書斎の死体 (クリスティー文庫 ミス・マープル)

  • 早川書房 (2004年2月13日発売)
3.60
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Amazon.co.jp ・本 (352ページ) / ISBN・EAN: 9784151300363

感想・レビュー・書評

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  • 【マープル】
    マープルの女性ならではの鋭い視点は、私も女性なので共感できる部分が多かった。
    ポアロにはなかった面白い視点だった。

    ポアロはプロの職業探偵なのに対して、マープルは素人のおばあさん。
    「私の知っている○○さんはこうだったのよ」という、年の功的な推理の仕方が個人的には説得力に欠けるなぁと思ってしまう。
    やっぱりポアロの灰色の脳細胞の推理が好きだなぁ。

    キャラクターでは、ポアロは自分で「偉大な名探偵です!」と言いきる可愛らしさが好きだった。
    マープルはあまり自分を主張しないので、キャラクターがまだ捉えづらい。
    自分的にはもう少しアクの強さというか、パンチを求めてしまう。

    そして、ポアロは上流階級の人達中心の話だった。一族の上品な人達の秘密めいたものを見るのが好きだった。イギリスの上流階級の優雅な暮らしにも興味があって、その部分も楽しんでいた。
    対してマープルは庶民中心の話。
    自分も庶民なのでそんなに目新しさがない。
    村の人のゴシップも個人的にあまり好きになれない。

    マープルにはマープルの良さがきっとあるはず。ポアロと比べてるからいつまでも楽しめないんだ…。
    Audibleのマープル作品は少ないので残り3作品。マープルの良さを見つけたい。
    Audibleにて。

  • マープルシリーズ2冊目。1942年の出版ということは戦争真っ只中。英国は平和な印象。ある朝、アーサー・バントリー大佐の書斎で見知らぬ女性の死体が発見された。今回のミステリーは、①何故大佐の書斎で女性の死体が見つかったのか?②この女性は誰なのか?大佐の愛人なのか?でも本人は強く否定。死体の身元が明らかになるが、そこには遺産を巡る思惑が。今回も怪しい者がやっぱり。でっ、死体の確認をしたのは、あ~奴だったか!えっ、奴は結婚していたの?見破れなかった悔しさが残るけど、これはアンフェアなうな気がするけどどうかな?⑤

  • 攻略本高評価につきミス・マープル長編を久々に読む。昔読んだ時はミス・マープルの推理に不可欠な「村人達のゴシップ」が冗長でちょっと苦手なイメージだったが、今回は些細な疑問から見事に真相を導き出す仕掛けとして逆にとても楽しかった。

  • マープルの長篇2作目(短篇含めて3作目)。推理もさることながら、ミステリなのにユーモラスな箇所が随所に垣間見えて、とても面白く読むことができました。

    あらすじ:
    ある朝、セント・メアリ・ミード村の外れにあるゴシントン館でのこと。バントリー夫人は、夢うつつの朝のまどろみを破る、メイドの「書斎に死体がある」との一報で目を覚まします。それは、館の主人であるバントリー大佐や使用人たちの誰も知らない、どぎつい化粧をした金髪の若い女性の死体。バントリー夫人は、友人のミス・マープルを呼んで死体を検分。間もなく、デーンマスのマジェスティック・ホテルから、女性ダンサーのルビー・キーンが行方不明になっているとの連絡が入り、発見された死体とホテルの滞在客との意外な関係が明らかになってきます……。

    と、短篇集『火曜クラブ』の後半で謎の事件を語り合ったゴシントン館が事件現場。『牧師館の殺人』同様に書斎での死体発見と、その住人以外の被害者という共通項でストーリーに入りやすい工夫に驚きつつ、冒頭のバントリー夫人の夢を使って記憶に新しい牧師夫人(グリゼルダ)の水着姿を登場させる、お茶目なファンサービスがウケるw

    また、作家は変人と自虐ネタを織り交ぜたり、ピーター少年のクリスティーのサインを持っている発言などから、おそらく著者自身がノッてる時期に書かれたのだろうと想像されます。

    例えば、ユーモアのセンスが節々で冴えているのですが、スラック警部に対する皮肉はもちろん、セント・メアリ・ミード村を「すごい田舎だそうですね」と言わせてみたり、本に登場するロンドン警視庁はたいてい「大バカ者」と揶揄してみたりと、ミステリなのにクスりと笑えるところがあって楽しいです。トドメは、マープルに向かって「黙ってろ、このババア」ですからね。ヤバすぎますw

