怒りの葡萄〔新訳版〕 下 (ハヤカワepi文庫)

  • 早川書房 (2014年12月19日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (432ページ) / ISBN・EAN: 9784151200816

みんなの感想まとめ

苦難の旅を経てカリフォルニアにたどり着いた家族が、限られた仕事を求めて奮闘する姿が描かれています。彼らは資本主義の歪みの中で、低賃金に苦しむ移住民としての現実に直面し、富める者と貧しい者の格差が鮮明に...

感想・レビュー・書評

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  • アメリカは豊かな国だと今まで思っていた。
    確かに世界恐慌のあとは我が国を含め、第二次世界大戦前の時代は全世界的に混乱はあっただろうけれど、戦争どころじゃない内陸のルート66号線沿いでこんな貧困に悩む何万人もの人たちがいたという現実、この本を読むまで知らなかった。砂嵐と文明と国の政策、資本主義の歪みに巻き込まれ犠牲となる歴史的事実、この本を読むまで知らなかった。
    まだ100年経っていないのに。
    アメリカは豊かな国だと今も思っている。
    だけど、開拓時代でもなく南北戦争時代でもなく黒人奴隷問題でもない、移住農民の貧困問題。20世紀になってからの現代に近い出来事。他の国のことと一言では言い切れない今に地続きの現代の問題。アメリカは本当に豊かな国なのか。

    主人公は出獄したばかりのトムなのだが、家族全員が主人公。やがて主役の地位は家族のそれぞれひとりひとりにに移って行き、一緒に苦しむ人へ、そして、女たちへ。
    私が女だからそう思うのだけれど。母と母になれなかった女。
    章ごとに視野を変えながらもやがてどうしょうもない程の苦しみへ。
    書名から『出エジプト記』を連想するけれど、先入観を持たずに読んだ方が良い本。 

    20世紀はもうずっと遠くへ行ってしまったけれど、現在を生きる人間にそのひとりとして
    この小説は普遍でなければならない!と強く思う。
    中学生のころから題名だけは知っていた小説。今回接する機会を持てて自分の衝動に感謝。

  • 貧しさゆえに土地を追われて遥か遠くに行き着いた後に生きる為の仕事にありつくことが難しい。そんな状況下で人はどのように考えて行動するのか?救いはあるのか、考えさせられました。
    現代の日本でも現実味を感じる物語で、資本主義の恐ろしさを痛感できます。

  • アメリカの作家ジョン・スタインベックの代表作。
    1930年代のアメリカ。農業が資本主義による合理化が進んだことと、行き過ぎた農作による旱魃のために、昔ながらの耕作地から追い出される貧農家族たち。
    土地はなく、収穫の仕事もない。あったとしても人ひとり生きていくのにも苦労するような低賃金。彼らは希望を求めてオクラホマ州からはるばるカリフォルニアを目指す。しかしカリフォルニアも既に何十万人とも言われる貧民たちが流れ込んでおり、状況は変わらなかった。
    貧しいもの同士、協力して助け合うコミュニティもできつつあるが、貧民の結束を恐れる資本家と政府によって「アカ」呼ばわりされ、潰されていく。コミュニティもまた、資本家や政府の妨害にあって瓦解し始める。
    それでも、誇りを持って生きようとするジョード一家の物語。

    ずいぶん昔に読んだ記憶があるのだが、その時には時代背景等に理解が無さすぎて、読み進めるのがやっとだった。
    新訳が出ているので新訳で再読したが、前回の記憶がまるっきり飛んでしまっているので、ほぼ初見と言って良い感じだった。

  • 食べ物を、仕事を、いや、人間としての尊厳を求めて、中古トラックでアメリカの荒野を渡り歩くジョード一家。

    上巻では強さが目立った母ちゃんも、旅の疲れもあってか、ぽろぽろと弱いところも出てくる。逆に能天気だなと思っていた父ちゃんにも、彼なりの哲学が垣間見える瞬間もあって、ある家族の痛ましい流浪の記録であることに違いないのに、瞬間を切り取れば、あったかい家族の物語だと感じさせられる部分もあった。

    上巻でも感じていたが、スタインベックの色の使い方には感心させられるばかりで、加えて下巻では、視点(≒語り手)の切り替えの鮮やかさにも目を見張った。

    「貧困に苦しむ人がいる一方で、大量の食べごろの果物が腐っていっている現実に怒りを覚えた、資本主義に対する告発の書」という、世界史の教科書に載せられた評価そのままに、今をもって色褪せない価値を持つ一冊である。

