予告殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (486ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151300387

作品紹介・あらすじ

その朝、新聞の広告欄を目にした町の人々は驚きの声を上げた。「殺人お知らせ申しあげます。12月29日金曜日、午後6時30分より…」いたずらか?悪ふざけか?しかしそれは正真正銘の殺人予告だった。時計の針が予告の午後6時30分を指したとき、銃声が響きわたる!大胆不敵な殺人事件にミス・マープルが挑む。

感想・レビュー・書評

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  • 新聞広告に掲載された殺人予告。興味本位で集まってきた村の住人たちだが、予告された時刻に電気が突然消え、銃声が響き渡る。電気が復旧した部屋には男の死体が転がっていた。これはいたずらなのか、それとも何か目的があるのか。ミス・マープルが謎に挑む。

    殺人予告という設定にまず興味を惹かれる。野次馬根性丸出しで集まってくる住人たちもおかしい。
    犯人の目的は殺人現場となった館の女主人、ブラックロック夫人の財産かと思われたが、警察の調査でも真相にたどりつくことができない。
    そこでわれらがミス・マープルの登場である。警察のお偉方から言われ、半信半疑でミス・マープルに事件を相談する警部だが、彼女の鋭い観察眼と洞察力に舌を巻くのである。

    ミス・マープルシリーズは、彼女が捜査権限を持つ立場ではないため、警察から相談されたらアドバイスをする、という受け身の形が多いように思う。だが、この作品ではそれだけでなく、自ら村の住人たちにさりげなく話を聞いたり、大胆なトラップを仕掛けたり、となかなか活発に活動しているので、読んでいて楽しい。

    犯人の考え方は自己中心的であるが、どこかあわれみを感じる。そんな犯人と犯行の動機をつきとめることができたのは、やはり豊かな人生経験を持つミス・マープルだからこそ。
    「あわれ」を理解しつつ悪を一刀両断する彼女の姿勢がこのシリーズの醍醐味である。

  • ミス・マープルもの。

    冒頭で、チッピング・クレグホーン村の人々のもとに、新聞が配達されるシーンから物語が始まります。
    各々読んでいる新聞が異なる中で、地元紙だけは全員読むという事を踏まえたような、“殺人予告”が地元紙の広告欄に掲載されるという、なかなかのシチュエーションです。
    とにかく登場人物が多く、しかもそれぞれの状況や会話が逐一書いてあるので、どうしても話が長くなり、つい読む側も流し読みっぽくなってしまいそうになるのですが、ちょっと待った!その会話の中に伏線ありますから!というところがクリスティー。
    後で語られる真相部分で、何度ページを後戻りしたことか・・。
    で、今回のトラップはドラ・バンナーがブラックロックさんを呼ぶときの呼び名なのですが、私は誤植又は誤訳(すみません)又は、ネイティブ特有の呼び方だと思い込んでいました(私だけ?)。
    そして、キャラクターで強烈だったのは中欧からの難民でメイドのミッチー。クセが強すぎて面倒くさい娘!でも笑えます。