    と、推理と関係ないことを書いてきましたが、推理はお手上げでした。よくこんな事を思いつくなと感心しましたね。ところで、まだマープルは3冊目ですが、女学生にぴしりと言う場面が、終始おっとりしているイメージがあったので意外。クリスティーは、読むたびに発見があって飽きさせないですね。

    正誤(11刷)
    ※間違いと言うか、P119の遺言のくだりが辻褄が合わず、理解できなかったです。原文はどう書かれているか気になるところ。

  • 書斎に死体なんて探偵小説の中だけのはずが、現実に見知らぬ女性の死体がバントリー家の書斎で発見された。ドリー夫人はミス・マープルとともに調査を始めると、意外な繋がりが浮かび上がり──。ミス・マープルが活躍する長編第二弾。

    ミステリでは王道すぎる書斎の死体!それを目の当たりにしたバントリー夫妻。まったく見覚えのない女の死体に困惑したドリーが助けを求めたのは、村の名探偵ミス・マープルだった!
    「ううん、慰めてほしいなんて思ってないわ。ただね、あなた、死体となれば得意でしょ」
    どういう呼び出し方なんだ(笑) 全体的に(ブラック)ユーモアを感じさせるセリフ回しがあり、サクサクと読み進められる。サー・ヘンリーがマープルを紹介するセリフもカッコいい。
    「階下のラウンジの左から三番目の柱のそばに、いかにも独身といった感じのやさしい落ち着いた顔をした老婦人がすわっている。人間の心の奥底に潜む邪悪さを見抜き、それをあたりまえのこととして受け入れてきた人だ」
    強キャラ感がすごい!実際に強いけど。

    富豪・コンウェイ・ジェファースンの義理の孫・ピーター(9歳)の発言にもヒヤヒヤする(笑) 彼が被害者の爪を発見し、「ぼく、これに“殺された女の爪”って書いたラベルを貼って、学校に持ってくんだ。すてきな記念品だと思わない?」いやいや、記念品て!周りの大人も止めてあげてよ(重要な証拠ではあるんだけど)。闇落ちしたコナン君みたいな証拠の出し方してきて苦笑い。あと、捜査に行き詰まったメルチェット(警察本部長)が検死をしたヘイドッグ医師に死亡推定時刻を「もうすこし延ばせないかな」と訊ねるのも好き。それで延びちゃ困るだろと(笑)

    「アリバイなんて、この世でいちばんあやふやなものです。無実の人間はアリバイの用意なんてしませんよ! おまけに、アリバイが成立するかどうかは、被害者の死亡時刻や何かにかかってるわけで(略)」
    ミステリを読んでるとアリバイって当たり前の要素なんだけど、言われてみればそりゃそうだよなあ。用意してるとおかしいけど、用意してなければ怪しまれる!理不尽!

    というコミカルな流れもありつつ、どうしても事件を解決したいというドリーの強い思いに心打たれた。事件に関係なくても、未解決で終わったなら村の人間から白い目で見られてしまう。夫・アーサーにそんな思いをさせたくないという夫婦の絆。さらには、妻と実子たちを事故で亡くし、その配偶者たち(義理の息子と娘)と暮らしているコンウェイとその家族の物語も味わい深い。書斎の死体という直球の謎に捻りを加えつつ、ドラマで結ぶという安定の面白さだった。

  • 気分を変えてミス・マープル。『鏡は横にひび割れて』から時間を遡り、マープルシリーズ2冊目にあたる、ゴシントン館が巻き込まれる事件です。

    なんだか今作は、被害者が登場人物たちとそこまで接点が深くないのもあってか、ふわふわしたままお話が進んだ印象。殺されたルビー・キーンが、関係者全員から「頭のよわい子」と言われすぎてなんだかかわいそうになってしまった……笑
    そして真相がわかってみれば、とにかく巻き込まれたにすぎないパメラとバントリー夫妻が気の毒で。いかに良好な付き合いをしていようと、人間はくるくる手のひら返しをするものだよなぁと考えさせれたりもしました。

    トリックや動機は正直そこまでハッとするものはなかったのですが、これまで読んだクリスティー作品の中で最もくだけた表現が多いような気がして、井戸端会議を盗み聞きしているような楽しさがありました。この直前に読んでいたのが『Xの悲劇』だったので、読みやすすぎてびっくりしましたねw
    『火曜クラブ』を読んでバントリー大佐夫妻が好きになった方には、ぜひ一読をおすすめしたい1冊です。

    (追記)
    これを読み終わった日にたまたま見ていたポワロさんのドラマでも、書斎で死体が発見されていました。
    日本人には書斎ってあまり馴染みがないと思うのですが、そんなに犯行に適しているんですかね……?一人でいることが多いから?

