謎のクィン氏 (ハヤカワ文庫)

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  • 早川書房 (2004年11月18日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (512ページ) / ISBN・EAN: 9784151300530

感想・レビュー・書評

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  • ミステリとは、謎が提示され、探偵役によって解かれる、という枠組みを持つものですよね。このハーリ・クィン氏の短編集は、確かに謎解きが軸になってはいますし、殺人は人間の手で行われ、超常現象にはよらないのですが、クィン氏の正体や本当の意図は謎に包まれたまま、読者を幻惑します。和風な言い方ですが、狐につままれたような読後感です。嫌いじゃありません。
    サタースウェイト氏には、先日読んだ「愛の探偵」や「三幕の殺人」で会ったばかりなので、嬉しかったです。

  • 本書は、サタースウェイト氏というセレブ(うん、多分セレブ)なお爺さんを主人公にした連作短編が12話収録されていますが、もう、タイトルそのまんま“謎のクィン氏”という感じです。
    行く先々で“ドラマ”(というか、痴情のもつれ)に関わることになるサタースウェイト氏のもとに、どこからともなくクィン氏がやってきて、問題や事件へのアドバイス的な示唆をして、どこへともなく去っていく・・というパターンです。
    言うなれば、クィン氏は“謎のナビゲーター”というところでしょうか。
    そんなクィン氏がサタースウェイト氏は大好きなようで、明らかに不自然な場所でクィン氏に会っても「やあ、クィンさん!」とすごく嬉しそう。挙句の果てに交霊会で“降りてきた”クィン氏に呼び出されてホイホイ出かけていくという、シュールな場面も・・。
    個人的には「翼の折れた鳥」がミステリとして楽しめたかな、という印象です。あとは「海から来た男」が後味が良くて好きでした。
    解説によると、本書のメインキャラ・サタースウェイト氏がポアロものに特別出演している話があるそうで、是非読んでみたいですね。

  • タイトルの通り、ハーリ・クィン氏が謎すぎる。ちょっとオカルト風味? 
    「面前でくりひろげられる、さまざまな人生ドラマを、間近に見物してきた」サタースウェイト氏は、トリックスターのクィン氏登場によって探偵役を演じることになる。変わった探偵役コンビで面白い。ポワロともマープルとも違う雰囲気だ。特に最初の「クィン氏登場」が好き。

    クィン氏の名前の元ネタと思われる「ハーリクイン(道化役者)」を検索したら、イタリア語で「アルレッキーノ」だという。サタースウェイト氏いきつけのレストランの名前が「アルレッキーノ」で、小ネタが知れてちょっと嬉しい。