  • クリスティの長編ミステリー。マープルシリーズ。巻末解説にて記載されているが、マープルシリーズは12篇しかないという事で驚いた。もっと幾つかの作品があった様に思うが、意外にもたったの1ダースなのだ。ポアロもクリスティ財団公認で続編が発表されているが、マープルの世界観を再現できる人材があれば是非書いてみてほしいし、読み続けたいシリーズだ。
     今作、「予告殺人」はクリスティの作品の中でも好きな作品の一つだ。犯人の意外性は勿論の事、殺人を偽装する為のトリックの秀逸さ、真犯人の人生の悲しみと救い、そして今作に蔓延っているなんとも言えないドライな雰囲気。田舎で生活している登場人物達とのコントラストがとてもはっきりとしており、最後、全員で団欒の様に結末を話共有している恐ろしさは田舎特有のものだ(想像して欲しいが、三人も殺害された事件の当事者達が集まり、警察もふまえ、この時はこうだったと楽しそうに語らう様は異様な筈だが時代背景やミステリー特有のものとして誰も不思議に思わない)
    残念な事に作中でマープルが死ぬ訳がない為、彼女が失踪した部分についてはスリリングな展開ではなかったが、殺害された人物たちが第二、第三と不用意に何かを漏らしそして殺害されるのはある意味クリスティのお約束なので、受け入れてしまった。ただし、犯人からすれば証拠が増えたり自身に不利になる事は多いはずで、さらに第三の殺人についてはなんとか言い逃れできる道もあるかも知れない為、犯人も不用意だったと想像している。
     新聞の広告欄に殺人をお知らせしますとアナウンスがあり、という形で冒頭はスタートしていくが、本当にクリスティのミステリーは序盤に奇想天外に見える様な状況や環境を当ててくる事が多い(それでいて結局は単純な状況だ。)
     今作の犯人については余り犯人であって欲しくない人物だったが、巧妙に疑惑の人物を配置し、後々に登場させ、読者を混乱させた。人物の入れ替わりはクリスティ作品では当然の作用であり、驚きも無く、今作も一部人物の真相が隠されているが、一部の偽装については中盤である程度予測はできてしまった。
     僕自身の評価が高い点は序盤に述べたが、何より読みやすい事が一番だろう。古典ミステリー、しかも海外ものでは人物名、地名、設定や環境について読み慣れない部分や共感できない、そもそもわからない部分も多いが、今作はとてもすらすら読めた作品だ。

  • なかなか凝った話で、推理小説の定石というか、冒頭にかすり傷だけの人= 怪しいというのが頭にこびりついてしまってもそれなりに展開を楽しめた。年金不正受給は現代的なテーマのようでいて昔からあったんですね。ただそもそも犯人はある程度普通な人のはずが口封じのために連続殺人鬼になってしまうのが、アガサの定番らしいけど苦手。

  • チッピング・クレグホーンという小さな村のコミュニティ誌に「リトル・パドックスで殺人があるから、お越しをお待ちします」という広告が載る。リトル・パドックスは独身の女主人ブラックロックの住む家で従妹兄、若い女、旧友の同居人がいた。殺人予告日は広告掲載日で村の住人4組がいそいそと集う。果たして予告日時の6時半に殺人は起こった。しかも殺されたのは押し入った強盗。そして女主人は耳に傷を負う。

    マープルは偶然にも隣村のホテルに滞在しており、偶然にもチッピング・クレイボーンの牧師館の妻の母が旧友・・ といういつもの知り合いの知り合いの・・ というつながり。

    書かれたのは1950年で、随所に戦前のような暮らし、世の中ではなくなった、曰く昔は村の住人の氏素性はきちっとわかったのに今は新参者がやってきて、その人の素性はその人の自己申告だ、と嘆く。この「氏素性の自己申告」がこの殺人事件の鍵であった。

    動機はいつもながら莫大な財産を築いた男の遺産の相続。相続が最初の妻と子供にいけば問題はあまりなし。だがこれが死んでしまったり、いなかったり、というと遠縁の子供たちや秘書とかいったものに遺言がなされ、それで殺人事件となる。

    これは金欠の中で育った人があわや遺産の可能性が出て金のある暮らしを夢見ての殺人だが、マープルに「お金がなくて病気であっても、彼らはどうにか幸福な人生を送っている、人を幸福にするのも不幸にするのもその人次第なのですよ」と言わせている。・・しかしマープルは小金持ち。クリスティの描くのは資産のある人々だが、ちょっと資産の無い人を描いたイギリスの小説をなにか読んでみたくなった。


    1950発表
    2003.11.15発行 2015.11.15第8刷 図書館

  •  朝刊に殺人をお知らせ申し上げます、という衝撃的な広告が載る。何かのパーティーだと思った村の人は、広告に載っていた家に実際に向かうが、その場で本物の殺人が起こる。大胆不敵な事件にミス・マープルが挑む。

