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Amazon.co.jp ・本 (464ページ) / ISBN・EAN: 9784151300424
感想・レビュー・書評
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【マープル】
マープル2作目『書斎の殺人』から20年経って、クリスティー72歳の時の作品。
『書斎の殺人』の現場となった屋敷が、売りに出されたり、放牧場だった所が新興住宅地になっている。
美しい田園風景が時を経て近代化へと変わりゆく姿に寂しさを感じた。
この作品はポアロではなく絶対にマープルだ。クリスティーがマープルの年齢になってきて2人が重なる。
自分はポアロから読み始めたので、最初はマープルのことが好きになれなかった。
でも今ではマープルならば間違いないという安心感、同性だからこそわかる繊細な気持ちと、美しい田園風景のセントメアリミードが大大大好きだ。
この作品は今までと同じような作品だと思っていた。
でも読み終わった後は、今までにない悲劇に読んだ後もずっと辛かった。今も辛い。
小説なのにリアルな怖さがあった。
この作品はネタバレなしでは語れないので、ここからネタバレしてます。
今回初めて犯人に同情し、犯人と同じ気持ちになった。同じ立場だったら私も犯人と同じことをしてしまうかもしれない。
そのくらい今回の被害者は許せなかった。
こういう人の人間描写がクリスティーは抜群に上手い。
そして怖いのは、この被害者みたいな人は身近に普通にいるということ。
自分の周りにもこの被害者みたいな人はいるし、どこにでも結構いると思う。
この作品は実在するアメリカの女優の人生から着想を得て執筆されたと後から知った。
リアルだと思ったらやっぱりそうだったんだ…。
私はこういう作品は心に強く残りすぎて辛くなってしまう…。元気が出る音楽を聴いてリフレッシュしよう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
エリザベス・テーラーの映画で知っていたが改めて読んで面白かった。ミス・マープルをお婆さん扱いする看護師に憤慨したり、メイドのチェリーと意気投合したり、クラドック主任警部に頼りにされたりと事件そのものはもちろん周辺の話も楽しめた。
※津村記久子さんの『ウエストウイング』でネタバレあり。 -
たぶん初アガサ・クリスティ。
どう着地するのか最後までわからず、おもしろかった。
感想を一言で言うと、現実的!
トリックが理解しやすく簡単で真似できそう。(しないけど)
動機も起こりうるだろう大変納得のいくものだった。
ミステリーと言えば、これまで頭脳派の犯人or探偵役で構成される別世界のフィクションという認識だったのが、他人事ではない身近なミステリーとして読めてとても新鮮だった。
あとは、セリフの後にいちいち続く、「〜と、◯◯が言った。」がめっちゃ多くて気になった。 -
セント・メアリ・ミード村にあるヴィクトリア朝の屋敷、ゴシントン・ホールが売りに出され、ハリウッドの映画女優マリーナ・グレッグとプロデューサーである夫のものとなった。内装を一新した建物が野戦病院協会の催しに合わせて公開され、村の人たちはこぞって屋敷に押し寄せる。ところが、パーティの真最中にマリーナと会話していた協会理事のバドコック夫人が毒殺されてしまう。さらに、マリーナが夫人と話しているときにどこかを見つめ凍り付いた表情になったのを何人かの客が目撃していた。
バドコック夫人は果たして誰に、なぜ殺されたのか、そしてマリーナの表情のわけは。
ミス・マープルは、村の人たちや関係者の話から事件の真相を推理する。
ミス・マープルが長年住んできたセント・メアリ・ミード村にも都会化の波がやってくる。個人商店はスーパーになり、農場の跡地は新興住宅街へと開発されて新しい住民でいっぱいだ。当のミス・マープルは、甥のレイモンドが手配した付添人に低能の年寄り扱いされてイライラがとまらない。
本書執筆時のクリスティーの年齢は72歳。このエピソードにはクリスティー自身の実体験が反映されているのかもしれない。
ただ、一見愚痴っぽく見えるこのエピソードが実はちゃんと物語の伏線になっているところがクリスティーのすごいところだ。
