パディントン発4時50分 (ハヤカワ文庫 クリスティー文庫 41)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (421ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151300417

作品紹介・あらすじ

ロンドン発の列車の座席でふと目をさましたミセス・マギリカディは窓から見えた風景に、あっと驚いた。並んで走る別の列車の中で、いままさに背中を見せた男が女を締め殺すところだったのだ…鉄道当局も、警察も本気にはしなかったが、好奇心旺盛なミス・マープルだけは別だった!シリーズ代表作、新訳で登場。

感想・レビュー・書評

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  • まだ事件になってい殺人の目撃場面から始まり、ルーシーという頭脳明晰なフリーランスの売れっ子家政婦という魅力的な探偵補佐役を配しての展開が新鮮!時代背景や犯人追求のためにミス・マープルが大胆な行動に出る所も好み。クリスティー上手い。

  • 列車の座席でミセス・マギリカディが見た光景。それは並走する列車の中で、背中を見せた男が女を絞め殺す瞬間だった!鉄道会社も警察も本気にしなかったが、ミス・マープルだけは真相を探り始める!

    冒頭の殺人で一気に引き込まれる。手が届きそうなほど近くで目撃した事件なのに、まったく手がかりがないというインパクトがすごい。体力がないマープルに代わって調査に当たるのは、スーパー家政婦ことルーシー・アイルズバロウ!彼女が主人公と言ってもいいほどの活躍っぷりで大好きになる。

    「とても単純なことなんですよ、ほんとに」ミス・マープルは言った。「変わっているけれど、単純。あなたに死体を見つけてもらいたいの」
    いやいや、単純なのかそれは?!そんなツッコミを入れたくなる仕事をルーシーは請け負い、家政婦をしながら遺産相続に揺れるクラッケンソープ家の謎を探るというスパイ顔負けな潜入劇にワクワクした。

    ぼくは列車の中で始まって終わる話だと勘違いしていて、それがいつの間にか遺産相続ミステリになり、思いもよらぬ展開へと転がっていくドラマに翻弄されっぱなしだった。「誰が誰を殺したのか」という単純な謎から始まり、それこそが起源にして究極の謎として収束していくラストが見事だった。

    冒頭の衝撃に比べて、中盤はじわりじわりと進行していくので、そこだけむずむずした。でも、相変わらず安定して面白く読めるミステリ。犯人も全然わからないし!すごい。

  • 実家の母がクリスティものをそうとう揃えていたので、子供の頃には一通り読んでいたはずですが、あらためて、自力で揃えてみよう(自分も大人になったし)!と今回手に取ったのがこのパディントン発4時50分。

    そういえば、オリエント急行とか、鉄道に興味を持ったのは、幼少時代のクリスティものの影響かもしれない。
    列車以外のテーマの作品もいろいろあるというのに、あえてパディントンから読み出すなんて、わたし、やっぱり鉄分多い・・・
    シリーズものは順番に読めよ、と我ながらつっこみもしつつ、でもやっぱり我慢できずに、パディントン駅からクリスティさんの旅をスタートしたのです。
    (読むのは英国の鉄道とはいかず、地元の電車の中で♪)

    が、しかーし。列車における描写は、事件が起きた時だけとかなり限られていて、思いの外、鉄分が少なくてちょっとしょんぼり。
    大部分は、謎解きだったのですね・・・

    マープルさんのいい具合におとぼけな感じが素敵。。鋭く見抜いて推理しているくせに、ふわふわと毛糸に包まれて普段は「あらあら」ととぼけている感じがうますぎる。この歳の重ね方はなかなか真似できそうにありません。
    それに、舞台となる一家の家族たち。どの人もあやしくて味がありすぎ~。どの人も犯人じゃなきゃいいのにな・・・と思いながらハラハラしてました。
    そしてそして、謎解きの鍵を握るスーパーお手伝いさん、ルーシー・アイルズバロウが芸達者すぎる。(さすが理系女子!)
    クラッケンソープ家の男性陣がもれなくメロメロになっていくあたりがおかしい・・・。こりゃ日本版で実写化するなら江角マキコか。

    物語についてはみんなのお楽しみなので詳しくは書きませんが、英語のお上品な言い回しなんかも知られておもしろかったです。(お手洗いを借りることを"二階へ行かせてもらってもいいかしら"だなんて、いつかしれっと使ってみたいよ!)