  • クイン氏登場
    クリスティが生み出した探偵の中でもかなり特異な人物であり、シリーズ化はされていない(短編集のみ)がかなり好きな作品になった。
     自動車事故により年跨ぎの夜にとある屋敷に現れた謎の人物。過去、この家で家主が自殺しており、その真相は未解決ねままであったが、十年の後、過去を振り返ればいらないものが削ぎ落とされ、真実のみが見通せるものだと謎のクイン氏は話し一座と共に過去の事件の記憶に潜っていく。独特な手法により、過去の事件の真相を見事に解き明かす。結末もクリスティ的だ。
    窓ガラスに映る影
    クイン氏の物語はサタースウェイトで始まる。そして一作目に続き、お化け屋敷が話題だ。アンカートン夫妻が暮らすグリーンウェイズ荘。その館の窓には過去に暮らしていた大佐の影に見えるシミが現れて人々を不幸にする。遥か昔から窓ガラスを変えてもそのシミは必ず現れて何かしらの不幸が起きる。今回もガラス窓を取り替えたのにも関わらずシミが現れその後、銃声が聞こえ二人の男女の死体が発見される。また、とある婦人が銃を握っている様から事件は簡単なものと思われたが。そんな中でたまたま主人と約束をしていたクインが姿を現し事件の真実を導き出す。
    〈鈴と道化服〉亭奇聞
     サタースウェイトとクインは運命的に出会う。とある田舎にて車がパンクしてしまい短い時間、宿屋で食事をする事にしたサタースウェイト。そこで偶然クインと再会し、宿屋のある地区で起きた不思議な失踪事件について見解を話す。物事は過去になればなる程余計なものが削ぎ落とされて真実が見えやすくなる。失踪事件の結末についてはクリスティ得意の人物の入れ替わりを駆使したトリック、面白い物語だ。
    空のしるし
     今回はサタースウェイトが冒険を強いられる。とある男が有罪になるが、サタースウェイトは判決に納得出来ない。彼の行きつけのレストランでクインと再開し事件の詳細を告げる。事件後、お手伝いさん一人がカナダに渡っており、サタースウェイトはクインに後押しされて、カナダまで出かける。彼女を見つけ、話を聞き出し、ロンドンへ戻り、クインと再会。サタースウェイトはクインに真実を告げ、クインは彼に助け船をだしながら真実に辿り着く。少しクインと言う人物の印象が変化した作品。
    クルピエの真情
    こういった作品を短編の中に入れてくるのは驚いたが、いいスパイスだ。ロマンス作品も出しているクリスティならではだし、二組のカップルについてとある仕掛けを施すサタースウェイトとクインはとても人間臭い一面があるのだなぁと感心する(クルピエと伯爵夫人について何かした様な描写は無いが、クインがクルピエを連れて来たことが仕掛けの様に感じた)とても平和な作品であり、こういうものだけだと疲れてしまうが短編集の一編で、しかもクインのシリーズの世界観がわかってくるタイミングなのでとてもよかった。
    海から来た男
     余命宣告を受けた男。自身は孤独であり、断崖絶壁を訪れるがサタースウェイトと出会う。サタースウェイトは自身がこの土地に来た事を後悔していた。そんな折り、男性と出会い、会話をしながら彼が自殺を仄めかしている事に気づき諭そうとするが手ごたえはない。男は昨日も別の人物に止められており、二日続けて上手くいかなかった。一方でサタースウェイトはこの地にある屋敷がどうしても気になってしまい、ついつい勝手に家のドアを開けてしまう。そこで女主人に呼び止められ、事情を伝えると、家に招かれ不思議な話を聞かされる。
     自分の人生が将来、とある時点で誰かの人生を変えるかも知れない。神という演出家が出番を最後にしているかも知れないし出番自体がないかも知れない。というのはミステリには珍しく胸に刺さる教訓だ。そして、今作もハッピーエンドで幕を閉じる。終盤にようやくクインも登場するが、サタースウェイトの冒険であるだろう。
     闇の声
     女男爵というのは初めて聞いたが、基本は男性が爵位を継ぐものだが、稀に女性が継承することもあるらしい。何度も結婚し、自由奔放に生きる女性。反対に堅実で真面目な娘。娘が住んでいる屋敷で交霊会が開かれ、過去に船の事故で亡くなった叔母より、何かを返せとお告げがある。サタースウェイトは彼女達を知っており、とあるテストをしてみたが、本人達しか知り得ない事を知ってた。結末はクリスティお決まりパターンだったが、現状に至るまでのプロセスに現実味が無く、リアリティの面では難しい作品だ。犯人の結末も雑に感じてしまった。
     クインはサタースウェイトの事を面倒になったのかなぁ(笑)何か裏がありそうだ。
    ヘレンの顔
    オペラハウスでサタースウェイトとクインは再会する。クインは探偵役というよりは超優秀なワトソンなのかも知れない。余りに美しい女性を見つけて二人が興味を持ち彼女と連れの男性の後を追いかけていく様には笑ってしまうが、それ程の美女だったのだろう。彼女達にもう一人の男性が加わり、サタースウェイトは嗅覚を発動するが、クイン曰く何かがあった場合、それはサタースウェイトの事件だと告げて何処かに消えてしまう。
     女性をめぐり男性同士トラブルがあり、サタースウェイトが彼女の救済にはいる。後々結ばれる側の男性と別れを告げられる側の男性。そして女性に訪れる危機。トリックはある程度有名な知識なのだが、実際ラジオでできるのかは難しいところだ。
    死んだ道化役者
    第一作目のパロディになっており、今度はサタースウェイトが客人達を促し過去の殺人事件の真相を探る。いつの間にかクインも現れており、ワトソン役を演じる。きっかけが面白く、とある画廊で出会った絵画。サタースウェイトが知っている屋敷を舞台にクインそっくりな人が倒れている構図。彼が購入した後にそれを買いたい夫人とモデルの屋敷の夫人も招待し十四年前の事件の謎解きが始まる。解決はその場にいた人達に委ねられ、クインはいつの間にかに消えていなくなっていた。
    翼の折れた鳥
     ロンドンのとある屋敷で交霊会が開かれ、偶々部屋に居合わせたサタースウェイトはクインからのお告げだと言われたものを聞く。その日、サタースウェイトは郊外の屋敷に招待されていたが、寒さ等不快なものを避ける為に断っていたのだが、お告げに因果を感じ招待を受ける事に。
     招待先の屋敷で起こる殺人事件。サタースウェイトは面識のある警察官と話しながら謎を解明していく。ウクレレのトリック描写は丁寧で、分かりやすい。
     ますますクインの正体が謎に満ちてきた。
    世界の果て
     クインのシリーズは不思議な出会いの物語なので、事件の土台がそれに由来していても不思議には思わない(偶然の出会いの筈が、計画的事件等)がギャップは感じてしまう。今回も伯爵夫人、若手の女流画家、舞台女優達がそれぞれ偶然に会合する訳だが、実はそれぞれにとある窃盗事件絡みの接点があり、その真相こそがそれぞれの人生の道筋を照らす。今回もクインは目立たないが、サタースウェイトを導いた。
    道化師の小径
     結末はよくわからなかったが、サタースウェイトとクインの物語はひとまず落ち着く事になる(クインシリーズがもう一編あるのは知っていて、楽しみだ。また、ポアロシリーズにサタースウェイトが登場していた事は完全に忘れていた)
    とあるダンサーの話。人々を魅了する様なダンサーだが一方でバレェを捨てることが苦にならない程の愛情を持って結婚している。とある興行が開かれる予定だったが、ダンサーが事故で怪我をしてしまい、急遽婦人とクインが代役を務める。
     結末はとても寂しいが、悲哀の物語として素晴らしい。

