ナイルに死す (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

制作 : Agatha Christie  加島 祥造 
  • 早川書房
3.87
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  • (6)
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本棚登録 : 1116
レビュー : 104
  • Amazon.co.jp ・本 (581ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151300158

作品紹介・あらすじ

美貌の資産家リネットと若き夫サイモンのハネムーンはナイル河をさかのぼる豪華客船の船上で暗転した。突然轟く一発の銃声。サイモンのかつての婚約者が銃を片手に二人をつけまわしていたのだ。嫉妬に狂っての凶行か?…だが事件は意外な展開を見せる。船に乗り合わせたポアロが暴き出す意外きわまる真相とは。

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった。とても、面白かった。

    クリスティのミステリ作品中最も長大なボリュームの本作。
    確かに手に取った瞬間、これは厚いなあ…!というのが第一印象だった。
    それにミステリなのに、しばらく読み進めても中々第一の殺人が起こらない。
    沢山の登場人物達が丁寧に描かれ、ゆったりとした旅の様子が描写されている。
    読了後にふと思ったのが、これはクリスティが感じたナイルの雰囲気なのではないだろうかと。
    ゆっくり流れる時間。悠久の土地。何となく、素敵な雰囲気を感じる…。
    はじめに書かれている訳者の『はじめは少しゆっくり読んでください。』
    という一文の意味も、読了後に頷ける。
    これは、のんびりと、ゆっくりと読む小説なのだ…。

    これは愛の話である。
    作品中に垣間見れる様々な愛が、時には恐ろしく、時には可愛らしく、時には少し可笑しい。
    誰が殺され、誰が犯人でどういう動機だったのか。
    そういった分かりやすい推理小説の面白さだけでなく、
    登場人物達の恋愛模様がとても、気に入る。

    あまりの面白さに一気に読んでしまったが、
    また今度、ゆっくりのんびりと読み返すことにしよう…。

  •  豪華客船上で起こった殺人事件にポアロが挑むミステリー

     クリスティー作品はミステリとしての完成度も一級品ですが、メロドラマ、恋愛群像劇としても面白い作品が多く、そしてそれがしっかりとミステリと結びついている点が魅力的だと思います。この『ナイルに死す』もまさにそのような作品です。

     事件が起きるまでは登場人物たちの描写や人間関係の描写にページが割かれます。これがまた非常に長くて、事件が起きるまで200ページ以上費やされるのですが、これが読ませます。こうした日常描写や人物描写が巧いからこそ後半のミステリ部分が生きてきます。

     さまざまな要登場人物たちの思惑を丁寧にほどきつつ、事件の真相にじりじりと近づいていく推理はお見事の一言! しっかりと練られたプロットなんだな、と読んでいて伝わってきます。

     クリスティーファンには犯人はある程度見当のつく作品かもしれませんが、それでもダブルミーニングなどを使った精巧なミステリで惑わされ倒しました(笑)。エジプトの描写も相まって非常に芸術的なミステリ作品とも言えるのではないでしょうか。

  • 遺跡を巡りつつナイル河を遡る船旅なんて素敵だなぁ。勿論一部の上流階級しか乗れなかったと思いますが、アガサの作品では資産家は間違いなく殺される側になるので考えものです。
    他の作品と違わず、読後しばし茫然としてしまいました。長旅を共にした登場人物、特に犯人の内面も心に迫ってきます。
    あと、いつもの容赦の無い描写!
    『彼女は、褐色の犬のような目をした、大柄で不細工な娘である』
    くうぅ。
    でも一番容赦無かったのは、物語の中心となる、社交界で知られた美貌の女性の死。騒がれたものの本当の意味では誰も悲しんでないという事実。ポアロもその女性より、むしろ真犯人側に心を寄せている(変な意味でなく)のが印象的だった。
    真実をそのまま見る観察眼。これだけの作品を生み出してるけど、アガサは徹底的なリアリストだったのかも。なんて、アガサその人自身にも興味が湧いてきます。
    自分はどんな風に観察、描写されるんだろうなんて考えながら読んでしまうのは私だけでしょうか?
    次はヘイスティングズが出てくるのが読みたいな。

  • 厚みといい、中身といい、じっくり腰を据えて読みたい作品でした。ポアロたちから見ても異国情緒溢れるこの物語。舞台は題名通り黄金の砂漠の国エジプトです。
    今回の事件はある3人の男女の恋愛事情から紡がれました。
    愛し合っていた男女と、男に横恋慕した金持ち美人の女。結果男女は破局して男は金持ち美人に靡き、捨てられた女は二人を恨む。
    設定としてはよくある恋物語っぽいですよね。でもただの恋物語で終わらせないのがクリスティ氏です。
    結婚した男女の行く先々に現れ地道な嫌がらせ行動を重ねる女は、二人の新婚旅行の旅路にも現れます。その旅の同行者(居合わせた人ともいいますが)が我等がポアロ。他の同行者も曲者が揃いに揃っています。
    各々の思惑に思想、そして幾人かの恋模様。ひとつひとつの謎がポアロに解かれていくたびに「そうきたか!」と手を打つに違いありません。