  • 殺人現場の情景が印象的。ちょっとしたラブロマンスのその後も気になる。

  • クリスティの長編。マープルシリーズ。
    クリスティの作品を通して導入部分で最も惹きつけられ、印象深い作品。
     彼女の作品にて列車が題材のものがいくつかあるが、ポアロならオリエント急行であり、マープルであれば今作だ。マープルの友人であるマクギリガディ夫人がすれ違う列車のなかで扼殺される現場を見てしまう。彼女は駅の車掌な伝えるが信じてもらえない。そこで友人であるマープルに相談し、彼女の知り合いの警官に打ち明け、死体の捜索が始まるが、列車の中にも近隣の線路でも死体は見つからない。そんな中でマープルは独自の調査を開始し(その中でとある屋敷が浮かび上がる)とある計画を試みる。
     マープルは年配の為動き回る事は出来ないが、代わりに魅力的なルーシーというお手伝いを派遣し死体を探していく。
     クリスティは年配の人物を描写する事に長けており、お年寄り達がイキイキと描かれている。探偵など沢山の特徴があるが、マープルの様な探偵は余り巡り遭う事はなく、安楽椅子探偵、お年寄りのお婆ちゃんで魅力が満載、という設定は恐らくマープル以降は二番煎じになってしまうだろう。
     すれ違う列車で殺人を見た。そしてその死体を途中で捨てる、死体が見つからないという導入は
    当時の列車環境特有のトリックだが、それ故に目新しく感じ、作品の序盤からの期待値が上がっている。そして当然、犯人は意外な人物であり、犯人の特定、追及の仕方も独創的だ。実際に登場人物がイキイキとしている様に思えるのは筆者が愛着を持って描き切っている証拠であり、マープルシリーズは読了後、常に満足感を得る事ができる。ポアロに比べ、意外に悲劇的な結末が多い印象なのだが、バランスを考えてのことなのだろう。
     謎の女、謎の人物等、読者を欺く仕掛けも沢山用意されているが、作中である様に事実は単純であり真相は平凡なものだ。少し上記匂わせがしつこい様な気もするが、嫌になるほどでは無かった。(読み疲れは多少あるが)
    マープルの魅力が詰まり、登場人物の配置や使い方が絶妙な作品だ。マープルの登場自体は少ないかもしれないが、マープルシリーズだからこそ出来る「冒険」の詰まった作品に仕上がっている。シリーズ中の時間経過が再読する事で感じる事ができ、「火曜クラブ」からだいぶ時間が経過している事は感慨深い。ポアロシリーズしか読んだ事無ければ是非おすすめしたい作品。

  • マープルさんが果たしてどう動くのか、この手があったんだ、と納得。ただ、やはり無理っぽい感は否めなかった。犯人は、全く思いもつかない人だったので、そこは脱帽。

  • ルーシーのキャラクターとても素敵
    子供二人がわいわい楽しそうでよかった

    カレーに砒素の組み合わせで昔の事件を思い出したけど、あの犯行はべつにこの作品とは無関係の偶然なんだろうな そんな謎の洒落っ気があったらこわい

  • 並走する列車で殺人現場に居合わせるが死体が見つからないと言う導入が素晴らしい。

    またクリスティー作品は時代がかなり昔でも登場人物の細かい所作にこだわりがありミスリードされてる気分になりいつも楽しく読める。

  • ミス・マープルもの。

    4時50分にパディントンを発車した列車の車窓から、一時的に並走する列車内での殺人を目撃してしまった老婦人。
    この冒頭のシチュエーションからして、「クリスティー、天才か!(知ってたけど)」と唸りたくなります。

    で、この老婦人がミス・マープルのお友達だという事で、真相解明に乗り出したマープルさんは、目を付けた屋敷に、スーパー家政婦のルーシー・アイルズバロウを送り込むのですが・・・。
    今回大活躍のルーシー。彼女の生き方が、この時代にしては非常に先進的なのです。
    美人で頭脳明晰(オックスフォード大学の数学科を一級で卒業!)、そして家事のプロとして独立しているという(そう、フリーランスなんですよ)。マジ憧れます!
    という訳で、ラストでルーシーが選ぶ男性が気になるのですが、どちらもルーシーの相手になるには役不足かな。と思った次第です。

  • 隣をわずかな時間並走した車内である女性が男が女の首をしめるのを窓越しに目撃する、この出だしからして興味をそそられる。しかも目撃した老夫人はマープルを訪ねる途中だった。この最初の衝撃的な出だしと、そして最後の真犯人を究明する最後の場面がとても印象的な作品。

    車掌や警察に報告するも、死体がみつからないとしてそれで終わりに。しかしマープルはカーブする線路が広大なお屋敷に接していたことから、そのお屋敷に死体があるのではとにらみ聡明な家政婦を送り込む。そのお屋敷は亡祖父が食品づくりで財を成し、息子が遺産を相続し、さらにその5人の息子達と2人の娘達がいて財産を当てにしている。長男は第二次世界大戦で戦死したが、実は直前に結婚したという女から手紙が届き・・

    果たして納屋から女の死体が見つかる。その手紙の女か、と思いきやまさかの女の正体と新たな女の出現、片や三男、四男が砒素で相次いで死亡し、犯人は意外な? 

    料理もうまく頭もよい聡明な家政婦と、泊まりにきた孫の男の子が物語のスパイスになっている。また57年発表時、お屋敷のまわりは宅地開発がされている、戦時中飛行士だった次女の夫は戦後、なかなか飛行士以外の道を探れないでいる、など時代背景も興味深い。

    ドラマで見ているはずなのに最初の場面以外まったく覚えていなかった。


    1957発表
    2003.10.15発行 2015.11.15第7刷 図書館

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