  • クリスティのミスマープルシリーズ、第二弾。

    前作の「牧師館の殺人」は手堅く、意外な犯人で魅せる良作ではあったが、いかんせん地味な印象が拭えず。
    今作は打って変わり、全然知らない女性の死体がいきなり書斎で見つかり、どうしてそうなった?というもの。その謎だけでグイグイとラストまで読ませる展開。

    ある事実が分かった途端、全ての謎が一気に解ける。そのカタルシスが非常に良い。
    ミスマープルも前作とは段違いで目立つ活躍となっており、ようやくシリーズ作品に踏み込めた感じ。3作目以降も楽しみにしたい。

  • あまりに完璧な出だしに、私もう今後一生クリスティだけ読んでればいいんじゃない?と本気で思った。
    あー面白かった!
    序文や、作中人物が読んでいる作家に自分の名前を入れるなど、クリスティの茶目っ気も炸裂。
    真相も面白かったけど、ラストがねー!
    やられた!
    そして今作を読んですぐに2000年代のドラマ版を見たところ、大胆な改変をしてあってびっくり。
    私は好き。
    二度楽しめて大満足。

  • クリスティの長編ミステリー。マープルシリーズ。書斎で死体が見つかるというミステリーありがちの設定であるが、クリスティにかかれば読者を惑わせ、迷走させる絶好の舞台装置になる。
     導入から読者へ謎を提起し、全く面識の無い屋敷で発見されたブロンドの若い女性の死体。彼女が誰で、なぜこの屋敷で殺害されていたのか、が提示されて、その後、彼女だと思われる失踪者が踊り子として働いていたホテル、そこに滞在する大富豪、そして死体が発見された屋敷の近くに住む若い胡散臭い男と女と登場人物が出揃う。
     物語が進行していく中で、村の石切場から若い女性の焼死体が発見され、更に事件は混迷を極める。
     マープルは死体が発見されたやかたの夫人の友人であり、夫人から謎を解くための協力を要請される(昔の人にとっては他人の死は一種のスリルであり娯楽だ。)ヘンリー卿もホテル滞在中の金持ちから依頼があり、引退した身でありながら彼に協力する。
     何より、作中の登場人物達がマープルの知り合いであり彼女に協力してくれる人達だ。現代ミステリーでは警察は素人には協力しない、情報は話せないの一点張りでヤキモキする事が多いが、この時代には捜査上のモラルは存在するが案外協力的であり、スムーズに進行していく事が多い。
     警察では突き止められない真実もマープルと協力する事で得る事もあり(女学生の扱いは流石だ。というより、警察が鈍感なのか。)
     クリスティの作品において、悲劇的な被害者は沢山いるが今作の被害者達はとても不幸であり不憫な人達だ。犯人について、動機の部分はあくまで統一されており、犯人は必ず殺人によって利益がもたらされる、若しくは愛憎によるものであり、突飛な理由(現代のサイコパス的な理由)は少ない(全く無いわけでは無い)。今回も例に漏れずなのだが全くコンセプトに古臭さを感じないのは流石だ。
     

  • ミス・マープルシリーズの長編第2弾。面白かった。人物描写が良くてグイグイ読ませる。特に事件の噂をする村人たちの描写に、ちょっと笑ってしまった。短編集「ミス・マープルと13の謎」(ハヤカワでは「火曜クラブ」)で良い味を出していたバントリー夫妻とサー・ヘンリーも登場する。
    マープルが相変わらずすごく鋭くて、終盤に一気に謎が解ける展開だった。オチも良かった。

  • コミカルな感じで読みやすかったけれど、犯行は相当残酷。この村1番の豪邸が後々連続殺人の舞台になるのは身代わりにされた女の子の怨念か…
    ラストを締めるレイモンド・スターが良い。怪しい人物ながら、がんばって!と応援したくなる。

  • アガサ・クリスティーといえばポアロのイメージが強かったが、たった2冊で素晴らしく頭のきれる老女ミス・マープルに魅了されてしまった。
    書斎に転がる死体なんて探偵小説の中だけーそれが我が家で起こってしまったら?ありふれた設定すらもミステリーの女王の手にかかれば、たちまち上質で面白い展開へと変わってしまう。

  • 今だったらすぐバレてしまうのでできないトリックだった
    バントリー夫人のマープルさんへの信頼が芝居がかってて好き あらぬ方向にすごいのよこの人!とか言ってて 突然降りかかってきた不幸にめげずに明るくたくましく向かっていっててそこも好き

