そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫 クリスティー文庫 80)
- 早川書房 (2003年10月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151300806
作品紹介・あらすじ
さまざまな職業、年齢、経歴の十人がU・N・オーエンと名乗る富豪からインディアン島に招待された。しかし、肝心の招待主は姿を見せず、客たちが立派な食卓についたとき、どこからともなく客たちの過去の犯罪を告発してゆく声が響いてきた。そして童謡のとおりに、一人また一人と…ミステリの女王の最高傑作。
感想・レビュー・書評
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1年以上前に芦田愛菜さんの「まなの本棚」に刺激されて読みたいと思っていた本です。
外国の小説は苦手でほとんど読んでいないので、初アガサ・クリスティーでした。
あまりにも有名な本なので、(少し言いたいことはあるのですが)内容に関するレビューはしないことにします。
これは、2010年発行の青木久恵さんによる新訳版の前のものです。
今でも、こちらを選んで読む人はいるのではないでしょうか。
背表紙は全く同じなので、背表紙だけでは新訳版とこの旧訳版の見分けはつきません。
古本屋で買う時も、図書館で借りる時も、翻訳者を確認してください。
1939年の英国での原本初版のタイトルは、“Ten Little Niggers”でした。
‘Nigger’が差別用語ということで、1940年の米国での初版では“And Then There Were None”と改題されています。
だから日本語版のタイトルは「そして誰もいなくなった」なのですね。
原文の‘nigger’が‘indian’に改められたので、1964年の米ペーパーバック版では“Ten Little Indians”というタイトルも用いられたことがあるらしいです。
ところが‘Indian’も差別用語になったので'Soldier boy'に再度改められています。
このため青木久恵さんの新訳版でも、「インディアン」は「兵隊さん」になっています。
本書では、インディアンが使われていますし、黒人を卑下するような表現も残っています。
本書とは関係ないですが、MLBのクリーブランド・インディアンスも今年(2022年)からクリーブランド・ガーディアンズになりました。
小説に限らず、いろいろと表現に気を使わなければいけない時代になりましたね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ミステリー小説を好きになるきっかけとなった作品。本当に面白かった。
アガサ・クリスティ様様!
別の作品も読み進めたいです。 -
10人の男女が仕事の依頼や招待を受けて、オーエン夫妻の所有するインディアン島を訪れる。そこには夫妻はおらず、夕食の後にくつろいでいると、突然レコードから声が流れ、10人が犯した罪を暴露するのだった。
彼らは直接手を下したわけではないが、作為的な誘導や冷たい仕打ち、仕事上の地位を利用した合理的な命令などにより、結果的に人を死に至らしめた。法により裁かれることはない彼らを何者かがオーエン夫妻の名を語り、裁きを下そうとしているようだ。
部屋には古い詩が飾られていて、それは「10人の少年が一人ずつ欠けていき最後には誰もいなくなった」というものだった。彼らもその詩のとおりに一人ずつ殺されていく。島には10人の他には人はいない。どうやらオーエンと名乗る犯人はこの中にいるようだが、それはいったい誰なのか?
