死との約束 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 早川書房
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感想 : 105
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  • Amazon.co.jp ・本 (389ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151300165

感想・レビュー・書評

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  • この前観たドラマと犯人や動機があまりにも違って驚いた。全く別物と考えた方がいいのね。家族を支配する横暴な母親が死んだのは果たして殺人事件なのか?とポアロが推理する話。『春にして君を離れ』に似て毒親と家族の描き方が上手い。

  • 負けが続いているのでこのあたりでギャフンと言わせたい。ボイントン一家は少しオカシイ。理由は夫人を中心とした家族で、長男、その嫁、次男、長女、次女が疲弊している。理由はボイントン夫人がサディスティックのため、家族一家をマインドコントロールし、夫人が楽しんでいる。しかし、夫人が殺される。夫人を殺したのは一家の誰かか?医師、女医、女性代議士も登場しすべてが怪しい。夫人を殺せた時間はほんのわずか。クリスティのミスリードが続く。誰だ?誰だ~!と夢中になって読む。予想した時にはその人は出ていなかった~~そりゃアカン。⑤

  • もし、隣の人の話がうっかり聞こえてしまったら、どうしましょう。
    まして、殺人計画の話を聞いてしまったら。


    名作が多いアガサ・クリスティーの中で、自分は知らなかった『死との約束』。
    他の本を置いてけぼりにして、買って一気に読みました。


    冒頭に、いきなり『いいかい、彼女を殺してしまわなきゃいけないんだよ』なんて台詞を聞いて、実際に殺されてしまったら、犯人はきっとこの人なんだろうな、なんて勘ぐってしまいます。

    先入観とは怖いもので、この人が犯人だ、なんて思ったら、とにかく追い続けてみたくなるものです。

    しかし、意外とすんなりとターゲットは殺されないんですよね。これがまた面白いところで、次へとページを進めさせる仕掛けのように働いている気がします。

    この辺、シャーロックホームズは違っていて、大体最初の方で事件が起こるので、ポアロは、なんとなくテンポが崩されてしまいます。

    ただ、事件が起こると一気に楽しくなる、これこそがポアロの魅力で、また、ポアロも相変わらず自信たっぷりに推理を披露するわけです。

    今の時代、間違ったことを言ってしまうと、ネットで炎上する、なんてことになりかねませんが、こうも自信満々だと、こちらは清々しい気持ちになります。


    推理ものは、今では漫画などでも、数多く展開されていて、トリックも研究され尽くしています。
    しかし、インターネットもない時代に、この複雑なトリックを考えたのかと思うと、まさしく天才としか、言いようがないですよね。

  • "いいかい、彼女を殺してしまわなきゃいけないんだよ"
    出だしからかなり不穏な雰囲気で始まったこの作品は、母が常に睨みをきかせて抑圧されたボイントン家の兄弟達の物語でした。
    一人一人の悩みや戸惑い、心は揺れているのだけれども逃げ出せない、閉鎖的な描写にとても不安になりながら、体力を持っていかれながら、少しずつ読みました。
    最もやきもきさせられたのは長男のレノックスです。
    自由になろうとさえ決断すれば、家を飛び出せる年齢である上に、妻のネイディーンという背中を押してくれる人が側にいたのに、現状を変えようとしませんでした。本当の彼は、一見何も感じないように見えて、心の奥ではどうすべきか分かっていたようなのですが…読んでいてうずうずしていました。
    ポアロの探偵としての活躍を見るまではなかなかページ数があって、かなり焦らされます。しかし、数々の証言から、事実をふるいにかけていく手腕は今回もお見事でした。
    個人的に、今回の犯人は思いもよりませんでした。
    毎回予想は外れるのですが、"予想外"の種類が違っていた気がしました。
    なんというか…今回は、クリスティお決まりの流れから見る犯人、という観点からは少しずれていたように感じました。そういった意味合いでは、『青列車の秘密』に似ていたかも?
    それから、ジネヴラがとっても危なげで不安定で、可愛かったです。この作品で一番好きな女の子です。

  • やっと読了。これで録画してたドラマが見れるー!
    家族を精神的支配しているボイントン夫人が強烈。こんな意地悪な人って会ったことない。
    (そう簡単にいては困るけど。)
    それがわかっていて嫁に行ったネイディーンってすごい。しかも我慢しながら介護まで。
    誰もがボイントン夫人の死によって幸せになれるような状況で、いつも通りみんな怪しい。
    ポワロの偶然の聞き耳もさすが。