    しかしまぁなんてクリスティ氏の描く登場人物には魅力的な人間が多いのでしょうね! しかも現実にいそうな人間で、というところが更にその魅力を高めているのだと思います。
    特にクリスティ氏の女性陣が私は大好きです。きっとどの作品にもクリスティ自信の投影と、クリスティが思い描く理想と反面教師が混ざっているのだろうなぁと思いながら読んでいます。
    今作の善人随一は間違いなくミセス・アラートンでしょう! 私もお母さんと呼びたいです。リネットはビジネスウーマンとしてその冷静な考え方を見習いたいと思うし、ジャクリーンの意志の強さ、それに度胸と行動力も見習いたい。そしてコーネリア。コーネリアの考え方はきっと相手も自分も幸せになれる考え方だと思うのです。

    部屋にいながら「逃避的文学」による小旅行へ是非旅立ってください。


    ちなみに今作の相棒レイス大佐が有能すぎてヘイスティングの存在価値は大丈夫か!?と密かに不安になったのは内緒です。(作中ポアロがヘイスティングの名前を呼んでくれてなんだかほっこりしました。)

  • 終盤、張り巡らせた伏線が次々に回収されていく様が、倒れていくドミノを見ているようで気持ち良い。ただし、この作品を名作たらしめているのは、そのトリックを生み出した人間ドラマだろう。この犯人の頭の良さ、情の強さと潔さは、数あるクリスティ作品の中でも最も印象的なもののうちの一つだ。

  • 久々のクリスティです。いわくありげな人間関係に旅行の解放感とエジプトの景色、個性的なキャラクターたち。綿密に作り上げられた状況と最高の瞬間に起こる事件。殺人事件を喜んじゃいけないんですけど、それまで焦らされた分興奮します。よし、ポアロの出番だ!と。…いや、本当はもっと上品な盛り上げ方なんですけどね。
    似たような舞台のオリエント急行とどっちが早い時期に書かれたのか調べてないですが、犯人の意外性ではオリエント急行の方が上。ただしこの作品では、ある程度犯人の目星はつくのにその人には犯行不能というアリバイの壁を崩す過程、さらにその証拠固めの過程が楽しめます。乗船客一人一人が物語を持っているのもいつもながら面白いし、読者はきっとお気に入りのキャラを持ち、その人に相応しい結末を望む。ハッピーエンドを迎えられるか、悲劇となるか…。ミステリと人間ドラマの相乗効果がもう最高です。

  • ああ、これぞクリスティー! 登場人物が次々とエジプトに集まってゆく、この期待のさせかたといったらもう! ワクワクしますよね、ドキドキしますよね! 何度読んでもいい。映画もよかったなあ。
    旧版の双葉十三郎さんの文章は解説ではなく、クリスティー映画の歴史を語る。はじめての映画化が於ドイツだったなんて意外! ビリー・ワイルダー監督の「情婦」、いいですよね。「オリエント急行殺人事件」、豪華だったなあ。おしまいに「アガサ・愛の失踪事件」まで挙げているのが嬉しい。
    新版の西上心太さんの文章はよくまとまった解説ですが、亀の甲より年の功、旧版の勝ちです。

  • Death on the Nile(1937年、英)。
    ポアロ・シリーズ。クリスティのミステリ中、最大の長編。

    ナイル河を遡る豪華客船で、新婚旅行を楽しむ若き資産家夫妻。しかしその船には、花嫁の友人で、花婿の元婚約者の女性が、銃を携えて乗り込んでいた。緊張が高まる中、遂に銃声が轟いた…。

    丁寧に構成されているという印象。奇抜さや意外性では他の代表作に及ばないが、そのぶん万人が納得しやすいフェアな展開になっている。背景の人間ドラマが丁寧に描かれているので、ミステリファン以外の人にも読みやすい作品ではないかと思う。

  • 長編。分厚い。最初の人物紹介も長いしそもそも登場人物が多い。(でもヘイスティングスは出てこない。)

    しかし、これは誰のイメージかな、と考えつつ読み切ってしまえば後はテンポ良くかつスリルに満ちた展開!
    2回目以降は人物紹介にも細かな仕掛けがあると気づけるよ、という解説の方、きっとその通りなのだと思います。

    ちょっと最後は悲しい?けれど、読み切った達成感と満足感を味わえる一冊!

  • クリスティ研究再開
    エジプト、遺跡。

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