- Amazon.co.jp ・本 (442ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151300721
感想・レビュー・書評
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ポアロもマープルも貸し出し中で仕方なく読んでみたらなかなか楽しかった。天涯孤独のかわいいお転婆娘の冒険譚というありがちなしかもご都合主義な話なのに許せてしまうのは、クリスティの人物造形の上手さかな。村上貴史さんのあとがきも良い。
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クリスティー強化ウィーク中♪今回は、ノン・シリーズのこちらの作品。
父親を亡くしたばかりのアンは、ロンドンの地下鉄で男が転落死したのを目撃します。その時に“医者”と称する男が落としていった、謎の暗号のようなものが書かれた紙片を拾った事から、彼女の“冒険”が始まります・・。
エンタメ性にあふれた“冒険活劇”で、ミステリとはまた違った楽しみ方ができる本書。
主人公の若い女性アンは、とってもアグレッシブである意味無謀なところが「トミー&タペンスシリーズ」のタペンスを彷彿とさせます。
アンとサー・ユースタス・ペドラーの手記が交互に展開する構成ですが、この“手記”がクセものといいますか、つい先日“この手”でクリスティーに騙されたばかりなのに、また騙されてしまいました(ネタバレになるので作品名伏せます)。
スリルあり、ロマンスあり、旅の楽しさあり(ヴィクトリア滝、行ってみたい!)、謎解きもありますよ。
登場するキャラも面白く、ミステリに興味なくてクリスティー読んだことない方でも、本書はお楽しみいただけるかも。と思った次第です。 -
推理と冒険の話。テンポよく読めて楽しかった。著者はこの話の主人公みたいに好奇心旺盛で行動的だったのだろうか?登場人物の手記が出てくるともう警戒してしまう。
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2004年発行、早川書房のクリスティー文庫。解説の言う通り、ミステリーというより冒険青春小説か。しかし、どうも長すぎるような気がする。ビッグ4のように短編連作なら目先が変わって面白いのだが、どうも中だるみをひどく感じてしまった。後半はなかなか面白く、前半の勢いが復活しているように思えたのだが。
解説:「思い入れの深い作品」村上貴史(ミステリ書評家) -
天涯孤独の身となったアン。冒険に憧れる彼女はある日、地下鉄のホームで謎の転落死を目撃します。続いて起こる殺人事件。謎を解くため、アンは冒険へと足を踏み出します!
明るく楽しい冒険譚。さくさくと話が進んでいきます。解説にもある通り、御都合主義に感じるとこもなくもないけど…まあ全体の雰囲気が軽いのでこれはこれで、みたいな。
この本を読む前にWikipediaで、ある有名なトリックの先駆けになってるというのを目にして、で、本を読みながらある有名なトリックってあれかな、あれだったら犯人はこの人かなと思ってたらそれが当たりだったのでちょっと嬉しかったです。 -
「アガサ・クリスティ」の長篇ミステリー『茶色の服の男(原題:The Man in the Brown Suit)』を読みました。
『書斎の死体』、『動く指』に続き「アガサ・クリスティ」作品です。
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考古学者の父を亡くして間もない「アン」は、ロンドンの地下鉄で奇妙な事件に遭遇する。
男が何者かに驚いて転落死し、現場に居あわせた怪しげな医者が暗号めいたメモを残して行方をくらましたのだ。
好奇心に駆られた「アン」は、謎を追って単身南アフリカ行きの客船に飛び乗った……ミステリの女王による波瀾万丈の冒険譚 (解説:「村上貴史」)
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1924年に発表された「アガサ・クリスティ」の初期の作品(長篇推理小説の4作目)… 「エルキュール・ポアロ」が、まだ世に知られて間がなく、「ミス・マープル」は登場すらしていない時代のノン・シリーズモノです、、、
ノン・シリーズモノの長篇作品は、1年くらい前に読んだ『なぜ、エヴァンスに頼まなかったのか?』以来ですね。
考古学者の父を亡くした「アン・ベディングフェルド」は、仕事が見つかるまでという条件で弁護士の「フレミング夫妻」に引き取られてロンドンに来た… 1月初めのある日、職探しをする「アン」は、地下鉄ホームの端でナフタリンの臭いをオーバーから発散させた男が、「アン」の背後にいた人物に驚き恐れたかのように顔を引きつらせて後ずさりし、線路上に転落して感電死するのを目撃、、、
男の死を確認した医者を名乗る茶色の服を着た男が立ち去る際、紙切れを落としていった… ナフタリンの臭いが染みついたその紙切れには「1 7・1 22 Kilmorden Castle」と暗号のようなものが記されていた。
「アン」は翌朝、死んだ男(後日、検死審問で「L・B・カートン」という名前が判明)のポケットから下院議員の「サー・ユースタス・ペドラー」の持ち家であるマーロウのミル・ハウスへの紹介状が入っていたこと、その家の2階の1室で外国人と思われる若い美人の絞殺死体が発見されたこと、その家には「茶色の服を着た男」も見に来ていたことを新聞記事で知る… 興味にかられた「アン」は、暗号の手紙に記されていた「Kilmorden Castle」がケープタウンに向かう客船「キルモーデン・キャッスル」であることを知ると、事件の謎を解くために父親が遺してくれた全財産を投げ打って切符を買い、単身南アフリカ行きの船に飛び乗ったところ、偶然にもその船には「サー・ユースタス・ペドラー」も乗船していた、、、