  •  登場人物の魅力、キャラクター性は様々な物語になくてはならない要素だ。クリスティは描写力に定評があり、人物描写、風景描写は本当にその人達がその場所で生きている様な、そんなイメージを読者に与える。当然、時代のギャップや違和感は出てしまうが、それはあくまで古典としてのギャップであり、反対にそれらも魅力として捉えると、とてもノスタルジックな世界観の中ミステリーが展開されていき、何か壮大なストーリーを経験している様な、そんな気持ちになる。
     今回、いきなり「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃいけないんだよ」という二人の人間の会話をポアロが偶然耳にするところから始まる。舞台はエルサレム、そして死海を中心に展開されていき、ポアロの海外旅行物の一つにあたる。イラクやエジプト等、考古学者のパートナーを持つクリスティらしい場所から、今回はイスラエル周辺が舞台となり、砂漠や岩だらけの場所、洞窟等現実離れした設定が魅力的だ。
     物語の中心はサラ・キングという若い女医とボイントン家の人々が担う。家長のボイントン夫人はとても嫌な人であり(クリスティは嫌な年寄りを描かせたら世界一だろう(笑))、ボイントン家の人々は彼女に支配され、洗脳され、外界での生活を遮断されて暮らしている。今回、偶然、家族旅行に来ているが、周りからすれば異常な家族に見られている(全員が夫人の悪意に敵意を持っているが、批難の言葉は辛辣、余りにも酷い表現が昔からクリスティ作品の魅力の一つでもある。)
    舞台はホテルから場所を移し、ヨルダンのペトラに移動するが、そこでボイントン一族を巻き込む殺人事件が発生する。物語は第二部に進み、ポアロのが本格的に参戦し、事件の真実に迫る。
     メロドラマ的な要素と二転三転するストーリー。誰かが誰かの為に真実を偽り嘘をつき、全てを隠そうとしていくが、ポアロは真相を見抜き、心理の中に真実を見つけ、組み合わせていく。全てを正しく配置するポアロの手法が巧みな作品で、僅かの時間で真相に辿り着いてしまう。
     クリスティ作品を読み慣れていた事と、遥か昔に読み終えていた作品の為、何となく犯人を推理できたが、やはり一筋縄ではいかない、意外性のある展開は面白い。また、個人的には「オリエント急行事件」についてポアロが問われ、言及している様子もあり、あの事件の結末とポアロの対応にはとても感動していた為、作中ではどの様に思われていたのかが不思議であった(やはりあの結末を世間が納得していない事は明白な様だが、真実は一族とポアロしか知らない)
     長い間クリスティの作品に浸かり、そもそも僕の読書の土台を形成した作家であり、また改めて作品を手に取るようになると、過去作との関連や言及が以外に散りばめられている事に気づき、面白さのベースが改善されていく。今作は当然、過去作なしでも楽しめるのだが、雰囲気を更に楽しむ為に「ナイルに死す」や「メソポタミアの殺人」「白昼の悪魔」等と関連して読むと旅行気分を味わいながらとても楽しめるだろう。

  • ポアロもの。

    「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃいけないんだよ」
    この不穏な囁きを、ポアロが偶然聞いてしまうという導入部が何とも秀逸で惹き込まれますよね。
    エルサレムを舞台に物語は展開するのですが、第一部はボイントン家の異常さを中心に描かれています。
    この家族を支配する、ボイントン夫人が“毒親、ここに極まれり”という強烈さで、彼女の息子や娘達(そして嫁)は、まさに“生殺与奪の権”をボイントン夫人にがっちり握られてしまっている状態です。
    この異常な家族を含む複数名で観光をしているうちに、ついに事件が起こり、第二部からポアロが前面に出て、真相解明に乗り出します。
    そこからは、ポアロと被疑者達とのヒリヒリするような心理戦が続き、読む側も思わず熱がこもってしまいます。
    被害者と関係のあった人達は全員怪しいので、後半の連続ミスリードのレールに乗りっぱなしの私はあちこち迷走する羽目に(汗)。
    結局、真犯人は個人的に完全ノーマークの人で、またしてもクリスティーにやられましたね。
    そして、ラストはそれぞれ“収まるところに収まった”感じで、皆が幸せそうで何よりでした。
    ところで、この作品は以前日本人キャストで映像化されていたそうですね。見てみたかったな~。

    • あやごぜさん
      111108さん。こんばんは♪

      111108さんは、英国製作のBSドラマを観られたのですね~。
      設定が違うと「えっ」ってなりますよね...
      111108さん。こんばんは♪

      111108さんは、英国製作のBSドラマを観られたのですね~。
      設定が違うと「えっ」ってなりますよね(;・∀・)。
      ほう、ドロドロ感は原作が上でしたか。何といってもボイントン夫人が強烈ですものね!
      因みに日本版のドラマは、三谷幸喜さんが脚本で、キャストは野村萬斎さん、松坂慶子さん、鈴木京香さん等々だったみたいです~。
      2022/05/20
    • 111108さん
      あやごぜさんありがとうございます♪