時代が移り変わり、昔からの住民は年を取った。かつてはミス・マープルの友人、バントリー夫妻の邸宅で『書斎の死体』の舞台にもなったゴシントン・ホールも、今や「疲れはてたヴィクトリア朝時代の邸宅」である。しかし、人の心はそう簡単には変わらない。クリスティーは、古いものと新しいものをあえて対比させることで、人が持つ普遍的で生々しい感情を際立たせているように思える。
本書のもう一つの注目ポイントは、なんといってもマリーナ・グレッグが見せる表情である。タイトルにもなっている「鏡は横にひび割れぬ…」はテニスンの詩の一節で、その解釈が物語の謎を解く重要なキーワードにもなるのだが、本書においてこの表情の意味はそれだけにとどまらず、まるで一片の絵画のようなシーンが物語全体を詩的な美しさへと昇華させている。
実は、私が最初にこの話を知ったのは日本でドラマ化された時で、そのドラマが中途半端な内容だったので、本書にあまりいいイメージをもっていなかった。
今回再読して、改めて本書の魅力を知ることができたような気がする。 -
冒頭の映像的なシーンで事件発生もその後は落ち着いた感じで展開し終盤になって色々と動きが…ミス・マープルがすっかりおばあちゃん扱いになってるが、ミス・マープルを実際に読むまで思っていた「安楽椅子探偵」のイメージにはこの方が近いかとも思う。
有名女優が近所に引っ越してきてそこから起こる騒動は、何だか現実味のない設定ではあるがドラマとしてはとても面白かった。色々とスッキリしない部分も残ってはいるが、まぁ隅々まで整合性を求めなければ読後感も中々にスッキリする。後は何を言ってもネタバレになりそうなので黙っとこ。
個人的には前作『パディントン発〜』登場のルーシーの活躍する話しも見たかったなとも。 -
学生時代に読み漁ったアガサ・クリスティ
探偵ポアロもミスマーブルも、どちらのシリーズも好きで、読み尽くしたと思っていた。
他の作家の作品の中で、このタイトルが引用されていたので気になって読んでみた。
100年経っても色褪せず、読者を惹きつけるのは圧巻!
ミスマーブルの観察眼と行動力は、年を重ねても健在だった。
またシリーズ全編、読み返したい。 -
マープルシリーズ長編8冊目。セント・メアリ・ミード村にも色々変化があり、シリーズを順番通りに読んでいるので時の流れを感じた。高齢になったマープルはほとんど家にいて、安楽椅子探偵っぽくなっている。捜査担当のクラドック警部、友人のバントリー夫人、ヘイドック医師とお馴染みのメンバーも登場してくれて嬉しい。あとマープルが若かったらクラドック警部とお似合いだっただろうなあとちょっと思った。
マープルは高齢とはいえ頭の良いしっかりした女性なんだけど、お年寄り扱いされることに複雑な感情を抱いているのは共感した。事件についても、トリック云々より人間心理のほうに重点を置いているのがクリスティらしくて良かった。 -
かつてクリスティのミステリーに夢中になった頃があり、その中でも一番好きだったのが比較的晩年に書かれたこの作品。主人公ミス・マープルの人間観察や推理が冴えているのは勿論のこと、ミス・マープルの目を通して、彼女の住む村の周辺や世相が変わっていく様子が語られるところがなんともいえず興味深い。また、ミス・マープルのお世話をするチェリーは近くの新興住宅地から通い、電化製品を使いこなす様がとても魅力的に描かれているのも、使用人にあまり感情移入しない他のクリスティ作品とは違い、新鮮に感じる。実際、クリスティ自身が変化を受け入れようと自身を投影して書いた作品ではないだろうかとさえ感じる。
本作品はまた、エリザベス・テイラーが出演した『クリスタル殺人事件』(邦題)という映画にもなっているし、何度かテレビドラマ化もされている。しかし何と言っても、BBC制作のジョーン・ヒクソンがマープルを演じた作品は、原作のイメージを壊さず、素晴らしい。
クリスティのほぼ全作品を読み終え、繰り返しテレビドラマを見るにつけ、未だにこれが一番好きなのに変わりない。 -
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ミス・マープルもの。
喉かな田舎だったセント・メアリ・ミード村も、新興住宅地ができる等、徐々に変わりつつある中、かの『書斎の死体』(同著者、マープルもの)事件の舞台となった邸・ゴシントンホールに、映画女優が引っ越してきます。
そこで開かれたパーティーに出席していた女性が変死を遂げてしまいます。一見、殺される理由のなさそうな女性の死を巡って、憶測は二転三転としていき・・。