     さりげない会話の中に巧みに伏線をしのばせるのはクリスティーの得意技ではあるのですが、今回はそのさりげない会話が中盤に多すぎたようにも感じます。そのためにちょっと中だるみ感を感じてしまいました。

     でもやっぱりそのしのばせ方は巧いの一言に尽きます。途中違和感を感じたところがあったのですが、それが最後のマープルの推理披露できっちりとそのモヤモヤが明かされた時の快感は、やはりクリスティー作品だから味わえるものなのだと思います。

     もう一回問題のところを読み返してみると、ああなんでもっと深く考えなかったのか、と歯噛みしてしまうんだろうなあ。それが本格ミステリーを読む醍醐味でもあると思います。

  • 最初は誤植だと思ったのに…

  • 殺人予告を地域新聞に掲載するという意表をついた始まりから、事件、謎めいた住人たち。マープルの登場シーンも多く、楽しく読めます。
    犯人の意外性は(伏線が貼りまくられているので気付く人も多いはず)そんなにありませんし、この作品がクリスティーのベスト10にランクインする程のものかは個人的には疑問が残りますが、それは他に別格の傑作があるからで、推理小説としては佳品といえると思います。

  • 犯行可能なのが一人しかいないが、この人は犯人であってほしくない…と読み進めていたら、そもそもの前提が間違っていた。誤植だと思っていた箇所は誤植じゃなかった。

  • イギリスの作家「アガサ・クリスティ」のミステリ長篇『予告殺人(原題:A Murder is Announced)』を読みました。

    『ひらいたトランプ』、『ナイルに死す』、『白昼の悪魔』、『運命の裏木戸』に続き、「アガサ・クリスティ」作品です。

    -----story-------------
    その朝、新聞の広告欄を目にした町の人々は驚きの声を上げた。
    「殺人お知らせ申しあげます。10月29日金曜日、午後6時30分より……」いたずらかと思われたが、しかし、それは正真正銘の殺人予告だった。
    時計の針が予告時間を指したとき、銃声が! 
    大胆不敵な殺人事件に「ミス・マープル」が挑む。
    (解説 「三橋暁」)
    -----------------------

    1950年(昭和25年)に発表された「ミス・マープル」シリーズの長篇4作目となる作品、、、

    「ミス・マープル」シリーズは、4年前に読んだ『動く指』以来なので久しぶりですね。

     ■1. 殺人のお知らせ
     ■2. リトル・パドックスの朝食
     ■3. 午後六時半
     ■4. ロイヤル・スパー・ホテル
     ■5. ミス・ブラックロックとミス・バンナー
     ■6. ジュリア、ミッチー、パトリック
     ■7. その他の人々
     ■8. マープルの登場
     ■9. ドアについて
     ■10. ピップとエンマ
     ■11. マープルの訪問
     ■12. チッピング・クレグホーンの朝
     ■13. チッピング・クレグホーンの朝(つづき)
     ■14. 過去を訪ねて
     ■15. 甘美なる死〈デリシャス・デス〉
     ■16. 帰ってきたクラドック警部
     ■17. アルバム
     ■18. 手紙
     ■19. 犯罪の再構成
     ■20. いなくなったミス・マープル
     ■21. 三人の女
     ■22. 真相
     ■23. 牧師館の夕べ
     ■エピローグ
     ■解説 三橋暁

    チッピング・クレグホーン村の地元紙「ノース・ベナム・ニューズ・アンド・チッピング・クレグホーン・ギャゼット」の広告欄に次のような文章が掲載された… 「殺人お知らせ申し上げます…10月29日金曜日、午後6時30分よりリトル・パドックス館にて…」 、、、

    これはいったい何事だろう?気の利いた遊戯か、単なる悪ふざけか… 好奇心旺盛な村の人々はリトル・パドックスに集まる。

    時計が6時30分を指したとき、明かりが消え、3発の銃声が響く… 明かりがつくと、そこに男の死体があり、リトル・パドックスの女主人「レティシア(レティ)・ブラックロック」は銃弾が掠り出血していた、、、

    死んでいたのは、村のホテルに勤める従業員の男「ルディ・シャーツ」だった… 悪ふざけではなかった、世にも大胆な、恐るべき殺人予告だったのだ!

