ヘラクレスの冒険 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

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  • / ISBN・EAN: 9784151300608

感想・レビュー・書評

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  • 連作短編集。引退を前に自らの名に因み12件の依頼を受けるポアロ。バリエーションあるものの長編のような鮮やかな謎解きには至らず。ポアロのトリビアは得られたかも。「ディオメーデスの馬」「ゲリュオンの牛たち」が面白かった。

  • アガサ・クリスティーの『ヘラクレスの冒険』─精神障害の遺伝性と暴力性[エッセイ]|Web医事新報|日本医事新報社(2018-02-18)
    https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=9339

    名作文学の「差別用語」はどこまで削除されるべきか? アガサ・クリスティ作品も修正しなければ絶版に… | 「配慮」か「検閲」か | クーリエ・ジャポン
    https://courrier.jp/news/archives/326113/

    ヘラクレスの冒険 | 種類,クリスティー文庫 | ハヤカワ・オンライン
    https://www.hayakawa-online.co.jp/shop/shopdetail.html?brandcode=000000011151

  • なかなかおもしろかったですよ。
    短編なので、トリックを楽しむというよりは引退前のポアロの生活をちょっとのぞくというスタンスでページをめくってください。

  • ものすごく昔に読んだようだが
    まったく記憶にない…。
    なので、新鮮な気持ちで楽しみました。

    なんか無理くり「ヘラクレスの難業」に
    絡めてるっぽい話もありましたが。
    想定外の車のトラブルで
    ホテルに足止めをくらってる間に
    若者の相談に乗ってあげる
    『アルカディアの鹿』とか
    現代にも通用しそうな情報戦の
    『アウゲイアス王の大牛舎』とかが
    おもしろかったです。

  • 2004年発行、早川書房のクリスティー文庫。12編。ポアロらしい短編集なのではないだろうか。殺人とかの重大な事件(どこまでを重大ととるかにもよるが)は半分もないかな。人探しのほんわかした話も好きである。「ヘラクレスの12の難行」との関りはあるのかもしれないが、神話に詳しくないのでよくわからない。どこか伏線となっていたりするのだろうか?

    掲載作:『ネメアのライオン』、『レルネーのヒドラ』、『アルカディアの鹿』、『エルマントスのイノシシ』、『アウゲイアス王の大牛舎』、『スチュムパロスの鳥』、『クレタ島の雄牛』、『ディオメーデスの馬』、『ヒッポリュテの帯』、『ゲリュオンの牛たち』、『ヘスペリスたちのリンゴ』、『ケルベロスの捕獲』、まえがき:「ことの起こり」、解説:「クリスティーと膝掛け毛布」東里夫(作家)、

  • 「アガサ・クリスティ」のミステリ連作短篇集『ヘラクレスの冒険(原題:The Labours of Hercules、米題:The Labors of Hercules)』を読みました。
    ヘラクレスの冒険(原題:The Labours of Hercules、米題:The Labors of Hercules)

    『ポワロの事件簿〈1〉』、『ポワロの事件簿〈2〉』に続き「アガサ・クリスティ」作品です。

    -----story-------------
    引退を控えた「ポアロ」が、自らのクリスチャン・ネームである「エルキュール(=ヘラクレス)」にかけて「十二件の依頼を受けてやろう。しかも、その十二件は、ギリシャ神話のヘラクレスの十二の難業を参考にしてえらばなければならない」と、難事件の数々に挑戦。
    オムニバス形式の短篇十二篇を収めた作品集。
    新訳決定版。
    -----------------------

    1947年(昭和22年)に刊行された「アガサ・クリスティ」の短篇集… 「エルキュール・ポワロ」のファーストネーム「Hercules」がギリシア神話の英雄ヘラクレスに由来することにちなみ、神話上の12の功績をモチーフとした物語で構成されている短篇集です、、、

    以前、映像化作品の『名探偵ポワロ「ヘラクレスの難業」』も観たことがありますが、こちらは本書に収録されている『アルカディアの鹿』、『エルマントスのイノシシ』を中心に大幅に改編されているので、別な作品のような感じですね。

