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本 ・本 (368ページ) / ISBN・EAN: 9784151300325
感想・レビュー・書評
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【ポアロ】
1972年クリスティー82歳。
クリスティーが書いた最後のポアロ。
十数年前の両親の心中事件は、父が母を先に撃ったのか?あるいはその逆なのか…。
『五匹の子豚』(1942年)のような過去の殺人の真相を解明する形式。
ベタなわかりやすい伏線で、テンポもゆっくりで意外性もない。
でもこの作品は「犯人は誰か?」が重要ではなく、もっと深い「あるテーマ」があるのでそこを楽しむものだと感じた。
ずっと読んできたファンとしては、味わい深い80代のクリスティーが読めて幸せ。
ポアロの愛を感じることができて大満足だった。
クリスティーの分身のような女性推理作家のオリヴァ夫人とポアロの最後の会話が心に残る…。
★3.5詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この前読んだ『五匹の子豚』同様、過去の事件の真相を探る話。関係者達から話を聞いて解決に導く手口は一緒だが、ポアロの謎解きの鮮やかさは『五匹の〜』の方が上手かったかも。でもこれを1972年に80代で書いてるということがクリスティすごい!
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十数年前の両親の心中事件は父が先に母を撃ったのか、それとも逆なのか。
結婚を控えた娘の義理の母親になる女性から奇妙な依頼を受けた推理小説作家、アリアドニ・オリヴァ夫人。彼女は真実を知るべく旧友のポアロに協力を頼む。
過去の殺人を洗い出し、真相を突き止める、というストーリーは「五匹の子豚」と類似している。だが「五匹の子豚」は非業の死を遂げた母親が娘に対して無実を訴えていたのに対し、今回の事件では、亡くなった両親は元より当事者は誰も真実が明らかになることを望んでいない。
すでに埋もれて風化した真実を掘り返す意味はあるのか、というところが「五匹の子豚」との違いである。
これはクリスティが最後に執筆したポアロシリーズである。あっと驚くストーリー展開もなく、推理小説を推理せずに読む私でも途中でラストがわかるほどである。ただ、ラストのオリヴァ夫人の言葉は、夫人らしいユーモアがありながら、なんだか心にしみる。完全に想像であるが、晩年のクリスティが自身の人生を振り返り、これでよかったのだ、と結論づけたようにも思える。
年を重ねるごとにくり返し読んでみたい作品である。 -
アガサ・クリスティーの才能が迸る物語。
小説家のミセス・オリヴァは、とあることから過去の事件について、関わった人たちから当時の話を集めて真相を解明しようとするも手に負えず、友人のエルキュール・ポアロに助けを求める。
『象は忘れない』のタイトルは、「象は過去のことを忘れないで、いつまでも覚えている」という逸話をもとに、オリヴァが話を聞きに行く相手のことを「象」と呼びだしたことからきている。
私には、もう一つの逸話「盲人と象」のように触った感触だけで「象」という生き物を語る人たちの情報を、ポアロが丁寧に全体像に置き換えていく状態も指しているように思えた。
ラストシーン、ミセス・オリヴァの締めくくりの言葉……「象は忘れない、でも、ありがたいことに人間は忘れることができるんです」
悲しくとも未来に向かって前向きな結末が、心地よい。 -
エルキュール・ポアロシリーズ#36。
後年多くなってくる「回想の殺人シリーズ」のひとつ。
12年前の事件を、オリヴァ夫人による、当時を知る人へのインタビューを通して明らかにする。
「象は忘れない」というのはクリスティーの心を捉えていたらしい逸話で、象はいじわるされたりした記憶をいつまでも忘れない(らしい)ことにちなんでいる。すなわち、人の記憶も、ふとしたきっかけでよみがえるものだ、ということである。
実質的にポアロ物として最後に書かれた作品で、ドンデンとか事件と解決の切れ味とか謎解きということよりも、物語としてしみじみしたコクがある。 -
ポアロ
とにかく登場人物の長台詞が多くて、読むのがつらかった。自分としては苦手な作品。 -
ミセス・オリヴァは昼食会で、彼女が名付け親となった女性シリヤについて不躾な質問を受ける。
「十数年前に心中したシリヤの両親は、夫が妻を、あるいは妻が夫を、どちらが先に撃ったのか。」
回答を持たず、またどう処理したものか困惑した夫人は、ポアロに意見を聞きに行く。
当時は語られることのなかった真実が、ポアロによって現在に紐解かれ、未来に繋がっていく。
真相は、家族という繭の中で起こり、その繭の中で閉じた切ない物語でしたが、現在の登場人物たちが未来に向かって歩を進めるラストは、清々しさがありました。
著者プロフィール
中村能三の作品





