- Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151300707
感想・レビュー・書評
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戯曲3編収録。
〇「海浜の午後」
読んでいると少し登場人物がワチャワチャしている感じがするが、おそらく舞台では人物の出入りがはっきりするので、あまり気にならないのだろう。
過保護の青年の恋愛話など全体にユーモラスなものにしようとしているのだろうが、ラストはあまりスッキリしない。
〇「患者」
転落して動くことも口をきくこともできなくなった患者。事故なのか、自らの意思で落ちたのか、それとも犯罪か。警察は医師の協力により、ある実験によってその真相を明らかにしようとする。
〇「ねずみたち」
何者かによりアパートの一室に誘い出された男女。誰が自分たちをここに呼んだのか、またその目的は何か。動機というか目的にはやや強引なところがあるが、追い詰められていくサスペンスが良くできていると思う。上手い役者が演じれば、観ていて面白いのではなかろうか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「海浜の午後」あるリゾートの砂浜。中年の夫婦。夫婦に若い男の3人連、気の強い母親に従順な青年の息子。そこにビキニ姿の美女が現れ男性は皆見とれ言葉を交わそうとする。
そこに近くのホテルでエメラルドのネックレスが盗まれたと警部が検査にやってくる。皆見た目通りではない裏の姿があった。ひとり真っすぐなのは・・ 二重の逆転劇があり、なんだか海辺の強い太陽の中、してやったり!というすかっとした最後。
「患者」バルコニーから落ちた夫人。誤って落ちた、いや自殺だ、いや誰かに押された。いまだ言葉もしゃべれないが指だけは動き、ある装置を使って、イエスなら一回、ノーなら2回のボタンを押し犯人捜しをしようと企む警部。「あなたは手すりにもたれたのですね?」「ブー 」「そして気が遠くなった?」「ブー、ブー」 なんだか舞台を想像して吹き出しそうだ。めでたく犯人をみつける。
「ねずみたち」知人のアパートに呼ばれた女。ところが知人はいない。するとまた別な女が、また男もやってくる。
3編とも短いがひねりがきいている。実際に舞台でみたらとてもおもしろいんじゃないかと思う。
1963発表
2004.9.15発行 図書館 -
アガサ・クリスティーの短編戯曲三本を収録。
どれも予想外の結末を迎える、ドキドキの短編集。
『海浜の午後』が超絶カッコいいラストシーン。
詳しくはブログにて。
http://blog.livedoor.jp/byoubyoubyou/archives/52456032.html -
原書名:Rule of three
海浜の午後
患者
ねずみたち
著者:アガサ・クリスティ(Christie, Agatha, 1890-1976、イングランド、小説家)
訳者:深町眞理子(1931-、東京、翻訳家)、麻田実(1936-、東京)
解説:柳原慧(1957-、東京都、小説家) -
一幕ものの戯曲3篇。見覚えのあるキャラに見覚えのある道具立てで、『ラジャのエメラルド』や『スペイン櫃の秘密』その他もろもろの作品を連想せずにはいられない。が、物語の流れは全然違う。これはクリスティーのパラレルワールドだ!またの名は「アイデアの使いまわし」。戯曲だからぎりぎりアリかな…。
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戯曲3編。やはり小説の方が面白いか
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クリスティが戯曲を書いていたとは知らなかった。
収録作はどれもミステリ風味なものばかり。
表題作の「海浜の午後」は冗長だったが、他二篇はなかなか面白かった。特に「患者」がいい。
ただ、実際に舞台で見るとなると印象が違うからな。どれも舞台で演じたらどうなるのか見てみたいと思った。 -
一幕物の戯曲三篇を収める。
最も上出来なのは「患者」。
二択でしか応答できない被害者
(この極限状況がたまりません)、
高まる緊張、そして意外な犯人。
静謐な印象を与えます。
「海浜の午後」はちょっと冗長。
登場人物もむやみに大勢出しすぎる。一幕なのに。
反対に「鼠たち」は短すぎて消化不良な感じ。
きちっとまとまってはいるんですけど、
松本清張『霧の旗』のような後味の悪さが漂う。
旧版は戯曲リストのみ。解説なし。
新版は柳原慧さん。
右脳と左脳がどうこう、とかいうたわごとが
ほとんどを占めています。
いちばん好きなのは『ホロー荘の殺人』だそうで、
思い入れを語っています。
それ自体は、いい趣味ですね、と思うんだけど、
『海浜の午後』の解説で言うことでしょうか。
こういう場合、『ホロー荘』をまくらにして
本作と対比させるのが基本中の基本。
それすらもクリアできてないなんて……。
旧版の勝ちです。