     ■ことの起こり
        (原題:Foreword)
     ■第一の事件 ネメアのライオン
        (原題:The Nemean Lion)
     ■第二の事件 レルネーのヒドラ
        (原題:The Lernean Hydra)
     ■第三の事件 アルカディアの鹿
        (原題:The Arcadian Deer)
     ■第四の事件 エルマントスのイノシシ
       (原題:The Eurymanthian Boar)
     ■第五の事件 アウゲイアス王の大牛舎
        (原題:The Augean Stables)
     ■第六の事件 スチュムパロスの鳥
        (原題:The Stymphalean Birds)
     ■第七の事件 クレタ島の雄牛
        (原題:The Cretan Bull)
     ■第八の事件 ディオメーデスの馬
        (原題:The Horses of Diomedes)
     ■第九の事件 ヒッポリュテの帯
       (原題:The Girdle of Hippolyta)
     ■第十の事件 ゲリュオンの牛たち
        (原題:The Flock of Geryon)
     ■第十一の事件 ヘスペリスたちのリンゴ
        (原題:The Apples of the Hesperides)
     ■第十二の事件 ケルベロスの捕獲
       (原題:The Caputure of Cerberus)
     ■解説 東理夫


    『ことの起こり』は、プロローグにあたる作品、、、

    引退を考えていた「ポアロ」の下に友人の「バートン博士」が訪れる… 彼は「ポアロ」の性格上、引退は無理だと言うが、それに対して「ポアロ」は「ヘラクレス」の難行に自身を例え、最後に12の事件を解いて引退することを決める。



    『第一の事件 ネメアのライオン』は、「ポアロ」宛てに「サー・ジョーゼフ・ホギン」という人物から、妻のペキニーズ犬を捜して欲しいという手紙が届き、いつもなら断る類の依頼内容だったものの、「ミス・レモン」から勧められたこと等から何故か気になり依頼人に会うことにする物語、、、

    「ポアロ」が「サー・ジョーゼフ・ホギン」の自宅を訪ねたところ、既に愛犬の「シャン・トゥン」は見つかっていた… 夫人のコンパニオンの「ミス・カーナビィ」が、「シャン・トゥン」を散歩させている途中、赤ん坊に気を取られた間に「シャン・トゥン」が誘拐され、その後、200ポンドを要求する脅迫状が届き、身代金を払ったところ、無事に「シャン・トゥン」は戻ってきており、「サー・ジョーゼフ・ホギン」の友人「サムエルソン」も同じ被害にあっており300ポンドの身代金を支払っていた。

    「ポアロ」は、「ホギン夫妻」の依頼により、身代金を取り返すべく調査を進める、、、

    将来に金銭的な不安を抱く、犬好きのコンパニオンが、自分の飼い犬(ペキニーズ犬の「オーガスタス」)を利用したトリックを使った犯罪でしたが、「ポアロ」は犯人を被害者に暴くことなく身代金を被害者のもとに返し、その後、その事件解決で得た報酬をコンパニオンに贈呈するという粋な解決方法でしたね… 「ヘラクレス」の難行の例えた1件目の事件は、ライオンではなく、ペキニーズ犬(番犬としての勇敢さはライオン並み?)に関する事件でしたね。



    『第二の事件 レルネーのヒドラ』は、妻を亡くした医師「チャールズ・オールドフィールド」に対するいわれなき中傷(妻を毒殺したとの噂)を断つべく、「ポアロ」が噂の出所と事件の真相を探る物語、、、

    「ポアロ」はさっそく現地に飛んで噂の出所を調べ始める… 「チャールズ」の病院の薬剤師で彼が好意を持っていた女性「ジーン・モンクリーフ」や、「チャールズ」の妻の付き添いをしていた「ハリソン看護婦」、村の住人で詮索好きで噂好きでおしゃべりなオールドミス「ミス・レザラン」、「オールドフィールド家」の召使だった「グレイディス」等の証言を確認しながら真相に近付いていきます。