      日本のドラマ‥‥ってことは松坂慶子がボイントン夫人⁈想像難しいです。検索してみようかな。
      あやごぜさんありがとうございます♪

      日本のドラマ‥‥ってことは松坂慶子がボイントン夫人⁈想像難しいです。検索してみようかな。
      2022/05/21
    • あやごぜさん
      111108さん。度々こんばんは♪

      確かに!お美しい松坂慶子さんと、化け物wwのようなボイントン夫人・・。イメージ的に結びつかないですよね...
      111108さん。度々こんばんは♪

      確かに!お美しい松坂慶子さんと、化け物wwのようなボイントン夫人・・。イメージ的に結びつかないですよね~。
      こういうドラマって、原作とのギャップをツッコミながら観ると、楽しいかもですね~(^^♪
      2022/05/21
  • 注! 内容に触れています

    やたらと全知全能なポアロwがことの真相を明かす後半より、ボイントン夫人が子どもたちを支配している、ボイントン家の状況が語られる前半の方が面白かったかな?

    ただ、めでたし、めでたしな結末はよかった。
    ホッとした(^^ゞ
    ていうか、その人が犯人なら、ボイントン家の人たちやサラを、さも、「犯人はお前だろう」的にネチネチいじめないで、さっさと真相を言ったらいいじゃん!
    ポアロって、性格わりぃー!(^^ゞ

    もっとも、著者としては、読者に「え、その人が犯人なの? いやー、その人が犯人なんて可愛そう」とハラハラさせながら読ませることを目的に書いているわけで。
    ポアロが性格悪いというよりは、著者の性格が陰険なのかもしれない(爆)
    ていうか、ま、これはミステリー小説なわけで。
    つまり、その性格悪いハラハラも含めて、「エンタメ」ってことなだろう。
    とはいえ、犯人があの人っていうのは、著者がクリスティーだから許されることで。
    これが、新人作家の著作だったら、ボロクソにこき下ろされそうな気がするかな?(爆)


    これって、映画化したってことだけど、どんな内容なんだろう?
    映画としてはコケたってことだけど、そもそも、こんな地味な話をどうして映画にしようとしたんだって話だ。
    前半のボイントン夫人の暴君っぷりを見ていても不快なだけだし。
    かといって、起こった事件は一つなわけで、
    どうやって見ている人を話に惹きつけたんだろう?と、逆に映画を見てみたくなった(^_^;



    本来、旅行なんかに出たくないはずのボイントン夫人が旅行に行こうと考えた理由が、途中で、ジェラール博士によって明かされる(ただし推察)。
    “年寄のご婦人がたは世界中どこの国でも同じようなものなんです。つまり、彼女たちは退屈しているのです。”
    これなんかは、今の日本人全てに当てはまるんだろうなぁーと。
    ちょっと可笑しく、そして耳が痛い(^^ゞ

  • ドラマ版の死との約束を見ていたので、全く違う設定にちょっと戸惑いました。ヒロインのサラ・キングがあんまり好きになれなかったな~

  • 「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃいけないんだよ」
    エルサレムを訪れていたポアロが耳にした言葉は現実となった。夫人が家族を精神的に支配するボイントン家。家族誰もが動機を持つ殺人事件に隠された一つの真実とは。

    冒頭の一言が読者を死海の闇へと誘う。ハラハラしながら読み進めるも、しばらくはボイントン家の内情が淡々と描かれていく。夫人の横暴さを見せつけてから、事件の解決にポアロが動き出すのが上手いなと。一家に肩入れをした状態で読むので、なんて嫌な奴なんだとポアロを敵のように感じた(笑)

    しかし、そこから二転三転どころか七転八転する推理劇はさすがの一言。真実を追う疾走感がたまらない。証言の矛盾に隠された真実を積み上げ、時には心理学を取り入れて観察する。人の習慣は裏切らない。「世界最高の名探偵です」って名乗っちゃうだけある(笑) 辿り着いた真相が意外すぎて驚いた。

    あと、サラの次の言葉が好き。男女平等が叫ばれる現代においても考えさせられるテーマが内包されている。平等であるということは、いったいどういう状態を指すのか。原点に立ち返って考えさせられる。
    「人間が価値のある仕事をなしとげることは、すばらしいことなんですよ。それが男であろうと女であろうと、そんなことはまったく問題じゃありませんわ」
    それにしても、ジェラールの発言はこのご時世にSNSで言ったらすぐ炎上しそうでひやひやした(笑)

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