゃない?」というマネージャーの言に従い手術をしたが、その術後の部屋の隣に有名な女性スターがいて・・

    「チェリスト」。これもなんとも不思議な話。イタリアのアドリア海に面した町で、若いチェリストがやってきて町のバンドに在籍するが、天才チェリストと名乗る女性と出会い、自身の演奏を指導してもらうが、女性は決して自分では演奏して見せない。実は・・

  • 20187/12

  • 音楽やジャズが好きな人はハマりそうなお話。

  • まぁまぁ。

  • 寂しいとか、哀しいとか、そのような印象だけが読後感として強く残る。失礼ながら話の筋はあまり残らない。。印象だけを強く残すという、感覚を得た。
    こういうのが芸術としての文学っていうのかな。
    仮にこれの話の要旨をまとめても、この話を説明したことにはならない。全部読んでようやくこの話を味わったことになるという意味で芸術なのかもしれない。

著者プロフィール

カズオ・イシグロ
1954年11月8日、長崎県長崎市生まれ。5歳のときに父の仕事の関係で日本を離れて帰化、現在は日系イギリス人としてロンドンに住む(日本語は聴き取ることはある程度可能だが、ほとんど話すことができない)。
ケント大学卒業後、イースト・アングリア大学大学院創作学科に進学。批評家・作家のマルカム・ブラッドリの指導を受ける。
1982年のデビュー作『遠い山なみの光』で王立文学協会賞を、1986年『浮世の画家』でウィットブレッド賞、1989年『日の名残り』でブッカー賞を受賞し、これが代表作に挙げられる。映画化もされたもう一つの代表作、2005年『わたしを離さないで』は、Time誌において文学史上のオールタイムベスト100に選ばれ、日本では「キノベス!」1位を受賞。2015年発行の『忘れられた巨人』が最新作。
2017年、ノーベル文学賞を受賞。受賞理由は、「偉大な感情の力をもつ諸小説作において、世界と繋がっているわたしたちの感覚が幻想的なものでしかないという、その奥底を明らかにした」。

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