    今作は実はクィンがワトソン役、サタースウェイトが探偵役と捉える方がしっくりとくる。優秀なワトソンが人間観察が得意なサタースウェイトにヒントを出して解決に導く。更に作中通して何か超世界的な雰囲気を纏い、独創的な作品にしている。ある意味でクリスティの他作とも違った世界観をしており、シリーズの長編を読んでみたかった願望がある。ポアロシリーズに続き、クインのシリーズも誰か描いてくれないかなぁ。

  • 大好きな大好きな短編集。
    ミステリと幻想小説の間を揺れ動いている、
    あの独特の空気が好きだ。特に好きなのが
    「海から来た男」「ヘレンの顔」「世界の果て」。
    「ヘレンの顔」はほとんどバカミスな機械トリックと人間の深遠な謎が合致した不思議な佳品。
    このヘレンとは、トロイ戦争のヘレンのことです。
    「海から来た男」と「世界の果て」のテーマは「自殺救済」。
    どちらも大筋は似ているんですが、「世界の果て」は読んでほっとするお話です。
    一方「海から来た男」は、クリスティー得意の大甘メロドラマと、そんな現世の営みを遠いものとしてしか認識できないサタースウェイト氏の優しいあきらめが入り交じっていて、私は嬉しいんだか悲しいんだか、わけの分からない感情が無性に押し出てきてとまらなくなってしまいます。もしかしたらクリスティーの短編で一番好きかもしれない。
    新訳の嵯峨静江さんは題も大胆に変えていますね。ところで、超人が示唆して俗人が解くこのスタイル、
    意外と三毛猫ホームズに似ているような気がしませんか?

    旧版は(M)さんの匿名解説。(M)さんは相変らず手堅くまとめている。
    新版は川出正樹さん。丁寧な解説らしい解説ですし、『真夏の夜の夢』から『ブギーポップは笑わない』までを引用する大風呂敷も買いたい。
    新版の勝ちです。

  • サタースウェイト氏がクィン氏の力を借りて事件を解決しいてく短編集。

  • クリスティ作品の中でも異質さが群を抜いているハーリ・クィンを主題に据えた短編集
    この短編集の魅力は本来なら探偵役となるハーリ・クィンが推理もしなければ捜査もしない点。それどころか事件への関わりだって少ない
    なら、誰が推理を行うかと言えば人間観察が趣味のサタースウェイトとなるわけだ。ハーリ・クィンによって与えられた天啓を元に想像の輪を広げ事件の真相に気付く
    本作は一般的なミステリと大きく異なる構図を持っているからこそ、面白さも際立ってくるね

    そもそもからして、ミステリの短編集なんて或る一つのポイントに気付ければ真相も容易に気付ける構図となっている事が多い。その意味ではミステリの短編では必ずしも探偵が必要と言いきれないのかもしれない。素人探偵が活躍できる余地が生まれる
    だからってハーリ・クィンに導かれたサタースウェイトの振る舞いは特異としか言い様がないのだけど

    サタースウェイトは人間観察が趣味というだけ有って、気付くべきポイントにはおおよそ気付いている。でも探偵ならではの捜査・推理方法を持っているわけではないから事件に出会っても動き方を知らない
    そこでハーリ・クィンが示す天啓が役立つわけだ。探偵でもないサタースウェイトはハーリ・クィンの存在に拠って自分に何かしらの役割があると確信する。それによって事件との向き合い方を見定められる
    2人は相棒というわけでもないのに、まるでタッグを組んでいるかのように最良のパートナーとなっていくね