ミス・マープルは、お年を召している事もあり、出歩くことを周りから止められている状態ですが(好奇心で結局出歩いても、転んでしまう始末)、友人のバントリー夫人(元・ゴシントンホールの持ち主)や、クラドック警部などから聞く情報をもとに、驚きの真相にたどりついてしまうのですから、マープルさんの安楽椅子探偵っぷりはさすがです。
今回は、映画女優・マリーナが一瞬見せた“凍り付いた表情(タイトルもこれに関連しています)”がミソなのですが、いやはや、全く自覚も無く人を傷つけてしまったり不幸にしてしまう事ってあるのですね・・。怖いものです。 -
1962年の作品。
ミス・マープルシリーズ長編8作品目。
ミス・マープルの暮らすイギリスの田舎街、セントメアリミードにも近代化の波が押し寄せ、新興住宅地には若い家族連れや夫婦が越してきて住むようになった。マープルの友人のバントリー夫人は、かつて住んでいたゴシントンホールを女優のマリーナ・グレッグに売却した。
マリーナ・グレッグと夫のジェイソン・ラッドは村の人々や映画関係の人々をゲストに呼んで、ゴシントンホールでチャリティーパーティーを開いた。そのパーティーの最中、新興住宅地に住むバドコック夫人が突然倒れ、死亡してしまう。このバドコック夫人には、ミス・マープルが散歩中に倒れたときに大変親切にしてもらったことがあったのだった。
事件の捜査には、主任警部となったクラドック警部があたるが、バドコック夫人の死因が酒に含まれた精神安定剤の過剰接種であること、マリーナと間違えて殺された可能性があることを突き止める。
大好きなクラドック警部が大活躍のお話です。
が、、「書斎の死体」から何十年も経ち、セントメアリミードにも近代化の波が…。1962年という時代背景をよく表していますね。日本では高度成長期。
バントリー夫人が未亡人になっていたり、時の流れを感じセンチメンタルになります…。でもイケメンクラドック警部がまだ独身なことがちょっと嬉しいw
暗い話ではありますが、クラドック警部がおばさん助けてくださいとミス・マープルに甘えまくり(この甘え上手!)マープルとクラドック警部の心温まる関係にほっこりします。
また、犯人と思しき怪しい人物に次々ミスリードされそうになります。
殺された女性は大変親切なのだが、いろんなことに首をつっこみたがり、周りがどう思うか考えもしない女性…アガサクリスティの別の作品で、「春をして君を離れ」という作品の主人公の女性を思い浮かべてしまいました。もしかしたらアガサクリスティが自分のある一面を写した人物像なのかな?想像を膨らませてしまいました。
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セント・メアリ・ミードの村も都会化が進み、新しい住民たちが移り住んできた。アメリカの女優・マリーナはいわくつきの家を改装。その家で盛大なパーティを開いたが、招待客が変死!その謎に老婦人探偵ミス・マープルが挑む。
「人間の性質についての多少の知識を持っているというだけのことよ──それも、こういう小さな村に一生暮らしてきたせいで、そうなっただけのことだわ」
マープルのセリフに痺れる!家からなかなか動けない老体となっても、頭脳のキレは衰えなし!人々からもたらされる情報だけで人間心理の編み目を解きほぐす推理に圧倒された。
「それはともかくとして、あなたはパセリが夏の日にバターの中に沈みこむ深さからでも推理できるひとだ。」
この主治医のセリフも粋だよね。マープルは多面的で深い人間心理を、現場にいた人々の目と記憶を通して多角的に組み立てていく。会話劇を支配する臨場感と心の波音に唸らされる。衆人環視の下でいかに毒殺したのか?そもそも狙っていたのは被害者か、それともマリーナだったのか?トリックもさることながら、やはり動機で魅せてくれるからこそ物語の余韻に深く沈みこめる。心の機微、ままならなさをこの時代からこれほどまでに丁寧に描いていたということがすごすぎる。
p.103
「ほんとうは自己中心的な態度から生じることなの。だけどそれは利己主義ともちがうのよ」と彼女はつけ加えた。「どんなに親切で、利己心をはなれていて、思いやりさえ持っていても、アリスン・ワイルドのような人間は自分のしていることがほんとうはわかっていないのよ。だから、自分の身にどういうことが起きるおそれがあるかも、悟れないというわけなの」