    妻が死んでしまえば、自分が「チャールズ」の妻になれると思い込んだ女性の犯罪… その勝手な思いは叶わないと気付いたときに、愛情は憎悪に変わってしまったんですね、、、

    「ヘラクレス」の難行の例えた2件目の事件は、一見、ヒドラとは無関係そうなのですが「噂はまさに9つの首をもつレルネーのヒドラなのです。一つの首を切ると、そこからすぐ二つの首が生えてくるために完全には滅ぼすことができない怪物なんですよ」と「ポアロ」が話すとおり、噂のことをヒドラに喩えているんですね。



    『第三の事件 アルカディアの鹿』は、「ポアロ」が雪の中、愛車の故障で立ち往生した村の宿屋で出会った自動車修理工で純朴な青年「テッド・ウィリアムソン」から一目惚れした高名なバレリーナの付き添いの女性「ニータ」を捜して欲しいと依頼を受け、僅かな手掛かりを元にヨーロッパ中を巡り、女性を捜索する物語、、、

    「ニータ」の住所の現居住者や、「テッド」が「ニータ」と出会った別荘の主「サー・ジョージ・サンダーフィールド」、バレエ関係者からの証言により「ニータ」の生地がピサであることが判明… 「ポアロ」は、現地まで足を運んで家族と会うことができるが、彼女は盲腸が原因で既に亡くなっていた。

    その後、彼女の雇い主だったバレリーナの「カトリーナ・サムシェンカ」を療養先のスイス・ヴァグレーまで訪ね、「ポアロ」は自らの推理を披露… 「カトリーナ」が「ニータ」を装っていたことを確認し、「テッド」と一緒になることを助言する、、、

    「テッド」がハンサムで背が高く、ギリシャ神話のアルカディアの羊飼いのようだったことから、「カトリーナ」を鹿に喩えたんですね… なかなか粋な締めくくり方でした。



    『第四の事件 エルマントスのイノシシ』は、「ポアロ」がスイスの山頂(標高1万フィートのロシェ・ネージェ)のホテルへと向かうケーブルカーの中で、車掌から「山頂のホテルで殺人犯マラスコーの逮捕に協力して欲しい」という旧友でスイス警察の警視「ルマンテューユ」からの手紙を渡され、事件捜査に協力する物語、、、

    ホテルに到着後、ケーブルカーが事故により運行を停止してホテルは孤立… 宿泊客やホテル従業員が敵か味方か判断がつかない中、給仕「ギュスタヴ」が「ポアロ」に近付いてきて、自分は「ドルエ警部」で「マラスコー」逮捕のために給仕に変装していることを打ち明け、協力を申し出る。

    その夜中に「ポアロ」が三人組みの悪党に襲われ、その直前に給仕「ギュスタヴ」に化けていた「ドルエ警部」が襲われて顔を大きく傷つけられていた… そして、勤務態度が悪く解雇されて山をおりたはずの給仕「ロベール」がホテル内の使用されていない部屋で死体としてみつかり、その胸には「マラスコー」であることを示すメモがあったことから、悪党たちの仲間割れで「マラスコー」は殺害されたと思われたが、、、

    実は殺された給仕「ロベール」の正体が「ドルエ警部」で、負傷を負った給仕「ギュスタヴ」の方が「マラスコー」だったという意外な展開… しかし、「ポアロ」の眼を欺くことはできませんでしたね。

    危険な殺人犯「マラスコー」はイノシシと呼ばれていたことから、エルマントスのイノシシを生け捕った「ヘラクレス」に喩えたんですね。



    『第五の事件 アウゲイアス王の大牛舎』は、国民のシンボル的存在であった前首相「ジョン・ハメット」は、実は悪辣な人物であったことが、X線ニュース紙に嗅ぎ付けられ、娘婿にあたる現首相「エドワード・フェリア」に依頼された「ポアロ」は、暴露記事を掲載しようとする雑誌社の目論見を阻止するために立ち上がるという物語、、、