    収録されている短編の中では『死んだ道化役者』が一番好印象を受けたかな

    10年以上前に終わった話だった拳銃自殺。それが現場をモチーフとした絵画をきっかけとして過去への追憶が始まり、役者が揃い、そして真相へ到る。その上で恋の端緒も見え隠れする
    本短編集の魅力が詰まった話であるように思えましたよ

  • ポアロとはまた一風変わった作風。

    突然現れるクィン氏。
    彼自身が謎を解く訳ではないけれど、出会った人に大きな変化を与えるクィン氏。
    幻想のような不思議なミステリーです。

  • 人生に降りかかる悲劇と祝福と。

    ハーリ・クィン氏は人間なのか? 読み進めるにつれて、「死」とかとにかく人間外の存在ではないかと思い始めた。答えは書いていないけれど。ありえないところに抜群のタイミングで現れるクィン氏。サタースウェイト氏を促し、事件の解明に導くクィン氏。その正体はわからないけど、幻想的な雰囲気に飲み込まれ、なんとなく納得してしまう。自分は脇役、人生の観察者だと自称するサタースウェイト氏だから、クィン氏に会えるのかもしれない。人生に降りかかる悲喜劇のこんがらがった筋に演出をつけるクィン氏に。

  • 地味にクィン氏もの好き。

  • クリスティーブーム、
    次なる作品は、短編の中にしか登場しない、
    クィン氏を扱ったもの。

    読むにつれ、どんどんクィン氏の登場の仕方や
    振る舞いなどが
    超常現象に近づいていく!

    一般人のサタースウェイト氏のまわりで、
    殺人が発生し過ぎる!
    (そう言うとミス・マープルもそうかしらん)

    「ルーレット係の魂」が、良かったな。

  • 久々に本棚奥からひっぱり出してきて何度目かわからない再再読。
    昔からアガサクリスティの中で1,2を争うぐらい気に入っていて、何度も読んでるわりによく無くすので3回ぐらい買いなおした気がします。

    内容的には安楽椅子探偵…とはちょっと違うけども色々なところを動いて回る感じでもない。
    またミステリのようだけれどもファンタジーのようでもありと言う雰囲気が全面に漂っている。

    突然現れる神秘的な人物ハーリ・クィン氏は、主人公たちの話を聞き、主人公たちから話を聞き、それを組み立て事実を話すが、決して答えを与えず主人公たちに答えを導き出させて、そして答えが出ると魔術のように消えて行く。
    そんな不思議な感じが個人的に気に入った部分なのかなと思う。

    正直、主人公サタースウェイト氏が人間観察好きの決してハンサムでも若くもない62歳のおじいちゃんと言うのも気に入っています。ものすごく。

  • 再読だか。再々読だか。。

    以前は良さがよくわかりませんでした
    ポワロほど派手ではなく、マープルほど
    緩急自在な訳でもなく。
    そもそも探偵役とワトソン役がぼやけて
    あいまいで

    しかしこの霧の中のようなファジィな感じが
    今は心地よいことに気づきました

    サタースウェイト氏も素敵なところもある反面
    厭らしいところももちあわせていて、
    クィン氏も優しいのかと安心していれば
    牙を見せつけてくるような怖さもあり
    炎がゆらめくと影が変わるような
    夢幻の暗い世界観です

    クリスティの小説に出てくる人物は
    たいてい類型的です。
    でもこの二人は例外です
    ミステリというより雰囲気を楽しむ短篇集

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    窓にうつる幽霊の影が目撃したもの。事件当日にメイドが大空に見た不吉な徴候。カジノのルーレット係が見せた奇怪な振る舞い。一枚の絵が語る自殺の真相―事件の陰にドラマあり。神秘の探偵ハーリ・クィン氏と、人生の観察者サタースウェイト氏の名コンビ登場!幻想味あふれる珠玉の連作短篇12篇、新訳決定版。

    ハーリ・クイン氏はこの世のものではない!?
    あとがき(解説?)を見る前に、不思議な感じはしていたのですがやっぱりそうなのか、と...

