忘れられた巨人 (ハヤカワepi文庫)

制作 : 土屋 政雄 
  • 早川書房
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本棚登録 : 988
レビュー : 127
  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151200915

感想・レビュー・書評

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  • 記憶の功罪。

    忘れることは、悪いことか。
    忘れることで平和が維持されうることもある。

    個人にとって、記憶は大切だ。
    コミュニティにとって、時にそれは火花にもなる。

    記憶を巡る冒険は、人間のアイデンティティを巡る旅である。

    公的な記憶と私的な記憶。

  • 2018年7月8日に紹介されました!

  • アーサー王時代のイギリスを舞台にした、記憶を巡る物語。信頼できない語り手、に少し近いけれど、設定上の仕掛けによって話の全容が隠されており、主人公と読み手が一緒になってそれを解き明かしていくややミステリ的な体験。霧に包まれたおぼろな記憶を、おぼろな記憶としてただおぼろげに描写できるのは文学ならではの技術だなと思う。

    そして埋葬されていた記憶を掘り起こすことは時に非常な痛みを伴い、場合によっては愛すべき人との今の幸せな関係が取り返しのつかぬ壊れ方をするかもしれないという恐怖も伴い、ただそれでも真実を求め向き合うか否か、という一種の愛の試練の物語でもあった。


    で、その構図は、主人公夫婦というミクロな関係だけでなく、後半になって明らかになるマクロな状況にも相似的に仕込まれていて、なんつー技巧的なストーリー設計だ・・と読み終わって唸った。カズオ・イシグロは本当にすごい。未読のはあと短編集と「私たちが孤児だった頃」か。遅読の自分に対し寡作な人である意味助かった。

  • ドラゴンの吐く息によって登場人物がみな記憶を失っているため、時折フラッシュバックのように記憶が甦るがそれも定かではなく、読者側も霧に包まれているようにひたすらモヤモヤさせられる。
    加えてアーサー王伝説を知らないと分かりづらいかもしれない。
    話の伏線は全て回収されるわけでもなく、最後まで曖昧なままだったが余韻の残る終わり方が印象的だった。

  • 読みやすい作家じゃないのはわかっていたけど、いや~本当に読み進むのに苦労しました。そして、ラストシーンの重たい余韻。なんとか読み通してよかったと。

  • 自分の好みに照らして率直にいうと、地味だなという印象でした。
    事前にファンタジーらしいと聞いて先入観を持ちすぎたようです。
    そうとは感じられず、カズオ・イシグロ的としかいいようのないジャンルなので、なにしろ稀有だろうと思いました。

    『忘れられた巨人』を読み始め、記憶や過去の扱い方こそがテーマらしいと決着があったり新しく開けるパターンではなく、ひたすら深化の方向性でした。

    なんだかモヤモヤを抱えて読み進めていき、モヤモヤのまま終わった時にはじめて、このモヤに好意を抱く。という、不可思議な読了体験でした。

  • 全ての村人から記憶が薄くなる寓話。人の人格や考え方はその人の記憶の積み上げからできていると思うが、その記憶が割と頼りないものだ、と気付かされる。記憶が頼りないなかで自分の信条や愛情を発揮していく美しい老夫婦。終わりがなんとも美しい。

  • 中世のイギリスを舞台とした物語。一組の老夫婦が自分の息子が住む町に向かう旅。そしてその中世のイギリスは記憶があいまいになる魔法がかかっている。
    この物語を読んで感じたことは、人は「忘れられる」という素晴らしい能力を持っているということと、「忘れたくない」という気持ちを常に持っている。そしてその二つが常にせめぎあっている。
    いろいろと考えさせられる物語だった。

  • 数年前に挫折してしまったので再挑戦。
    前回は退屈だったが、乗り越えられた。正直、これがイシグロの初読だったら辛い。なぜ、老人が妻を「お姫様」呼ばわりしているか、背景を知って納得。

    アーサー王伝説を下敷きにした老夫婦のラブストーリー。
    わざわざファンタジー色あらわにしたのは、若い読者に読ませるためなのだろうか。

    旅する老夫婦に同行する戦士、少年、老騎士。
    ついにドラゴン退治。こう書くとRPGのようだが、そうはならない。

    愛とは、他者の過ちを知りながら忘れる優しさなのだろうか。朝もやの中を進む物語、行き先の分からない船に揺られて辿り着いた最後も明確な目的地とはいえない。不思議な読後感がある。

  • うーーん、これまで読んだ彼の作品の中では一番しっくりこないかなあ。でもテーマはもちろん今の時代とブレクジットに対する彼の思いを凄く運んでくる。

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著者プロフィール

カズオ・イシグロ
1954年11月8日、長崎県長崎市生まれ。5歳のときに父の仕事の関係で日本を離れて帰化、現在は日系イギリス人としてロンドンに住む(日本語は聴き取ることはある程度可能だが、ほとんど話すことができない)。
ケント大学卒業後、イースト・アングリア大学大学院創作学科に進学。批評家・作家のマルカム・ブラッドリの指導を受ける。
1982年のデビュー作『遠い山なみの光』で王立文学協会賞を、1986年『浮世の画家』でウィットブレッド賞、1989年『日の名残り』でブッカー賞を受賞し、これが代表作に挙げられる。映画化もされたもう一つの代表作、2005年『わたしを離さないで』は、Time誌において文学史上のオールタイムベスト100に選ばれ、日本では「キノベス!」1位を受賞。2015年発行の『忘れられた巨人』が最新作。
2017年、ノーベル文学賞を受賞。受賞理由は、「偉大な感情の力をもつ諸小説作において、世界と繋がっているわたしたちの感覚が幻想的なものでしかないという、その奥底を明らかにした」。

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