p.134
「でもね、あの妻は──そうねえ、思いやりのあるひとだったとは思えないわ。親切なことは親切だったけど、思いやりは、なかったわ。だんなさまをかわいがり、病気のときにはゆきとどいた看病をし、食事の世話もしたろうし、家政のきりもりもうまかったろうとは思うけれど、あのひとは──そうねえ、亭主が何を考え、何を感じているか、知りもしなかったろうと思うわ。それでは、男にとっては淋しい生活になるものよ」
p.220
「子供というものは敏感なものなのよ」とミス・マープルは自分でうなずきながら言った。「まわりの者たちが想像もつかないほどいろんなことを感じるものだわ。傷つけられた気持ち、はねつけられたという感じ、のけ者にされているという感じ。そうした傷ついた心は、いろんな恩恵を与えてもらったからといって、なおるものではないわ。教育も代償にはならないわ。いい生活をしてもらったり、収入を保証されたり、知的職業にたずさわらせてもらったり、したとしてもねえ。いつまでも胸の中でうずいているものなのよ」 -
鎌倉殿の13人のラストシーンが、恐らくこの作品から影響を受けていると話を聞いて購入。
ミスマープルは全く知らなかったけれど、とてもキュートなお婆さまで大好きになった。
事件の本筋だけでなく、ミスマープルの日常が描かれているのが女性作家感あるなと思った。
主人公はマープルだけど、現場には赴かないしあちこちから聞こえてくる噂話を聞いたり、自分で聞いてきたりして謎を解くのが面白いし、マープル以外の視点の話が多いのが面白かった。
ラストは、私が鎌倉殿で最高に響いた要素がありまくっていて大興奮。
愛と死が本当にいい。
解決シーンはほんの数ページで、一気に全てが解ける感じが気持ちよかった。そして誰もいなくなったといい、アガサクリスティーってそういう感じ?というかミステリーは大概そうなのかも。
そしてその数ページで、動機が痛いほど分かるのも良かった。
後の解説で、今作はクリスティー作品の中で1番ではないけど、特に女性に推される作品とあって、確かにな、と思った。
マープルや友人との、話に無駄が多くて長いところが、とても可愛らしいし女性たちのコミュニケーションという感じで文が多いのに読みやすかった。
ミスマープルのファンになったので、次は代表作とされる予告殺人を読もうと思う。 -
どの人物も犯人っぽくて怪しい。証言を追うごとに謎は深まるばかり。しかし、真相は…物悲しい動機と結末に苦しくなった。マープルの年寄り扱いされるさまが、おかしくホッとさせられる。クリスティー作品の面白さにはまりそう。
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アガサクリスティのミス・マープルシリーズ。
マープルの友人のバントリー夫人が以前住んでいたゴシントンホールという屋敷にアメリカの大女優、マリーナ・グレッグとその夫が引っ越してくる。そこで盛大なパーティーが開かれるが、招待客の女性が毒入りの飲み物を飲んで死亡するという事件が起きる。
ミスマープルは、周りの人から話を聞いた情報だけで事件を解決してしまう、まさに安楽椅子探偵。普段は穏やかなおばあちゃんなのに、謎を前にしたらワクワクしちゃう好奇心旺盛なところがなんともチャーミングでした。
犯人が誰か、というのもそうですが、この作品の一番の見どころは何といっても殺人の動機。すごく納得のいく理由だと思った。そこからするすると謎が解けていく快感がたまらない、最高のホワイダニット小説でした。
やっぱりアガサクリスティは面白くて読みやすい。
ミスマープル物も色々読みたいな。 -
恩田陸の『鈍色幻視行』で、表情がこの小説に出てくる女優のようだという描写があり、調べたらレビューの評価も高かったので読んでみた。
小説の中でも、その凍りついたような真顔の表情というのが鍵となってミス・マープルが追っていく。
最後まで、どうやって、誰が、どんな目的で殺したか全くわからなかった。殺されたパドコックさんも女優もあまり魅力的には感じず、事件を追うのに余りひきつけられなかったけど、真相を知ったら女性が好きなクリスティ作品として上位に挙がるのは分かる気がした。 -
偶然見かけた感想で「面白かったけど、動機が弱い」というのを見て、なんかめちゃくちゃ腹がたった。
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