- 本 ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151200762
作品紹介・あらすじ
しがない中年男の夢想の世界を描いた表題作はじめ、著者の代表的短篇を網羅した傑作集
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
25ある短編は、ほとんどが人間のおかしな行動を極端に表現している。
シンプルでシビアな文章の中に上方漫才にも通じる滑稽さを持ったショートストーリー群。
表題作「虹をつかむ男」をはじめとして、
「空の散歩」「妻を処分する男」「機械に弱い男」の夫婦の妙。
「ブルール氏異聞」「ビドウェル氏の私生活」「人間の入る箱」のサイコ的心理。
ただひたすら面白い「ウィルマおばさんの勘定」とチョットいい話の「愛犬物語」。
少し変わって、「ホテル・メトロボール午前二時」「一種の天才」の笑いを抑えた社会風刺
などなど……。
さらに、25の短編ごとに作者自身が描いた25のイラストが、ストーリーをピッタリと補完する。
気を許すと「フッ!」とか「フウ~」って声が漏れるような読書でした。 -
2013年公開の映画「LIFE!」を観て原作に興味を持った。しかし、その著者は1894年(日本では明治だ)生まれで、その作品中で膨らむ妄想は第2次大戦中という舞台設定。しかも超短編! 序文の人を食ったような書きぶりと共に、不思議な作品という印象。他の短編も妄想や群集心理が弾けている。「ウィルマおばさんの勘定」が落語「つぼ算」に通じる面白さだった。
-
サーバー作品中の妄想にうつつを抜かす人達が分かりすぎてつらい…
-
空想と現実の狭間で輝くユーモア
ジェイムズ・サーバーは、アメリカのユーモア作家として、喜劇的な欲求不満や奇行といった人生の種々相を、鋭い視点とユーモラスな筆致で描いている。本作は、そんな彼の短篇集のひとつで、笑いと哀愁が交錯する物語が収められている。
表題作「虹をつかむ男」の主人公、ウォルター・ミティは、日常のささいな出来事においても、空想を披露する一風変わった人物。彼の空想は、単なる妄想ではなく、退屈で単調な現実から逃れ、自らを鼓舞するための手段として描かれている。ユーモアあふれる筋書きの奥底には、〈社会があまりにも退屈になった〉という鋭い批評が潜んでいるのかもしれない。なお、物理的な意味で〈虹を見る〉ことは誰にでも起こりうるが、〈虹をつかむ〉という表現には、突拍子もないロマンと夢追い人ならではの情熱が感じられる。
全体として、サーバーの短篇集は、日常に潜む奇想天外な空想とユーモアが絶妙に調和している。彼の描く世界は、退屈な現実を一瞬で忘れさせ、読者に夢と希望を呼び起こす。 -
短編集で、いずれも独特なちょっと引っかかるような読後感。映画の原作ということで手に取ったのだが、イメージしてたのとは随分違った(笑)。
鳴海四郎の作品