    この本の主役とも言えるサタースウェイト氏が、初めは傍観者だったのにだんだん自信をもって行動したり発言したりするようになる経緯がおもしろかったです。

    クイン氏に会うと嬉しそうな姿を見せる彼が、とてもかわいく見えたり^^

    「時間がたてば真実が見えてくる」とのクイン氏の言葉から、スリーピングマーダーものかなと思いきや、後編になるとその場で起こる殺人も出てきます。

    クリスティと言う人の才能に、改めて感服。

  • ホラー色の強い異色な作品集。謎めいたクイン氏の存在が魅力的で、語り部であるサタースウエイト氏も大好きでした。

  • ノンシリーズで短編。正直なところなかなか読み進められないかもと思っていたが、面白く読めた。
    やはりイギリスものが好きなんだよなあ。

  • 〔クィン氏〕やってきてすぐに去ってゆく髪の黒い男。謎は時間を経てからのほうがより客観的に、歴史として俯瞰できるので解きやすくなっていると言い、他者から話を引き出すことによって真実に至る道へと誘導する。誘導されてる感が強くどこか怪しくもある。いちばんの謎はもちろんクィン氏自身。

    〔サタースウェイト氏〕初登場時六十二歳。人生の見物人。他人のドラマに関心が強い野次馬。誰とでも知り合い。大金持ちで食通。多くの美術品に囲まれ妻子はいない。こういう人物は最後に当事者になったりするもんやけど、はたして?

    〔感想〕ひとつひとつはとてもあっさりしているがだんだんクィン氏の不可思議さが強く感じられていく。数十年ぶりに読むクリスティでかなりの冊数読んでるんやけどこれは未読やった。ともあれクリスティクオリティ。

    〔クィン氏登場〕幽霊の噂があるロイストン荘。十年前自殺した男の真相。ハーリ・クィン《ずつと解けなかったからといって、かならずしも解決できない問題とはかぎりませんよ》p.24
    〔窓ガラスに映る影〕窓ガラスに幽霊の顔が映るグリーンウェイズ荘で殺人事件。
    〔〈鈴と道化服〉亭奇聞〕大金持ちの若い女性と結婚した男が突然失踪した理由。
    〔空のしるし〕富豪の若い妻が殺された。使用人のひとりが神の御手を見た。
    〔クルピエの真情〕モンテ・カルロの「伯爵夫人」とアメリカ人の男女。
    〔海から来た男〕ある島で、ある男が自殺しようとしており、ある女も自殺しようとしていた。
    〔闇の声〕幽霊の声を聞く娘をなんとかしてくれと頼まれたサタースウェイト氏。
    〔ヘレンの顔〕すばらしく美しい顔を持つ女と二人の青年。
    〔死んだ道化役者〕昔、主人が自殺したチャーンリー荘で道化役者が死んでいるところを描いた絵を欲しがる二人の女。
    〔翼の折れた鳥〕降霊術によりクィン氏から呼び出しを受けてレイデル荘に赴いたサタースウェイトは魔を感じさせる女と出会う。
    〔世界の果て〕コルシカ島の世界の果てのような場所にある食堂にて。
    〔道化師の小径〕個性のない金持ち夫婦の屋敷であるバレエ作品が演じられる。

  • 謎の探偵ハーリ・クィン氏と人生の観察者サターウェイト氏のコンビによる短編集。ミステリとしての物語はもちろん、それよりも男女の人間模様を深く書いている作品群だった。

  • 250127*読了
    義父の読書好きの友人から借りたアガサ・クリスティシリーズ4冊目。
    ハーリ・クィン氏はいままでに読んできた推理小説の中でも探偵らしさの薄い探偵。
    もはや探偵ではない気がする。
    謎解きをするのはいつもサタースウェイト氏。
    でも、ひらめきのきっかけを与えるのはクィン氏で、なにもかも見透かしているような気になってしまう。
    神出鬼没のクィン氏、彼が現れるところに事件あり。しかも、恋人や夫婦、浮気相手など恋愛絡みの事件ばかり。
    ハーリクィンとは道化師のことで、かといって滑稽な振る舞いをするわけでもなく、ただそこにいて、飄々と的確な意見をくれる。
    こんな探偵もいてもいい。

  • The Mysterious Mr Quin

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著者プロフィール

1890年、英国、デボン州生まれ。本名アガサ・メアリ・クラリッサ・ミラー。別名メアリ・ウェストマコット、アガサ・クリスティ・マローワン。1920年、アガサ・クリスティ名義で書いたエルキュール・ポアロ物の第一作「スタイルズ荘の怪事件」で作家デビュー。以後、長編ミステリ66冊、短編ミステリ156本、戯曲15本、ノンフィクションなど4冊、メアリ・ウェストマコット名義の普通小説6冊を上梓し、幅広い分野で長きに亘って活躍した。76年死去。

「2018年 『十人の小さなインディアン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

アガサ・クリスティの作品

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