  • 資本主義の本質が描かれている。

    広大な畑を所有していても管理しきれず、ただ眠らせているだけの資本家。
    子どもたちが飢餓で死んでいくのに、畑をもてずただ眠っているだけの畑を眺めながら横たわる労働者。

    岸田政権下で、人的資本経営が掲げられ、人間も財務上で数値化されるであろう今後、より数値の高い人材とそうではない人材の貧富の差は増していき、富める者はもっともらしい理由をみつけ、貧しい者はより貧しくなるであろうことが予想される。
    その先に待つのは、こうした資本主義原初の労働者階級の怒りかもしれない。

  • ああ……トム……。
    ジョードー家のような人々、アメリカにまだ居るのだろうなぁ。というより、現代社会であればどこにでも、日本にでもいるのだろう。

  • 昨今の人権尊重、人手不足の世界に生きていると見えにくくなるが、ちょっと需給のバランスが崩れれば、資本主義の下では人間が一番安いということ。
    資本側から見れば「いかに安く使い捨てるか?」だし労働者側から見れば「いかに使い捨てにされないようにたち振る舞うか?」がこの社会の根底原理にあること。
    平和ぼけで忘れないようにしたい。

  • 映画もついでに観ました。映画では最後の方はえがかれていなかった。

  • 衝撃のラストシーン。全てを失ったものが、無意味かもしれないのに、自らの血肉を差し出す。

    救いようのない物語だからこそ、最高の救いを描くことができたのか。

    女の視点から見て、男が炭鉱のカナリア的な役割を担わされているのが、印象的だ。

  • ラストに向かって読み進めていくにつれて、苦しくなってきた。

    ここに描かれる怒りや恐怖は、まさに同時代的なことであろう。
    食えなくなるという恐怖は、人類史を動かしてきた原動力であると同時に、歴史教科書の中だけのことではないということを改めて知らしめてくれた。

    どんなに文明や技術が高度になろうとも、生身の部分はそうは変わらない。結局はその部分をどう折り合いをつけるか。
    歴史を超克するために我々が解決しないといけないことなのだろう。

  • 面白かった。古典的名作と言われるようになるくらい昔に発表された小説だが、現代の問題に通じるものがあって胸が痛かった。派遣のスポット雇用で働いていた時、人間らしい扱いを受けているとは感じなかったが、そこは程度の差こそあれ昔も今も変わらないのかもしれない。社会派な側面と宗教的な側面がある小説だった。ジョード一家は人間らしく扱われないまま絶望に打ちひしがれることになるが、命を繋いでいこうとする結末には、思わず(それまで人間臭くていらついてしまっていた)ローザシャーンへの評価について手のひらを返した。

  • 大不況の中で必死に家族が支え合う。
    困難な時でも子供は無邪気。
    そして、最後に娘は女神となった。

  • 文学

  • 2017/9/17読了
    迫力のある下巻だった。ジョード家のその後の展開も想像して見たかったが、それ以上に作者スタインベックの社会に対する怒りの強さの方に驚かされた。ただ、これが1939年当時のアメリカの実態だったのか。時代の検証も併せてして見たい。

  • 母ちゃんがカッコイイなぁ。

  • 最高に面白い物語でした。
    次々と理不尽なことが起こる話の中に、かならず救いが混ぜ込まれていることでなんとか最後まで希望を持って読み進められました。

    みんながんばってきたんだ。そう強く思えた作品です。

    目指す「カリフォルニアの定住地」というものが作中にでてくるのか?と問われれば、答えはノーです。

    でてきません。

    ただ、そのことに作品を読んだあと落胆するかというと決してそういうことはありませんでした。

    生きていくことに大切なのは気持ちでは?助け合う気持ちというか、希望があると思いながら進む気持ち。そういうことを感じました。

    今まで、本から得るものといえば主に「共感」でしたが、今回は「愛情」と「この先の指標」をもらえたような気がします。

    スタインベックかっこいいわ。

  • 圧倒的強者にいいように使われている大多数の弱者。

    生きるため、家族を養うため弱者たちは過酷な境遇の前に泣きねいるしかない。

    そんな状況の中、ジョード家を支えてるのは「家族のつながり、隣人との助け合い」しかない。

    ジョード家だけでない、この時代のアメリカを厳しい現実を描いた作品。

  • 現代に通じる資本主義の狂気を鋭く描く。

  • ネイティブ・アメリカンの土地を収奪した農民が、借金のカタに東部の銀行資本にその土地を奪われ、メキシコ人の土地を収奪したカリフォルニアの大地主から搾取されるというお話。

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