    警察はその場に居合わせた村人たちをひとりずつ調べていく… そして、チッピング・クレグホーンの友人「ダイアナ(バンチ)・ハーモン」のもとを訪れていた饒舌で詮索好きなオールドミス「ジェーン・マープル」は、「クラドック警部」や「フレッシャー巡査部長」とともに事件の真相を暴いていく。

    最初の殺人以降、「レティシア・ブラックロック」を狙ったと思われるアスピリンの瓶に入れられた毒薬で、リトル・パドックスに居候している「ドラ・バンナー(バンニー)」が亡くなり、事件当夜のことのある女性の行動に気付いた養鶏業者の「エミー・マーガトロイド」が絞殺される… そして、「レティシア・ブラックロック」の元雇い主で資産家の「ランダル・ゲドラー」の多額の遺産相続を巡って「レティシア・ブラックロック」の命が狙われる可能性があることが判明、、、

    さらにリトル・パドックスに同居するある人物が、「レティシア・ブラックロック」が亡くなった場合に遺産を受け取る権利が生じる「ランダル・ゲドラー」の姪「ピップ」と「エマ」であることが判明する… そんな中、「ミス・マープル」が行方不明となる。

    リトル・パドックス「クラドック警部」は、関係者をリトル・パドックスに集め、判明した事実を話し始める… いやいや、いやー 意外な人物が真犯人でしたね。

    姉と妹の入れ替えですね… 愉しめました!「アガサ・クリスティ」ファンからも高く評価されている作品らしいですね、、、

    終盤、直接的な証拠がない中で犯人を特定するための大芝居… さすが「ミス・マープル」と思える作品でした。



    以下、主な登場人物です。

    「ジェーン・マープル」
     探偵好きな独身の老婦人

    「レティシア(レティ)・ブラックロック」
     リトル・パドックスの女主人

    「ドラ・バンナー(バンニー)」
     レティシアの旧友

    「パトリック・シモンズ」
     レティシアの甥

    「ジュリア・シモンズ」
     レティシアの姪。薬剤師

    「フィリッパ・ヘイムズ」
     リトル・パドックスの美貌の下宿人。園芸師

    「ミッチー」
     レティシアのメイド。外国避難民

    「アーチー・イースターブルック」
     大佐。心理学者

    「ローラ・イースターブルック」
     イースターブルック大佐の妻

    「エドマンド・スウェッテナム」
     文学青年

    「スウェッテナム夫人」
     エドマンドの母

    「ヒンチリフィ(ヒンチ)」
     チッピング・クレグホーンの養鶏業者

    「エミー・マーガトロイド」
     チッピング・クレグホーンの養鶏業者

    「ジュリアン・ハーモン」
     チッピング・クレグホーンの牧師

    「ダイアナ(バンチ)・ハーモン」
     ハーモン牧師夫人。ミス・マープルの友人

    「ルディ・シャーツ」
     ロイヤル・スパー・ホテルの接客係。スイス人

    「クラドック」
     警部

    「ライデスデール」
     警察署長

    「ヘンリー・クリザリング卿」
     前警視総監

    「ベル・ゲドラー」
     ランダル・ゲドラーの妻

    「マーナ・ハリス」
     ロイヤル・スパー・ホテル、グリルのウェイトレス

    「フレッシャー」
     巡査部長。クラドックの部下

    「ロウランドスン」
     ロイヤル・スパー・ホテルのマネージャー

    「マックルランド」
     ベル・ゲドラーの看護婦

    「ランダル・ゲドラー」
     資産家。レティシアの元雇い主

    「ベル・ゲドラー」
     ランダルの妻

    「ソニア」
     男と駆け落ちてゲトラー家を出たランダルの妹

    「ピップ」
     ソニアの子

    「エマ」
     ソニアの子

    「シャーロット・ブラックロック」
     レティシアの妹。愛称「ロティー」

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