    「ポアロ」は、「ジョン・ハメット」の娘で「エドワード・フェリア」の妻「ダグマー」の協力を得て、「ダグマー」のスキャンダルをでっちあげてX線ニュース紙を欺き、X線ニュース紙を名誉棄損で訴えて窮地に追い込むとともに、信用を失墜させて「ジョン・ハメット」の醜聞が暴露されることを防止する… 「ポアロ」の方が何枚も上手でしたね。

    「アウゲイアス王」の大牛舎の大掃除の神話(良くは知りませんが…)のように、大洪水のような猛烈な力でスキャンダルを洗い流した… ということのようです。



    『第六の事件 スチュムパロスの鳥』は、休暇先のヘルツォスロヴァキアのステンプカ湖畔のホテルでイギリス政府の次官「ハロルド・ウェアリング」はしっかり者の中年女性「ライス夫人」と酒癖の悪い夫から逃げてきたという彼女の娘「エルジー・クレイトン」と出会うが、そこへ「エルジー」の夫「フィリップ」が現れて妻を連れ戻そうとし、彼女は抵抗の末、夫を撲殺してしまうという事件に「ポアロ」が関わる物語、、、

    「ライス夫人」と「クレイトン夫人」は、地元の警察、ホテルの支配人などと交渉し、金品を贈って「フィリップ」の死を事故にすることにし、「クレイトン夫人」には罪がなかったことにした… 「クレイトン夫人」に好意をもち、現場に居合わせていた「ハロルド」はイギリスから為替を送らせて費用を立て替えて、事件は闇に葬り去られたと思われたが、スチュムパロスのような不吉な印象を与える二人のポーランド人姉妹が「ライス夫人」の所に来て、「フィリップ」の事件をネタに恐喝をはじめた。

    ここで初めて「ポアロ」が登場… 「ハロルド」から相談を受けた「ポアロ」は、外国語に弱い「ハロルド」が騙されていることに気付き、事件解決に協力する、、、

    スチュムパロス湖のほとりに棲み、人間の肉を常食としていた鉄の嘴をもった鳥… スチュムパロスの鳥は、ポーランド人姉妹ではなく、「ライス夫人」と「クレイトン夫人」だったんですね。



    『第七の事件 クレタ島の雄牛』は、依頼人の女性「ダイアナ・メイバリー」から、婚約者の「ヒュー・チャンドラー」が自分自身を狂人であると思い込み婚約を破棄したと言う相談を受けた「ポアロ」が「チャンドラー家」を訪ね、その真相を探る物語、、、

    「ヒュー」は、夜中に本人の意識がないままに、剃刀やナイフで羊や犬や鶏などの動物の喉を掻切っているのだという… 動物を殺した記憶は本人にはまったくなく、気がつくと血に染まった剃刀を持っていたり、血で真っ赤になった洗面器の前で気を失っていたりするのだった。

    「ダイアナ」は「ヒュー」が精神的な病気だとは納得せず、何かほかの原因があるのでは… と「ポアロ」のところに相談に来たのだった、、、

    自分が狂人だと信じ込ませて、自殺へ追い込む… という殺害方法は想定内でしたが、まさか父親が真犯人とは思いませんでしたね。

    まっ、自分の親友が息子の父親だった… という動機を知れば納得かな、妻も事故にみせかけて殺していた前科もあったしなぁ、、、

    「ヒュー」の男らしさが漲る立派な堂々たる体躯をクレタ島の雄牛に喩えたんですね。



    『第八の事件 ディオメーデスの馬』は、「マイケル・ストダート医師」から深夜に電話により呼び出された「ポアロ」が麻薬騒ぎの後始末を頼まれる物語、、、

    「ストダート医師」は好意を持っていた「シーラ・グラント」がコカインパーティで倒れたことを憂いており、彼女が麻薬の常習者にならないようにしたいと願っていた… 「ポアロ」は、「シーラ」の父親で退役軍人の「グラント将軍」を訪ね、コカインの出所を探っていく。