「ペドラー」の秘書の「パジェット」と「チチェスター牧師」と17号室を争い部屋を勝ち取った「アン」は、暗号の「1 7・1 22」が「17号室 1時 22日」と考え、部屋で22日1時を待つ… すると1時に「助けてくれ。追われている。」と言いながら肩を刺された男が部屋に飛び込んできた。
陽焼けした顔の頬に傷跡を走らせ、危険な香りのするその男は、「アン」に介抱されたあと、今夜のことは誰にも言わないようにと口止めして立ち去る… 「アン」はその男は「ペドラー」から船に乗る直前に新しく雇った秘書の「レイバーン」だと知る、、、
そして、監視の必要がある人物を「ペドラー」、「アン」と17号室を争った「ペドラー」の秘書の「パジェット」と「チチェスター牧師」の3人に絞る… 「アン」は船上で親しくなった社交界の花形の「ブレア夫人(スーザン)」にこれまでの経緯をすべて打ち明け、例の暗号の数字は「1 7・1 22」ではなく「1 71 22」、すなわち「1時 71号室 22日」で、「スーザン」の船室である71号室に何かが起こるというものであったことに思い至る。
この71号室は「ミセズ・グレイ」の名前で予約されていたもので、その名前はロシアの有名な美人ダンサーの「マダム・ナディナ」の変名であった… 「スーザン」が「レイス大佐」から聞いた話では、彼女は強力な国際犯罪組織の手先の1人で、組織の首謀は悪魔のようにずるがしこい人物で「大佐」と呼ばれているらしい、、、
その話を聞いた「アン」は、マーロウのミル・ハウスで殺された若い美人の外国人が「ナディア」で、そのため乗船できなかったのだと思い至る… 22日の1時に71号室には通風孔から写真のフィルムが投げ入れられており、「スーザン」は失くしたフィルムを給仕が届けに来たものだと思っていたが、調べてみるとそのフィルムの容器の中にはダイヤモンドの原石が入っていた。
「アン」は、それが「レイス大佐」の話に出ていた行方不明のダイヤモンドの一部だと思い至る… 「スーザン」は、「茶色の服を着た男」が「レイバーン」で、駅で死んだ「カートン」が「ナディア」にダイヤモンドを渡そうとしていた、それを「レイバーン」がダイヤを手に入れようとして「カートン」から暗号の紙切れを手に入れ、そのあと「ナディア」を殺し、「ペドラー」に働きかけて秘書として船に乗り込んでイギリスを脱出するとともに22日1時に17号室に入ろうとした、そこを偽牧師の「チチェスター」に刺されたのだと推理する、、、
しかし、「レイバーン」に惹かれていた「アン」は、「茶色の服を着た男」が「レイバーン」であることは認めるものの、殺人については無実を主張… 船旅の最後の夜、「アン」が寝付けずに甲板にあがっていると、何者かが彼女の首を絞めながら海に落とそうとしたところに「レイバーン」が駆けつけて、その襲撃者を殴り倒して彼女を救った。
逃げる襲撃者を追う「レイバーン」の後を追って「アン」が駆けつけたところ、食堂の入口に何者かに殴られた「パジェット」が倒れていた… 「アン」は側にいた「レイバーン」に、本当の名前は「ルーカス」であり、また「茶色の服を着た男」で、さらに「マーロウ」の女を殺したのだろうと指摘すると、彼は女を殺す気持ちがあったことを認め、「パジェット」をそのままにしてその場は別れる。
翌日、一行はケープタウンに上陸… 「アン」は、「アン」の父を尊敬していたという博物館の館長からの手紙を受け、ミューゼンバーグの別荘でお茶に招待したいとの申し出に応じて別荘に向かったところ、待ち構えていたのは一見してオランダ人と分かる焔のようオレンジ色の顎ひげをした男であった、、、
「アン」は敵の罠にかかったのだった… という具合に波乱万丈の冒険譚が展開します。
その後、「アン」は軽挙妄動な行動から、何度も危険な目に遭いますが、幸運が味方したことと、「レイバーン」のサポートにより命を落とすことなく少しずつ事件の真相に近付いて行きます… 終盤まで、だれが敵で、だれが味方なのかが明確にならず、ドキドキハラハラの展開でした、、、
でも、最も驚かされたのは「ペドラー」が南アフリカで雇った秘書「ミス・ペティグルー」の正体でした… まさか偽牧師「チチェスター」の変装で、しかも、「ペドラー」を裏切っていたとは… ミステリというよりは、「トミー」と「タペンス」シリーズのような冒険モノでしたね。
「アン」の一人称の語りと「ペドラー」の日記で構成され、2人の語り手により全体の動きが俯瞰できる構成になっています… 「大佐」の正体が明かされたとき、、、
『アクロイド殺人事件』のトリックを先取りして試行していたんじゃないかなぁ… という気がしましたね。
推理小説としてではなく、冒険小説として愉しめる一冊でした。
以下、主な登場人物です。
「アン・ベディングフェルド」
考古学者の娘。
「マダム・ナディナ」
ロシアの踊り子。
「L・B・カートン」
地下鉄で死んだ男。
「サー・ユースタス・ペドラー」
ミル・ハウスの所有者。下院議員。
「ガイ・パジェット」
ユースタスの秘書。陰気で不吉な容貌をしている。
「ハリー・レイバーン」
ユースタスの秘書。頬に傷跡がある。
「ミス・ペティグルー」
ユースタスの秘書
「ナスビー卿」
『デイリー・バジェット』の社主。
「クラレンス・ブレア夫人(スーザン)」
社交界の花形。
「レイス」
大佐。
「エドワード・チチェスター」
宣教師。
「サー・ローレンス・アーズリー」
南アフリカの鉱山王。
「ジョン・アーズリー」
ローレンスの息子。
「ハリー・ルーカス」
ジョンの親友。
「大佐」
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「茶色の服の男」
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