  • ミス・マープルもの。

    今回はクリスティーが序文でも書いてあるように“書斎に死体が!”という、ミステリにおいてベタなシチュエーションに敢えて挑んだという、王道ミステリを楽しめる構成となっております。
    謎解きだけではなく、マープルさんの鋭い人間観察力が冴えわたるのもお約束。(若干の思い込みがあるような気がしないでもないですが、)
    ただ、ちょいと納得いかないのは、ガールガイドの少女が殺されてしまった理由が薄すぎる気がします。いや、可哀そうでしょ!って感じです。
    因みにガールガイドって何ぞや?と思ったので調べてみたら、イギリスにおけるガールスカウトのことだそうです。

  • 「朝起きると、書斎に死体がころがってる」という、現実には起こりようもないが、しかしミステリー小説なら定番という出だしをクリスティがどう料理するかを楽しむ一作。最後の謎解きまで読み終わったときに、ようやく昔読んだときの記憶を思い出した。トリックは類型的だが、しかしこの類型の代表作と言えるだろう。

    ミス・マープル・シリーズ再読も早くも飽きてきた感じだが、もう一冊くらいは読むつもり。

  • クリスティーは前提の揺らぎを大事にしている気がする。
    面白い。

  • 真犯人にはあまり意外性を感じなかったけど、クリスティ独特の人間模様の描き方が良かった。クリスティの作品を読めば読むほど、人生に深みが出る考え方を養っていけている気がする。

  • 1942年に刊行されたミス・メープルシリーズ第二弾。クリスティをアトランダムに読みつつ、全クリしたいと思ってるゆるいファンですが、執筆年代は結構重要なファクターだと思う。世界が一気に近代化から現代へすすむ中、法医学なども飛躍的に進んだろうからね。いえ、この「書斎の死体」は毒薬とかテープレコーダートリックとかは出てきません。ですが、終戦直後にホテルでテニスしたりダンスしたりという生活を楽しんでいたんですね、欧米人は。

    変な言い方ですが、正当な犯人というのは珍しい。二人の死体のトリックなどまったく気づきませんでした。本が好きなので、書斎というものにものすごいあこがれをもっています。ですが、このお話では書斎ということはあまり重要ではく、それゆえ書斎の描写も少ないです。残念。

  • ミス・マープルの住む村の退役大佐の家に若い女性の死体があった。大佐は面識の無い女だと言うが村ではいろいろ噂が流れだし・・ 大佐の妻がマープルに助けを求める。

    女性は少し離れたホテルのダンサーだった。そこに逗留している富豪に気に入られていた。富豪は妻と娘と息子を飛行機事故で無くし、その配偶者がいまだに義理の親である富豪と暮らしていた。「ねじれた家」「ポアロのクリスマス」と同じく自力で財を成した老男性に子供が複数いて同居している。子供たちは親ほどには事業で成功しない、あるいはもともと金があるのであまり働いていない。家を出たいが親は暗にそれを許さず、子供たちは親に家に金に縛られている。がしかし親は殺され子供たちは解放される。

    クリスティの作品では被害者が殺されて、残った人(遺族≒子供)は新たな人生が開ける、というのが多い。 クリスティ自身は父が早く亡くなり、母が死んだときはずいぶん気落ちしたようだが、多くの場合親が死んで子供が解放される、という設定だ。こういう設定を100年以上前に生まれたクリスティがしていたことに驚きほっとする。


    1942発表
    2004.2.15発行 2008.11.30第4刷 図書館

  • ミス・マープルシリーズ長編2作目。
    1942年の作品。

    ミス・マープルの友人、バントリー夫妻の館の書斎で見知らぬ若い女の死体が発見された。
    その女性は、セントメアリミード村から少し離れたデーンマスのマジェスティックホテルで働いていたダンサー、ルビーキーンだということがわかった。
    警察のメルチェット大佐とスラック警部が捜査を進めるうち、ルビーキーンを可愛がっていたマジェスティックホテルに滞在していた大富豪、コンウェイジェファーソンの遺産問題が動機ではないかと推理する。メルチェット大佐はミスマープルの力を借り、犯人をつきとめるーー

    愛おしい田舎のセントメアリミード村で起こった事件。
    甥のレイモンドは出て来ませんが、バントリー夫妻、メルチェット大佐、スラック警部、サーヘンリー、村の牧師のレナードクレメントや妻のグリゼルダも出て来て、セントメアリミード村オールスターという感じでとても楽しい。
    殺された女性の死体はなぜ関係のないバントリー夫妻の館に置いてあったのか?
    そこの謎解きが楽しく見事です。
    一見関係なさそうな2つの殺人がつながっていくところも。
    こういう、体が不自由でクセが強い大富豪の老人というのがよくクリスティ作品には出て来ますね。

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