    いやぁ、意外な展開… 加害者と思っていた若者の「アントニー・ホーカー」が被害者としてスケープゴートにされようとしていて、実は「グラント一家」が悪党一味(しかも、家族じゃなかった)とは、、、

    麻薬密売者を、人の血を吸い肉を喰ディオメーデスの馬に喩えた物語でした。



    『第九の事件 ヒッポリュテの帯』は、知人で画廊の「アレクサンダー・シンプソン」から、「ルーベンス」の描いた名画「ヒュポリュテの帯」が何者かに盗まれた事件の捜査を依頼された「ポアロ」は、もうひとつの興味ある事件… パリにある名家の子女のための教育施設であるミス・ホープ学院に入学するために、イギリスからフランスに渡った19名の少女の一人「ウィニー・キング」が行方不明になった事件の捜査とあわせてフランスに旅立つという物語、、、

    「ウィニーが失踪した列車は途中に停止していないことや、「ウィニー」が沿線で後日麻薬でフラフラになって発見されたこと、「ウィニー」の編み上げ靴や帽子等、嵩張るモノが沿線に捨てられていたこと、「ウィニー」のスーツケースが何者かによって持ち去られたこと等から、「ポアロ」は「ウィニー」がイギリスで誘拐されて、別な人物が列車の乗り込んでいたと推理する。

    無関係と思われた二つの事件を「ポアロ」は一気に解決… 窃盗犯一味は、ミス・ホープ学院に入学する少女たちと一緒に行動することで、関税がフリーパスとなり、盗難した「ヒュポリュテの帯」をフランス国内に易々と持ち込んでいたんですね、、、

    盗まれた絵画が「ヒュポリュテの帯」だったので、そのまま「ヘラクレス」の難行の9件目になりました… エンディングで、群れになった25人の少女に取り囲まれてサインをせがまれる「ポアロ」の姿を想像すると笑えましたね。



    『第十の事件 ゲリュオンの牛たち』は、『第一の事件 ネメアのライオン』で知り合った(加害者ですね)女性「ミス・カーナビィ」が「ポアロ」を訪ね、新興宗教「羊飼いの信徒」にのめり込み、財産を教団に遺そうとしている彼女の親友「エメリン・クレッグ」のことを相談する物語、、、

    教団の信徒の中に大金持ちの女が何人かいたが、そのうち昨年中に少なくとも3人が、教団に全財産を寄付して死んでいた… それも全て孤独で身寄りのない女ばかりだったことから、「ミス・カーナビィ」は「エメリン」が同様の境遇であることから心配していたのだった。

    彼女は、ハンサムな教祖「アンダースン博士」に惹かれており、忠告は全く聞き入れてくれない… 「ポアロ」は「ミス・カーナビィ」に、大変危険な役割だが、教団に信徒として潜入するように頼み、「ミス・カーナビィ」も承諾、、、

    教団に入ると集団で不思議な行事が行なわれ、教祖が腕に触れるとチクリと痛みを感じ、「ミス・カーナビィ」はすぐに恍惚とした感じに陥った… 使われていたのは大麻だったんですよね。

    怪しげな教団の人物「コール」が潜入捜査をしていた警察官だったり、教団の門番「リプスコム」を「ミス・カーナビィ」の機転の利いた行動で欺いたりと、新興宗教の秘密を暴く冒険的な要素が強い作品でした… 「アンダースン博士」を怪物「ゲリュオン」に喩えたようですね。



    『第十一の事件 ヘスペリスたちのリンゴ』は、大富豪「エマリー・パワー」から、10年前に3万ポンドで競り落とした後、「パワー」の手に渡る前に前の持ち主の貴族「サン・ヴェラトリーノ侯爵」の邸から盗まれてしまった「ボルジア家」の金の酒盃を取り戻して欲しいという依頼を受けた「ポアロ」が、世界を股にかける窃盗団を追って旅に出る物語、、、