ミステリーは好きでけっこう読んでいるけれど、日本のミステリーとはずいぶん趣が異なっている。
ミステリーの古典の傑作なんだろう。清水俊二訳の美しさもあって、かなりおどろおどろしいはずなのに、情緒的ですらある。
好んで読むタイプのミステリーは謎解きに重きがおかれ、また、殺意に同情的な面があったりして、犯人や探偵役、その周りの人たちに感情移入できるけれど、この話には、それがなかった。
あくまで、こちら側からスクリーンを見ているような感じで。
TV版で観たポアロって鼻持ちならないなと感じていたのを話の最後に思い出したけれど、クリスティーはどこかに人の虚栄心みたいなものを匂わせているよう。
最初に10人の履歴の説明があるけれど、これがなかなか頭に入らず、途中何度も表紙の裏側の人物紹介を確認しながら読む。
TVドラマのように丁寧すぎるおさらいがないから、ちょっと読みなれない感じではあった。あちこちに散らばっていた伏線が最後に回収されるようなすっきり感はないけれど、却ってそのあっさりしたところが、映画を見終わった後の余韻のようで気になって、もう一度最初から流し読み。
ここでようやく、なるほどね、と。
読みたい新刊も多いけれど、たまにはいわゆる傑作もぜひ! -
名前が最初覚えられなくて誰だっけ?と何度も名前の確認をした。。私が頭悪いからかな。。でも、内容はとてもシンプルで楽しかった。過去に法で裁けない罪を犯した人達を10人集め、インディアンの歌になぞらえて一人一人殺していく。。残されていく人の恐怖や心情がよくかかれてた。誰が犯人なんだろ?と考えて読んでたら先が気になってサクサク読めました。
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初のアガサ作品。
これまでこんなにも早く読み進めた小説はない。
初めはその読みやすさそのものに物足りなさを感じそうになったが、それは読書経験が浅い私の愚かな勘違いだった。
読み終えた時に、こんなにもサラサラと読めて、というより睡眠時間を削ってしまうほどに次々とページをめくらされ、それでいて必要以上の心理描写も無駄な文章もなく、最後はオーケストラの指揮者が躊躇なくバンッと曲を終わらせるような鮮やかな結末。
これでサラサラ読めるということが、どれだけスゴイことか。
それこそがアガサ・クリスティの技術の高さであり、魅力なのではないかと感じずにはいられなかった。
内容については是非読んでほしい、とだけ述べておきたい。 -
その孤島に招き寄せられたのは、たがいに面識もない、
職業や年齢もさまざまな十人の男女だった。
だが、招待主の姿は島にはなく、やがて夕食の席上、
彼らの過去の犯罪を暴き立てる謎の声が響く。
そして無気味な童謡の歌詞通りに、
彼らが一人ずつ殺されてゆく。
強烈なサスペンスに彩られた最高傑作。
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有名な本を読んでみた。
でも、この作家の本は初めて読む。
海外の作品は登場人物が多いイメージがあって敬遠してた。
「そして誰もいなくなった」
「そして」って、なんやんねんって思った。
「誰もいなくなった」でいいやんって。
何でそしてが付くのか、その前の文章は何なのか。
こんな完成系のミステリは初めてかも。
何一つ誰も疑うことなく、
読み終えても、これって犯人いるやんなって感じで、
ポカーンとしてた。
エピローグで、やっと孤島に警察の捜査が入り、
事件解決に向けて進められるねんけど、
この短いエピローグで、最後に残った人は自殺ではなく、
殺されたということがわかる。
うわっ、やっぱりちゃんと犯人がいるんや、
と思ったら、犯人自ら書いた証拠文書が出てくる。
その内容が、短く端的やのに、
めちゃくちゃしっくりきて、驚きよりも茫然。
証拠文書が出てこなかったら、迷宮入りやと思った。 -
有名な作品だし何度も何度も読もうと思っててやっと読んだ。いやぁー今でこそこの手のトリックや閉鎖された空間で殺人事件の話は沢山あるけど、その元祖!素晴らしい!!!
単純に面白かった。
最後まで犯人がわからないし、ワクワクするし素晴らしかった。古典派もっと読みたくなった。 -
1939年に刊行されたアガサ・クリスティの長編推理小説。名作に触れたくなり読了。
孤島に招かれた面識のない10人の男女。古い童謡、暖炉の上の10体の人形、静寂を破るレコードから発せられる戦慄の声、一人また一人と殺され…逃げられない空間で精神的に追い込まれていく招待客に読み手も疑心暗鬼にならざるを得ません。ラストまで一気に読ませる魅力が詰まっていました。
ハヤカワ文庫からは青木久惠氏の新訳版も出ているそうですが、より原作に忠実な訳を読むなら清水俊二氏訳の本作がオススメ。
綾辻行人さんの『十角館の殺人』は本作をオマージュした作品。ベースは似通っていますが、やはりこちらも唸るものがあります。