もの言えぬ証人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 早川書房
3.44
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本棚登録 : 492
レビュー : 61
  • Amazon.co.jp ・本 (520ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151300141

感想・レビュー・書評

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  • ひとりクリスティ祭継続中。
    いくつか読んでみてわかったけど、クリスティってけっこうネタの再利用…と言うのは少しキツすぎるか、「モティーフの変奏」てことをやっている。こないだ読んだ某作も、彼女の超有名な2作の合わせ技(と言えなくもなかった)し。
    それがいかんというのではない。そうでもなければ、水準以上の作品をこんなにも量産できなかっただろうし。いろんなテクニックやテーマを、何度も自覚的に試行錯誤していたのだということがよくわかる。
    というわけで、本作にも他作と共通するテーマが流れている。ラストはかなり衝撃的だが、その他作を先に知っていたために若干の既視感はあった。そちらを未読の人なら、「!!!」レベルに驚愕するかもしれない。
    いろんなレビューでとっくに触れられていることだろうが、コメディチックな味が楽しい1本。安心して読める、安定のクリスティ。おすすめ。

    おっと、解説は飛ばされることをおすすめする。大御所の評論家らしいが、いろんなネタバレを盛大にかましている、とんでもないものなので。

    2018/7/13〜7/14読了

  • 終盤まで犯人が分からず、ドキドキしながら読めました。
    ただ犯人にどうしても言いたいことが一つあります。
    「最初から燐で殺しときゃよかったのに」…と。
    よそのお宅の廊下でこっそり釘をカンカン打っちゃう度胸は認めるけど、余計なことしなきゃ、被害者が警戒して遺言変えちゃったりポアロが追ってきたりしなかったのにね。

  • ポアロシリーズ。ちょっと犯人は意外だった。そして何よりもあとがきを読んでショック!!ヘイスティングスがもう最終巻まで出てこないなんて!!一番好きなキャラなのに…。残念…。

  • 再読。訳が好きになれなかった。特にヘイスティングズがポアロを「あんた」って言ってるのが…。喋り方も、あんな乱暴な感じだったっけ?って思わず他の作品で確認しちゃったり。訳す人が違うとはいえそこらへんはちゃんと統一してほしいなぁ。これでカーテンまでヘイスティングズが出ないのはとても残念。

  • 黄金期の凡作はこんなにも輝いているのかという好例。
    ポアロシリーズ14作目の長篇で、発表は1937年。
    通好みで優雅な『ひらいたトランプ』と
    大作『ナイルに死す』にはさまれているためか、
    ただでさえ地味な話なのに、余計地味な位置にいます。
    分厚いけれど、中篇を読んでいるような感覚でした。
    現代の作家がこれほど厚い小説を書いたら
    読み終えるころには満腹になっているだろうけど、
    クリスティーはあっさり味。もたれません。
    そのくせ物足りなさは感じさせないんだから……。
    やっぱり唸っちゃうな。天才だよ、この人。
    地味な作品ほどその凄みを痛感させられる。

    自然死と見られた老女の死の真相をこっそり探るため、
    ポアロはこまめに嘘をつきながら捜査を進めます。
    周囲の不動産屋には家を買いにきたと言い、
    かかりつけの医師には伝記作家だと偽り、
    若い姪と甥には、貴方達に不利な遺言状を無効にする
    秘策があると、山師のような話をもちかけ……。
    ポアロのぬけぬけとしたうそつきっぷりが楽しいし、
    それにいちいち驚くヘイスティングズもかわいい。
    「じつにじつに鈍い男」(『欺しの天才』)と
    見下されることの多い彼ですが、
    この人の魅力は与太郎なところにあるんですね。
    さて、自然彼らの会話はただの証人尋問ではなく
    一種のかけひきのような意味合いを帯びてくる。
    ポアロの嘘を見抜いた上で話に乗ってくる猛者もいて、
    こうした狐と狸の化かし合いがたまらない。

    本書が中篇に見えたのにはもう一つ理由があります。
    展開が速い。
    この小説、1~4章で老婦人が死ぬまでを書き
    (ヴィクトリア朝時代への愛情が読ませる)
    5章でポアロのもとに死者からの依頼状が届く。
    そこからのポアロの迅速さは次の通り。
    1日目に周囲の聞き込みをすませ(5~12章)
    2日目に容疑者たちと接触し(13~21章)
    3日目にはもう真相を見抜き(22~25章)
    4日目に最後の仕上げを行い(26~28章前半)
    5日目にちょっとゴタゴタあって(28章後半)
    6日目にはもう皆を集めて演説している。(29章)
    30章に後日談があっておしまい。
    展開が速い分、いつもは省略されている細部を楽しめ、
    ポアロの捜査に同行している臨場感を味わえる。

    ただし……18章には要注意!
    『雲をつかむ死』『スタイルズ荘の怪事件』
    『アクロイド殺し』『青列車の秘密』
    この四作の犯人をばらしているのです。
    ばらすなよクリスティー!
    幸い18章は中間報告のための章で、
    読まなくても本筋には影響がありません。
    よかったら飛ばしちゃってくださいね。

    今から見ると差別的な箇所もあります。
    ギリシャ人との混血児は「黄色っぽい子供」と呼ばれ
    大伯母からは「愛情が持てなかった」と思われている。
    ギリシャってヨーロッパ文明の源泉なのに……。
    トルコに支配されていた歴史が長いから
    「半分アジア」みたいな感覚なのかなあ。