    国際窃盗団の3人が逮捕されたが、主犯格の「パトリック・ケイシー」が逮捕の際に窓から飛び降りて墜落死し、残りの2人の供述からは、安物の美術品だけが見つかり、「ボルジア家」の金の酒盃はどこにあるかわからなかった… 「ポアロ」は、「パトリック・ケイシー」の娘が修道院に入ったという話をヒントに金の酒盃を見つけ出し、「パワー」のもとへ届けるが、その際、「パワー」に対し酒杯を修道院に送り返すことを提案する。

    尼僧に聖杯として使ってもらう方が酒杯にとっては幸せだったのかも、、、

    「ボルジア家」の金の酒盃は宝石をちりばめた蛇が、リンゴのなる一本の木に絡みついた見事な細工があったことから、「ポアロ」は、ギリシャ神話のヘスペリスたちのリンゴを思い浮かべたようですね。



    『第十二の事件 ケルベロスの捕獲』は、「ポアロ」がかつて惹かれた「ロサコフ伯爵夫人」と地下鉄駅で偶然再会し、彼女が経営するナイトクラブ「地獄」へ招待されるが、その店は麻薬と宝石の取引が行われている疑いがあることを「ジャップ警部」から聞き、真相を確かめる物語、、、

    「ロサコフ伯爵夫人」は無罪で、「ロサコフ伯爵夫人」の息子「ニッキー」の婚約者「アリス・カニンガム」が裏で手引きしていたんですよねぇ… そして、警察が2度も手入れに入って発見することができなかった麻薬は、店の番犬のグレイハウンドの口の中に隠されていたとは。

    「ポアロ」は、「ロサコフ伯爵夫人」を窮地から救い… 恋心が再燃して年甲斐もなくアプローチを、、、

    まっ、ハッピーエンドなんで、この終わり方もありかな… 最後の難行は、グレイハウンドをケルベロスに喩えた物語でした。



    引退を意識した「ポアロ」が、引退前に12の事件を解決することがテーマになっているからか… 老齢になった「ポアロ」が柔軟に事件を解決している感じがしました、、、

    バラエティ豊かな12の難事件… どの話もコンパクトにまとまっているし、遊び心があり、心地良くミスリードさせられる展開が多くて、愉しめましたね。

  • ポアロの短編集。ヘラクレスの12の試練になぞらえ、12個の話が描かれる。とはいえ、ヘラクレスの試練は全く知らないので、どの程度関連性を持っているのかはよくわからない。

    殺人事件ではなく、モノの探索や犬の誘拐、麻薬捜査など、普段とは違った観点のお話。しかしクリスティらしく、人間情緒溢れた話。
    個人的に、クリスティの短編は人物相関がすぐわからなくなって読みにくかったのだが、本作は(殺人事件ではないからだと思うが)比較的読みやすく、短編でさっと読めるのも良かった。

  • ポワロの12篇の短篇集。ヘイスティングスは出て来ず、たまにミス・レモンが登場する。寝る前にちょっと読みたいというときにピッタリの一冊。

  • ポアロ短編集。
    第十二の事件に登場するヴェラ・ロサコフ伯爵夫人は他のポアロものにも出てくる重要人物らしい。あまり覚えがないが、きっと忘れているだけだろう。

  • エルキュール・ポアロの短編集。
    クリスチャンネーム:エルキュール(ヘラクレス)の名に準えて12の難問を解決していく。
    彼は刑事ではなく、探偵であることがよく分かる一冊。
    私情を挟むし、犯罪には目をつむる。されどもそこが彼の魅力であり、人間味。

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著者プロフィール

1890年、英国、デボン州生まれ。本名アガサ・メアリ・クラリッサ・ミラー。別名メアリ・ウェストマコット、アガサ・クリスティ・マローワン。1920年、アガサ・クリスティ名義で書いたエルキュール・ポアロ物の第一作「スタイルズ荘の怪事件」で作家デビュー。以後、長編ミステリ66冊、短編ミステリ156本、戯曲15本、ノンフィクションなど4冊、メアリ・ウェストマコット名義の普通小説6冊を上梓し、幅広い分野で長きに亘って活躍した。76年死去。

「2018年 『十人の小さなインディアン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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