    家政婦に対する軽蔑もひどい。
    やれ「面白くない退屈な人が多い」だの、
    「たいてい意気地のない人ばかり」だの、
    「まるっきり馬鹿じゃないか」だの、しまいには
    「家政婦などして生きている女に利口な女なんて
     いやしない」とまで言われる始末。
    私が家政婦だったら本を投げつけるね。
    こんな世界崩壊して当然だ!
    作者の階級差別が露骨に表れた瞬間といえるでしょう。
    ところが! ここからがアガサの恐ろしいところ。
    彼女は自分の差別意識をもトリックに利用したのです。
    特に名を秘す50年代のある傑作がそれで、この長篇は
    『もの言えぬ証人』のアップデートではないだろうか?
    このくらいの差別クリスティーなら当然、
    と気にかけず読んでいると足下をすくわれる。
    女王陛下、貴女にはとてもかないません。

    最後に私が最も気に入った会話を一つ。
    「それでも彼が好きなんですね。 どうしてでしょう?」
    「理由なんてある?
     どうしてジュリエットがロミオにまいったのか、
     ご存じ?」
    「シェイクスピアはどういうか知らないですが、
     ロミオはジュリエットの会った最初の男だったことが、
     理由のひとつでしょう」
    「レックスはあたしの会った最初の男じゃないわ、
     どうひいき目に見たって。
     でもね、おそらく最後の男になるんじゃないかと
     思うわ。いいえ、そう感じてるの」

    旧版は解説なし。
    新版は直井明さんの解説。
    なにやら随想的ですが、ツボは押えています。
    トルコによるアルメニア人虐殺や
    アガサの愛犬ピーターについての記述も立派です。
    新版の不戦勝です。

  • ポアロシリーズ14作目。今回は久しぶりにヘイスティングの語り。

    なんか……面白かった!!(笑)ポアロがいろんな役に化けて情報収集するんだけど、それがもう面白くて!!ニヤニヤしながら読んだ。

    以下ネタバレ



    ただ、ラスト犯人がわかった状態でポアロが犯人が自殺するのを止めないのがなんか違和感なんだよな〜と思ってたんだけど(過去のポアロはたとえ殺人犯人でも、自死を許さないタイプだったような記憶がある)ラストを読み直して納得。
    今回ポアロは、依頼人であるエミリイが望むことをやったんだな、と。
    エミリイが望むこと→一族の恥を晒さないこと。事件を公にしないこと。
    だから、犯人には消えてもらわなきゃならなかったんだ!と私の中ではストンッと納得できた。
    そう考えたら、めちゃくちゃ綺麗な終わり方だし、すごいまとまった物語だわ。


    いやぁ。クリスティ、当たりが続いていて嬉しい。
    さ、次は「ナイルに死す」だな。

  • ポアロとヘイスティングズの口調が…。
    特にヘイスティングズがポアロのことを『あんた』て呼ぶのが気になった。
    あと、私が犬の種類全然知らないのが悪いんだけど、ボブは表紙みたいな犬だと思って読んでたよー。
    紛らわしい!

  • ロンドン近郊の田舎町マーケット・ベイシングの小緑荘の女当主エミリイ・アランデルが、家政婦1人に莫大な遺産を残す遺言を残し死んだ。一方ポワロに死後二カ月経って、命を狙われてるようだとのエミリイからの手紙が配達される。何かあるとにらんだポアロはヘイスティングスと共に調査を開始する。

    死んだエミリイには姪が二人、甥が一人いて、最初はこの3人に等分に遺産を分ける遺言だったが死の直前に家政婦1人への遺言に代わっていた。また死は持病の肝臓病の悪化とされたが、直前には飼い犬の遊び道具のボールにつまずいて階段から落ちるという事故もあった。これは単なる事故なのか? 甥姪はそれぞれに金欠で遺産を狙っていた。

    物言わぬ証人とは飼い犬のボブのこと。ポアロ達が家に行くとこのボブの独白があり、イヌ好きのヘイスティングスや犬嫌いのポワロへのボブのセリフがとてもおもしろい。

    遺産を狙う甥姪とその配偶者、家政婦たちへの調査でそれぞれの思惑が明かされる過程がとてもおもしろく1日で読んでしまった。安定のポアロもの。

    犯人への制裁が「ねじれた家」と似ている。

    1937発表
    2003.12.5発行【2014.11.15第5刷 図書館

  • 一人のお年寄りを死を巡ってポアロが調査を行う物語。結構な分量にもかかわらず動きが少ないが、個性豊かな登場人物により最後まで楽しめる。

    怪しいと言えばみんなあからさまに怪しい人達ながら、何となく憎めないキャラが集結していてるが、今回はトリックがちょっとしっくりこなかったかな。文章の中に色んなヒントが散りばめらているという意味ではフェアな探偵小説であるとは思うけど。

    それはそうと解説は他の人の言う通り見ない方がいい。大したこと書いてないのに色々と他の話のネタバレさせとる…全員が一度クリスティの代表作を全て読んでる前提のような文章はないだろう…

  • 回想殺人もの、と言えばそうかな。
    仕掛けとしてはちといまいちかなあ。

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